myTYPE特集「大切なことは全て、ゲームから学んだ」北岡優希著 現代のロジェ・カイヨワ
★「myTYPE2022.9(shuTOMO別冊)」を頂きました。特集は「大切なことは全て、ゲームから学んだ」。執筆者はあのノイタキュード代表北岡優希さん。北岡さんは、映像を駆使したインタビュー記事を多数発信している新しいタイプの教育ジャーナリストです。今回の記事は、ゲームを思考コードのA軸タイプ、B軸タイプ、C軸タイプの3つに分けて論考しています。思考コードを使っているわけですから、切り口が今までにない論考になっています。
★自分の人生を決定づける感情、思考、行動を生み出す大きなきっかけは、人様々。ローバート・フルカムは、人生の大切なことは幼稚園の砂場で学んだと言ったし、建築家フランク・ロイド・ライトは、積み木から学んだと言いました。最近のZ世代なら、レゴから学んだと言うかもしれません。
★北岡さんの場合は、ゲームだというわけですから、時代精神とシンクロしていますね。ジャーナリストは何かしら時代精神を汲み取る独特のツールを媒介にするわけですが、北岡さんもそうだということですね。
(教育キーワードVol.14 「自己変容」 聖パウロ学園高等学校 本間勇人先生)
★北岡さんは、時代の精神を象徴するような教育キーワードについてインタビューして動画と原稿の両方で発信しています。私もインタビューをしてもらいましたが、北岡さんの教育ジャーナリストとしての経験値の進化は、なるほどRPGのような自己成長物語を地でいっているなあと感じていたところです。
★ゲームはとかくゲーム中毒だとかゲーム脳だとか警鐘が鳴らされるツールです。実際、社会問題になっている部分もあります。しかし、ウルトラQやウルトラマンが始まったころに出版された少年漫画は、当時今のゲームのようにやり玉にあげる教育評論家はたくさんいました。今では、日本の芸術文化を代表する漫画やアニメですが。
★また、現在は当たり前の英語ですら、20世紀末には、日本語が大事だと英語表層論みたいな議論を大学の識者たちが大真面目に論じていました。今では、国内大学の進学準備キャリアデザインは人気ですね。
★とはいえ、それらのマイナス面が今でも完全になくなったわけではありませんが、今のゲーム警鐘論ほどではありません。しかし、こうして過去を振り返ると、あらゆるものは、メリット・デメリット、アンビバレンツ、トレードオフなどの両義性を持っているのが健全で、だからクリティカルシンキング、北岡さんの言葉ではメタ認知能力が必要だという話なのでしょう。
★今でもそうかもしれませんが、麻布に進む小学生の中には、星新一の作品が好きだし、ドラえもんが好きだし、マイクラも自在だという生徒もたくさんいます。スクラッチコーディングのプログラミングも自在の生徒がたくさんいます。
★麻布の国語は、物語の構造論を活用して読みますが、この物語構造論を活用しているのは、RPGです。特に神話構造はベースになっています。もちろん、映画、たとえばスターウォーズやロードオブザリングもそうですね。視聴率の高いドラマも、ここはよく計算されています。
★ゲームは、かくして、ただ与えられたルールにのっとって時間浪費をしていくだけだとちょっと怖いことになるのですが、C軸発想で、プログラミングの仕掛けとかストーリー構造をプロデュースする側の視点、つまりメタ認知的スタンスでアプローチすると、北岡さんのように豊饒な学びがあふれます。
★実際に、ゲーミフィケーションのアプリを導入しながら授業を展開している教師もたくさんいるし、カウンセリングにゲーミフィケーションを活用する研究もされています。
★ゲームは、コンピュータゲームだけではなく、あらゆる遊びの基礎です。遊びとは交流です。コミュニケーションです。対話です。政治学における権力の優勝劣敗ゲームという危険なゲームもあります。そのゲームの構造を見破り、well-beingにするクリティカルシンキングゲームも政治学や文化人類学や社会学、哲学などで行われているのが昨今です。もちろん、経済学以外では、ゲームの理論という言い方はしないかもしれませんが。
★交流やコミュニケーションは、常にアンビバレンツ、パラドクス、ジレンマ、トレードオフなどと呼ばれる状況に直面します。それをワクワクC軸タイプゲームで乗り越えるか、B軸タイプで、ジレンマに陥りダブルバインド状態から抜け出るにはどうするか問題を発見し、悩みぬくこともよいでしょう。A軸タイプだとやりすぎると、無意識のうちに経済社会の負のループに巻き込まれるので、そうならないように生活規則を守るようにするわけです。
★つまり、ゲームの3パターンは、キーガン博士の3つのマインドー環境順応型マインド、自己主導型マインド、自己変容型マインドーに相当するのかもしれません。ダブルバインド状態に取り込まれているのに気づかないか、ダブルバインド状態の仕掛けを見破り回避するか悩むか、ダブルバインド状態を解除し解放するクリエイティビティを発揮するか。
★もしこのダブルバインド状態をC軸視点でグローバル市民が議論できるようになると、パンデミック、戦争、気候変動の現代の3大社会課題を解決する域に達するでしょう。
★北岡さんとともに、多くの人が対話をして、C軸タイプ対話を楽しんでください。気づいたときには、ホインジーガーやロジェ・カイヨワの次元に高まっていることでしょう。
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