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2022年9月

2022年9月30日 (金)

教育の質の高い中身を選択する時代(06)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味⑤

★今回の巻頭座談会で、北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)が4番目に振ったのは、立石哲也さん(個太郎塾北赤羽教室・浅草教室室長)。立石さんは、ご自身で個別指導塾を経営していると同時に、首都圏模試センターの個別指導CPPリーダーとしても活躍しています。つまり、自分の塾だけではなく、多くの個別指導塾の市場を盛り上げる活躍をしているわけです。塾の先生、塾の経営者、マーケティング・コンサルタントというマルチプレイヤーです。

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★立石さんは、セミナーや会議では、いつもラディカルなトークで、多くの人の慣習的な発想や固定観念をゆさぶる衝撃波を放ちます。しかし、驚かして終わりではないのです。気づきを生み出して幸せな雰囲気を作ったり、驚き不安がる人にはちゃんとフォローをする愛情があります。熱情と愛情とレトリックの人です。リーダーのモデルですね。

★今回も、「学校選びにあたっては、まず偏差値と内申を考えないでいただきたい!」と放ちます。何言っているんだ、考えないわけにいかないではないかとムカっと来る人もいるでしょう。そんなことできるのと不安がる人もいるでしょう。

★しかし、この話の背景には、「推論のはしご」というメンタルモデルの罠の論理が隠れています。

★大概の場合、私たちは、「私の信念は正しい」「真実は明らかである」「私の信念は現実に基づいている」「私の選んだ事実は、本当の事実」である」というところから出発します。しかし、それが思い込みだったら、どんなに論理的に思考しても、どんどんはしごを登っていくうちに最終的には誤謬の地点に登り立ってしまいます。

★だから、立石さんは、偏差値や内申はいったんかっこにいれて、その限界を外して学校を眺めてごらんということなのでしょう。

★それは部活にも言えますよと。最近部活のあり方は、学校の働き方改革で、かなり様子が変わってきています。

★自分がどのような部活のあり方を望み、高校にあるその部活が、自分の部活のあり方とマッチングするかどうかは確かめなさいと。

★学校選びは、推論のはしごのパラドクスに陥らないようにしなさいと。立石さんのレトリックの背景には、冷静なロジカルシンキングが働いています。論より証拠、立石さんは思考コードの達人です。

★学校選択のための思考様式のモデルになると思います。

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教育の質の高い中身を選択する時代(05)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味④

★今回の巻頭座談会で、北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)が3番目に振ったのは、青木顕太さん(個太郎塾川口教室・戸田公園教室室長)。青木さんは、公立中学校の教員経験もあるため、リアルな学校の状況や高校入試の閉塞状況を理解しています。だからこそ、高校入試や学校の教育を変えたいというモチベーションがずば抜けて高い人物です。

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★なんといっても、グローバルな視野かつ留学の意義など具体的な情報を豊富に持っています。1つの地球という立ち位置から教育を観ながら、同時に極めて現場で子どもたちが悩んでいるリアリティのある問題に真剣に向かい合う教育実践家でもあります。

★たとえば、自分の偏差値に合わせて同偏差値の学校を選択して入学したとします。すると、自分のペースと合わないため、退学・転学するという生徒もいます。高校進学率が97%以上になっているということばかりが注目されていますが、退学・転学率というのがいかに多いかは、統計がないですね。ただ、通信制高校の在学生が年々増えるというのは、退学・転学率も増えているということでしょう。

★通信制高校は、入学の時の生徒数より卒業生の生徒が増えているケースが多いのですが、それは退学・転学率がある程度高いということを示唆しています。

★ですから、青木先生は、生徒と学校情報の非対称性を無くそうと提案します。生徒目線で、学校情報を伝えられたらということと、学校情報を伝える場合、同じ目線で発信しようということですね。

★同じ目線でとはどういくことか?一人のジャーナリストやライターがすべての高校情報を書けば、一定の基準で学校を比べられるわけです。そういうジャーナリストが5人くらいいて、5冊分厚い情報誌を出せば、それぞれのライターの文章の中で比較し、かつそれぞれの情報誌を比較すれば、かなり生徒にとってはマッチング学校が見えてくるというわけですね。

★ところが、そんなことは不可能です。それで、情報誌を編集するメンバーがミーティングを重ね、コンセプトや価値観のすり合わせをして、一定水準の基準を共有=同じ目線で編集していくことが大事なのだと。

★それゆえ、今回8人の高校情報誌創刊プロジェクトメンバーが毎週のように制作会議を重ねてきたのでしょう。制作会議の合間に山下さんが「思考コード」の勉強会を開いていたのは、思考コードについて共有するという目的もあったでしょうが、実はコンセプトや価値観を共有する時に思考コードの理解は有効だからです。

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教育の質の高い中身を選択する時代(04)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味③

★今回の巻頭座談会で、北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)が2番目に振ったのは、山下一さん(首都圏模試センター代表取締役社長)でした。北さんと山下さんは、日本の教育改革推進の盟友です。大学入試改革前に生まれた中学入試市場における英語入試や適性検査型入試、プレゼン入試、プログラミング入試、思考力入試、得意科目入試など新タイプ入試を開発する私立中高一貫校を応援し、新タイプ入試ー総合型選抜という中学入試ー大学入試カップリングのトルネードを生み出すのに一役買ったのです。そして、このような体験型入試は、多角的な評価基準が必要です。だったらと、思考コードというメタルーブリックを創り、中学入試の世界で実現してしまったのです。

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★ですから、山下さんは、その気概を高校入試にも適用したいと思っているのです。言うまでもなく、お二人は、今回のシン・高校受験情報誌創刊の仕掛け人です。そして二人の人柄が、多くの仲間を新しい世界に導くことになったのです。

★山下さんは、高校受験の学びは、自分の未来への選択の始まりだと語ります。受験科目の勉強だけではなく、自分の未来を開く魅力的な教育の中身をしっかりリサーチしようと。

★とはいえ、そのような「教育の魅力情報」は、限られた高偏差値の高校に限られ、他の私学の「魅力情報」を自分で収集するのは難しい。それに大学入試と直結する高校教育は、総合型選抜のような新しいタイプの大学入試においては、高校時代にどのような体験を積み上げてきたかが問われるので、それは体験してみなくてはわからないというものが多くなってきています。

★だったら、私立高校進学フェアを企画し、各私学の「教育の魅力情報」を講演スタイルで発信し、同時に各私学の体験型授業を行ってしまえと7月に行ったのでした。この行動力!凄まじいですね。

★そして、高校時代には、大学に合格して終わりではなく、大学でも活躍できる資質・能力を身に付けよう。そのためには、骨太で本物の教育の魅力のある学校を選択しようと語るのです。

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教育の質の高い中身を選択する時代(03)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味②

★高校入試の複合的な壁。この壁は実に不思議なパラドクスの産物です。明治維新以降、一高→東大という学歴社会の原型ができ、やがて、府立一中→一高→東大というエリートコースができます。明治維新以降の優勝劣敗主義、権威主義ができあがっています。戦後、現在の教育制度に移りますが、府立一中は日比谷高校となります。しかし、東大を頂点とする学歴社会の強化の役割を日比谷高校は担ってしまいます。これもまた実はパラドキシカルです。戦後民主主義は、平等、自由、博愛をコンセプトにするわけですから、権威や世襲や門地、門閥に関係なく、学力実力主義で、成功を獲得できるので、大学入試によって未来が拓けるのは当時は善だったわけですね。

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★ところが、特定の小・中学校→日比谷高校→東大というエリートコースと呼ばれた固定化されたラインができてしまうと、そこは新たな権威主義を生み出します。おそらく、そういう偏狭主義的な事態をなんとかしようと、1967年に学校群制度が実施されることになります。

★そして、1971年以降実施された現代化カリキュラムという詰め込み教育という言葉で表現される学習指導要領ができ、学力格差が思い切りでき、日比谷高校もその影響を受けます。

★このころから、私立中高一貫校が東大を頂点とする大学に合格させるようになっていきます。

★文部科学省は、一方で現代化カリキュラムを、その後ゆとりカリキュラムといわれることになる学習指導要領の改訂を繰り返していきます。ますます都立高校の学力的な差が私立学校とできていきます。

★それゆえ東京都の方は、2001年以降、進学重点校や都立中高一貫校の設置など、公立の巻き返しを図ります。日比谷高校は、今では東大合格者を多数輩出し、毎年注目されるようになったのは、周知の事実です。

★ざっくりわかりやすい変化を挙げてきましたが、これらは、みな制度設計の変更によって生まれています。戦後の制度設計の変更は、いずれも民主主義的原理に照らし合わせて策定実施されてきました。しかし、必ずしもうまくいっていないわけですね。そのうまくいっていない課題が制度設計の変更の度に生まれ、解決されないまま制度変更がなされてきたため、それらの課題が複合的にいくつかの壁を作りだしているのが高校入試の壁です。改善したいという理由で変更したのに、それが壁になってしまう。パラドクスです。

★この壁にどのようなものがあるのかは、首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんが、今回の巻頭座談会でまとめていますから、いずれ紹介します。ここでは、そのような壁をどう乗り越えるのか、プロジェクトメンバー1人ひとりがアイデアを述べていますから、しばらくそれをみていきます。

★まず、庄司正義さん(シンクアンドクエスト取締役社長)。庄司さんは、現代の高校入試の原型は生徒急増期につくられたものだから、生徒減少急激の現在には適合しなくなったという認識をまずもったほうがよいのだというわけです。そして、高校生人口急増期に進学率も90%を突破するようになります。現代化カリキュラムもはじまる時と重なりますから、個別最適化などなかった時代です。どうなったか想像するに難くないでしょう。

★もちろん、ゆとりカリキュラム化の過程を経たり、反ゆとり教育になったり、両方を統合する今回の学習指導要領になったりとかするわけですが、高校入試の制度設計の大枠が変わらないわけですね。

★これを突破するには、教育の中身の変更に合わせた入試制度の変更もしたほうがよいと。

★教育の中身は、「主体的・対話的で深い学び」と「ルーブリック評価」と「個別最適化」と「協働学習」などがキーワードになっています。

★したがって、庄司さんは、こう言います。「受験生・私学・公立中学3者が使える評価軸の創設がポイントです」と。

★現在でも、受験生・私学・公立中学3者は、入試相談などで、情報を共有することはできるのですが、対面で、互いの評価基準のすり合わせをするのであって、共通基準に照らし合わせるのではないのです。基準がバラバラだから、個別に会ってみなければわからないのです。わからないので、中学側は、過去の経験データに基づいて進学指導をせざるを得ないのです。未知なる学校は、合否が読めないわけです。

★高校進学率が100%に近くなっている今、合格が読めない進学指導はできないのは当然です。

★じゃあ偏差値がいいじゃないかという方もいるかもしれませんが、それはさまざまな問題を生んできたから、制度設計の改訂が行われ続けてきたのです。ですから、別の軸を作る必要があるということでしょう。

★多角的な評価軸の共有。これは、新学習指導要領のねらいでもあります。

★庄司さんのアイデアは、夢物語でもなんでもなく、現実化への道が文科省によってもなされつつあるという裏づけに基づいています。

★おそらく庄司さんの会社では、当然ながら、この新しい軸を開発しつつあるのかもしれませんね。今は、アプリでそれが可能だからです。AIを導入するともっと複雑な計算ができますし、基準を作りだしてもくれます。

★今回のプロジェクトミーティングは、回数を重ねるほど、いろいろなアイデアと、ICTによる実効性が議論されているはずです。どこかで手ごたえを感じているからこそ、この動きが生まれているのでしょう。ここに未来の教育を生む希望があります。

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2022年9月29日 (木)

教育の質の高い中身を選択する時代(02)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味①

★高校受験情報誌創刊プロジェクトメンバー8人による巻頭座談会が圧巻です。高校受験の現状分析により7つぐらいの壁を見出し、それらをクリアするにはどうしたらよいかという現実と理想のギャップを埋める具体的アイデアが満載だからです。これほど明快な分析と解決策およびシン・高校情報誌創刊という実行力は、新しい受験市場を牽引するエネルギー源です。

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★創刊プロジェクトのメンバーは、編集にあたり、今年の5月から7月にかけて、毎週Zoom勉強会を開催してきました。多くの学校の先生方と編集者の方々も加わり、10回も行ったのです。私も何回か参加しました。いつも目からウロコで、勤務校の広報活動や体験ワークショップをアップデートするヒントを頂きました。ありがとうございます。

★そして、この勉強会は、7月16日、駒込中学・高等学校で「私立高校進学フェア」としても結実しました。講演会と私立高校11校の体験授業が並行進化するイベントでした。コロナ禍のため、これまでなかなかお会いできなかった私学の先生方と対面で前向きな対話ができたのも実り豊かでした。

★さて、座談会で話されているプロジェクトメンバーを紹介しましょう。

北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)

庄司正義さん(シンクアンドクエスト取締役社長)

山下一さん(首都圏模試センター代表取締役社長)

青木顕太さん(個太郎塾川口教室・戸田公園教室室長)

立石哲也さん(個太郎塾北赤羽教室・浅草教室室長)

菅原祐二さん(ミライクリエ代表)

野尻幸義さん(首都圏模試センター教材開発ディレクター)

北岡優希さん(ノイタキュード代表)

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2022年9月28日 (水)

教育の質の高い中身を選択する時代(01)首都圏模試センター シン・高校受験情報誌創刊!

★中学受験専門の模擬試験会社である首都圏模試センターが、シン・高校受験情報誌を創刊しました。その名は「my SPECIAL ONE」。受験生1人ひとりの“スペシャル”になる学校を見つけるための情報誌というコンセプトのようです。

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★創刊号では、そのスペシャルになる学校20校が取材され紹介されています。取材記事は、写真が多用されているため、わかりやすくそれぞれの学校の特徴が印象付けらるように工夫がされ、詳しくはQRコードで首都圏模試センターのサイトの記事に飛ぶようになっています。

★まずは、ざっと20校目を通して比較して、「自分というスペシャルな存在」に適合する「スペシャルな学校」をマッチングし、それから続きはサイトに飛ぶという仕掛けです。勤務校の聖パウロ学園も紹介されています。ノイタキュード代表の北岡優希さんに取材して頂きました。パウロの森という自然をベースにしたGXの「先進的教育環境」や探究ゼミなど「コア教育機能」、ボランティアなどの「バッファー教育機能」にも触れていただいています。

★また、数学科の数学的思考の発想の研究についても、つまり「リベラルアーツ」の現代化のフィールドまで執筆して頂いています。

★総合型選抜メインなので、キャリア教育は、一般選抜向け受験指導とは違っている点については、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんの提案している7つのポイントでスコア化されているので、わかりやすいですね。中曽根さんは、同号で「しあわせな高校受験」という記事を掲載しています。

★なぜ「しあわせな高校受験」なのでしょう。それは、時代はすっかり変わり、教育の中身が多様になり、質も高まっている学校も増えているからです。ところが、あえて「しあわせな高校受験」と言わなくてはならないのは、幸せの青い鳥が近くにあるのに、その情報をまだまだ知らないという事情があるのです。

★このSNSを見事に使いまくっている情報の時代に、なぜそれぞれの高校の魅力情報をゲットできないのでしょうか?タブレットやPCなど1人1台になったので、これから高校の魅力情報をゲットする時代であることは確かです。

★しかし、従来の高校受験情報誌は、偏差値ランキングや大学合格実績の情報がメインで、高校の中身の情報といっても、高偏差値の学校に偏っていたということがあります。

★そこで、首都圏模試センターは、高校の模擬試験会社、プラットフォーマー、教育ジャーナリスト、教育広報の専門家などなどの仲間を集めて、偏差値にかかわりなく、魅力的な教育を行っている学校の情報を発信することにしたようです。

★教育の魅力は、「先進的教育環境」「コア教育機能」「バッファー教育機能」の3構成要素の掛け算で映し出されるというのが私の最近の仮説です。同情報誌で紹介されているいくつかの学校をこの3構成要素で分析していきたいと思います。勤務校に導入できそうな魅力的教育は、参考にさせていただきたいと思っています。

 

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トランジション教育型学校(8)コア教育機能のクオリティC軸の八雲と工学院 SDGsウォッシュを超えて

 ★八雲学園(以降「八雲」)と工学院大学附属(以降「工学院」)は、3年ぶりのラウンドスクエア国際会議(RSIC)にオックスフォード大学に渡英しています。閉幕したようですからもう帰国するでしょうが。このこのことについての概要や意義は前回紹介しました。ここでは、RSICのキーノートスピーチで講演したオックスフォード大学のディーター・ヘルム教授が登場してきた意味について妄想を述べたいと思います。

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★ヘルム教授は、オックスフォード大学エネルギー政策教授でオックスフォード大学ニュー・カレッジ経済学研究員のようです。英国エネルギー・気候変動担当国務長官の経済諮問グループのメンバーで自然資本委員会の委員長も務めていたようです。その経験やリサーチを通して積み上げた実績は、環境、エネルギー、公益事業政策へ貢献したと評価され、2021年の新年栄誉賞で爵位を授与しました。それで、ラウンドスクエアでは、Sir Dieter Helmとして紹介されたようです。

★2012年に出版された「カーボン・クランチ」は衝撃的で、再生エネルギーと環境規制を厳しく実施している欧州の政策のジレンマについて論考し、どうやら規制よりもイノベーションの方が合理的なのだと提案したようです。気候変動に関しては、たびたびメディアでもコメントを求められています。

★同書は、SDGsが登場する以前に出版されています。すでにSDGsウォッシュへの警鐘を鳴らしているといえます。警鐘を鳴らすだけではなく、提案もしているわけですね。2020年に“Net Zero”という本も世に出しています。

★要は、規制と再生エネルギーの運営は、助成金など莫大で本当に気候変動に対応できるのかということです。それよりもイノベーションを押し進めたほうが、合理的で最終的にコストも低くできるし、規制も緩和できるし、well-beingになれるのではないかというのでしょう。

★これは、ドネラ・メドウズが、すでに「成長には限界があるが、愛には限界がない」と科学的なリサーチを行いつつ語ったとことにシンクロしている可能性がありますね。

★リチャード・フロリダ教授が、クリエイティブクラスの登場によってグレートリセットが起こると論考したのにも同期します。それに対応するかのように、パンデミックに対応するためにダボス会議で、グレイト・リセットを真面目に議論していたように、やはりそこに到っているのです。

★もちろん、SDGsウォッシュもドネラが「ジェスチャーが悪いというわけではないが、根本的な問題を見失わないようにね」と言っているようにそれなりの意味はあるでしょうが、ラウンドスクエアは、もっと広く深く考え対話をする機会を創っているわけです。

★そこに、ラディカルかつ市場経済の持続可能性も考えるまさにラウンドスクエアの理念とシンクロするヘルム教授を登壇させたわけですね。

★爵位を有しているヘルム教授を日本に招いたとしたらいくらかかるんのでしょう。ふだん私立学校で大学の先生を招いてお支払いする額の何十倍ものお金がかかるでしょう。しかし、ラウンドスクエア認定校は、渡航費・宿泊費で、講演を聴けるわけです。

★今回の国際会議のテーマ“Take less:Be more.”にぴったりです。もちろん、講演料のことではありません。気候変動に対応する経済政策の話でしょう。コストをかけずに、SDGs以上の達成をしようということでしょう。成長には限界があるのだから、欲望とモチベーションの違いを冷静にメタ認知して、愛には限界がないのだから、みんながwell-beingにするには、制度設計をシンプルに、イノベーションを生み出せる自由で創造的な環境設定をということでしょう。

★実際八雲の生徒や工学院の生徒は、もっと興味深い気づきや発想を持ち帰ってくるに違いありません。いずれインタビューしようと思っています。

★さて、ラウンドスクエア認定校でない学校の生徒はどうしたらょいでしょう。DXや英語のスキルの高い生徒たちといっしょにSDGsの現状とそれに対する異論反論を論じているヘルム教授のような海外の識者の情報や文献をちゃんと読むところから始めるとよいですよね。もちろん、ボランティア活動と企業活動のフィールドワークをしながら。

★なぜなら、身近なボラティア団体や中小企業は、すでにグローバルな活動をしているので、海外に行くチャンスがない生徒にもone earthは開かれているのですから。ただ、そのようなことを私たちもしなくてはならないモチベーションをラウンドスクエアの国際会議の情報は与えてくれます。貴重な情報だと思います。Webに情報を発信してくれている八雲、工学院、及び参加しているラウンドスクエアの他の多くの認定校のみなさん、ありがとうございます。

以下は、上記記事をdeepLで翻訳した英文。

 Transition Educational Schools (8) Yakumo and Kogakuin on the Quality C Axis of Core Educational Functions Beyond the SDGs Wash


Yakumo Gakuen (henceforth "Yakumo") and Kogakuin University Affiliated (henceforth "Kogakuin") are traveling to the University of Oxford for the Round Square International Conference (RSIC) for the first time in three years. It seems that the conference has closed, so they will be returning home by now. An overview of this and its significance was presented in the previous issue. Here I would like to express my delusion about the significance of the appearance of Professor Dieter Helm of Oxford University, who spoke at the RSIC keynote speech.

Professor Helm is Professor of Energy Policy at Oxford University and a Research Fellow in Economics at New College, Oxford University. He appears to have been a member of the Economic Advisory Group to the UK Secretary of State for Energy and Climate Change and Chair of the Natural Capital Committee. His experience and the accomplishments he has built up through his research have earned him a knighthood in the 2021 New Year's Honors list for his contributions to environmental, energy, and utilities policy. So it seems that Round Square introduced him as Sir Dieter Helm.

His 2012 book, "The Carbon Crunch," was a revelation, discussing the policy dilemma of Europe's strict enforcement of renewable energy and environmental regulations, and apparently suggesting that innovation is more rational than regulation. He is frequently asked to comment in the media on climate change.

The book was published before the SDGs emerged. It can be said that it is already sounding alarm bells about SDG-washing. So you are not only sounding the alarm, but also making a proposal. We have a book coming out called "Net Zero" in 2020.

The point is that the regulations and renewable energy operations are so huge, with so many subsidies, etc., that they really can't cope with climate change. Instead, it is better to push innovation, which is more rational and ultimately less expensive, less regulated, and more well-being.

This may be in sync with what Donella Meadows has already said with her scientific research, "Growth has limits, but love has no limits.

This is also in sync with Professor Richard Florida's argument that the Great Reset will occur with the advent of the Creative Class. As if in response to that, we are still getting there, just as we were seriously discussing the Great Reset at Davos in response to the pandemic.

Of course, the SDGs wash is not a bad gesture, as Donnella says, "I'm not saying it's a bad gesture, but let's not lose sight of the underlying issues," but Round Square is creating an opportunity to think more broadly and deeply and have a dialogue. But it is also an opportunity to think more broadly and deeply and to engage in dialogue.

I wonder how much it would cost to invite Professor Helm, who holds a knighthood, to Japan. It would cost dozens of times more than what private schools usually pay to invite a university professor. However, Round Square accredited schools can listen to the lecture with only the cost of travel and accommodation.

This fits perfectly with the theme of this international conference, "Take less: Be more. Of course, we are not talking about the lecture fee. It is about economic policies to cope with climate change. It will be about achieving more than the SDGs without incurring costs. It would be about a calm meta-awareness of the difference between desire and motivation, since there are limits to growth, and since love has no limits, it would be about simplifying the institutional design and setting up a free and creative environment that can generate innovation in order to make everyone well-being.

In fact, Yakumo students and Kogakuin students must bring back more interesting insights and ideas. I plan to interview them at some point.

Now, what should students from schools that are not Round Square certified do? I think it would be a good idea for them to start by reading information and literature from overseas experts such as Professor Helm who discuss the current status of the SDGs and the arguments against them. Of course, while doing fieldwork in volunteer and corporate activities.

Because the volunteer organizations and small and medium-sized enterprises around us are already engaged in global activities, so ONE EARTH is open to students who do not have a chance to go abroad. However, the information from Round Square's international conferences motivates us to do such things as well. It is valuable information, and I thank Yakumo, Kogakuin, and the many other Round Square accredited schools that are participating for putting the information on the web.

Translated with www.DeepL.com/Translator (free version)

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2022年9月27日 (火)

2023年度入試覚書(03)八雲学園と工学院大学附属 オックスフォードでラウンドスクエア国際会議に参加

★ラウンドスクエア(RS:Round square)認定校の八雲学園(以降「八雲」と工学院大学附属(以降「工学院」)は、それぞれ高1・高2のメンバー6人が、オックスフォードで行われているラウンドスクエア国際会議(RSIC:The Round Square International Conference)に参加しています。

★コロナのために、2019年にインドで行われたきりで、久しぶりの対面によるRSCI。満を持してという感じがするのは、RSの拠点イギリスのオックスフォード大学で開催されたからというのもあるだろう。

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(写真は、八雲と工学院とRSのサイトから)

★今回は第53回目のRSIC。世界50カ国の認定校から800人以上の代表者が集まり、顔を合わせ、イギリスの今を代表する見識者のキーノートスピーチを聴き、世界の課題を語り合ったり、互いの文化をプエレゼンしたりします。後半は、英国の4校に分かれて、それぞれの学校のアドベンチャープログムやボランティアプログラムを体験します。もちろん、授業も。

★これは、RSの理念である"I.D.E.A.L.S.(「国際理解」、「民主主義の精神」、「環境問題に対する意識」、「冒険心」、「リーダーシップ」、「奉仕の精神」)を体験する目的があります。

★現代世界で起こっていることは、まさにこのI.D.E.L.Sを揺るがす出来事です。オックスフォードで、行う大切な意味はここにあります。

★RSの創設者は、ドイツ人でありながら、ファシズムに抗い、危機一髪で、先日亡くなられたエリザベス女王の夫となるエディンバラ公などの尽力で、イギリスに亡命。この命をかけた体験があったからこそ、クルト・ハーンは、I.D.E.L.Sという理念を持続可能にする教育を創ることに生涯をかけたのです。

★彼は、IBの一号店アトランティック・カレッジの創設にもかかわっています。

★したがって、RSやIBの意義とは、今こそ注目されなければならない、先進的教育環境です。

★八雲と工学院は、このRSの理念を継承するために教育を実施していると言っても過言ではありません。これぞトランジション教育の構成要素の一つである先進的教育環境のスーパーハイスペックなシステムです。

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2022年9月25日 (日)

2023年度入試覚書(02)桜美林 myTYPE9月号の記事を読んで

★myTYPE2022年9月号に桜美林中高の記事が掲載されています。創設者清水安三とキリスト教学校やキリスト教学校建築、病院、メンターム製造など自律した聖職者ヴォ―リズとの出会いからはじまる桜美林のキリスト教の精神と「主体的・対話的で深い学び」を実践している教科授業の連携について実に臨場感ある記事になっています。

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(堂本陽子校長:写真は同校サイトから)

★11支部で、堂本校長とお会いしたり、勤務校の生徒が桜美林大学を受験する準備などに接しているということもあり、同校の教育の質の高さと愛に満ちている雰囲気については知っているつもりでした。

★また、同校の社会の一般入試の思考力型問題を使って、多くの学校の先生方と思考コードを使って入試問題を分析するのかオンラインワークショップをノイタキュード代表北岡優希さんと協働して行っていたこともあって、授業の深い学びについても理解しているつもりでした。

★しかし、同記事を読んで、自分の理解は間違ってはいなかったが、まだまだ浅薄であったことに気づきました。首都圏模試センターの編集者部隊の情報収取のアンテナの大きさと教養・見識に感服しました。

★それにしても、堂本先生が校長というのは、清水安三を支えた妻の郁子さんの存在に光が当たる可能性があるのではないかと思っています。

★桜美林とはアルザスの牧師オベリンの名前に由来しているらしいのです。清水安三と清水郁子は、このオベリンの名前をつけた名門リベラルアーツカレッジで出会っています。近江に行き、市立図書館にいくと、清水安三とヴォーリーズの出会いの資料だけではなく、郁子の教育論と桜美林の関係についての論考も見ることができます。

★オベリンリベラルアーツカレッジは、創設以来共学校です。当時、今でいうジェンダー問題を解決する共学校化の運動が米国にはあったようです。郁子はその影響を受けているようです。

★今でいう、SDGs的な発想があったのでしょう。このSDGsのルーツは、ドネラ・メドウズという女性の研究者ですが、時代を超えてどこか郁子とドネラの精神はシンクロしているのではないかと勝手に思っているわけです。

★すると堂本先生も女性ですし、牧師でもあるわけですから、やはり同じ視点や精神があるのではないかと思うわけです。

★キリスト教精神は、イノベーションと貧しき人々、虐げられている人々、困窮している人々を決して忘れないという2つのベースが統合されています。

★ここに未来の希望はあるのではないかと。同記事を読んでますますそう感じ入ったわけです。

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2023年度入試覚書(01)動向や人気校 上半期ホンマノオト21ベスト20から気づいたこと

★またも沸騰受験列島の時期が来ました。本ブログは入試情報や教育情報、組織論、学習理論など思いついたことをつぶやいています。ですから、上半期(4月から9月)までのアクセスランキングベスト20の記事を眺めて、入試や教育全般について2023年度の動きをざっくりメモしておきます。

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★学校としては、三田国際学園が圧倒的人気を誇っていることがわかります。洗足学園、八雲学園も人気ですね。おもしろいのは、東京における人気の区は人気私立学校が数多くあるのではないかという仮説をメモった記事が人気であり、世田谷区の記事も注目されている点です。

★どういうことかというと、まさに世田谷区に三田国際があるわけです。八雲学園は目黒ですが、隣接エリアです。洗足も多摩川を超えるとすぐにありますから、隣接地帯です。これらの学校については、先日GLICC代表の鈴木さんとYouTube配信の番組GWEで語った通りです。トランジション教育型学校であり、その中でコア教育機能がC軸タイプの学校です。このタイプの学校については、ぜひ動画をご覧ください。

★また、このトランジション教育型学校の中でも21世紀型教育校は先鋭的で、C軸タイプですから、進取の気性に富んだビジョンを有している保護者には、関心をもたれているということがわかります。というのも、本ブログにアクセスしてくださる方は、基本プログレッシブな教育に興味と関心を持っている方が多いからです。

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★11位以降をみると、麻布のように伝統と革新を統合させる学校も人気があることがわかります。成城学園、工学院大学附属、静岡聖光学院、富士見丘も、やはりトランジション教育型学校で、コア教育機能がC軸タイプの先進的な学校です。

★神奈川で行われている女子校の合同説明会<shishokukai>にもアクセスが集まっているのは、この会を運営している学校がプログレッシブだからということもあるでしょう。

★それにしても、1位が、革新的教育×自己変容型教育について論考したもので、特に最近増えてきた学校と塾の連携についてメモしたものであるというのは、脱ピラミッド型発想の流れが加速度的になって来ているということなのかもしれません。偏差値というピラミッド型競争主義から才能を見出す市場の創出が勢いづいてきているのかもしれません。

★そして、その流れをうまく取り入れようとする学校が出現してきていて、塾機能や株式会社機能も自前で持ち始めたつえで、塾などの外部団体と連携するという新しい化学反応が生まれようとしているのかもしれません。

★それを象徴しているのが、校名変更、共学化、先進的教育をベースにした改革を実施しようとしている「星の杜中高」なのかもしれません。カトリック校におけるこのような動きは、すでに聖ドミニコ学園、サレジアン国際学園、サレジアン国際学園世田谷でも生まれています。

★伝統主義だと思われているカトリック学校は、伝統主義ではなく、普遍主義だという認識に立てるので、自己変容型学校になり得るのかもしれません。

★そうそう、聖ドミニコ学園も、サレジアン国際学園世田谷も世田谷区の私立学校です。

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myTYPE特集「大切なことは全て、ゲームから学んだ」北岡優希著 現代のロジェ・カイヨワ

★「myTYPE2022.9(shuTOMO別冊)」を頂きました。特集は「大切なことは全て、ゲームから学んだ」。執筆者はあのノイタキュード代表北岡優希さん。北岡さんは、映像を駆使したインタビュー記事を多数発信している新しいタイプの教育ジャーナリストです。今回の記事は、ゲームを思考コードのA軸タイプ、B軸タイプ、C軸タイプの3つに分けて論考しています。思考コードを使っているわけですから、切り口が今までにない論考になっています。

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★自分の人生を決定づける感情、思考、行動を生み出す大きなきっかけは、人様々。ローバート・フルカムは、人生の大切なことは幼稚園の砂場で学んだと言ったし、建築家フランク・ロイド・ライトは、積み木から学んだと言いました。最近のZ世代なら、レゴから学んだと言うかもしれません。

★北岡さんの場合は、ゲームだというわけですから、時代精神とシンクロしていますね。ジャーナリストは何かしら時代精神を汲み取る独特のツールを媒介にするわけですが、北岡さんもそうだということですね。

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(教育キーワードVol.14 「自己変容」 聖パウロ学園高等学校 本間勇人先生) 

★北岡さんは、時代の精神を象徴するような教育キーワードについてインタビューして動画と原稿の両方で発信しています。私もインタビューをしてもらいましたが、北岡さんの教育ジャーナリストとしての経験値の進化は、なるほどRPGのような自己成長物語を地でいっているなあと感じていたところです。

★ゲームはとかくゲーム中毒だとかゲーム脳だとか警鐘が鳴らされるツールです。実際、社会問題になっている部分もあります。しかし、ウルトラQやウルトラマンが始まったころに出版された少年漫画は、当時今のゲームのようにやり玉にあげる教育評論家はたくさんいました。今では、日本の芸術文化を代表する漫画やアニメですが。

★また、現在は当たり前の英語ですら、20世紀末には、日本語が大事だと英語表層論みたいな議論を大学の識者たちが大真面目に論じていました。今では、国内大学の進学準備キャリアデザインは人気ですね。

★とはいえ、それらのマイナス面が今でも完全になくなったわけではありませんが、今のゲーム警鐘論ほどではありません。しかし、こうして過去を振り返ると、あらゆるものは、メリット・デメリット、アンビバレンツ、トレードオフなどの両義性を持っているのが健全で、だからクリティカルシンキング、北岡さんの言葉ではメタ認知能力が必要だという話なのでしょう。

★今でもそうかもしれませんが、麻布に進む小学生の中には、星新一の作品が好きだし、ドラえもんが好きだし、マイクラも自在だという生徒もたくさんいます。スクラッチコーディングのプログラミングも自在の生徒がたくさんいます。

★麻布の国語は、物語の構造論を活用して読みますが、この物語構造論を活用しているのは、RPGです。特に神話構造はベースになっています。もちろん、映画、たとえばスターウォーズやロードオブザリングもそうですね。視聴率の高いドラマも、ここはよく計算されています。

★ゲームは、かくして、ただ与えられたルールにのっとって時間浪費をしていくだけだとちょっと怖いことになるのですが、C軸発想で、プログラミングの仕掛けとかストーリー構造をプロデュースする側の視点、つまりメタ認知的スタンスでアプローチすると、北岡さんのように豊饒な学びがあふれます。

★実際に、ゲーミフィケーションのアプリを導入しながら授業を展開している教師もたくさんいるし、カウンセリングにゲーミフィケーションを活用する研究もされています。

★ゲームは、コンピュータゲームだけではなく、あらゆる遊びの基礎です。遊びとは交流です。コミュニケーションです。対話です。政治学における権力の優勝劣敗ゲームという危険なゲームもあります。そのゲームの構造を見破り、well-beingにするクリティカルシンキングゲームも政治学や文化人類学や社会学、哲学などで行われているのが昨今です。もちろん、経済学以外では、ゲームの理論という言い方はしないかもしれませんが。

★交流やコミュニケーションは、常にアンビバレンツ、パラドクス、ジレンマ、トレードオフなどと呼ばれる状況に直面します。それをワクワクC軸タイプゲームで乗り越えるか、B軸タイプで、ジレンマに陥りダブルバインド状態から抜け出るにはどうするか問題を発見し、悩みぬくこともよいでしょう。A軸タイプだとやりすぎると、無意識のうちに経済社会の負のループに巻き込まれるので、そうならないように生活規則を守るようにするわけです。

★つまり、ゲームの3パターンは、キーガン博士の3つのマインドー環境順応型マインド、自己主導型マインド、自己変容型マインドーに相当するのかもしれません。ダブルバインド状態に取り込まれているのに気づかないか、ダブルバインド状態の仕掛けを見破り回避するか悩むか、ダブルバインド状態を解除し解放するクリエイティビティを発揮するか。

★もしこのダブルバインド状態をC軸視点でグローバル市民が議論できるようになると、パンデミック、戦争、気候変動の現代の3大社会課題を解決する域に達するでしょう。

★北岡さんとともに、多くの人が対話をして、C軸タイプ対話を楽しんでください。気づいたときには、ホインジーガーやロジェ・カイヨワの次元に高まっていることでしょう。

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2022年9月24日 (土)

GLICC 広尾校を新規開校する鈴木さんとの対話~2030年を見据えた新しい学校のあり方

昨日21世紀型学びの拠点塾GLICCの代表鈴木裕之さんと対話しました。3連休の初日ですから、今回はゲストをお招きせず、私と2人の対話となりました。受験雑誌「shuTOMO」に記事を寄稿している鈴木さんと私の教育を観るレンズを重ねて、2023年の中学入試における学校選択動向について対話しました。そして、最後に鈴木さんからインパクトある宣言が公表されました。10月10日あたりに、「GLICC広尾校」を新規開校するというのです!時代は、ナショナルカリキュラムからグローバルカリキュラム、そしてユニバーサルカリキュラムへ。その中核は、Thinking in Englishだというビジョンをさらに広めようという鈴木さんのブランドアクショニズムがいよいよ大きく展開します。

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(GLICC Weekly EDU 第96回「2023年中学入試ー学校選択の新しいポイント」

★さて、対話はまず最初に、鈴木さんがshuTOMO11月号の記事を編集するために、取材した5校の話と、続編のために取材最中の幾つかの学校について、語っていただき、そこから、コンパラティブスタディーとして麻布や開成、成城学園、城西大城西、神田女学園、湘南白百合、静岡聖光学院などの話に飛んだりしました。

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★また、対話して、再確認できたのは、私立中高一貫校というのは、すべてトランジション教育型学校であるということがわかりました。そのうえで、コア教育機能がA軸タイプ、B軸タイプ、C軸タイプがあるという確認がとれました。このトランジション教育型学校については、ここのところホンマノオト21で静かに語り始めていることなので、鈴木さんとの対話で、ある手ごたえを感じることができました。鈴木さんありがとうございます。

★C軸タイプ40校(東京の私立中高一貫校)のリストを発表しようと思いましたが、C軸タイプがよくてその他は劣るというような誤解を生みそうなので、今回は取りやめようということになりました。

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★たとえば、内向型人間、外向型人間などタイプに分けたとき、それぞれの特徴の傾向にすぎず、そこに優勝劣敗的発想は持ち込まないことが大事ですが、なかなかそういうメタ認知やエポケー認知が一般化していないので、公表中止と判断したわけです。

★とはいえ、GLICC鈴木さん主宰のGWEに登壇される先生の学校は、みなC軸タイプであることは確かです。どうしても、互いに共感共鳴共振するゲストが集うことになるのは当然です。

★今回話に挙がった鈴木さんが取材された学校あるいは予定になっている学校は、次の通りです。

八雲学園

三田国際学園

工学院

文化学園大学杉並

広尾学園

開智国際

かえつ有明

富士見丘

順天

どんな対話になったのか、詳細は、ぜひ動画をご覧ください。

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2022年9月23日 (金)

麻布学園の広報新戦略 対話型ブランドアクティビズム

★麻布学園が、このパンデミックによって、今までの説明会ができず、「説明会Web公開」という形式で行ってきたが、それでは、やはり麻布の先生方の内面から溢れ出る想いや情熱が伝わらないとおそらく考え、新しい広報戦略を実施したようです。

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(創設者江原素六)

★それは、一家庭15分の進学相談会を行うというものです。すでに7月22日(木)・25日(日)・8月1日(日)・8月7日(土)・9日(月)・21日(土)に開催された模様です。

★一回平均70組以上は来ているでしょうから、当然同校の教師が多数運営したことでしょう。

★進学相談なら、どこの学校でもやっているではないかと言われるかもしれませんが、多くの場合説明会と抱き合わせです。しかも高校の入試相談とは違い、推薦だとか単願だとかの相談ではないのです。

★まるで、学校の面談週間のような感じで行われたのでしょう。

★学内で行われる面談は、とても大切な機会です。それを入学前に行ってしまうというのが、その労力やはかり知れません。

★参加者全体説明会はwebで、個別最適説明会は対面でOne to Oneで。

★麻布のブランドは、たくさん東大もはいりますが、対話です。職員室も生徒で溢れていて対話に満ちています。コロナ禍は制限されたことでしょうが。

★ですから、これは従来型のブランドマーケティングではなく、対話というブランドを体験できるブランドアクティビズムという新しい方法ですね。

★説明会はWEB公開、学内の見学会は人数制限をしたうえで行い、個別最適進学相談会、さらに今年は文化祭も公開します。

★麻布にとって、広報活動は、もちろんマーケティング要素は少ないでしょう。ベルリンフィルが、仲間を迎え入れるときに、楽団員が対話して、いっしょにやっていけるかどうか判断するように、受験生に対してもそのような対話をするところから始めるのではないでしょうか。

★東大にはいればそれでよいなどという姿勢では、この進学相談会は臨めないでしょう。創設者江原素六の気概や精神を受け入れられるかどうかからファーストコンタクトが始まっているのだと思います。

★そして、対話とは何か?その本質を互いに問い深めていく時代へのトリガーになるアクションであるとも思います。

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理事長・校長会の前後で瞬間の対話 芦澤校長、伊藤校長、日野田学園長、寺下校長、小林教頭、そして平方所長

★一般財団法人東京私立中学高等学校協会の理事長・校長会は、14:00~16:30で行われます。コロナ禍ということもあるため、みなギリギリに来るし、多くの理事長・校長は、学校に戻るから、会終了後すぐに三々五々。その合間で、瞬間的に対話する何人かの先生方がいます。

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(芦澤校長。写真は神田女学園中高のサイトから)

★そんな中で、東洋大京北の教頭小林太郎先生にあいました。もう20年以上前にパワーポイントを使ったプレゼンを共につくった思い出話から始まって、いかに同校が大人気校になったかお話を聴けました。この間、ときどきセミナーなどでお会いしてはいましたが、妙に懐かしく、待ち時間5分くらいだったけれど、いろいろご教示いただきました。

★明治学院の伊藤節子校長とは、11支部でいつもお会いしていますが、いつも明治学院の先生方の研究成果をいただき、勉強させてもらっています。今回も伊藤先生のかつての教え子がすばらしい活動を株式会社という形で行っている事例を教えていただきました。勤務校の生徒とともよく議論になるのですが、日本は中小企業が約90%占めていて、法人税だけではなく、所得税や消費税として国が集める税金の60%は、結局中小企業が大企業をさせているから可能です。その税金がなければ、NPOや国際機関を応援する費用、拠出金とか出資金とか助成金などがでないのです。

★とかくSDGsを学ぶと、企業批判の論を展開する文章にぶつかりますが、メリット・デメリット両面を見ながら、メタ認知を稼働させようと。そして利益を上げながら社会貢献をしている企業活動を理解していくという議論が起こるのを見守っているわけです。もちろん、それが根本的な問題を解決するわけでは必ずしもないのですが、それに対し不平不満をぶつけるのではなく、そこもメタ認知で、さらなる問題を見つけていこうよと。問題発見探究アクションが要は大事です。

★伊藤校長からいただいた資料をみて、まさに明治学院はそういう探究活動を伊藤校長が担任の時代から実施していたのだということが伝わってきました。そして、なんといってもその企業は公用語は英語です。さすが明治学院。エドテック系の企業なので、いずれ紹介したいと思っています。伊藤校長とは、年内にGLICC代表鈴木裕之さんが主宰しているYouTube番組GWEに出演して頂けるというので、そこで対話したいと思います。

★また、武蔵野大中高と武蔵野大千代田両校の学園長で、千代田の方の中学校長も兼務されている日野田直彦先生にもお会いしました。そして、千代田の高校の校長の寺下公章先生を紹介していただきました。時代を切り拓く自信と確信に満ちたそれでいて実るほど・・・という謙虚な姿勢で話されていました。お二人の阿吽の呼吸が、新時代の響きを放っていました。互いにカッカと笑顔で別れました。またまたなんらかの戦略があるという雰囲気でした。

★神田女学園の校長芦澤康宏先生にもお会いできました。芦澤先生とは、かえつ有明が、市ヶ谷から今の地に移転して、名称変更、共学化、カリキュラムの大改革を行ったときからの同士です。Honda発見体験学習という今でいう宿泊型のPBLを共に創りました。神田女学園の多言語主義やダブルディプロマなど詳しくは11月のGWEに登壇していただき、対話をすることになりました。

★今回は、最後まで残ってしまい、日本&東京私学教育研究所所長の平方邦行先生と私学の先行き、ビジョン、思考力の深度と質、私学の魂のモチベーション、コミュニティーシップなどについて、対話しながら八王子へと帰途につきました。

★やるべきことは山積だなと中央線の中で思いを巡らしながら。

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理事長・校長会で 近藤会長と麻布の平校長のすてきな問答

★昨日、一般財団法人私立中学高等学校協会の第1回理事長・校長会が、私学の拠点アルカディア市谷(私学会館)で開催されました。年に何度かある協会の総会の1つです。ですから、テーマは、協会の運営面・広報面、私学振興を中心とする私学経営の面、入試の共通の紳士協定や公私の申し渡しの件、各種研修の紹介など多肢に渡ります。

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★特に国や自治体との助成金・補助金などの交渉は、近藤会長と日本中学高等学校連合会の会長の吉田先生をはじめとする役員の先生方が奔走します。東京都教育委員会は公立、知事は私学を所轄するわけですが、何も働きかけをしなくては、1人1台パソコンの補助金などはでないわけです。毎年、様々な私学の補助金枠がきまるのは、協会の役員の方々と都の私学部の方々の協力によるものです。

★この協力を実現するためにも、東京都の私学がこうして一堂に会したり、毎年国際フォーラムで実施する私学展も東京私学全体で行ったりするわけです。

★教育基本法改正で、文部科学省が直接私学に助言指導を行う条文をつくろうとしたとき、私学協会は一致団結して交渉したわけです。今回のガバナンスへのある意味介入も同様に交渉したわけです。近藤会長によるとなんとか初等中等教育段階は阻止できたようですが、大学は文部科学省の所轄ですから、ある意味、私学の分断が起こるかもしれないという懸念があり、今後も引き続き私学の魂・自由を持続可能にする活動を続けていくということです。頭が下がります。

★そのような一連のテーマの話が終了したあと、質疑応答の時間がありました。今まで、ここで質問する校長は極めてまれだったのですが、今回は麻布の平校長が質問をしました。質問というより提案あるいはお願い。。。微妙ですが、とにかく受験市場では御三家と言われるている学校が、会員として協会に属しているけれど、積極的に参加する姿勢というイメージはなかったので、驚きました。

★しかし、ハタと気づいたのは、私自身が「受験市場」側に随分いたので、そういうレンスでみていたのだと。私学が主導する「入試市場」において、つまり協会というレンズで見ると、そこに御三家なという分類はないわけです。偏狭なレンズをまた壊すきっかができたわけです。感謝です。

★平先生は、コロナ禍における説明会のありかたにおいて、どうしてもWebだったり、対面といってもポスターセッション型になって、1人ひとりと対話する対面型ができなかった。しかし、来年からは再び、入試相談型の対面スペースに戻して欲しいと。

★そして、次が平校長らしいのですが、その理由を具体的実践例を挙げて根拠づけたのです。麻布学園は、7月・8月に何度か、1組15分で入試相談をする機会を設定したら、保護者は満を持して待ってましたとばかり、たくさん申し込んでいただいた。私たちだけではなく、受験生・保護者も同じ想いのはずという仮説を立てていました。

★それに対して、近藤会長がこう回答されました。私たちも同じ想いですと。ただ、運営するにあたり、やはり具体的状況を見通し、経済状況も考え(ここの具体的な話は極めて重要であるため、具体的にはここでは言えません)計画を練っていくという趣旨であったのは、少し驚きました。

★というのは、近藤先生の場合、決断がはやいですから、明快に来年はそうしますと言い切るかと思っていたのにそうではなかったからです。慎重に大所高所から検討するというような言い方です。それ自体は明快でしたが、近藤先生がそのように言う時には、たいていの場合、従来と同じことを再び行うのではなく、どうせやるならもう一味加えるという意味を含むのです。

★平校長の自分の学校のケースから普遍化する話と、近藤会長の普遍から個別化する方向性が、一致というより化学反応を起こし、来年度のさらなるアップデートが予想されるやりとりが、実に興味深かったのです。そんな秋の始りでした。

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トランジション教育型学校(7)コア教育機能のクオリティC軸 と 3タイプの割合

★TQschoolの教育機能のうち、コア教育機能のクオリティを思考コードを参照基準としてみているわけであるが、東京の私立中高一貫校179校のA軸タイプ、B軸タイプ、C軸タイプの分布を調べてみた。独断と偏見の振り分けであるが、傾向は見えると思う。

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(A軸タイプは、学びの広さ深さがA1~A3の範囲で濃淡がある。B軸タイプは、A1~A3、B1~B3の範囲の濃淡がある。C軸タイプは、A1~A3,B1~B3、C1~C3の範囲で濃淡がある。たとえば、C軸タイプで、A1~C3まですべてカバーしているところもあれば、B1・B2・C1・C2の範囲に限定されてるところもある。)

★東京私立中高一貫校の中に、「受験指導型学校」は当然ながらない。なぜなら、バッファー教育機能である体験プログラムは程度の差こそあれどこも充実しているからである。また、先進的教育環境もなんらかの先進的環境をセッティングもしているからである。

★したがって、内容の違いはあるが、構造的違いはない。すると、やはり、コア教育機能の3つのタイプは学校の特徴を鮮明に表す。のはずだが、ここの分析は、受験情報シンクタンクでも教育関連シンクタンクでもまだなされていない。

★さて、C軸タイプだが、イメージ図は次のようになる。

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★コア探究型体験プロ五グラムとほぼすべての教科授業がつながっていて、知の循環が起こっている。あるいは化学反応が起きている学校である。

★このタイプは、探究か教科かという形の違いはあるが、T字型とQ字型の学びがどちらの授業でも行われているため、つながるし、それを学校が意識して、学校として取り組んでいる。

★もし教科授業までPBL型授業を貫徹させているとしたら、思考コードA1~C3までのすべての領域を教科と探究型体験プログラム循環の中で行えている。スーパーハイスペックの深い学びが行われていると言えるだろう。

★しかし、教科授業はPBLスタイルでなくても、問答型でも、C軸対応は可能である。ただし、そのときは、A1~C3まですべてをカバーしているわけではない。だから、タイプに分けたが、そこに3つのレベルでさらに分析をするとクオリティの差異がもっとはっきりする。が、そんな分析は、各学校のフィールドワークをする大規模なリサーチが必要で、現状それは不可能である。インターネットで収集できる情報では、ざっくり3タイプにわけるところまでである。

★なお、クオリティといっても、高い低いではなく、どの質感を好むかというだけであって、そこは価値自由である。本日のGWEで、C軸タイプ40校については、ご報告したい。クオリティのランキングなどはないが、C軸タイプのTQschool(トランジション教育型学校)の中に、2030年問題を乗り越える未来型学校がある確率が高いからである。

★C軸タイプの学校は、進路指導が東大ピラミッド型ではなく、国内外大学開放型であるということもいえる。

★なお、勤務校聖パウリ学園は、中学は設置していないが、C軸タイプである。ただし、現状は、A1~C3すべてをカバーはしていない。もちろん目指してはいるが。

 

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2022年9月22日 (木)

トランジション教育型学校(6)コア教育機能のクオリティ B軸

★コア教育機能のクオリティが、B軸タイプというのは、コア探究型体験と幾つかの教科授業が循環している段階に進んでいることを示す。教科授業で思考コードのB軸がレベル3まで到達すると、コア探究型体験と教科授業を結び付けようとしなくても、自ずと循環し始める。

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★もちろん、コア探究型体験プログラムも見学型体験だけではなく、自ら新しいつながりを見出す調べ学習から検証エビデンスを見出す広がりというか深さに移行する問いを自ら発見し、その新たな問いを調べるというより検証する段階がB3レベル。

★問題解決のアイデアに到る一歩手前だが、問題解決のアイデアが生まれる前の地道な探究がなされることは大学など研究機関に進むとき、あるいは経済学・経営学におけるマーケティングに進むときの基盤づくりになる。

★A軸は、いわゆる受験学力=基礎学力の基盤づくり。

★B軸は、研究に必要な意味でのリサーチや仮説検証の基盤づくり、研究の足場づくり。研究の基盤作りは、大学に行ってからでよい。というか、時間的にはそこに行き着く生徒は少なく、総合型選抜も研究の資質能力という素養があれば十分だろう。

★では、C軸は?次回考察しよう。

★なお、コア教育機能がB軸レべるになると、バッファー教育機能とのシナジー効果が生まれ始めるため、海外大学進学準備は、一部の生徒だけではなく、学内全体に国内外の進学準備の射程が共有されるようになる。

★もし先進的教育環境に、海外大学とのAP連携や海外の高校とダブルディプロマの連携が可能なものになっているとしたら、国内外両方の進学準備は、学校の取り組みとして明快に表現されたことになる。この先進的環境を導入できるのは、実はコア教育機能がB軸タイプに進化していなくてはならないのだが、最近では、このような先進的教育環境が最初にできて、A軸タイプがB軸タイプに進化するというケースもある。

★環境から整備される場合は、経営的判断が必要だが、コア教育機能のB軸進化が優先すると、現場力のパワーアップがすさまじく、実は先進的教育環境のグローバルキャリアプログラムが自前でできるコンパクトスクールになる可能である。

★この段階だと、海外大学の世界大学ランキング100位から250位だと特に外部団体や塾に頼らず、道が開ける。これでも、十分ハイスペックな学びなのだが、日本は、なぜか世界大学ランキング10位くらいにはいる学びでないとハイスペックな学びでないと幻想を抱いている自虐性があって学校当局としては困惑するだろう。

★いわゆる日本の御三家は、世界のエスタブリッシュスクールと学校全体としてコミュニケーションができない超優秀な特異点で、世界標準としてモデルにする理由はないが、なぜか国内ではまねたがる私立学校が30%はある。学歴社会製造装置として、そこらへんは社会学がすでに分析しているところである。

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2022年9月20日 (火)

トランジション教育型学校(5)コア教育機能のクオリティ A軸

★コア教育機能は、「コア探究型体験プログラム」と「教科授業」の関係によって、クオリティが決まる。コア探究型体験プログラムが見学型や調べ学習型だと、思考コードでいえば、A軸がメインになる。A3に達すると知識や情報が複雑になったり、新しい結合もあるので、それはそれで深い学びであるが、教科授業と結合しにくい。なぜなら、体験プログラムの知識は、教科知識に比べると詳細度が高くなり、教科を超え、それは個人の博学的関心として尊重されるが、大学入試には関係ないよねとなる。

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★コア教育機能A軸タイプは、バッファー教育機能がなければ、実は受験指導型学校と重なるのである。

★一般選抜と総合型選抜だと、一般選抜を選択する生徒が多くなろうだろう。

★バッファー教育機能は、有志や希望者が、A軸もB軸もC軸も思考コードの領域を広めレベルも1から3に深めていくから、そのタイプの生徒は総合型選抜を選択する。

★ただ、このA軸タイプの場合、学校全体としては一般選抜を推奨する。総合型選抜を選択する生徒の多くは、外部の団体に総合型選抜対策を依頼することになる。

★総合型選抜対策塾がたくさん誕生してくる現状は、TQschoolという意匠は出来ているが、コア教育機能がA軸タイプである学校がまだまだ多いということを反映している。

★これを過渡期とみるか、結局は、このようなA軸タイプの学校は、総合型選抜の塾と連携するほうが、はやいとみるか、それは経営判断であり、どちらが正解ということはまったくないが、きちんとそのような判断をしていることを学内で共有しないと、連携はとん挫することが多い。

★なお、バッファー教育機能があれば、学校全体で取り組まなくても、海外大学進学準備は、特定の生徒に対して学校が独自に取り組むことができる。その点は、バッファー教育機能を意識的にデザインしていない受験指導型学校とは違うところである。

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2022年9月19日 (月)

トランジション教育型学校(4)Thinking Seedsの構造

★探究型体験プログラムは、たしかに体験を重視している。体験を1人行うとしても仲間と行うとしても、複眼的インテリジェンスを活用するし、自然や動植物、もちろん他者に対する気遣いが必要になる。最近の言葉でいえば、認知能力と非認知能力の両方が協奏するわけである。

【Thinking Seedsの構造イメージ】

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(→の価値が重要である。ここで多様な問いが生まれるのである)

★ポイントは、このとき思考が生まれるわけであるが、思考はどんなサイクルを生み出すのだろうか?サイクルを生むことによって、あるいはトルネードを生むことによって、多様な知識を巻き込んでいく。上記のような図は、勤務校で教師も生徒も共有しているモデル。いくつかあるのだが、説明会の校長の最初の5分間スピーチでは、これを活用する。

★この図のことを詳しく話すと、時間がいくらあっても足りないけれど、イメージとして提示して、それぞれの要素の具体的なケースを先生方や生徒が語っていく。あくまでこの図は、Tinking Seedsの内的構造のイメージに過ぎない。

★しかし、私は、毎朝行う10分間朝会で、2,3分は、この図のどこかしらを手を変え品を変え、先生方と共有する。どこかしらというのは、最初の7分くらいは、イベントや生徒のことなどの情報共有がなされるので、その共有された情報に関連するように、上記の図のどこかを少しリフレーミングしてリンクさせることにしている。全体朝会終了するやその場で学年朝会に移行する。最初の10分間の全体朝会の話が、学園に具合的に変換されていく。

★生徒との志望理由書に基づいた面談の時も、上記の図の箇所について一通り問いを投げかける。宗教のワークショップの時も同じである。

★また、先生方と教科授業のデザインについて対話する時も同様である。保護者会、父母の会の委員会でも同様。

★Thinking Seedsが、教師、生徒、保護者の中で発芽し大きな木になっていけば、複眼インテリジェンスと黄金律ベースの心が統合される知の森が、学園に広がる。コンパクトスクールは、最初のカラシダネをどうするか。このシンプルな図についても企画戦略室室長と何度も対話し、複数描いているが、引き算の美学というコンセプトに従って、結局、説明会で使うのは、この図にした。これは正解でも何でもない。いろいろあってよい。

★好奇心→開放的精神→批判的思考→・・・でももちろんよい。しかし、引き算の美学過ぎるので、少し足し算したわけだ。また興味と関心から始まるのもよいが、実際には、体験と発想の間の矢印の過程で、問いが生まれて、思ってもいない興味関心に気づくものなのである。

★気づいたものは、仲間と分かち合いたくなるのが、人間である。対話によって共有すれば、互いのメンタルモデルもわかり、共創するマインドセットが生まれる。そして改めて自分を振り返ると、いろいろな発想が結合し、小さいと言えどもブレークスルー。このサイクルがグルグル回っていくと、ようやく理想と現実のギャップを埋めるビジョンが見えてくる。

★Thinking Seedsが発芽して育っていく環境や機能を生み出すことが学校の役割でもある。こんなことを実践しているうちにきっとTQschoolも生まれてくるのだろう。

★なお、体験とは、森や海という環境で行う「純粋体験」とwebや読書などの「媒介的体験」の両方があるが、大事なのは、どちらにしても人間はその体験を自分の身体脳神経系全体で写像変換して思考したり感じたりするのであって、外界の物質的な違いにこだわる体験論はあまり意味はない。その前提があって、私たちは体験を重視しているのである。

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トランジション教育型学校(3)TQschoolの構成 2つの機能と1つの環境

★TQschool(トランジション教育型学校)の構成のイメージ図は、前回紹介したので、ここでは構成する2つの機能と一つの環境の要素について語りたい。前提として要素分解してその諸関係が化学反応を起こすというイメージをもっていただきたい。要素還元主義とか構成主義とかいろいろ語られているが、その議論は社会学者をリスペクトするとして、現実的には、両者のいいところどりをしたほうがよいだろう。いまだにどちらが正しいのか決着はついていないから、学者でもない私は良識というコモンセンスを基準にしたい。もちろん、それもメタ認知=リフレクションしながらであるが。

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★今年から高校は本格実施の新学習指導要領に移行している。注目されている教育に「探究」というのがある。「総探」とか言われて、時間的制約を建前に、EEschool(受験指導型学校)では、入試問題の演習の時間にあてられたりしているのが現状だろう。それは、教科中心主義的だから、そもそも「探究」という分野が目に入らないだけのことで、EEschoolで、「探究」をやること自体が、学内では矛盾なのだ。2030年問題対応という視野と奥行きの次元では「探究」は当然なのだが、個人的な価値観ではなく、スクールパラダイムという意味での価値観が違うから、それを無視して「探究」を導入してもなかなかうまくいかない。

★「探究」をやるのなら、TQSchoolにパラダイム転換するしかない。条件を無視すれば、数学の難問は解けないことは、受験指導型学校は、よくよく知っているのだから。

★だから、探究ってなんだ?できないよと言っている学校は、自分たちの学校は、受験指導型学校だという前提を確認しているだけのことである。それはそれで寛容に受け入れなければならない。ただ、2030年問題対応というのは、よいのかわるいのかは判断中止するとして、世界の60%以上はスマートシティ化する。マンションの稼働率が下がっても、そこはバーティカル農法にリフレームされる。先進諸国は人口減になるから、都市の70%は自然林や海と接続する。森は、カーボンニュートラルの最高傑作である。ただ、里山の維持の労力が凄まじいがゆえに、それをAIドローンや森林AIインストラクターロボットによって、動植物との共生を図るデジタルネーチャーになっていく。輸送は各スマートシティシェルター内で行われるから、自動運転トラックやドローンによって賄えるようになる。

★シェルター同士は、道路などのインフラの整備には時間がかかるから、しばらく今までの通りだろう。

★生活用品は、3Dプリンターでプロダクトされる。したがって、食料、インフラ、生活用品はスマートシティで自給自足できる。もちろん、閉鎖的ではない。このアイデアをweb3.0の世界で共有できるwell-beingインテリジェンス機能がグローバルに機能する。

★スマートシティでは、車や輸送は、空を飛ぶから、道は人間の健康維持のためのスペースになる。森と海と道。仕事は、ほとんどがオンライン。健康ケアのために、一定時間外で多くの人とコミュニケーションをとる。健康とは、身体と心と人間関係の循環。それから死はいずれ迎えなければならないので、スピリチャリティケアがしっかりする。もはや宗教は文化になり、どの宗教にも共通するスピリチャリティケア(黄金律ベース)が機能的に一般化しているだろう。

★水については、森による名水がこんこんと湧くことになるだろう。「成長には限界があるが、愛には限界がない」という個人とスマートシティの価値観パラダイムが一致するかどうかメタ認知できる複眼的インテリジェンスと感性は、TQschoolが担うことになる。制度設計には、この複眼インテリジェンスが必要。

★その複眼インテリジェンスを生み出す泉が、TQschoolのコア教育機能である。1人も取り残すことがないように、全員があるレベルの探究体験プログラムがデザインされている。そして、そこにつながるようにコースやクラスが設定されている。問題は教科である。教科も必要なのは、スマートシティは、マインドとスキルとナレッジがないと循環をスマートシティー市民全員で自分事にして運営できないからである。

★もちろん、この知識は受験学力知識ではない。それぞれの知識は、分子や原子、陽子などの電子結合の組み換えを行えるような知識である。

★それには、教科も、探究体験型プログラムと結びつくようにデザインされている必要がある。

★そのうえで、バッファー教育機能は、それぞれの才能・技術・寛容という3Tを伸ばす、自分の関心を世界に転移する体験プログラムが山ほど用意されている必要がある。ここの部分は、外部の知と交流する場でもある。

★そして、このような機能=function=関数が成立するためには、先進的教育環境が必要である。ハコモノキャンパスではなく、スマートシティの小さなモデルがそのままキャンパスになっている物質的空間と、多様な世界とコネクトできるコミュニティという精神的な空間の両方があり、それが相乗効果を生み出すようになっている。2030年には、ここはメタバース空間が、その両方の化学変化を引きおこす媒介空間となっているだろう。

★このすべてが完成しているTQschoolは、まだないが、シフトしつつある学校はかなり出現してきた。どこか?それはGLICC代表鈴木裕之さんが主宰しているyoutube番組GWE(GLICC Weekly EDU)に登壇している学校は典型例だろう。

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トランジション教育型学校(2)トランジション教育型学校=TQschoolへ

★トランジション(transition)教育型学校を、別名TQschoolと呼ぶことにする。トランジションは、偏差値という枠内での学力スコアの伸び率も含むが、それ以上に、自分が置かれているシステムや制度、習慣などの枠組をメタ認知することによって改善や次元を変える自己変容を起こすことである。既存システムに対して視野を広げ深層に迫り、問題を発見して責任を引き受けるがゆえにクリティカルシンキングをし、それによって発見されたさらなる実際的な問題を解決するアイデアを出し、行動するクリエイティブシンキングを身に付ける結果、新たな次元に自らを設定する自己変容型知性(self-tranforming mind)を身に付けることである。

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★Tというのは、「━」という視野を広げる共感力を示している記号と「❙」という深堀していく思考力を示している記号を統合したイメージを表現している。Qというのは、「〇」という現状のシステム循環を示している記号と「\」という現状をメタ認知するクリティカルシンキングを示している記号を統合したイメージを表現している。トランジションの過程は、このTとQを組み合わせ、その化学反応としてクリエイティブシンキングが創造的破壊をもたらす道のりである。それゆえ、トランジション型教育学校は、別名TQschoolなのである。

★一方で受験指導型学校は、Entrance Exams SchoolとしてEEschoolとしておこう。

★このシリーズでは、教育機能において部活と行事を括弧にいれると前述したが、それはもし括弧に入れないと、EEschoolとTQschoolの差異が覆い隠されるからだ。部活や行事は両方の学校で行っている共通部分で、ここは感情的に感動を生む場所であるが、その感動の質の違いは、見えてこない。結局、オープンスクールなどで体験して、感動してしまえば引き込まれる。すべての学校のオープンスクールを体験し、比較して選択することは困難である。

★私は、部活も行事も昨今のメディアなどが取り上げているような否定はしていない。やりようによって、いくらでも自己変容を起こす環境にできる。実際、多くの現場では創意工夫をしている。

★だから、部活や行事で学校選択をするのは難しい。ただし、従来型のEEshoolの教育は、実は受験指導中心であるから、そこでは偏差値や大学合格実績の違いしか見えないため、学校の付加価値として部活と行事でしか判断できないのである。この選択は従来はよかったと思う。というよりそうならざるを得なかった。ただ、実際には、受援指導と部活や行事のそれぞれが偏差値や大会やコンクールで勝ち負けスコアで選ぶことになり、人口成長論やGDP成長論のベースになった優勝劣敗論教育がベースにあることは否めない。

★2030年問題対応とは、新しい成長論へのパラダイムシフトができるかどうかなのである。ドネラ・メドウズがいうように、化石燃料を燃やし続け欲望の消費経済の生活パラダイムには限界があるが、愛には限界がない。愛とはもちろん、一定の学力エリートだけではなく、誰一人取り残すことのないwell-beingを生み出すことである。

★すべての人のそれぞれの才能(talent)を開花し、すべての人が技術(technology)を共有し、すべての人が互いに寛容(tolerance)である世界を創ることなのだ。TQschoolのTは、この3Tも含んでいる。一方で、EEschoolは学歴社会という優勝劣敗の象徴的システムの結節点の1点である。一部の学力エリートの才能と彼らのハイテクノロジーを育成し、優勝劣敗という明治維新以来教育の根幹に据えてきた不寛容教育を継承してきた。

★文科省も経産省もそれに気づき、自己省察を進めてはいる。たしかに、EEschoolのEEをエコとICTという道具で置換えようというイノベーションを進めている。それはそれで、頑張って欲しいが、2030年問題対応に間に合うかどうかは予測不能だ。

★それゆえ、私立学校の中には、2011年の3・11の反省と省察と洞察からTQschoolにパラダイムシフトする学校が生まれ、今もまだまだ少ないが、毎年チャレンジする私立学校が生まれていることは確かだし、それは従来の成長論の限界が来てしまったのだから、当然の動きなのである。グレートリセットという言葉をダボス会議でも昨年使っているが、もともとは21世紀が始まるや、リチャード・フロリダ博士が、クリエイティブクラス論を展開したときに生み出した言葉である。このクリエイティブクラス論については、優勝劣敗をアップデートするデジタルネイチャーやデジタルアートで活躍している落合陽一さんも見直している。

★「落合陽一」という記号は、実は優勝劣敗論からは遠い経験をして今のポジショニングを自ら得ているところが、EEschoolではなく、TQschoolのシンボルだと思っている。

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2022年9月18日 (日)

トランジション教育型学校(1)2030年問題に対応する学校へシフト

★2030年には、日本の経済はどん底になるとか、SDGsは達成されず気候変動は予測不能状態になるとか、核の恐怖は止められないとか、いろいろ予測がされている。予測不能なVUCAの時代だと21世紀にはいるあたりからいわれてきたが、最初は軍事用語だったから地政学的な話だった。ところが、リーマンショックあたりから、地経学的な話になって、経済分野でも使わるようになった。もともと50年前に、2030年問題について警鐘を鳴らした「成長の限界」が出版されていたから、持続可能性という言葉が同時に生まれ、紆余曲折しながら2015年にSDGsと結実した。啓蒙書やビジネス書の不安を煽るレベルのものが多い中、「成長の限界」以来、科学的な態度で警鐘を鳴らし続けたドネラ・メドウズ(2002年逝去)博士の意志も、継承され、新学習指導要領で探究やプロジェクト学習でその方法論は広まっている。思想が継承されているかどうかは明らかではないが。

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★2030年問題とは、SDGsの17のグローバルゴールに整理されているが、健康クライシス、戦争クライシス、気候変動クライシスを地政学的、地経学的、地叡学的の3側面からどうクリアしていくかと集約できる。地政学とはその背景に軍事力リスクの回避問題があり、地政学は経済リスクの回避問題があり、地叡学は教育リスクの回避問題が横たわっている。

★したがって、その地叡学の一翼を担う幼小中高教育は、2030年問題に対応する教育機能を再編集・脱構築が迫られている。当然大学も変わるわけである。2030年を超えると、各学年の人口は80万人時代に突入し、急激に減少していく。

★人口論的経済成長論から、新しい成長論にシフトする動きがすでに生まれているが、それが本流として流れ出すだろう。

★ドネラは、「成長には限界があるが、愛に限界はない」という言葉を残している。これは倫理条項として理解するのもよいが、メンタルモデルの変更を示唆していると了解したほうがよいだろう。トラウマ型メンタルモデルからの解放はいかにしたら可能かということでもあろう。ICTの普及により、生産手段の個人化が加速している。スマホとノートパソコンという生産手段でサバイブできる時代である。その生産手段を活用する倫理や法に「成長には限界があるが、愛に限界はない」というルール事項を加える制度設計も悪くないが、個人の価値観としての内在的なパラダイムを変えようよと言う話にした方がリスク回避の可能性は増大するはずだ。教育の重要性は、ここにこそある。

★もちろん、そこにはパノプティコンからシノプティコンにシフトする忍び寄る権力の分散化によるコントロールが潜むことになるというのは、法哲学では今や常識であるが、それをweb3.0では、警戒できるのではないかと。落合陽一さんや伊藤穰一さんにがんばってもらいたいところだ。とはいえ、それは予測不能だ。やはりVUCAであることに変わりはない。そんなとき、個人の価値観パラダイムチェンジができていれば、そしてクリティカル&クリエイティブシンキングが出来るようになっていれば、なんとかなるのではないかというポジティブな希望がある。

★甘いとかいう方に限って、変えるアクションがないので、そういう方には、絶望を選びますかと宿題を出しておこう。

★さて、枕が長くなったが、2030年問題が念頭になかった従来の受験指導型学校は、部活と行事を括弧に入れれば、上記の図のように、教科指導中心機能しか残らない。実は中心的教育機能は塾と同構造だったのである。オンライン時代、よいかわるいかどうかは別として、だったら学校の意義は何かと問われ始めている本当の理由はそこにあった。それをパンデミックは露にしたのだ。今文部科学省は、その矛盾を払拭するために、日本型教育とか日本型ギフテッド教育とか議論し始めているのも、根底にはそれがある。

★これに対して、2030年問題を念頭に置いたトランジション教育型学校は、部活と行事を括弧に入れても、「コア教育機能」「バッファー教育機能」「先進的教育環境」が残るというか、生成されているのだ。部活と行事をなぜカッコに入れるのか?2030年に向けて、働き方改革や働きがい改革が進み、地経学的には、スマートシティー化が世界の60%以上を覆うようになったとき、スマートスクールやコンパクトスクールが主流になるからだ。そのときの学校の教育機能は、トランジション教育型学校機能にならざるを得ない。

★というわけで、Z世代、α世代をお持ちのご家庭は、「受験指導型学校」を選ぶのか、「トランジション教育型学校」を選ぶのか、2030年は遠くの話ではない。選択は私事の自己決定で自由ではあるが、おっせかいではあるとしりつつも、私立学校研究家として、現場の教員として、外部から、そして内部から教育にかかわる珍しい体験をしてきた私だから提供できる情報もあると思う。多様な子供たちの内面は、現状のICTによる個別最適化でサポートできる部分はまだまだ少ない。個別最適化のAIバラ色論は要注意である。しかし、受験指導教育機能ではそれすらもできない可能性が大ではないだろうか。よって、進路選択を決める時期である秋に向けて、みなさんといっしょに考えていきたいと思う。

「トランジションと思考コード」は、4月以来、shuTOMOで連載しているので、そちらも参考にしてもらえると幸いである。

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湘南白百合の水尾教頭との対話 可視化層と共感層と暗黙知層の循環

先週金曜日、GWEで湘南白百合の教頭水尾先生と対話しました。水尾先生との対話は、教育の深層に迫る思考が展開されます。同時に広報部長としての実際的・戦略的な話もでてきて、実にスリリングでアクロバティックです。対話の当事者である鈴木さんや私だけではなく、視聴者の方もワクワクすることと思います。

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(GLICC Weekly EDU 第95回「予測不能な未来を乗り越える湘南白百合の生徒ー水尾教頭先生との対話」)

★湘南白百合の任期が右肩上がりなのは、説明会や入試戦略が、多様性や個性を受け入れる共感的なコミュニケーションが恒常化しているからですが、もちろんそれだけではないのです。

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★受験生・保護者が学校説明会などに訪れると、湘南白百合の教育がわかりやすく可視化され、理解がしやすいのです。それは、すでにGWEで何回か水尾先生が話されるときに活用されるスライドや動画、なにより水尾先生のトークでわかります。

★そして、さらに、生徒の声や企画・運営などのプロダクトがたくさん明示されます。豊富な体験学習の具体的なケースも盛りだくさんです。大学合格実績も教育の成果ですが、それだけではなく、そのような日々の学園生活の中での成果の連続がエビデンスとして明示されるわけです。

★受験生や保護者は、この部分で共感共鳴共振するわけです。湘南白百合の学校説明会では、限られた時間ではありますが、氷山モデルという見える部分の一角である可視化層と目で見ることはできないですが、気づきが触発される共感層まで織り込まれています。

★世の中、わかりやすさが求められますが、ともすれば可視化層の事例ケースの羅列で終わることもしばしばです。この場合、説明会に訪れた受験生・保護者がそれぞれ理解をすることが目的で、気に入るかどうかは学校当局は手ごたえはありません。

★一方、共感層まで織り込むと、参加者のどのくらいにまで共感共鳴共振が広がるか手ごたえを感じます。その手ごたえを感じたところをさらにブラッシュアップして次の説明会を行うので、このケースは人気の拡大再生産を生み出します。

★ところが、この共感層が受験生・保護者の内面に気づきや感動を生むには、実は生徒の活動をサポートする教育環境の設計思想が真理を目指していなくてはなりません。世の中のトレンドだからでは、中学受験生の保護者の眼はなかなか厳しいわけです。

★水尾先生は、当然そこを了解していることは言うまでもありません。しかしながら、そのすばらしい教育プログラムの背景について語る機会は、受験業界ではなかなかありません。そこでGWEでは、この普段は語られ得ない背景部分である「暗黙知層」を語る機会にしてみようということになったのです。

★鈴木さんと私にとってはチャレンジなのですが、水尾先生にとっては日常なので、なんなく対話は深く展開していきました。

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★その深い水尾先生のお話を、ここでまとめるには、私は能力不足です。ですから、ぜひご視聴ください。湘南白百合の生徒のみなさんが、いかに世の人々の無関心を行動へひっくり返し、恐れを希望に導き、分断を統一にシフトしていく資質・能力を豊かにしていくかということに共感共鳴共振できると思います。

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オープンスクール 聖パウロ学園 生徒と共に創る新しい風

★昨日、聖パウロ学園高等学校は、オープンスクールを開催しました。8月に行う予定でしたが、東京の感染数が激増した時期であり、それ以上に八王子市の拡大がすさまじく、3年ぶりの八王子祭りも中止になるぐらいでしたから、実施を断念。昨日に延期しました。たくさんのお申し込みをいただいたにもかかわらず、ご迷惑をおかけしました。

★にもかかわらず、本日多くの方が再度申し込みをしてくださり、心から感謝申し上げます。

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★オンライン説明会も考えましたが、体験を大切にする思考型授業と思いやり(黄金律)を一体化したパウロの教育を体験していただくには、リアルスペースでおもてなししたかったのです。

★今パウロは、生徒の主体的な行動力がコンセプトです。授業も行事も部活も説明会も生徒がパワフルにクリエイティブに活躍します。

★デモンストレーション動画も生徒が作ってくれます。自由意志という意味でのボランティア精神はスクールモットーです。そして、それを行動にシフトするために、作戦やシナリオを生徒は考え、対話し、改善し、実行していきます。

★毎日、ランチタイムは、なにかしらのプロジェクトチームがお昼を早めに切り上げ、会議室にきて、コンヴィヴィアルに対話しています。

★この時期は、文化祭や大学入試準備、3年生の引退試合を行う部活など、ブッキングが重なります。そこをやりくりして、生徒たちは勉強もしながら学園生活を送っています。クリエイティブテンションの雰囲気があふれでています。

★そんな中、生徒募集も、後輩を迎える準備だからとパウロの魅力をスピーチするリハをやったり、スライドをつくってシナリオを描いたり、受験生・保護者をもてなすアシストをしたり、30分のミニ体験授業を行う教師のアシスタントを担ってくれます。ときにはチームティーチングよろしく動いてくれる生徒もいます。

★前日は、会場設営なども生徒たちはかいがいしく行ってくれます。同時にリハもなされるわけですが、設営会場に一堂に会した教師と生徒が共に運営準備しているバックヤードの様子をみて、明日はうまくいくと確信を抱く「栄光の瞬間」でもあります。

★毎日の生徒たちの多様な体験のプロセスの交差が波打って、新しい風が吹いています。

★本番当日、自分たちがスピーチする出番を待っている生徒たちが、スピーチを終えてバックステージに戻って来るや、校長よかったよと声をかけてくれます。「生徒がいいからな」と思わず反応。ここはありがとうだろうと自分に問いながらも、いいねサインを交わしています。リフレクションする間もなく、説明会はどんどん進みます。

★彼らの出番は、オーディエンス側で聴きます。リハ以上に、感情をこめていますが、静かな情熱で語る生徒たち。ジェスチャーだけではなく、真理を語ろうと、昨晩も何度も自宅で練習していたとういのがわかります。スピーチ終了後会場から一斉に拍手が。もちろん私も。生徒たちとは、リハをいっしょにやっている(私は同席しているだけですが)ので、完全に対等なスタッフ同士の関係になっているのが心地よいですね。

★もちろん、指定校推薦などの面接のときは、生徒はスイッチの切り替えをして、別人です。生徒の表情は実に豊かです。

★それにしても、この生徒が主体的になる環境をセットする先生方は、すさまじいマルチプレイヤーです。そのことを生徒もちゃんとわかっていて、説明会で自分たちの先生を誇らしいと語るわけです。説得力あります。信頼の絆があることに参加された受験生・保護者は共感ししてくれます。

★先生方も、オープン・スクールの企画運営のために膨大な時間を使っています。同時にミニ思考型授業体験のプログラムもつくりながらです。PBL20%ルールやICTなどの学習ツール使用などのいつもの授業づくりの必須条件は共有しつつもオリジナリティを出そうとぎりぎりまで考えるし、語り合っています。50分の授業のエッセンスを30分でいかにデザインするか。

★小規模校です。リソースはパウロの森ぐらいで、あとは極めてコンパクトです。ですから、先生方は制約の中で創意工夫するイノベーターです。イノベーターは、すれ違いの隙間の時間で、よく意見交換しています。なぜか廊下が広いキャンパスなので、午前の体験授業終了後、生徒や保護者の反応の意見交換と午後への微調整への瞬間対話が行われています。

★なぜ瞬間かというと、個別相談に走る教師とスクールバスに受験生保護者を同伴する教師とにすぐに分かれるからです。野球部や馬術部は試合に出かけているので、専任の教員は総出で16人です。そのうち私は役に立たないので、15人で運営するわけです。10人の生徒が応援してくれなければできません。共に創るオープンスクールです。教師が生徒に指示して行っていたのでは、この手のイベントは無理です。生徒が主体的であるのが日常であるのは当然なのです。

★そして、それを超えて、むしろ阿吽の呼吸が生まれています。この息吹が新しい風となっています。

★生徒が語るパウロの魅力のシーンで、部活や行事について語るとき生き生きしています。しかし、驚いたことに、探究の授業のプロセスや教科の授業のプロセスにディスカッションや対話が埋め込まれていることの意義についてまで語るのです。

★もちろん、放課後、3つのしこたま勉強する時間の重要性も語るのです。どんな体験を通して自分は変わったのか、ビジョンを見据えられるのか、その体験の中に、学びの過程についても語る見識者である生徒たち。

★そのあと、ミニ体験授業です。生徒が語る通りの授業が各教室で展開されています。アシスタントの生徒もいつものように大いに楽しみながら深く考えていくプロセスを参加した受験生にファシリテートしていくわけです。

★もう私は、PBLの学習理論の講釈を垂れる必要はないのです。先生方が実践し、生徒自身がその授業を正しく認識しているからです。

★オープンスクールを迎えるまで入試広報部長伊東先生と何度も校長挨拶のスライドの創造的破壊をしてました。「校長、最後に生徒が教頭と対話しながらパウロの魅力を具体的に表現するのですから、できるだけ、抽象的にわかりやすく5分で」というわけです。めちゃくちゃシンプルになりました。しかし、実際に話してみて、まだ一枚カットできるなとリフレクション。例のジョブスの牛の絵のコンセプトを共有しながら引き算の美学を行うのはワクワクします。

★オープンスクールは、語り部が話していくうちに末広がりになって、最後は体験というわかりやすいけれど、生徒が学びの本質を語るトリガーを5分でというわけです。

★広報部長は、すべてのスライドを集め、ダブりがないように、でも強調したいところはリマインダー風に言葉を重ねていくという分解と統合という編集をしていきました。もちろん、そのつどわたくしと同様に担当の教師と対話を繰り返しています。

★氷山モデルは、教師も生徒も共有しています。校長の話は、見える氷山の一角から話すから話が長くなるというのです。目に見えない根底を単純に可視化してトピック化してあとはそれぞれの役割の演者が具体化すればよいという発想ですね。なるほど、伊東先生は数学科の教諭でもありました。

★多様な体験プログラムの背景にある根源的共通性をさりげなくいう。哲学的にではなくお願いしますと(笑)。

★哲学的な深層の話は大好きな先生方ですが、それと明示化は別なのだと。

★午前午後2回行ったので、午前のリアリスティックリフレクションをしながら、主幹の大久保先生が、ここを変えますよと入試広報部部長の伊東先生と交渉しているのもすてきです。生徒もステージのライトの調整をアシスト。パウロ祭の生徒による主体的運営がこういうところにも生きているなあと。変化を楽しむことのできる教師。防衛機制を解除する対話の瞬間。これもまた「栄光の瞬間」です。

★アンケートの評価は、先生方や生徒が創意工夫して昨年とは変えた点に集中し、そこを高く評価してくれていました。アンケートは9クラスのミニ思考型体験授業終了後とりますから、教師は収集しながら、「瞬時に」保護者のメッセージを浴びるわけです。それがまた教師間で対話のトリガーになります。

★からしだねの木は、あちらこちらで大きく育ち、新しい風に吹かれ共鳴音を奏でています。

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2022年9月15日 (木)

世界の情報や知性を入手できるサイト Strategic Intelligence

★世界経済フォーラムは、戦略的インテリジェンス(Strategic Intelligence)のプラットフォームを公開しています。経済、産業、グローバルな問題において変革を促す複雑な力を理解するために、戦略的インテリジェンス機能を開発しています。どんどん更新されていく情報どうしの関係がダイナミックなトランスフォーメーション・マップで表現されています。

 

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 ★デジタル・メンバーシップ・コミュニティに参加すると、高度な機能やバーチャル・イベントにアクセスすることができます。無料のものもあれば、やはり有料のものもあります。有料でなくても、新たなトレンドを知るきっかけになります。私のように英語が出来なくても、deepL翻訳で日本語に変換しながらサーチしていくことができます。

★英語が堪能な人は独自のトランスフォーメーション・マップの作成、プレゼンテーションやアウトリーチを促進するダイナミックなPDFブリーフィングのエクスポート、一部のバーチャル・フォーラム・イベントへの参加など、さまざまな機能を利用できるのです。

★英語版のウィキペディアによると、戦略的知性の特徴は、マイケル・マコービー(組織心理学者で人類学者のようです)によると、次のようになるそうです。

・foresight, the ability to understand trends that present threats or opportunities for an organization;
・visioning, the ability to conceptualize an ideal future state based on foresight and create a process to engage others to implement it;
・system thinking, the ability to perceive, synthesize, and integrate elements that function as a whole to achieve a common purpose.
・motivating, the ability to motivate different people to work together to implement a vision. Understanding what motivates people is based upon another ability, personality intelligence.
・partnering, the ability to develop strategic alliances with individuals, groups and organizations. This quality also depends on personality intelligence. 

★システム思考は、ドネラ・メドウズのとは違うけれど、分解と統合をする思考スキルがはいっているところは、共通ですね。

★地球市民システム思考と戦略的システム思考の違いがわかって、これはこれでおもしろいですね。

★SDGsや探究のとき、自分の問いを超えた問いがあるかもしれないと謙虚にサーチするのにはなかなか良いプラットフォームです。

 

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2022年9月14日 (水)

UN SDGs キャンペーン SGDsを広めるアクションを起こすためのグローバルウィーク16日から その日湘南白百合の水尾先生と対話します。

★16日キックオフ!UNSDGs キャンペーンのGlobal Weekが始まります。自然環境に対するネガティブな考え方や価値観をひっくり返すのが目的。毎年この時期に開催されています。昨年は登録アクション件数は1億。今年はこれを超えようということらしいです。このような自然環境を守るために私たちでできることリストは、ドネラ・メドウズが活躍していたときもありました。ドネラは、50年前に「成長の限界」のレポートをまとめた中心人物です。

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★つまり、SDGsにつながる今でいう気候変動を生み出すことになる人間の活動全般を明らかにし、警鐘をならしたのです。このまま人口も顧みず、自然も守らず、無限の欲望を生み出し、資源や資産における正義を実行しなければ、2030年には地球は壊滅的になると。

★SDGsが2030年に達成年度を設定しているのは、ドネラの影響だといえないこともないでしょう。

★この悪循環をなんとか“Flip apathy into action, fear into hope, division into unity. ”というように好循環にひっくり返したいのです。

★そんな思いを16日からUNは行っていくわけですが、その日、GWEでは湘南白百合の教頭水尾先生と対話します。

★ドネラはいいます。たしかに身近なことからはじめることは大切だし、もし1人ひとり50個くらいアクションを起こしたら、少しはなんとかなるかもしれないが、地球全体ではそう簡単に好転しない。

★もっと根本的なところから考え、アクションを起こさないとと。

★このドネラの発想とシンクロしているのが、湘南白百合の生徒の取り組みです。

★今回は、水尾先生と対話する方向性は、生徒自身がすぐに直面する2030年問題をどう捉え、どう解決しようとしているのか、その学びと探究についてです。

★湘南白百合の学びや探究が、2030年問題を解決する地球規模の視野に結びついていることが明らかになるでしょう。湘南白百合と共に、2030年は、そのような教育の成果の年にしたいものです。

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2022年9月13日 (火)

サレジアン国際学園世田谷(了)広報部長の本当の役割 学内コンサルタント

最後は、広報部長の吉見先生から、入試要項関係の話がありました。2科4科入試以外に、英語筆記・エッセイの入試や21世紀型入試という思考力入試など新タイプ入試も用意されていることについて説明されました。

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★この入試要項というアドミッションポリシーを企画編集運営していくのは、広報部長のミッションの1つですが、学校が新しい動きをしようというときに、優れた広報部長が行うことは学内コンサルです。吉見先生は、オンラインでこれだけ多くの参加者が対話するコーディネートをしています。

★さりげないけれど、自然体でできるというのは、なかなかの達人なのです。新しい動きをするとき、学内コンサルタントの役割をする教師がいる学校は伸びます。それは実際にそうだったという局面に何度も立ち会っているので、経験上想像がつくのです。

★学内コンサルタントとは、新しい動きと学校が接続しようという時、外部環境や外部団体をそのまま受け入れるのではなく、学校の具体的状況に適合できるようにコーディネートします。学内で戸惑い、外部には、内部状況をそれほど理解もせずに、どかどかと入り込んで来るケースもあります。その学内外の調整をして、取捨選択と集中をコーディネート(座標配置)していくのです。

★その学内コンサルタントが教務部長などの場合は、生徒募集にはストレートには響きません。学内充実はできますが、学外への発信はなかなか難しいのです。

★その役割を広報部長が担う時、学内充実と外部とのネットワークを結合でき、ケミストリーが起こります。

★たとえば、GLICC代表鈴木さんと今回の番組を作成するにあたり、吉見先生は何度もやりとりをしています。GLICCは、桜新町にポツンとある一見小さな21世紀型教育推進塾です。小さいけれど、オンラインで地球規模で受験生と結びついている塾でもあります。

★そこを見抜く共感度が高いのは、広報部長であり学内コンサルタントでもあるという証です。

★実際、鈴木さんは、帰国生・国際生入試のキーパーソンです。首都圏模試センターの帰国生・国際生入試の情報コメンテーターでもあります。発信影響力はすさまじいわけです。中学入試の帰国生・国際入試では、三田国際、広尾、かえつ有明をはじめ、注目されている学校にどんと合格者を輩出しています。大学の帰国生入試では、東京大学、一橋大学、早稲田、慶應、上智などの合格者を毎年輩出しています。

★中学入試の新タイプ入試活用の合格者ももちろん輩出しています。

★湘南白百合の教頭であり広報部長である水尾先生、成城学園の広報部長である青柳先生も、吉見先生同様、女性であり、21世紀型教育をはじめとする新しい動きと伝統をコーディネートして、生徒獲得に成功を収めていますが、外部との結合を調整して学内に適用するコンサルスキルが凄いですね。吉見先生も同じ雰囲気を感じました。

★新しい動きを生み出すとき、不平不満は学内外両方から出るものです。ですが、それに同調せず、不平不満があるということは、そこにチャンスがあると見抜き、それを改善するイノベーションを起こそうとするのが優れた広報部長です。

★よくうちはいいことをやっているのだが、広報発信が下手なんだということを聴きます。しかし、ホームページやパンフレットなどはとても素敵なのです。一体何が下手なのか?それは道具の問題ではなかったのです。学内外のネットワークの広がりを共感的に形成できるかどうか、そのコーディネート力を有した学内コンサルタントの存在の有無にかかっていたのです。

★巻き込み力が半端ないというとわかりやすいでしょうか。

★仕事柄、多くの外部の方々と対話をする機会を得ています。大手広告代理店のファシリテーターとしてのコンサルタントは、たいてい女性で、その敏腕コミュニケーション力に感心させられます。そして大手広告代理店は、スポンサーとメディアという外部団体も巻き込んでミーティングを開催します。

★そのときのファシリテーターぶりはとても参考になります。

★吉見先生のファシリテーターぶりも同様でした。

★GWEは、今週は湘南白百合の水尾先生、来週は成城学園の青柳先生と続きます。チーム広報力を有している女性の学内コンサルタントが吉見先生の後続きます。21世紀は女性が輝く時代でもあります。吉見先生、Z世代の希望をありがとうございました。

★吉見先生のコーディネートぶりを見ながら、「真理はあなたがたを自由にする」という言葉が響き渡っていました。

★Youtubeをご覧いただき、未来への希望と勇気を感じていただきたいと思います。

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サレジアン国際学園世田谷(4)本科クラス 探究者たる姿勢で学ぶ姿勢

サレジアン国際学園世田谷の本科クラスについては、本科指導部長の市橋先生が話されました。このVUCAの時代にあって、ハピネス以上のウェルビーイングを自分も社会も達成するには、探究者たる姿勢で学びにそして探究に立ち臨む生徒をという気概を感じることができました。

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★本科クラスであっても、週に英語は8時間で、インターナショナルクラスのネイティブスピーカーの教師と日本人教師がチームティーチングの態勢で実施していくということです。卒業時にはB2(CEFR基準、英検準1級レベル)を目指すというのですから、6年後には、本科クラスもインターナショナルクラスにシフトする予感がする凄まじさです。実際にそのようになっている21世紀型教育校もありますから、夢のような話ではありません。

★また、探究者たる姿勢で学ぶ姿勢を、「ゼミ」という時間を設定して、実現しようという意気込みも感じました。6年後には、総合型選抜という海外大学進学準備に相当するような入試が今以上に拡大しているでしょう。現状私立大学の50%弱が定員割れです。6年後には、18歳人口は激減しますから、総合型選抜のようなスタイルで大学は探究即戦力をリクルートしようとします。

★この「ゼミ」はその動きにストレートにつながっていくでしょう。

★6年後は、「一般選抜」と「総合型選抜・各種推薦型」の入学人数比は、3:7になるでしょう。現状でもすでに5:5ですからVUCAの時代に対応するためには、そのような柔軟で新しい動きがでてくるのは必然ですね。

★もちろん、国公立大学は、現状では8:2くらいですから、7:3くらいにしかならないかもしれません。

★しかし、そうすると、総合型選抜は、海外大学進学準備にも活用できるので、英語がB2レベルだとしたら、国公立ではなく、海外大学進学が一般化する流れがでてきます。今でもその流れはすでにできています。しかも、6年後は、ミネルバ大学のような海外大学が当然出てきます。オンライン環境がメタバースで、今とは全く違った様相を呈しているでしょう。

★それに地政学的には、リスクもありますが、それはどこの国も同じで、相対的に日本は学問をするには安心安全です。海外大学が、日本にやってきます。19世紀末からその動きはありましたが、まだ時は熟していませんでした。ところが、現状はインターナショナルスクールやイギリスの名門パブリックスクールがその前哨戦のように日本に続々上陸しています。

★しかし、学費が年間1000万くらいして、一般市民にはなかなか手が届きません。そこにいくと、サレジアン国際学園世田谷のようにその10分の1の学費で同じあるいはそれ以上のクオリティの学校があれば、そこに生徒が集まるのはこれもまた必然です。

★市橋先生の話に触発されて、イメージが膨らんでしまいました。本科クラスの詳しいシステムについては、Youtubeをぜひご覧ください。

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サレジアン国際学園世田谷(3)インターナショナルクラス オールイングリッシュ授業×世界中の兄弟校

サレジアン国際学園世田谷のインターナショナルクラスについては、インターナショナル指導部長上田先生が話されました。現状、スタンダードとアドバンストの英語の習熟度に合わせて分けていくようです。アドバンストは入学時に英検2級以上というのですから、二つに分けるのは理に適っています。一方、スタンダードは、英語のレベルは問わず、英語で学びたいという意志を重視するというのはポイントです。アドバンストの方は、英語のみならず、数学、理科、社会もオールイングリッシュ授業だというのですか、一条校でありながらインターナショナルスクールが埋め込まれているというのが際立ちます。そして、意志があれば、世界の学びにチャレンジできる機会が開かれているのはサレジアンシスターズらしいコンセプトです。

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★インターナショナルクラスにおける探究は、サレジアン・アカデミック・プログラムというデザインがなされていて、オールイングリッシュで行われます。

★そして、これがグローバルな広がりを持っていると確信がもてるのは、世界中にあるサレジアン姉妹校や兄弟校と国際交流ができるという知のグローバルリソースを修道会を介して活用できるからです。

★これは、多くの学校が、IBのディプロマやカナダやアイルランド、オーストラリアなどの学校と連携してダブルディプロマを取得しようとする想像を絶する交渉と準備をしているのですが、同校はそれをすることなく、したがって即そのレベルのリソースと連携できるということです。目からウロコの驚きでした。

★詳細は、Youtube動画をぜひご覧ください。

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2022年9月12日 (月)

サレジアン国際学園世田谷(2)丁寧にはじめて大きく成長するPBL

サレジアン国際学園世田谷の教務部長村井先生は、“PBL”について話されました。2017年から2019年にかかて改訂された現行の学習指導要領は「主体的・対話的で深い学び」をベースにした授業を求めています。この授業は、現場ではAL(アクティブラーニング)あるいはPBLと呼ばれています。経産省では、未来創りの学校や教育を実現するためにPBLを産・官・学を巻き込んで推進しています。しかしながら、ALにしてもPBLもその内容やシステムは、各学校や教師によって様々です。学内で全教員が行うのか出来る教員が行うのかも学校によってバラバラです。

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★ところが、サレジアン国際学園世田谷は、サレジアンスタンダードともいうべきPBLを教員一丸となって議論や研修を通して形成しているというのですからさすがです。

★もともと、多様なボランティア活動が盛んです。ボランティアとは自由意思で行うプロジェクトですから、すでに「主体的・対話的で深い学び」としてのプロジェクト活動は行われてきたということです。

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★ボランティア活動を通してのプロジェクトというのは、とても大切な伝統です。というのも、PBLは、まずはやってみようというところからスタートするタイプもあります。あるいはいきなりBig Questionからはじまるものもあります。

★いきなり未知の世界に直面するので、それをおもしろいと思う生徒と不安や恐怖を感じる繊細な生徒もいます。

★その点、ボランティアの経験をいかし、最初は丁寧に足場づくり(Scaffolding)から始めるステップになっています。ボランティア活動は、最初は信頼関係をつくるところから丁寧にはじめます。ある程度の情報としての知識を共有することはポイントです。それは共通言語づくりにもなるからです。そのことがサレジアンスタンダードになっていると感じました。

★足場ができればいよいよトリガークエスチョンです。

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★Big Questionですから、足場があることによって、いろいろなアイデアやそれに伴う問いが生まれてきます。その問いの連鎖が多角的なものの見方を生み出し、最終的にはBig questionに行き着くはずです。

★このように、生徒が丁寧な足場づくりからはじめて、大きく成長するサレジアンスタンダードのPBLは、受験学力以上の資質・能力を生み出します。そのことについては、村井先生は、ボランティアというプロジェクトの経験から確信をもっていました。

★また、村井先生のお話に耳を傾けて、学問的にも効果が見込まれる幾つかの学習理論が結合されていると感じました。PBLイノベーションが日々学内の対話から生まれているのでしょう。詳細はGWEのYoutubeをぜひご覧ください。

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2022年9月10日 (土)

サレジアン国際学園世田谷(1)「世界市民力」を育む教育改革の真意

★昨日、GLICC代表鈴木裕之さんが主宰するGWEに、来春から大胆かつ本格的に新しい教育を行っていく「サレジアン国際学園世田谷中学高等学校」の先生方が5人登壇されました。それぞれの役割いや使命が発揮されていて、教育改革プロジェクトチームの良質さが伝わってきました。来年から始める教育改革ですが、すでにその図面は大胆かつ細心の注意が払われています。改革の成功が確信できるプレゼンで、驚嘆しました。

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(GLICC Weekly EDU 第94回「サレジアン国際学園世田谷中学高等学校~未来に羽ばたける力、『世界市民力』をはぐくむ」)

★まずは、教頭小西先生のプレゼンです。修道会サレジアン・シスターズと21世紀型教育の出会いが生み出す化学反応が丁寧に語られました。今までの21世紀型教育推進校と決定的に違うのは、21世紀型教育をこれから作っていこうというのではないということです。

★それは、私たちが、自己開示をしたり自己表現をするとき、鉛筆や絵筆を使っていた時代から、PCやAIを使う時代になったとき、道具を変えるのと同じ感覚なのです。21世紀型教育は主体ではなく、あくまで道具で、主体はサレジアン・シスターズの教育そのものであることに変わりはないのだと感じました。

★PCやZoomなどを活用する時に、その使い方の研修を受けるのとまったく同じように、ツールとしての21世紀型教育を活用するわけです。

★小西先生のお話に耳を傾けながら、ああそうだったんだとドン・ボスコの次の言葉を思い出しました。

「愛情をかけるだけでは足りない。彼らが愛されているということに気づく方法で愛しなさい」

★ドン・ボスコは困窮者に寄り添いながら、愛情を注ぎましたが、注がれている方がその愛情を自覚しなければ自らの内面に希望を灯すことができません。ですから、愛されていることに気づく徴としての方法が必要なのです。

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★今の日本は、マザー・テレサが、来日し、カテドラルで、どんなに豊かであってもあなたがたの心は困窮していると語ったように、心の困窮に接することなく、安心安全な場所に逃げ込んでいるような社会なのかもしれません。学歴が高かろうが、富裕な生活を送ろうとも、もし自分の心の困窮に向かい合わなければたいへんなことになります。

★そんな状態に寄り添い、愛情を注ぐサレジアン・シスターズの教育。パンデミックの負のスパイラル、ロシアのウクライナ侵攻が世界にもたらす負の影響、気候変動による自然災害の中にあって、世の中も柔軟に多角的に、困窮している状況に光を当てる方法を必要としています。そこで、サレジアン・シスターズは、世の困窮に光をあて、愛されているということに気づく方法で愛しようとしているのだと感じました。

★その方法が、20世紀型教育では、時代に合わなくなっているので、21世紀型教育というツール=方法で困窮者や困窮状況に寄り添って、ウェルビーイングにトランスフォームできる世界的市民力を育むという意味の教育改革を断行する意思決定をしたのでしょう。小西先生のお話を傾聴しながらそんなことを感じました。

★サレジアン・シスターズ及びサレジオ会の学校は、カトリック学校の中でも影響力が強いので、本格的に21世紀型教育という方法を活用することは、神の計画として善き影響を与えることになるでしょう。具体的な内容はぜひご視聴いただきたいと思います。

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聖パウロ学園 父母の会委員会での対話ワークショップ 

★本日は、第3回目の父母の会委員会。30人強のお母さんお父さんが役割を担ってくださっています。小規模校ですから、委員の数は少ないのですが、役割を遂行する仕事量は、大小にかかわらず同じですから、多忙でたいへんな役割を担い果たしてくださっています。感謝の気持ちで頭は下がりっぱなしです。

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★前年度から、委員会が始まる前の90分間、父母の会会長のアイデアで、校長との対話の時間を設けていただきました。対話がしやすようにと、12人くらいの人数で、参加者は代わる代わる順番に、毎回行っています。昨年は、私がいただいたテーマに沿って、話をし、質問に回答するという形式でした。ソクラティック・メソッド風にしようかなと思っていたわけです。

★ところが、対話やワークショップは、若手の教師(私以外全員若手です^^)のほうが圧倒的に巧みなので、いっしょにやってくれないかと毎回いろいろな教員に依頼することにしました。二つ返事でOKでした。結局はいっしょにというより、ほとんどやってくれています(汗)。

★前回は、進路指導部部長の小島嵩志先生(国語科)、今回は企画戦略室長の伊東竜先生(入試広報部部長:数学科)。

★前回はミラパタを活用しながら、進路指導の実際をシェアしました。そして、嵩志先生自身の思考型授業(PBL)の写真を見ながら、実際の授業の本質を共有もしました。

★今回は、プレゼンテーション・パターンランゲージ及びハートとスクエアのポストイットを活用しながら、プレゼンテーションがなぜ思考を広げ深めていったり、感情を豊かにしていくのか。モチベーションをアップさせ、小さな達成感を積み上げていけるのか、興味や関心が生まれ、知識を動員しようとするのかなどなど、伊東先生が、実際の授業で行ったり、私と協働ワークショップをしたりしたものを、実際に保護者の方々にも追体験していただきました。

★体験の重要性やプレゼンが多様な機能を生み出し、生徒1人ひとりの才能を構成していくことについて実感していただきました。

★思考実験問題(実際に授業で扱った)をトリガーに実際に個人ワーク、ディスカッション、プレゼンテーションと行っていきました。そして、そのあと、これが実際の大学入試にどう結びつくのか、進路先及び社会に出た後でもどう役に立つのか情報提供を伊東先生といっしょに行いました。

★聖パウロオリジナルの「思考のメタ基礎」や「志望理由書の9つの視点」などいまここで具体的内容は公開できませんが、保護者の方々とはシェアできました。学園の教育と生徒の成長の関係についてご理解いただき、これからもご協力を頂けたら本当に嬉しいです。

★そして、会長に、「動画拝見しました、メタローグですね」と声もかけて頂きました。長時間の動画をご覧いただき、感謝の念に堪えません。

参考)GLICC Weekly EDU 第93回「聖パウロ学園:偏差値では測れない複眼思考型教育~すべての生徒が才能者」 

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2022年9月 8日 (木)

聖パウロ学園~数学的思考と数学問題の解法をいったん分解してみる

★東大の数学の入試問題の解法の中には、見事なまでに数学的思考や数学的センス、発想というものが埋め込まれています。ですが、ルビンの壺よろしく、見えるのは解法です。その背景に数学的思考やセンス、発想があるのは解ける人には当たり前のものとして可視化されていません。暗黙知になっているのでしょう。大学受験勉強だとそれよいのですが、東大に進学するのは、ざっくりいうと、高3生100万人のうち3000人強です。

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(左から伊東先生、松本先生、佐藤先生)

★勤務校は特段東大にこだわっていません。ですから、東大の入試問題の解法に重点があるのではなく、むしろその背景にある数学的思考やセンス、発想に興味があります。今後文理融合になっていったり、地経学的発想の必要性が高まってきたり、AI技術が高まってきます。その時必要なものの1つに数学がありますが、別に東大の数学の解法が必要なわけではありません。

★必要なのは、数学的思考やセンス、発想です。実はここの部分を日本の数学のカリキュラムは一つの単元として取り扱ってきたことはなかったので、可視化されたものがあまりないのです。ここの部分は、文系もちゃんと学べるし、実におもしろいのです。

★勤務校の生徒は文系の生徒が多いので、数学をともすれば授業の評定をとることで終わりがちです。数学は不得意という生徒もいます。しかし、それは数学が不得意なのではなく、数学問題の解法が不得意というか解きぬくモチベーションがないというだけのことです。

★しかし、数学的思考やセンス、発想の問いに関しては、文系の生徒もおもしろがって考えます。

★そこに気づいた勤務校の数学科の先生方は、ここ数年、毎月MM(Math Meeting)でこの部分をなんとか可視化しようといろいろな入試問題の背景を探索すべくアルゴリズムを創りながら解放のプロセスの中にある数学的思考、センス、発想を取り出そうとしてきました。

★今回は、10個以上の思考実験問題をカテゴライズしながら、それを可視化しようと対話をしていました。

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★すでに、上記のイメージはなんとなく共有されているので、数学的思考さえ可視化されればあとはなんとかなるわけです。数学的思考以外は、可視化されている研究成果がたくさんあり、世の中でも、「探究」という機会に多くの先生方が活用しています。

★しかし、「数学的思考、センス、発想」が可視化されていないために、感情的な議論が多く、クールダウンして対話することができないのが現場のアルアルです。

★数学的思考を可視化して活用できない「探究」は画竜点睛を欠くでしょう。STEAMも、数学的計算を活用しているだけで、「数学的思考、センス、発想」を可視化してスキル化できていないと、やはり画竜点睛を欠くでしょう。

★数学的思考のみは、なんと人類が誕生する以前からあったという超宇宙的普遍的思考です。と語る現代哲学者が欧米に増えてきています。

★日本の未来の教育は、PBLやSTEAMやDXの人材という要素だけではなく、その要素分解を統合する「数学的思考、センス、発想」を創り上げ、すべての生徒とシェアする必要があります。この辺については、GLICCの代表鈴木裕之さんが主宰しているGWEという番組で伊東先生が語っています。長い動画ですから、その部分は1時間27分あたりから始まります。

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2022年9月 7日 (水)

聖パウロ学園~スクラッチコーディングを教科の思考型授業に埋め込めるか?密度を上げるために。

★聖パウロ学園の生徒は、もちろん他校同様Z世代ですから、グローバル時代は当たり前でかつデジタルネイティブです。カトリック学校ということもあって、そしてスクールモットーが黄金律ということもあって、たとえば、志望理由書に基づいた校長面接において、経済学部志望の生徒は、欲望の資本主義じゃやなくて倫理的資本主義への道のりをあれこれ論じます。その基本的な信念と考え方に基づいて、地域経済や都市経済を再構築していきたいのだと。もちろん、資本主義の構造上あるいはシステム上の根本問題などは、これから大学で追及していくのでしょうが、その素養の枠組は考えているZ世代に感心し関心を抱く日々です。

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(数学の教師と保健体育科の教師がスクラッチのコーディングで授業ができるか実験的ミーティングをしているシーン)

★校長のところまで来るまでに、先生方は志望理由書や小論文、面接の練習を1人ひとりずっと寄り添いトレーニングをしているわけです。だからでしょうが、ここまで急激に生徒は自己変容するのだと感じ入るわけです。そして、そのトレーニングの現場を覗くと、Googleclassroomでやりとりしながら、ドキュメントの共有をして、対話すると同時に、打ち込んでいるわけです。互いに打ち込んで共同編集しているわけですね。

★その手前では、スライドを作成し、プレゼンしたりしているわけです。動画も編集したりしているのです。外部のオンライン研修に出たりしている生徒もいます。その合間に探究ゼミで、知の体験をしています。ハート・スクエア―のポストイットで、感情と論理を整理しながらワークショップ型授業に参加したりもしています。

★ICTはヘビーユーザーですね。PBL型の学びもベースになっていることがわかります。

★ここまできたら、次のステップだなと思っていたら、情報科・数学科の教師佐藤先生が、自分の探究ゼミの生徒は、スクラッチのコーディングはやり尽くしていて、がっつりプログラミングをやりたいというメンバーなんですよと。なんという以心伝心。

★それなら、全員がプログラミングへとなるのではなく、スクラッチコーディングを使った教科授業はできないか実験してみようかということになりました。興味と関心がある教師が3人集い、何やら創発ミーティングをしていました。どうなるやら、楽しみですね。

★とにかく少人数で、森は豊かですが、物質的リソースは限られいる学園です。コンパクトに教科の授業の中に埋め込む作業が必要な学園なのです。コンパクトだけれど密度を高くする作業ですね。

★このアイデアは、こういう柔軟な対話によって創発されます。ミニコレクティブインパクトがまずは大切です。カトリック的には「カラシダネ」インパクトというわけです。

★各教科でスライドを使ったとして、別にスライドの学びをしているわけではありません。あくまで教科の学びです。ただ、スライドを使うと、編集思考がサポートされます。思考の過程を可視化しながら進んでいけます。レトリック思考ですね。

★同じようにスクラッチのコーディングを活用すると、同じく編集思考の過程の可視化ができるのですが、おもしろいことにレトリック思考と数学的思考の過程の両方の可視化ができるので、物語思考と数学思考の横断ができるようになる可能性があります。

★STEAMというと物質的プロダクトが目的になりがちですが、教科の授業にスクラッチ的なコーディングを活用すると思考のプロセスを自ら使えるようになります。それがプロダクトと言えばプロダクトです。

★カトリック学校において、パンは、物質的プロダクトとしてのパンと精神的なプロセスの中で生まれる愛や信頼というマインドとしてのパンがあります。

★前者はSTEAMの過程で、後者は教科の中におけるコーディングという名のプログラミングの過程で形成されるのかもしれません。

★もちろん、そんな分け方は正しいわけではありません。正解は1つではないのです。ただ、現状の世の現象としてそうなりがちだというだけのことです。

★聖パウロ学園のPBL型学びは、「(複眼的)思考型学び」という名称をつけています。思考とは、「想い」と「考えること」の統合を意味します。今でいう非認知と認知の統合です。マインドフルネスでスキルフルネスの統合と言ってもよいかもしれません。

★どこの学校でも行う朝の会の情報共有の10分間の中で、2分間は、先生方の活動にどういう意味や付加価値があるか想いをつぶやきます。そのつぶやきが先生方の想いと同期すれば化学反応が起こるし同期しなければそれは空振りです。

★先生方は想いをプロジェクトします。私はスクリーンでそれを映し出し、その2分間で先生方とシェアするわけです。スクリーン機能が先生方のプロジェクトをきちんと映し出しているかどうかは、スクリーンの性能次第です(汗)。

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改めて工学院の凄さに感銘を受けるそして学ぶ

★今週日曜日、1年以上前の2021年1月27日の記事「2021年中学入試情報(38)工学院大学附属 応募者数 前年を上回る勢い!PBLの風に乗って。」へのアクセスが多かったので、受験生・保護者の関心度が高まっていると思い、工学院のサイトを眺めてみました。改めて、こりゃあすごいと感心したのです。勤務校と規模も違うし資産も違いすぎるので、とても真似はできませんが、そのエッセンスをコンパクトにできればよいなあと思いつつ、一方で私立学校研究家としてのテンションが高鳴りました。

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(写真は、同校サイトの【中3 English Camp】の記事から)

★何が凄いのかというと、各コースそれぞれ異なるしかも多様な体験プロジェクトが実施されているということです。同校のコース分けは、特進とか東大なんたらコースとかいうのではなく、1人ひとりのキャリアデザインプランに合わせたカテゴリー分けになっています。

★基本、自分の興味と関心の領域を学べる環境づくりをしています。そして、その領域で自分に合った体験プログラムを選択し、仲間とコレクティブインパクトを生み出す経験値を高めていくのです。

★一方で、高1高2と2年間かける探究論文編集作業の機会が全員にあります。完全個別最適化の知の編集作業です。

★そして、4年前にはじめて行った国内外のリアルフィールドワークをベースにしたSDGsを追究するグローバルプロジェクトがあります。行先は生徒が選択します。いわば高校生生活の総決算プロジェクトがあるのです。コロナ禍のため、2年目は国内、3年目はできなかったそうですが、今年は復活するそうです。

★徹底した個別最適化とミニコレクティブインパクトとグレイトコレクティブインパクトの知の循環環境を先生方と生徒が創出しています。この運営の労力を労力と感じないで多様に行っている教員組織の共感力と実行力のパワフルさには頭が下がります。

★もちろん、各教科の授業もきっちりやっています。教科の授業でPBL型授業を行っている先生も多いようです。

★そんな環境と雰囲気だからこそ、人気があり、学園生活もクリエイティブテンションを持続可能にしながら大いに楽しんで共感し合いながら生徒は学園生活を送ります。そして、総合型選抜と一般選抜の両方をミックスして、自分の興味と関心の研究を実現できる大学に進むわけです。実績もここ数年飛躍的に伸びています。

★勤務校も工学院に大いに学び、八王子や立川エリアは都市として少し勢いがないので、いっしょに地域を盛り上げる知(感情とシンキングの両方あるいは非認知能力と認知能力の統合)の拠点を創っていきたいと考えています。

★そのために、まずは、6000字くらいで工学院の生徒が受験学力以上の知を身に付け、大学に進んでも大活躍するようになるその学びの環境を整理して発表しようと思います。工学院のサイトにある膨大なブログは破格のリソースです。それをヒントに田中歩先生や鐘ヶ江先生にインタビューしながら書いてみようと思います。11月をお楽しみに。

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カトリック枠で受験する生徒と学ぶ

★勤務校に限らず、カトリック学校は、上智や南山、聖心女子大などカトリックの大学をカトリック校出身の枠で受験できる制度があります。ですから聖書と現代社会のようなテーマでワークショップをしながら、聖職者でもない私や同僚といっしょに生徒とともに学ぶ機会があります。

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★新約聖書の半分くらいは、使徒パウロが福音を普及することになる手紙が占めています。勤務校の名称が「聖パウロ学園」ですから、パウロに学ぶことは必然的に多くなります。また、ルターや内村鑑三もパウロには影響を受けているので、余計パウロの手紙をよむわけです。

★すると、おそろしいほどに、現代的な人間の精神の問題が取り扱われているのに驚くわけです。

★たとえば、フィリピの信徒への手紙の次の部分です。

15 確かに,ねたみや競争心からキリストについて伝道している人もいますが,他の人たちは良い動機でそうしています。 16 後者は,私が良い知らせを擁護するために遣わされたのを知っており,愛に促されてキリストのことを広めています。 17 しかし前者は,純粋な動機ではなく対抗心からそうしており,拘禁されている私を苦しめようと考えています。 18 では,どんな結果になっているでしょうか。うわべだけの伝道であれ,心からの伝道であれ,あらゆる方法でキリストのことが広められています。そのことを私は喜んでいます。そして,これからも喜びます。 

★解釈はいっぱいあるのでしょうが、ねたみや競争心、党派的なマインドなどが結構多い中で人間は生きています。ですから、いちいちそうではないのだと説教をするのではなく、ウェルビーイングを伝えようとしているなら、そのルサンチマンは、そのままにしておこうという寛大さがすごすぎます。

★もちろん、ねたみや競争心から、違法行為を行うのは論外です。

★しかし、道は違っても、多くの人が納得のいく目標に向けて歩んでいるのだから、全体としてはいいんじゃないという考え方。結構ハードルがたかいですね。

★高みの見物ではないかと。たしかに、私のような世俗の人間がそんなことをいったら、他人事すぎます。

★しかし、パウロももちろんイエスも自分の命をかけるパッション=受難を受け入れるわけですから凄すぎます。

★スキルフルネスとマインフルネスの両方をbeyondする。どうすればよいのでしょう。

★逸話ですから本当かどうかわかりませんが、ダ・ビンチは上記の2つのタイプの弟子を持っていました。しかし、その両方を統合するようなあるいは超えるような弟子はいませんでした。beyondのポジショニングにはすでにダ・ビンチがいたからです。

★ということは、人間の社会で、党派的なマインドを超えることなど限られた人間にしかできないということでしょう。

★世俗の人間はどうするか、ひたすらルサンチマン耐性のマインドを構成するしかないということですね。構成主義の根源的な意義はここにありそうです。社会課題の解決はウェルビーイングではありますが、なかなか辛い心性が横たわっているのかもしれません。

★これは、制度的には解決できません。制度は、一部の人がそこから脱出できるようにできているからです。ルサンチマン耐性など人に丸投げです。黄金律の真逆です。

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2022年9月 6日 (火)

マインドフルとスキルフルのズレを統合し変容する対話の段階メタローグ

★会話や対話、コミュニケーションなど、要は人間が発する表現は、相手に一義的に伝わることはほとんどない。ズレっぱなしです。それをズレてもいいんだよとマインドフルな対応をするか、ズレをなくすべきだとスキルフルな対応をするのか、またまたそこでもズレてくるわけです。両方大事なのに、どちらかに軸足を置いてしまうのが無意識のうちに習慣化する場合が多いために、亀裂、分断、葛藤などなどが恒常的になり、その当事者同士、互いに不機嫌、不寛容、不安、憂鬱などなどに陥るわけです。

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★そうならないためには、マインドフルな状態とスキルフルな状態を統合し適用し変容したりする必要があります。その具体的な対話法のヒントになるのは、上記の本かもしれません。かつて抄訳がでています。多くの方が、この本に書かれているワークショップデザインのコンセプトツールを、この本に書かれていないと思って活用しています。ほとんどのワークショップで使われていると言っても過言ではありません。

★それなのに、Amazonではその抄訳は中古でしか買うことができないのです。不思議です。

★ともあれ、次の箇所をどのように解釈するか?です。私は英語ができないので、雰囲気で読みますが、日本語だとスルーしてしまう内的構造を視覚的に読み取れるので、やはり原文と対照するのは大事だなと改めて感じました。

 A SAFELY DANGEROUS SETTING

People often express the desire to have a safe setting in which to explore difficult subjects and relationships. The safety of dialogue comes directly from the willingness to touch the dangerous. As one educator put it to me a while ago, “education is a process of endangering the soul in a spirit of enlightened discourse.” This is the spirit of dialogue.

Kleiner, Art; Smith, Bryan; Roberts, Charlotte; Senge, Peter M.; Ross, Richard. The Fifth Discipline Fieldbook: Strategies for Building a Learning Organization (p.375). John Murray Press. Kindle 版.

★“a safe setting”と“the dangerous”と“a safely dangerous setting”の関係が面白いですね。

★そして、この関係を考える時に、その前提に“ a spirit of enlightened discourse”があるのだと。

★これを英語のできない私が日本語にしてしまうと、マインドフルとスキルフルの葛藤を調整するメタローグとしての対話の機能がみえにくくなってしまいますので、このままにしておきます。

★いずれにしても、学校現場における教師と生徒のコミュニケーションは、最初はズレるのが当たりまえです。それを怖がらず光をともす。つまり、“a spirit of enligntened discourse”というメタローグ対話の精神をシェアする。

★もちろん、その過程や道のりは、そう簡単ではありません。

★ですから、この時期、各種推薦入試や総合型選抜の準備において、現場で高3生とクリエイティブテンションを共有しながら日々活動している先生方のその心根に敬意を表します。

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2022年9月 4日 (日)

石川一郎先生のつぶやき 聖ドミ二コ学園の進化

★聖ドミニコ学園カリキュラムマネージャーの石川一郎先生。聖ドミ二コ学園のリハーサルの様子をSNSに載せて、こうつぶやいています。

「聖ドミニコ学園 説明会リハーサル
英語入試、思考力入試が語られる
改革4年目で進化がすごい」

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(先日の聖ドミコ学園の学校説明会で語る石川一郎先生。写真は先生のfacebookから)

★このつぶやきは、とても大切です。というのも、石川一郎先生は、Yahoo公式コメンテーターでもあり、21世紀型教育機構理事でもあり、知窓学舎ミドルマネージャーでもあり、今や多くの学校の教育改革に関わるスーパー教育コンサルタントです。その石川先生がボソッとつぶやいたのです。そこに真理が横たわっていると思いませんか?

★8月の私学展では、勤務校聖パウロ学園の隣が聖ドミニコ学園でした。広報部の先生方が自信に満ちた笑顔で話しかけてくれました。学園にきっといい風が吹いているのだろうなあとすぐに感じました。

★そして、スマホで同校のサイトを見ました。すると、なるほど更新率が高くなっていると感じました。それに、授業の様子も丁寧に公開されていて、これは自分たちの教育の想いや実践をシェアしたいという機運が学内に生まれているのだろうとも感じました。

★しかも、8月18日の記事にはこんな内容が投稿されていました。そのまま引用します。

「本校教員の研究が東京都私学財団の研究助成対象となりました。


 本校での教育活動をつうじた研究3件について、本年度、東京都私学財団の私立学校研究助成事業による交付金の交付を受けることとなりました。研究課題は次の3つです。なお複数教員が参加する共同研究として進めていく予定です。

数学科における批判的思考を育成する教材開発―「問題発見」と「定式化」に着目して―(研究代表:太刀川祥平)
STEM系教科/領域を基軸とした教科横断的な教材開発とその実践に関する研究(研究代表:越智拓也)
探究的な学習のデザインに関する研究―教科を横断した「授業研究」に焦点をあてて―(研究代表:土居嗣和)
 今後、2023年1月までに調査・研究をすすめていきます。学校の授業がより魅力あるものとなるよう、さらに精進を重ねていく所存です。」

★なんと、太刀川先生、越智先生、土居先生は、4月の21世紀型教育機構の定例会で、教頭の千葉先生が、聖ドミコ学園の新しい教育を実践するリーダーシップを発揮する3人ですと紹介された先生方です。それに今年8月初旬に、同機構の教育研究センターの宿泊ワークショップでもいっしょになりました。そのとき、学究的な発言をする3人を見て、なるほどドミニコらしい若い先生方だと感じ入ったものです。

★ドミニコらしいというのは、「真理はあなたがたを自由にする」という同校の理念を体現している若い先生方が現われたなあという意味です。

★聖ドミニコ学園は、母体がドミニコ修道会です。もう700年以上続いています。創設者の聖ドミニコは対話の聖人ですから、ドミニコ学園が対話を大切にしている学園であることは広く知れ渡っています。

★しかし、日本人は対話というと心の教育の方を想い浮かべるでしょう。もちろん、心は大事です。

★ただ、ドミニコ修道会が700年以上も続いてきた理由は、もう一つあります。それは西欧のリベラルアーツの基礎を築いてきたからなのです。トマス・アクイナスやエックハルトなど西欧の知的文化の基盤をつくってきたり、大学の学問の基礎を築いたりしてきた学究的な対話の側面もドミニコらしい文化なのです。

★聖書でいう「真理」はもちろん、人間的な「真理」では収まり切れませんが、その人間の真理も真理に違いないとトマス・アクイナスは言うわけです。彼は、シュンペーターによれば、資本主義の萌芽の理屈もつくったといわれています。

★もちろん、強欲資本主義ではなく、倫理的な資本主義を形成しようとしたのですが、そこはメディチ家とマキャベリが君主論のモデルにしたと言われているチェーザレ・ボルジアです。現在の欲望の資本主義を開いてしまうわけです。

★今世界で、このような資本主義を変え、ステークホルダー資本主義にしょうだとか倫理的資本主義にしようだとか大いに議論しているわけです。ここ数年ダボス会議では各国の政財界の重鎮が集まって大真面目で議論しているのですが、なかなかうまくいきません。

★そんな時代にあって、心と知の「真理」を求める教育を行う聖ドミコ学園。ぜひ頑張って欲しいと思います。石川一郎先生よろしくお願いします!

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首都圏模試センターの合判模試が行われている本日の注目記事から見えるコト

★本日は首都圏模試センター主催の合判模試が各会場で行われています。同センターの仲間の演者が各会場で入試情報に関するスピーチをしています。保護者は、真剣に耳を傾けながら、同時にスマホなどで、検索しながら情報を整理していきます。したがって、このホンマノオト21のブログもときどきチェックされます。そのため、今日どんな記事がアクセスされているかをみると、2023年の入試動向や志望校の動向が見え隠れします。もちろん、このプライベートブログは公式のものでも何でもないので、ちゃんとした動向はわからないというのは言うまでもありませんね。

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(GLICC代表鈴木裕之さん 毎週金曜日21時から、最新の入試情報や教育情報を学校の先生をゲストに発信しています。)

★今朝ノイタキュード代表北岡優希さんのスピーチが同時配信されていたので、その件を同時掲載したら、当然その記事のアクセスは増えるのですが、おもしろいのは、それ以上に昔の記事が第1位でした。それは鈴木さんが経営するGLICCがダブルディプロマのシステムを整えたという記事です。今、ハロー校をはじめ、名門イギリスのパブリック校が日本にも開校されたり、インターナショナルスクールが日本で開校されたりと本格的なグローバル教育の風が吹いているということもあるのでしょう。

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★あるいは、鈴木さんが毎週金曜日に発信する番組に北岡さんも登壇されたことがあるというので、それに関連してアクセスが増えたのかもしれません。いずれにしても、新着記事以外にも、だいぶ古い記事までアクセスされるというのは、今日のような受験イベントがあるときの特徴です。ベスト10を列挙しましょう。

1:【速報】ついに学習塾GLICCからダブルディプロマ!海外大学への道全開!
2:変わる合判模試の入試情報保護者会 超電導思考の北岡氏の仕掛け
3:北岡優希さんの学校を視る目 教育を観る目 時代が変わる時に現れる新しい編集智=インテグレイトデザイン
4:北岡優希さんと対話~学校・教育・入試情報の新しい発信へ
5:成蹊 学びの本質「体験」を大切にしている。
6:思考コードがつくる社会(15)総合力の栄光、英語の聖光、安定した進学校浅野
7:筑駒の2022年の国語入試問題で出題された詩の意味。18歳の時に書いた谷川俊太郎さんの詩「合唱」の歴史を超える深い意味。
8:サレジアン国際学園 川上武彦先生語る New Power Schoolとしてのカトリック学校
9:2030年問題はひたひたと迫る 教育出動必至。
10:2021年中学入試情報(38)工学院大学附属 応募者数 前年を上回る勢い!PBLの風に乗って。
10:私学展で~かえつモデルの影響力大

★ベスト4までは、北岡さんの新着情報を見て、もっと知りたいと「ホンマノオト21 北岡」と打ち込んでサーチした結果でしょう。

★次からが、おそらく本日多くの保護者がサーチされた学校ですね。

★「成蹊」「栄光」「聖光」「浅野」「筑駒」「サレジアン国際」「工学院」「かえつ有明」に興味と関心がある保護者が、いたのでしょう。いわゆる御三家クラスの学校だけではなく、シン・リベラルアーツ的な新しい学びとグローバル教育の両方に力を入れている学校が注目されている可能性があるということでしょう。

★「2030年問題」にも関心があるのは、学校選択の指標が偏差値と大学進学実績以外の多様な指標にも関心を持つことが定着してきたということかもしれません。

*鈴木さんと北岡さんの対話は次をごご覧ください。

 GLICC Weekly EDU 第79回「ノイタキュード代表 北岡優希先生との対話ー新しい学校の探し方」

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変わる合判模試の入試情報保護者会 超電導思考の北岡氏の仕掛け

本日今まさに、首都圏模試センター主催の合判模試の入試情報保護者会が開催されています。そして、なんと今私は自宅でYoutube同時配信を見ているのです。時代は大きく変わりましたね!

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★同センターのサイトにはこうあります。

『首都圏模試センターが実施する9月4日(日)の小6第3回・小5第2回「合判模試」の文化学園大学杉並中学校・高等学校会場で行われる、任意団体ノイタキュード代表の北岡優希さんによる入試情報保護者会と、文化学園大学杉並中学校の学校説明会を、YouTubeチャンネルにてライブ配信します。』

★というわけで、今動画を見ながらブログを書いているわけです。この事態自体、今までにない大きな変化ですが、それだけではありません。

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★もう1つ興味深いのは、北岡さんの入試情報講演のあと、会場校の文化学園大学杉並の広報部長とトークセッションにすっと入ったことでした。クールというかかっこよすぎです。セッション終了後、会場から拍手が起こるのは当然です。

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★それから、もう一つ決定的に変わったのは、講演者である北岡さんのような超電導思考の持ち主が現われたことです。「超伝導」とせずに「超電導」としたのは、同じ意味だからでもありますが、北岡さんがDXを駆使できる才能者だからです。

★超伝導=超電導という科学的現象は、ある一定のクールな状況をつくり、抵抗がなく電子が流れる現象をつくることです。熱効率がよいわけで、無駄なエネルギーを使わず、最高の質の状況を創り出すわけです。SDGs思考力と言ってもよいかもしれません。

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★もちろん、情熱的に語るのですが、内なる情熱で、聴いていて圧がないですね。

★情熱的に熱く語るのは、雄弁で感動を生みますが、どこかカリスマ的圧を感じて、今時ではなさそうです。

★北岡さんは、データを駆使して、首都圏中学入試情報を語り、大学入試の変更情報を語りながら、そこと相乗効果を生み出している中学入試の新タイプ入試の話もしていきます。ファクトとオピニオンとその根拠が丁寧に語られるのです。説得力がありますね。

★実際に取材もしているので、気負う必要のない超電導な思考トークがすてきです。

★たとえば、宝仙理数インターの新タイプ入試の評価方法は、ルーブリック評価ではなく、共感スキルフルコミュニケーションでいくのだという話はさりげないけれど、興味深かったです。共感スキルフルというのは、私の造語ですが、北岡さんによると、一緒に学んでいきたい仲間を採用するというGoogleなどの採用方法と同期するという話でした。これは共感できる人間であることと、その人材がとがったスキルを持っているということが条件でしょう。この評価方法はベルリンフィルが新しい演奏者を採用するのと似ていますね。

★このようなそれぞれの学校の新タイプ入試の特徴に光をあてられるのは、北岡さんならではでしょう。

★取材もするし、記事も書くし、今回のような配信の環境も自前で創ってしまう。何よりペルソナがフラット、フェアー、フラタニティ―という<f>の響きを奏でているのが今までとは違います。

★こう書いているうちに、今会場校の文化学園大学杉並の広報部長による学校説明会が始まりました。このセクションも配信されています。もちろん、この配信は後で見ることもできます。

★時代は変わりました。実感です!

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2022年9月 3日 (土)

聖パウロの伊東先生のミッション 学園の教育の中に「普遍的教育」を内在させ、世に普及するアクションプラン

聖パウロ学園の入試広報部部長であり企画戦略室室長でもある伊東竜先生とGLICC代表鈴木裕之さんと対話しました。とはいえ、伊東先生は私の同僚でもあるので、今回は私はときどきコメントするだけでした。鈴木さんの名ナビゲーター手腕あるいは翻訳・通訳的フィドバックで、聖パウロ学園の教育や伊東先生が挑戦しているその背景にある本質的・普遍的教育の模索を明快に映し出してくれました。本当にありがとうございました。

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GLICC Weekly EDU 第93回「聖パウロ学園:偏差値では測れない複眼思考型教育~すべての生徒が才能者」

★今回、伊東先生は、第一部で、入試広報部の側面から聖パウロ学園の教育のエッセンスを語りました。ぶんび両道(分かりやすさ美しさの両方を統合する)の信念でいつもの説明会の話を圧縮・変形した新たなスライドを作っていました。また、生徒が創った3分間動画、1分間動画も交えて語りました。

★具体的に写真なども交えながら語り、それを幾枚かの図で可視化していました。

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★たとえば、上記のスライドは聖パウロ学園の教育の全貌をコンパクトにまとめています。その背景にある「複眼思考型教育」は第2部で説明がありました。

★スライド自体は圧縮されていたのですが、鈴木さんのタイミングのよい問いかけやフィードバックで、対話が盛り上がり、第一部だけで1時間26分(1時間50分中)になりました。そのあと第2部で、その「複眼思考型教育」について話が展開されました。

★伊東先生の話は、授業やワークショップ、探究ゼミで実際に行ったものをメタ化(メタローグ)したものですから、すべて、体験済みの話でした。その体験を私などとの日々リフレクションといういう対話(ダイアローグ)を通じて、メタ化(メタローグ)のレベルに持っていっています。

★この第2部の部分は、説明会では話されません。今MM(数学科ミーティング)で、メタローグありきではなく、各教科の体験の中で、いかに教師や生徒が、複眼思考のメタ的基礎(メタローグコンセプト)をシェアしていくかという対話を毎月定期的に行っています。

★伊東先生も数学科で、数学科主任の松本先生と協働しています。そして、企画戦略室室長として、それを広げるクションプランを実行しています。

★シェアはあくまで、ダイレクトにではなく、インダイレクトに進み、仲間が気づいていく過程を創るのが伊東先生の戦略手法です。これは生徒においても同じです。ダイレクトというのはどうしても伝達に終わります。インダイレクトは化学反応を生む傾向があります。

★教師も生徒も内面の中で気づきとケミストリーが起こることが本質的なことでしょう。

★聖パウロのキャンパスは、広大なパウロの森そのもので、そのパーツとして一体化ししている小さなキャンパスがあるという感じです。そして、先生方が自然と学校と1人ひとりの才能が循環するチャレンジをしているのが、伊東先生の話から伝わると思います。

★日々、世界は、ひしひしと迫る危機感、不安をかかえています。2030年問題はたしかに憂鬱です。しかし、なんとかそれを乗り越えていく勇気と信念をもって複眼思考をして判断し行動する人間力を身に付けたい。それはパウロ生だけではなく、日本の生徒、いや地球規模で身に付けて欲しい。いまここで、伊東先生をはじめとする同僚は、まずはパウロ生と共に試行錯誤しながらチャレンジしています。そして、伊東先生は、それがやがて他の学校の先生方とも互いにシェアできるアクションプランを考え遂行しています。それがミッションです。

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2022年9月 1日 (木)

2030年問題はひたひたと迫る 教育出動必至。

★ダイヤモンドオンラインでは、こんな特集シリーズが連載されています。<「大阪」沈む経済 試練の財界>がそれです。趣旨を引用します。

「大阪は自信を失っている――。関西財界の大物幹部はそう自嘲気味に語る。新型コロナ禍でインバウンド(外国人観光客)特需が消失し、大阪経済の地盤沈下が止まらない。起爆剤として期待される2025年の大阪・関西万博や大阪IRでも、建設費の膨張リスクといった火種がくすぶる。財界に目を移せば、盟主、関西電力が不祥事に揺れる。万博やIRに向けた地元財界の動きに加え、大阪の金融や建設、電機業界の今を徹底解剖する。」

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★この趣旨の文章の「大阪」を「東京」や「日本」と置き換えても成立します。それだけ、地政学的かつ地経学的、人口論的な問題がぶつかり合って昏迷状態になっています。

★すでに2019年東京大学文Ⅱの帰国生入試問題でこんな問題が出題されていました。

「2020 年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催される予定であり、2025 年には大 阪で万博(万国博覧会・国際博覧会・World Exposition)が開催されることが決定した。こ うした国際的で大規模なイベントを現在の東京や大阪に誘致し開催することの是非を、過去 に開催された東京オリンピック(1964 年開催)および大阪万博(1970 年開催)と比較しな がら多面的に論じなさい。」

★大学入試で問いかけられるぐらいですから、政財界ではとっくに喫緊の課題だと思って対応してきたでしょう。パンデミック、戦争、気候変動の3つの問題は、地政学、地経学、人口論の領域に甚大な影響を与えます。パンデミックで身に染みてわかっているように、現状の混迷とそれが起因する3大問題(でもこれはまだ根本問題ではないのです。この3大問題を引きおこす根本問題にたどりつけるかはポイントです。そしてさらにその根本理由は?)はなんとかしなければなりません。

★さて、どうしますか?それぞれの領域、つまり国、企業、NPO、農林水産業、大学、学校、個人などの問題は、実は一蓮托生ですから、それぞれのいまここでの場所で解決しながら、その解決がそれぞれの主語、つまり、「私」「友人」「家族」「組織」「社会」「世界」・・・へとつながる拡張性があるか検討していく必要がありそうです。

★「総合型選抜」の小論やそれに向けての探究の課題は、当然、先述の東大の帰国生入試問題のような問いも学びの対象の1つでしょう。受験への学びがそれぞれの主語につながっていく広く深い学びをしていくことがポイントです。

★これは、もはや偏差値軸1つではエンパワーメントエバリュエーションができませんね。

★偏差値も一つの尺度としてそれ以外の多面的な視点でものごとを考える「複眼思考型教育」を、まずは「学校」という主語のレベルはやっていかなくては。それぞれの学校で、2030年問題乗り越える共通意識をもって、独自の教育出動をする時代です。21世紀後半は、「地叡学」という言葉が生まれるでしょう。

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明日、GLICC代表鈴木裕之さんと聖パウロ学園の入試広報部長&企画戦略室室長伊東竜先生とこのあたりを対話します。

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