SGT教育研究会の希望
★本日午前中、2時間強、SGT(スーパーグローバルティーチャー)教育研究会が開催されました。主催は21世紀型教育研究センター。同センターは、2022年度、2つのプロジェクトを実施しています。以前クルックフィールドのプログラムを紹介しましたが、これは「SGT教育研究プロジェクト」の循環型社会を目指してどのような学びの環境を創っていくという実践的プロジェクトです。もう一つが、本日開催された「「21世紀型教育研究会」です。
★新しい教育を創造することに関心のある若手のSGTと対話をしていく会です。今回のテーマは「未来の授業のデザイン」。学校は9月から本格的に今年度の後半を迎えます。未来と言っても、いまここで活用できるヒントを互いに交換し、その過程で未来が生まれてくるというオンラインプログラムになっていました。
★ブレイクアウトルームでは、2回セッションがありました。心理的安全の足場をまずはつくり、自由な発言や発想をいいやすくするところからはじまります。もっとも、参加したSGTは、すでにフラットで共感的なコミュニケーションを嗜好するメンバーですから、すぐに盛り上がっていたようです。
★10分休憩して、30分くらいでしょうか、今度はチームで授業をデザインしようということになりました。クラスも学年も教科などの諸条件は自分たちで設定するというものです。SGTはなんなく楽しんでいましたが、この手のワークショップは、条件をある程度細かく設定しないと、参加メンバーは不安になり、いろいろ条件はどうなっているのかと質問がでます。
★いつの間にか、SGTは、すっかりそんなのは自分たちで合意形成していけばよいのだという了解ができていました。2000年から2015年の間、私は多くのPBLを学ぶワークショップをやってきましたが、この自然体をつくるのが大変でした。しかし、SGTはそれはすでに暗黙知になっています。
★2チームに分かれて、それぞれ授業デザインをして、プレゼンがありました。このそれぞれ教科が違うチームメンバーで話し合いますから、自然と教科横断型の授業デザインになります。
★同センターの研究員の先生方のファシリテーションは、このような参加メンバーの組み合わせによって、自然とそうなることを仕掛けているわけです。ファシリテーターは、学習ツールだけではなく、言葉、アクション、空間、チームメンバーなどすべてが、学びの環境として設定するところが妙技です。アフォーダンスと言って、指示をしなくても、環境が媒介項になって、脳神経系身体全体を刺激します。
★それにしても、参加メンバーは、それぞれに創意工夫したり学んできた授業デザイン手法やツールを出し合っていました。こんなにたくさんあるのだと驚きました。
★かつては、PBLをデザインするためにどんなツールがあるのか、流れはどう創るのかからはじめていましたが、今やそこから始める必要はないのです。
★むしろ2チームは、生徒が興味関心をどのように生み出すのかから対話がなされていたようです。1つのチームは、興味関心の内在的構造を活用していました。つまり、不満や不平、違和感のあるものをいかにポジティブに転換するのかというジェットコース型興味関心生成手法を活用していました。
★もう一つのチームは、物語手法です。民謡の背景にある人間みなにあるあるの期待値の大きさとそれが外れたときの悲劇。自分に期待するのではなく、外部への期待。外れるのは、自分の問題なのに、それを運命として嘆いてしまう。だれでもが共感してしまう物語。エピソード型興味関心生成手法ですね。
★探究活動などでは、生徒自身がテーマを立てたり、問いを設定しなくてはなりませんが、出発点は、自分の興味・関心・気遣いへの気づき、あるいは覚醒です。その内的な自己観察をする機会を設定することが大切です。
★この興味・関心・気遣いは、多様な手法がありますが、基本は、生徒が自分を観察する(Self Observation)という、最近の脳科学や心理学では「内観」と呼ばれるものに近い動きをする時間を設けることです。
★SGTは、この時間を創るのが、巧みです。時間の長さは、いろいろです。インプロの場合もありますね。というか、達人になると瞬間の永遠を生み出せます。
★教えない授業という言葉がありますが、実は、一つの授業ずっと教えないわけではないのです。生徒の興味・関心・気遣いが生まれてくる出発点を教えないということです。それから、好きなことからやりなさいともあまり言いません。これは自己言及のパラドクスだからです。教えないと言いながら、自分の好きなことから始めなさいと答えを教えているからです。生徒は考えずに、これから始めようと条件反射的に動くわけですから。ダイレクトフィードバックとインダイレクトフィードバックのダイナミズムが授業の躍動的リズムを生み出します。
★世の中には、だれそれの授業法とかいうものがあります。大いに参考になりますが、今回のようにSGTが集まって、自己の方法を互いにシェアリングすることの方がよほど効果的です。明日の授業でやってみようというアックションが生まれます。なぜか?共感するからですよね。
★それにもう一つ大事なことを行っています。実はオープンになって話すということは、それぞれが自己観察したことをシェアすることなのです。これがものすごいエネルギーを内面に生み出します。受け入れ合うという対話はかけがえのない機会だからですね。
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