日経新聞 シリーズ「教育岩盤」始まる
★終戦の日8月15日から日本経済新聞は、「教育岩盤」というシリーズをスタートしました。1回目は総合型選抜など新タイプ入試の増加は偏差値終焉の足音か?とその背景、2回目は難関一貫校と難関大学の強い相関という岩盤を海外大学進学準備という外圧で風穴を開けられるかという内容でした。
★2014年以降、首都圏中学入試の受験者人口が右肩上がりの背景をなぞる形で、日本経済新聞が整理しているのは、よいことですね。ただ、全国でも私立公立の中高一貫校の生徒数は、同年齢人口の10%の話なので、読者の興味をひきつけられるかどうかはわからないです。
(2022年開成算数入試問題1の2番)
★新聞の性格上、多くの識者が語ってきた論調をうまくまとめ、事実関係をおさえていくという編集なので、それはそれで歴史的資料価値はあると思います。
★ただし、編集の目的については、こうあります。
<「岩盤」のように変化を忌避する日本の学校教育。新しい試みに背を向けたままでは、国際化やデジタル技術の進展、新型コロナウイルス禍という時代の転換期をけん引する人材は育たない。「教育岩盤」の実態と打破をめざす動きを追った。>
★つまり、学校教育の変化を阻害する「教育岩盤」の事実を確定し、その打破をめざす動きを追うというわけです。そうすると、「教育岩盤」の事実そのものが、本当に偏差値なのかとか先取り教育なのかとかリフレーミングしていく必要があるわけです。
★打破を目指すというのも、そのような教育岩盤を作ってきた教育行政や経済社会という背景もまたリフレーミングせざるを得ないでしょう。
★この岩盤を作ってきたかもしれない人口成長論や偏差値成長論、富裕層向けの優勝劣敗学歴社会などの構造分析ツールや視点で分析だけしていては、結局元の木阿弥だし、池にはまった自分を自分の髪の毛を引っ張ってなんとか救われようとしているのに等しいことになります。
★欧米の理屈がよいかわかるいかわかりませんが、その理屈は、循環社会を創る時に、認識論のリフレーミングをまず行います。日本の経済学者や社会学者、文化人類学者、哲学者などはそこをちゃんと紹介しているのだけれど、教育経済学とか教育社会学、教育哲学となると、そこはスルーしてしまう人が多いのです。
★教育岩盤を見抜いたり、打破するビジョンを見極めるには、リサーチやそのための認識視点や手段、方法論のリフレーミングも重要です。
★たとえば、上記の開成の計算問題の意味をどうとらえるのか。ただ解き方がシンプルでショートカット、要するに暗算であるいは直感的にできてしまえばそれでよいのか。以前はそうだったでしょう。しかし、この計算問題一つとっても、ここに「世界の作り方」の方法が詰まっているのだとリフレーミングするようになると、とたんに開成がただ偏差値難関校で、優勝劣敗的な価値観の生徒が東大にたくさん入っているのではないということが見えてきます。そんな「世界の作り方」を中学受験の時から学んで体得する人材が東大に入り、日本の未来を考えるのはすてきではないか。
★新しい教育とは、ICTを使ったり、CEFR基準でC1の英語力をつけることなのかとリフレーミングしてみると、結局はPBLというコミュニケーション行為のレベルを世界標準にすることであり、ICTやC1英語はそのために必須。それに、そのコミュニケーション行為は、知識人だけではなく、生活者である一般市民にもシェアするものだとかなんとかコンセプトやビジョンを転換させてみる。
★SDGsやOne Earthという時代に「外圧」という言説を使わざるを得ない背景にこそ「岩盤」があるのかもしれないとかなんとか。
★開成や東大のような難しい入試問題はできないけれど、「世界の作り方」を学ぶことは生活一般市民だってできる。難しい入試問題は特殊で「世界の作り方」は世界市民にとって世界標準。
★日本が積み上げてきた客観的という名の知識の集積。しかし、それは新しい見方をすれば、その中に世界標準の知がちゃんとあります。その知を解放する新しい教育とは何か?PBLを行っている学校は、すでにその方向性を知っています。ただ、それが日経のいう岩盤を打破するかどうかはあまり問題にしていません。
★もっとシンプルな道で、美しい空と大地と芸術を生み出すことができるし、戦争をなくす志向性を生み出せるし、世界のすべての子どもたちに必要な教育を示せるし・・・。優先順位は、その岩盤を取り除くチャレンジではないのかもしれません。
★2015年にパラダイム転換が本当に起きています。それは1970年代にすでにドネラ・メドウズやグロ・ブルントラントなどが魅せてくれた発想から始まっています。
★いまだに、総合型選抜では基礎学力が育たないみたいな言説や視点、スコープでは、そもそも新しい教育がみえないでしょう。
★それでも、日経の「教育岩盤」には期待をしています。SDGsと同じで、教育の危機をなんとかしなくてはという認知度を上げる必要があるからです。それを40代前後の昭和世代にわかるようにするには、今回のシリーズは最適です。2050年を牽引するZ世代向けには、アレンジも必要ではありますが、Z世代は果たしてどれくらい日経を読むのかというマーケティングも当然しているでしょうから、その必要はないのかもしれませんね。
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