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2022年8月24日 (水)

私学展から~八雲学園の意志決定と強力なサポート体制

★私学展最終日午後5時、会場の入口をはいってすぐ左に設置してある本部席が少し空いたので、お邪魔しました。あと30分で閉幕という時間帯です。ようやく問い合わせや本部席の執行委員の先生方への挨拶も終わりかけの時でした。

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★平方先生(日本&東京私学教育研究所所長・工学院大学附属中学校・高等学校前校長)と対話していました。偏差値だけで学校選びや子どもの資質や能力を捉える時代でないという認知度は広まったが、理解度はまだ広まっていない。現実は偏差値スコアがまだまだ機能している。

★偏差値は統計的なものだから、それ自体に問題はないが、そこに付加される価値づけが問題。まだまだ優勝劣敗発想が前面にでているし、社会課題を自分事としてとらえようとする動きは少ないかもしれない。

★それを払拭するには、たしかに思考コードなどの多角的な指標が必要。だが、社会そのものの価値観の変化も必要。すでに変化しているけれど、見ようとしないあるいは見ても見えないという状態も横たわっている。砂漠に水をまくような話かもしれないけれど、諦めずに発信していくしかない。もう1つは、準制度的な仕掛けも必要。文科省レベルの制度的改善に私学協会は、努力しているけれど、それは時間がかかる。全国の初等中等教育の合意形成なども難しい。手前の準制度的、つまり、共同体的ルールの市場における認知というのを広げていく。

★などなど、要は倫理とルール、つまりマインドとスキルの組み合わせや仕掛けの話になっていました。

★そんな折、私学展主催者の一般財団法人東京私立中学高等学校協会の会長近藤先生(八雲学園理事長・校長)が、会場の巡回から戻ってきました。近藤先生の周りはいつも黒山の人だかりです。学校関係者や私学のステークホルダーの方々が、ひっきりなしに挨拶に訪れているからです。

★ですが、このタイミングで、いつもの5倍以上の時間、お話をお聴きする機会を得ました。八雲学園は、今年コロナ禍にあっても、7月半ばから8月半ばにかけて、高1、中3と二つにわけて、カリフォルニア州サンタバーバラの八雲レジデンスをベースに2週間の研修旅行を決行しました。

★いつもは、中3の卒業旅行を兼ねて、3月に行くのですが、今回のパンデミックで行けなかったのです。共学校にしたとき、女子生徒だけではなく、男子生徒も楽しみにしていた2週間サンタバーバラ研修旅行です。それがなくなることは、中1から積み重ねてきた多様な英語のイベントの目標が宙に浮きます。

★何より、海外体験のインパクトはものすごく、生徒それぞれが、自分の世界を覚醒するものです。この体験は生徒にとって、八雲学園の6年間の成長過程で、大きなジャンプをするチャンスでもあります。多様な体験を重視し、その中でも生徒全員が、海外で体験することがいかに重要か、説明する必要はないでしょう。

★この2年間、八雲学園は、国内の体験については、コロナ禍にあっても、できるだけ実行してきました。しかし、海外は、まだまだリスクが大きいのです。近藤先生が決意するに至るその過程の苦労は凄まじいのですが、2学年の海外研修を無事終えて、その苦労は、学園全体での喜びに変わりました。本当に得難い体験です。この積み上げをずっと行ってきた八雲学園。毎年ファンが増えているのはそういうことでしょう。

★近藤先生のお話をお聴きして、感じ入ったことは、新型コロナ感染状況の情報を収集分析するプロセス、リスクマネジメントの体制を幾重にも整える事が大切だということです。

★私が勤務する学校のように少人数規模の学校は、この重厚なリスクマネジメントがなかなかできません。教師の人数が足りないのは、支援者を外部に頼めばよいのですが、それは海外の場合、受益者負担が大きすぎます。それに今回のコロナの場合は、現地で感染した場合、教師もいっしょに残らなければなりません。すると、帰国後の授業の時間割に長期間穴があきます。

★そのようなことをあれこれ考えて意思決定をして、その代替案をねん出するわけです。

★その点、八雲学園は、行事など様々な体験ができる適性の規模だなと。定員というのは、それぞれの学校の理念が実現につながるように設定されなければならないということをひしひしと感じました。

★したがって、いろいろな学校が創意工夫して実施しているプログラムをよいものだから、なんでも取り入れようとするのは、大間違いだということも改めて身に染みました。

★建学の精神と適性定員。まさに私学は教育と経営が好循環するように設計・運営する必要があるのです。

★話は、20年くらい前の思い出話にもなりました。私がロサンゼルスからサンフランシスコにかけてPBLを実施しているプレップスクールの視察を終えて帰国するためLAX(ロサンゼルス空港)を1人歩いていた時のことです。どこからともなく「本間さ~ん」という声が聞こえてきたのです。

★仲間はトーランスの事務所で仕事をしているはずだし、知人がいるはずはない、空耳かなと思っていたら、声が近くになってきたので、振り返ると、なんと近藤先生がいらしたのです。

★近藤先生もサンタバーバラの研修に同行して一足先に仕事で帰国するとのことでした。互いに航空会社が違い、フライト時間もあったので、本当に瞬間の出会いでした。ただ、こうして未だに思い出話になるぐらいインパクトがあるのも海外での出会いの体験です。

★偏差値というのは分かりやすい指標だから、なかなか手ごわい、そう簡単に世の中は変わらない。にもかかわらず、それぞれが独自の創意工夫をしてがんばっていくのが私学だよ。そしてそのことを励まし合う仲間がいればこわくはないはずだと。

★その気概を自ら実践しているのが近藤先生と八雲の先生方です。もう少しお話をお聴きしたかったのですが、閉幕前の駆け込み訴えよろしく多くの方が近藤先生のもとにやってきたので、私は同僚とリフレクションするためにフォーラムを後にしました。

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