学校が外部団体と連携する多様な効果
★学校が、外部団体と連携する(NPOや大学、企業・・・)とき、3つのパターンがあると前回の記事「コンパクトスクール 外部団体との連携の仕方にヒントあり」で紹介しました。今回は、その断面図、学校と生徒を「教科」に内包させているので、完全に対応した断面図ではないですが、イメージとしてご理解していただけると幸いです。何せ図式化は難関です(汗)。
★A軸パターンは、学校が学内ではなかなかゲットできない情報を外部団体に依頼するケースです。新たに情報が学内に収納されるので、新しい知見という情報や知識が蓄積される効果があります。外部の講師に講演を依頼するのは典型例ですね。生徒にとって、効果があるかはどうかは、生徒によって濃淡があります。それを効果的に広げるかどうかは、それぞれの教師の手腕です。
★それもそれぞれの教師に委ねられているので、学校全体に新たな知見が浸透する効果はあまりありません。担当の教師が自分とかかわっている生徒に新たな知見を吸収させたいというのが大きな目的だからです。どうしても限定的になる場合が多いですね。
★B軸パターンは、実際に外部の講師の知識・情報をインタラクティブにやりとりするのを依頼します。ワークショップスタイルが多いですね。体験が展開しますから、新しい知見の広がる勢いはあります。しかし、体験ですから、参加している生徒と教師とそうでない生徒と教師では熱量が違います。しかし、ある一定の教科横断的な効果は見込めます。
★C軸パターンは、新しい知見を取り入れるだけではなく、学内丸ごと巻き込んで、学校全体の知の次元をアップさせようと経営陣が考えたとき依頼するケースが多いですね。教育コンサルレベルになります。
★そして、A軸、B軸の場合は、その枠の中で難易度やレベルがあがります。依頼する時にこのぐらいのレベルでいいですかとお願いすれば事足ります。
★しかし、C軸パターンの連携では、難易度ではなく、思考の深さが変わってきます。たとえば指定校推薦にかかわることによってアップグレードする生徒の思考の質は、根本問題まで深まらなくても大丈夫です。広く語られている社会課題を捉え返す「メタ認知」が加わるワークショップをお願いすることになるでしょう。C1軸パターンとなります。
★公募推薦や総合型選抜では、やはり社会課題の背景にはどんな根本問題があるのか思考を深めていく必要があります。これは、「探究」でも同じことですね。そして、それを解決することになるのですが、その解決策は、5つの方向性があります。どれを選択するのか、組み合わせるかは、実は、「根本理由」にぶち当たっているかどうかにかかわってきます。
★総合型選抜や通常行われている探究では、根本理由まではなかなかダイブできません。C2軸パターンです。総合型選抜では実際にはここまでで十分です。ここから先は、哲学の領域ですから、大学に進んでもなかなかという感じです。技術的には大学でも、そのような哲学を必要としないでしょう。
★仮に法学部に進んだとしたら、そのような哲学は、法実証主義的な実用的な法律家にとってほとんど役に立たないかもしれません。
★しかしながら、宇宙科学や文化人類学、脳神経学、海洋学などの未知なる世界を研究する学問、そしてウェルビーイングを目指す市民の生活の仕方としては、あらゆるものを多角的にみて、根本問題を見出すだけではなく、根本理由に行き着いて、どの未来を切り拓くか判断します。C3軸パターンです。
★このC3軸パターンで連携することは、難しいし、得難いのです。現状ではC2軸パターンまでの連携が限界でしょう。それでも、外部団体と学校の了解のギャップがありますから、そこをクリアするには、常にコミュニケーションのときの新しいツールを創造する必要があります。ここがクリエイティビティの必要なところです。ギャップを埋める梯子や媒介装置などのつなぎは、新しく可視化しなくてはなりません。
★さて、現状で、A軸パターンからC3軸パターンまでお願いできる人材は、どこにいるかというと、そこまでのコンサルタントはなかなかいません。だいたいは、C1軸パターンで行う方が多いでしょう。というのも、それ以上は、一般にコンサルタントは、深入りしすぎると考えるからです。
★実用的真理でビジネスは十分だからです。
★哲学的真理は、個人の問題だということでしょう。しかし、すべての生徒がそれぞれの才能を見出すには、生徒と共にC3軸パターンまで広げたり深めたりするファシリテートが必要です。ここまでできるのは、神崎史彦先生だと私は思っています。
★もちろん、神崎先生は頼まれなければ、深入りはしません。しかし、依頼の仕方が曖昧だと、神崎先生はどこまで行えばよいのか迷うし、生徒を目の前にしたら、C3軸パターンまでやるでしょう。けれど、それはビジネスマンとしてはやりすぎです。ボランティアになってしまいます。
★にもかかわらず、やってしまうのが神崎先生です。学校が依頼する時、連携のパターンを知っていれば、そこは解決するのに。
★そもそも勤務校で依頼しないのかといわれるかもしれません。依頼したいのはやまやまですが、C3軸パターンは、値が張ります。B軸パターンで、C3軸パターンぐらいの金額を要求するコンサルタントもいます。
★逆にC3までやっても、そこまで依頼していないから、支払わないというケースもあるあるです。
★学内に神崎先生のような人材を育成し、外部との連携は、互いに刺激がし合えるようにして、そこはビジネスではなく、新しい社会貢献プロジェクトにしていくことしか学校はできないかもしれません。
★神崎先生のような人材育成やスキルトレーニングには、実際に神崎先生の人材育成講座で個人的に学んだり、書籍を読むことである程度できます。しかし、慧眼の経営陣のいる学校で、お金があるならば、神崎先生に教育コンサルを依頼するのが早道です。もちろん、C3軸パターンだと明快に依頼しなければなりません。
★なお、神崎先生は私にとって盟友であり尊敬もしています。このような連携パターンの明示化ができるのも神崎先生の言動を参考にしています。しかし、癒着などはいっさいございません。念のため。
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