21世紀型教育研究センター クルックフィールズで2050年からシナリオプランニング(2)自然と社会と精神の循環
★クルックフィールズで≪Z世代≫のSGT(スーパーグローバルティーチャー)の様子を見ながら(私は静かに参加するparticipant observer:参与的観察者)、いろいろな思想家の発想をだぶらせていました。まず1人目は、フェリックス・ガタリです。没後30年で再び注目を浴びてている精神分析学的な哲学者です。長い間ジル・ドゥルーズと共に、NHKの言う欲望の資本主義の構造を分析し、その解決策のヒントを広めていました。
★今語られているピラミッド型組織からティール型組織への転換などの発想は、彼らのリゾーム組織分析から派生しているでしょう。このクルックフィールズもまさにリゾーム型というかオーガニック型組織です。そして、このような組織はたんに自然が循環しているだけではOne Earthの包括的な循環はできないのです。
★自然と社会と精神の3つのそれぞれのエコロジーがタコツボになっているのではなく、すべてつながっている必要があります。自然が浄化できる以上のCO2を含む廃棄物は、欲望の資本主義にとっては歓迎なのでしょうが、それでは、自然と経済社会は乖離していき、そのはざまで貧富の差や健康被害を受け、それらの不安定さが、精神を疲弊させるというのは、すでに日常化している景色です。
★精神分析の臨床現場で、ガタリは問題を発見し、深く思索し、最終的にはエコゾフィーという哲学を生みました。「3つのエコロジー」が書かれたのは1989年です。ベルリンの壁が崩壊したときですが、まだそれは地政学的・地経学的な循環の発想で終わっていて、人間の身体・心・人間関係という包括的な精神の健康を蝕むことに社会全体が気づいていたわけではありません。
★21世紀になって、テロ、リーマンショック、トリインフルエンザの拡大、IT革命のバブルがはじけ、さらにCO2による地球温暖化がもたらす気候変動が身近な出来事として迫ってくるようになって、ようやく2015年SDGsという地球市民一人一人が自分事として行動しようというアクションが生まれて初めて、やっとエコゾフィー的な発想が可視化されてきました。もちろん、その動きはすでに1970年代にあったのです。私が敬愛するドネラ・メドウズとグロ・ブルントラントの活躍が始まった時ですね。同時代人のガタリが、それをキャッチしていなかったはずはないのです。
★今回非常におもしろいのは、かつて欲望の資本主義を生み出してきたのは官僚組織と企業組織だと言われてきたし、その問題を解決するのがNPOだという先入観が見事に覆ったことでした。ところが、このフィールドの運営は株式会社なのです。そして、自治体との協力や支援も大いに受けています。その会社というのは、小林武史さんが経営する株式会社とクロックフィールズを運営する株式会社によるのです。
★実はなぜ欲望の資本主義となるかというと、システム思考的には、化石燃料や多様な資源の収奪構造にあります。この構造は、先進諸国と途上国の格差によって成り立っていますから、この根本構造を変えない限り、SDGsは達成されません。今回のロシアのウクライナ侵攻が、世界的反動に向かうのではないかという懸念もあるし、本格的に化石燃料からの離脱を模索するのではないかという、両面の考え方やアクションがあるのは、化石燃料の問題性を見えるようにしていますね。
★クルックフィールズのすてきなところは、株式会社が資本主義システムを活用する時、化石燃料からメガソーラーパネルをエネルギー源にしているということです。SDGsの流れで、電力を売ってもいますから、最近議論されているステークホルダー資本主義とか倫理的資本主義などの流れを実現しつつあると言えましょう。
★最近小さな街が、自然エネルギーで復活しているという例は世界中にあります。ただ、クルックフィールズのように徹底した循環システムを構築しているかというと、それはまだまだですね。それでも、部分的にでも循環型のコミュニティが地球上にできれば、やがてそれは結びつきますから大きな流れになると思います。
★そうなると、2050年からバックキャスティングして社会を考察し、その社会を生み出す人材育成をする教育を議論している中で、SGTが見つけたクーポン制はおもしろいことになります。
★SGTが議論していた話は、メタバースを接続すれば、いわゆるDAO組織システムが回り始めるので、新しい通貨制度にむずびつきます。今でも、すでに、元MITメディアラボの所長伊藤穰一さんが、その流れのためのアクションを起こしていますね。そういえば、それも千葉県での話ですから、どこかで同じ県ですから結びつくかもしれません。
★自然と経済社会が結びついているのは、このフィールドを散策すればすぐに了解できますが、それとマインドがどう循環するのか?それは今回ファシリテートをしてくださったクルックの2人のスペシャリストの話から実感できました。
★彼らは、哲学を持ちだすと理解が遠のくので、楽しんで理解してもらうアートやテーマパークのような要素も盛り込んでいますと語ります。しかし、その前提には哲学があるから、そう語るのです。哲学がいらないのではなく、企業としてマーケットをつくるときに、哲学ブランディングはしないよといっているだけです。でも、その背景にはジョン・レノンや草間彌生さんのアートコンセプトにピンとくる哲学感性=エコゾフィーがあるわけです。彼らの哲学は、音と共鳴し、目で感じ、鼻で吸い込み、手で触れ、舌で味わうときに生まれる3つのエコロジーがつながる身体脳神経全体の開放系を実践する駆動力です。
★そこには、ガタリのエコゾフィーと共通するものがあります。緻密に循環システムをつくる数学的計算とサイエンス的な知識や技術をコンセプト化する、しかもそのコンセプトは、スタッフ間のディスカッションから最初は言葉で生まれてきますが、アウトプットの時には、体験型の五感を活用するものになっています。このロジックと感性のルビンの壺のような反転をしかけるは、すでにヴィトゲンシュタインが語る論理と言葉の哲学そのものですね。
★Z世代は、しかし、そんな古い昔の話からは出発しません。いまここに集中して、そこからその哲学に自分たちで一気呵成に行き着く能力があるからです。
★なぜなら、ガタリにしても、フィールドワークという現場の中で、行き着いたのがエコゾフィーです。ガタリしかできないというようなハードルを上げるのは、職業哲学者が創り上げてきたそれもまた欲望の資本主義システムの悪循環です。
★私たちは、誰もが、それぞれのペルソナをいかしたスペシャリストであり、仮にそれが今の世の中で経済にならなくても、自分たちで3つのエコロジーを結びつけて、そこに新たなエコゾフィー的な経済社会を作ればよいのだということになるでしょう。
★論より証拠、クルックフィールズが、牧場をエコゾフィーフィールドにトランスフォームして新たな価値を生み出し、新たな経済システムとして再構築しているのですから。
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