ウェルビーイングを今の教育で持続可能にするためには、ウェルビーイングをリフレーミングできるかどうかだが。(1)メンタルモデルの場合
★パンデミックと働き方改革が重なって、ここにきてウェルビーイングという言葉やそれについての政策が注目されています。すでにOECD・PISAや世界経済フォーラムから幸福度などを可視化するデータがでたりして、話題になっていました。というより、自分や社会の幸せについて感じたり考えたりしない人はいないはずです。よほど、幸福でないシステムが出来上がり、幸せを感じない日々を送らざるを得ない日々になっているのかもしれません。
★ウェルビーイングは、かなり主観的なもののように思われています。しかし、主観はそう感じる「何か」がないと生じません。その「何か」に対し、どう感じそれにどう立ち臨むのかは、無意識の中にある精神的な駆動力が関係しているとよくいわれます。ああ、それからその「何か」をどのように認識するか、どんな思考力が働くかもポイントです。
★世にある多くのメンタルモデルについての分厚いテキストは、しかしながら、メンタルモデル座標の第3象限でかたられがちです。まるで、世界は自分のために信念をもち、まずは自分のことをどう思いどう行為する人間なのかが大事なのだという指標と自分より大きな存在があるかもしれないが、そんなものは自分には関係ないという指標に囲まれた第3象限があたかも世界のすべてだという設定です。
★したがって、ここでは、トラウマが満ちています。そこから抜け出ることがウェルビーイングなのだという論考が多いですね。偏差値はそのわかりやすい事例です。勝ち組負け組というトラウマシステムをつくり、勝ち組同士でル・サンチマンを働かせ、格差の中で失望や絶望を募らせていく人々を生み出すシステムです。トラウマは、その前提が孤独なのです。
★しかし、私たち人間は、自分では光を見ることもできないし、音を聴くこともできないのです。五感はすべて外界との循環のプロセスにつながっているのです。孤独を社会も自分も正当化している第3象限は、世界のすべてではありません。
★したがって、その循環から隔離されている状況認識や判断をせざるを得ないシステムからまず解放されることが肝要です。
★それは、認識や判断や感性のシステムなので、学びによって解放への光が見えてきます。しかし、その学びは、一方通行型授業では見えてきません。むしろ強化されさえするのです。だから、PBLなどのディスカッションやワークショップを活用する授業を拒否することは、その第3象限に生徒を閉じ込めておきたい、労働者を閉じ込めておきたい、雇用者を閉じ込めておきたい「何か」の力が働いています。権力者すら第3象限に閉じ込めらています。
★ですから、トラウマという第3象限が世界のすべてであるという正当化システムが、そのトラウマ発生装置となっているのです。トラウマは、憎悪と嫉妬と羨望といったル・サンチマン発生装置であり、それを撃退するために教育がある、入試がある、多様な社会システムがあるのだということになっていくわけです。
★第3象限内の負のループというシステム思考。しかし、システム思考はそのシステムがネガティブなシステムでそれをポジティブにシフトするという正当化システムを見破るメタシステム思考の次元も持ちえています。
★トラウマから解放されることを信念としていると、そのメタシステム思考ができず、せいぜい社会システムのせいにして終わる可能性があります。
★そして、ウェルビーイングは主観的な要素が大きいですから、ネガティブな状況が少しでもプラスに転じればポジティブに感じるのです。相対主義の罠というやつですね。でも第1象限から見ると、その状況はネガティブにしか見えないかもしれないのです。これもまた相対的なものにすぎないかもしれませんが。それにしても、すでにことわざに、五十歩百歩とかもっと強烈なものがありますね。
★社会的存在として人間のメンタルモデルは、どれが正しいというわけではないのですが、複数の象限に立っている人同士が語り合う場が必要です。それができないのは、社会システムにもちろん問題がありますが、学びは、システムから自律できます。自分の言動がどのようなシステムの影響を被っているのかクリティカルシンキングを作動するトレーニングはすでに欧米では行われています。
★世界標準を参照する必要があるのは、日本の教育や社会が第3象限に陥没しているのではないかということをモニタリングするためでもあります。そのために英語とリベラルアーツが初等中等教育段階で必要なのです。
★メンタルモデルのリフレーミングをまずはするとよいのですが、そのために英語とリベラルアーツが役に立つのです。この1歩が、ウェルビーイングの希望の光を放つ拠点ですが、ここだけでは、まだその光は弱いのです。まだまだリフレーミングをする領域はあり、そこから希望の光を放ち、それぞれの光を束ねてパワフルにしていってようやくウェルビーイングの話が現実味を帯びてきます。
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