私学展で~かえつモデルの影響力大
★私学展で、かえつ有明の宇野先生(広報部長)と内山先生(広報主任)に会えました。同校の教育モデルの影響力は私立中高マーケットで大きくなっています。またそのマーケットは新しい価値づけがされている部分です。
(写真は、同校サイトから)
★ほぼすべてのクラスでディープラーニング(アクティブラーニングの同校の呼称)が行われているし、国際生の割合が30%近くになっていて、グローバル教育も一般生にしっかりと共有されています。
★今流行りのDXは、1人1台BYODスタイルで自在に実行されています。
★SDGsをはじめ多くの体験学習や研修旅行はSEL(Social Emotional Learning)ベースになっていて、心理的安全性を足場にしています。
★以上の学びの環境は、生徒自身が自由に発想できる状況を生み出し、コミュニケーションも共感的になっています。いわゆる御三家レベルの知が個人主義的で垂直的序列的な学びの環境になっていると高く評価しているメディアによって、現状の良好な市場ポジショニングを得ているため、学校自身は、戦略的に受け入れつつも、本質的には水平的多様性をベースにしているのだということを建学の精神の持続可能によって守り続けている苦労をしています。
★幸い、偏差値だけが学校選びや生徒の才能をとらえる指標ではないという風潮が大きくなりつつあります。それら指標のどれを選ぶかは時代によって変わります。ですから、その変化に程よい距離をとりながら戦略的に対応しつつ、経営を守り、本質部分は不変の構えでいるのが御三家モデルの学校です。その創意工夫と苦労はたいへんなものです。
★一方かえつ有明は、市ヶ谷から今の有明の地に移転する段階で、校名変更、共学化をしたので、垂直的序列的な価値観と水平的多様性の価値観のどちらを選ぶか、しばらく学内論議が続きました。
★決着がついて、水平的多様性の価値観で進むとなったのは、6年くらい前だったと思いますが、それまでは同時進行だったと思います。
★今ではすっかり偏差値も高くなっていますが、以前はそうではなかったので、偏差値競争で学校の魅力を広げるか別路線で進むかについて、両方の柱が併存していました。なぜ併存できるかというと、国際生入試が人気になり、国際生が満足する学びの環境を設定しなければならなかったという現実的な経営が必要とされたからです。
★そして、国際生クラスを創らず、取り出し授業クラスを設定していったので、一般生にもその影響は波及しました。そうすると国際生の現地校でのコミュニケーションスタイル型で、正解が1つではない思考力を養成する学びの場を創らざるを得なかったのです。
★それは総合的な学習の時間をうまく使いました。結果的にここで得た授業のマインドとスキルは、各教科にも染みわたりました。広報部長の宇野先生は国語科教諭でもあります。最終的には生徒自身が自ら学んでいく環境として、中3のある段階からは、授業デザインを生徒自身が行い、生徒が授業をしていく機会もつくります。宇野先生は完全にスーパーバイザーになるわけです。
★そして、高校から1クラスプロジェクト科をつくり、高校入試も実施するようになります。宇野先生の授業は、教師はスーパーバイザーで、生徒が自ら学びをデザインしていき、もちろん協働もしていくというものですが、それは現在騒がれている「探究」の先駆けですね。
★そしてあるとき、すべてのクラスでディープラーニングをやろうということになり、国際生の学びの環境、総合学習の環境、プロジェクト科の学びの環境という3つの流れが合流して、教育インパクトを入試マーケットに与えたわけです。
★もちろん、ここに到る過程はこんな図式的に単純ではありません。内製研修が頻繁に行われたし、それぞれの教師が持っているネットワークを授業やイベントにつなぎました。ケミストリーが起こったわけです。
★このような今のそしてこれからのかえつ有明のビジョンを示す印象的なキーワードは、前嶋校長の語る“Co-Learner”です。生徒も教師も一人一人が自分の興味と関心を広め深め、協働して未来をつくる。社会課題を解決するアクションを起こすという意味合いがあるのでしょう。
★そして副校長の佐野先生が、そのような人間力づくりの土壌をしっかり作っています。
★しかしながら、入試市場は水平的多様性の価値を大切にするかえつモデルだけがあるわけではなく、まだまだ垂直的序列価値観が支配しているわけです。
★その両方がある意味葛藤を起こしている市場なわけです。その最前線に立ち臨んでいるのが宇野先生と内山先生です。宇野先生は国語科、内山先生は英語科です。共感的なコミュニケーションと国際生の環境を十分に理解したうえで、あるときは戦略的コミュニケーションパフォーマンスを市場ではアップさせる必要もあります。
★ある意味清濁併せのむ役割を覚悟を持って行っています。2030年問題が生徒に迫っています。もちろん、私たちにも。この局面を打開するには、宇野先生や内山先生のようなリーダーシップが求められています。最前線と現場とバックヤードを循環させられるリーダーですね。
★かえつ有明の人材育成のコアなねらいが“Co-Learner”たれというのは実に参考になります。
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