しゅとも7月号(01) 首都圏中学受験業界が開く日本進化論
★7月3日合判模試が開催されました。首都圏模試センター主催です。そして、同時発刊された中学受験情報誌が「しゅうとも7月号」。情報誌の編集をがらっと変えていて、興味深いですね。情報誌ゆえ、当然ながら国内外の教育のトレンドに敏感です。一方で、ルビンの壺よろしく、新しい潮流を創る側でもあります。
★従来の情報誌は、データと情報による編集がメインでしたが、「しゅとも」は、それらに加え、時代牽引ビジョンデザインを前面に出し、その背景に思考コードというコンセプトレンズを埋め込んでいます。
★随分前に落合陽一さんが「日本進化論」の中で、スポーツのWell-beingについて述べていますが、それがいよいよ中学受験にも降りてきています。
★きわめて重要なキーワードです。「しゅとも」には、時代を読むトレンドとしてキーワードが満載。「Well-beig」をはじめ、「リベラルアーツ」「SDGs」「新タイプ入試」「STEAM」「グローバル」「ICT」「プロジェクト学習」「探究」「システムデザイン」・・・。
★それからトレンドというより暗黙知をトレンドな形にするキーワードとして「思考コード」「トランジション」など。
★一見体系的でないけれど、すべてがちゃんとつながっています。というのも「しゅとも」は入試問題という「問い」の泉をカタチとしてデザインしているからです。「問い」とは体系的であり、同時に体系を崩す連鎖です。中学入試問題のおもしろさは、思考をパターン化させる「野暮」なものばかりになるのを嫌うところです。少し崩しますね。その崩し方が「粋」なのか、「気障」なのかは、それぞれの学校の問いのセンスに拠ります。
★麻布の問題が他を圧倒して人気なのは、問いと思考の表現が「粋」だからですね。
★首都圏模試センターは、もしかしたら江戸文化を継承しているのかもしれません。「粋」な世界をデザインし直そうとしています。
★まさに日本型教育というわけですが、文科省の表現では、「野暮」です。そんな違いもおもしろいですね。
★産業構造審議会「経済産業政策新機軸部会」が、今年6月13日、「経済産業政策新機軸部会 中間整理」(産業構造審議会 経済産業省)を公表しました。審議の過程で、経産省の資料に、新機軸のグランドデザインのようなビッグピクチャーがガチっとだされていました。すかさず、落合陽一さんは、こういう発想がつまらないと指摘。出来上がっているようでいて、結局何も生まれないということなのかもしれませんね。
★いつもは、だいたい審議会の過程で使われた資料やデータは、中間報告やまとめの段階でちゃんと活用されるのですが、今回はその図は削除されていました。落合陽一さんの影響力すごいですね。
★でも、落合陽一さんは、アナーキーではまったくありません。岸田総理と同窓ですからね。高橋是清的な発想は文化遺伝子としてあるでしょう。文化遺伝子というより普遍的遺伝子なのかもしれません。グランドデザインは、デノテーションでは、作用しないので、コノテーションとして埋め込むということです。
★世の中は、見える化や可視化など重視するようになりました。確かに大事なのですが、コンセプトレンズは、見える化で終わるとただの絵です。暗黙知に戻さないと。どんなによいことをやっても見える化しないとねと言われます。私もそう思いますが、暗黙知としてそんなによいことがあるというのが、真実で、それこそ価値ある事でしょう。
★価値の転倒をもう一回転してもとに戻す。元の木阿弥ととらえるか、進化ととらえるのか。
★ともあれ、「しゅとも」も、大きな絵はあえて描いていないですよね。それがあると息苦しいからです。いまここにダイナミックに現れている事象を虚心坦懐にとらえ、楽しみ、希望の糸口を見つけ、それを理論化するのはなく、デザイン化してしまう。
★アーティスト的な感覚が編集者の方々の発想なのでしょう。暗黙知の豊かさを見抜き、それをデザインとして表現する。
★私自身は、メタとベタの使い分けが「粋」だと思っているのですが、なかなかバランスが保てません(汗)。精進しなくては(笑)。
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