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2022年7月

2022年7月31日 (日)

聖パウロ学園 カトリック学校対象の大学入試に向けての講座(4)根源的なるものと自己~「自由と自由」

★根源的なるものを見つけることなどどうやって?しかも、根源的なるものを見つけるとそれに抵抗するあるいは排除しようとする根本的な問題も見えてくるのですから、このチャンレンジは果てしない物語になります。したがって、今も解決していないし、これからも私たちはその冒険に出るマインドを継承していく必要があるのかもしれません。

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★そのような冒険心は、自由がなければ湧いてこないものです。そこで、「真理はあなたたちを自由にする」というヨハネの福音のことばについて思索しました。ヨハネが物語る「自由」と自分の信念を支える「自由」の違いについて、そしてその両者の関係を見つめていくというワークショップをやりました。

★サンデル座標を使いましたが、この座標に「リバタリアニズム」「コンサバ」「リベラリズム」「コミュニタリアニズム」などのキーワードはいれませんでした。それらキーワードの意味に引きずられないように、純粋に「自由」にフォーカスするためです。

★それにサンデル座標は、このキーワードがなければ、さらに自由に思考できます。

★たとえば、生徒によっては政治的というのを「統治」と解したり、「権力」と解したり、「制度」と解したり、やはり様々でした。「経済」という点に関しては、「市場」というより、圧倒的に「生活」でした。

★たしかに、バブル崩壊後に誕生するZ世代にとっては、生活は制約の多いものです。そして最近ではコロナ、ウクライナ、気候変動とその制約は生活を直撃しています。いったいどうしたら生活はもっと自由になるのか、ビル・ゲイツのように大儲けしなくてもいいから、自由な生活をおくるにはいかにしたら可能かは、切実な問題だし、極めてリアルな体験です。

★ハートスクエアとサンデル座標というツールをトリガーにして、ディスカッションしていくと、パウロのZ世代は、制約の中の自由という感覚がt多勢でした。しかも、その制約は制度設計という捉え方に発展していきました。制約から解放されるというよりも、生活の自由を保障するための制度設計としての制約は大切だという話なのです。

★だから、キリスト教の「自由」は、あらゆるものから解放されるから政治的にも経済的にも自由なのだとなるわけです。サンデル教授のアリストテレス=トマス・アクイナス的な感覚では、両方とも善き制約となるコミュニタリアニズムが真理はあなたたちを自由にするという意味でも自由になるのではと思っていたのですが、Z世代は究極の自由はリバタリアニズムだとなるわけですね。

★でも、自分の自由は人間なのだからそこには位置しない。むしろコンサバなんです。でもその保守性は、私たち団塊世代に近い世代がイメージする愛国ではないのです。well-beingを保証する制度設計なのだというわけですね。

★私は、新しい学びを提唱する側の人間で、体験を重視するワークショップも手掛けてきましたが、パウロのZ世代と対話して、そんなフィクションの体験をプログラムするより、このパンデミック・ウクライナ・気候変動といういまここで彼らが実際に生活をしていること以上にリアルな体験があるのかと、反省させられました。

★自己変容を目標にして生徒と歩んでいるわけですが、自分が、この歳になって自己変容する契機をもらったわけです。感謝。やはり昭和の古い習性は終わりにしなくてはなりませんね。

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2022年7月30日 (土)

聖パウロ学園 カトリック学校対象の大学入試に向けての講座(3)根源的なるものと自己~「信仰と信念」

★「世界の作り方」ワークショップのあとは、「根源的なるものと自己」ワークショップ。志望理由書を書くにしても、小論文を書くにしても、未来を見通すにしても、自己というスタンドポイントをどうするかはとても重要。このスタンドポイントを自分軸と言ってもよいのですが、軸というと固定的なイメージになってしまいます。でも、地球の地軸も実はある範囲で傾きが変わります。自分軸も柔軟なのです。そこに気づけば、教条的な自分から解放されるのですが、そこで悩む生徒も現段階ではいます。大人になってからも頑なな自分に支配されている自己に気づかない場合も多いのです。なんとかそこから解放されてほしいのですが、出来ない場合もあります。ですから、その解放のきっかけづくりは18歳成年になるまえに行っておきたいわけです。

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★この後半のワークショップの始りは、「信仰と信念」の違いから始まります。信者でない生徒が多いですから、信仰はもっていないのです。でも信念はもっています。カトリック系の大学に進むには、信仰と信念の関係を意識しておく必要はあります。信仰はもっていないけれど、自分の信念は、信仰を持っている他者と共感できるのかどうか?

★その信仰はしかし本当に信頼性と正当性、妥当性はあるのか、その判断はいかにしたら可能なのか?そして、自分の信念は、独りよがりだったりエゴだったりしないのか、それをどのように検証できるのか?

★演繹的推理(デーダクション)も帰納的推理(インーダクション)も限界があります。何せ正解が1つではない話ですから。ですから仮説的推理(アブーダクション)が必要です。

★「もしも~ないとしたら」と多くの視角から、多くの仲間と対話をするしか今のところ方法はありません。

★こうして、現状で対話しつくした仮説的信念というものに気づき、信仰と信念の差異を了解し、相互リスペクトができる次元に達する対話をしていきます。

★結局、根源的なるものは、何か固定されたものではなく、常にこの信仰と信念の両極の関係性、両極それぞれの信頼性、正当性、妥当性の関係性だということなのでしょう。

★この根源的関係性との対話が自己変容マインドの連続体を生み出すわけです。VUCAの時代とは、内面がVUCAだというところにいきつきます。そこを乗り切るには、根源的関係性の中の信念を了解することだったのです。

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聖パウロ学園 カトリック学校対象の大学入試に向けての講座(2)ワークショップツール~ハートスクエア

★講座「宗教と現代社会」は、前半30分は「世界の作り方」ワークショップ、後半60分は「根源的なるものと自己」ワークショップです。その両方のワークショップで使うツールはいくつかありますが、昨年来使ってなかなかよいなあと感じているのがハートスクエアポストイットです。伊東先生もお気に入りです。

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★文章や図、写真などをみて情報収集理解するわけですが、そのとき感じたことは♡型のポストイットに書き留めます。客観的な情報や事実に関連するものは▢型のポストイットに書き留めます。

★文章や図、写真のみならず自然現象や社会現象、人間と出遭ったとき、私たちは非認知的能力と認知能力の両方を働かせているあるいはその二つの能力が反応している自己に出会います。日常生活では、その自己を立ち止まって見つめる時間はないのですが、このようなワークショップではその自己を見つける時間を設定できます。それがハートスクエアポストイット活用で自然体でできます。

★キャンパスが森に包まれているということもあるですが、森の中で瞑想などしなくても、ハートスクエアポストイットに自らをみることもできます。

★そして、チームでシェアします。互いを知ることができます。いつもの仲間なのに、いや仲間だからこそ新たな発見があり、化学反応も生まれます。静かに自分を見つめながら開放的な精神が広がっていく時間です。

★そして、しばしばチームでどんな感じだったかプレゼンする機会も設けます。

★そのときは、1人ワンセットのプレパタ(プレゼンテーションパターンランゲージカード)を配ってあるので、どんなプレゼンをするのかプレパタを見ながら思いめぐらして臨みます。これもまた、自己を見つめ、互いに世界に巻き込み巻き込まれる行為です。

★おそらく、このようなワークショップで自己を再発見すると結果的に志望理由書を書く時にも役立つでしょう。

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聖パウロ学園 カトリック学校対象の大学入試に向けての講座(1)世界の作り方=数学的発想

★勤務校聖パウロ学園の夏期講習の前半が終わりました。新型コロナウイルスの感染第7波になったので、最小限高3対象に絞って行っています。というのも、パウロ生の多くは、推薦型や総合型選抜を受ける生徒が多いため、対面型のほうが深堀出来るからです。家庭内感染などで自宅待機中はオンラインでも対話します。

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★しかし、それは志望理由書とか小論文とかある程度出来上がりが近くなって場合で、そこまでの準備段階は、複数でディスカッションしたりワークショップをして、柔軟な複眼思考を耕す準備過程が必要です。

★数学科の伊東先生と私が受け持ったカトリック学校対象の入試の準備のための講座も、ワークショップが必須です。

★この講座は「宗教と現段社会」という講座で、実は直接志望理由書や小論文対策を行う講座ではないのです。カトリック系の大学を志望しているからといって、聖パウロに限らず、他のカトリック学校の場合も、洗礼をうけた信者とは限らないのです。むしろ信者の生徒は極めて少ないのです。

★カトリック大学側も、信者であることを求めてはいません。しかしその一方で理念やアドミッションポリシーでカトリック的なマインドは要求されます。神学部でない限り、そのポリシーに、宗教的な用語や聖書の言葉が前面にでることはありませんが、背景にはやはりあります。

★法学部や政治経済、国際教養関係の学部で、優勝劣敗発想や富裕層の全面的肯定、格差社会の肯定という価値観では、なかなか難しいはずです。もちろん、価値観の制限や押しつけをしようというのではありません。

★ただ、カトリック大学という他者の価値観を尊重できるかどうかは重要です。勤務校の生徒は、もともと神父やシスターが常駐しているわけではなく、1人ひとりの内面に黄金律が響いていることを日常の生活の中でシェアしていくことを重視しています。というわけでカトリック大学を真正面から拒絶する生徒はいません。

★ただ、宗教のデメリットに関してはきちんと感じることができます。宗教の光の部分だけをみて、カトリック大学のマインドを受け入れるのではなく、デメリットの部分も理解したうえで、そこを自分なりにどう乗り越えていくか準備することも大切なのです。

★そういう柔軟で複眼思考が互いにできるのか、確認したり、気づいたりするワークショップが20分から30分あります。身近な問いについて、個人ワーク→シェア→個人ワークあるいは合意形成などのワークショップを行っていきます。

★ここで展開される題材は、まったく宗教とは関係ないように見えますが、基本的にアリストテレス=トマス・アクイナス的なリベラルアーツ的な視点が身についているかどうかモニタリング=メタ認知=エポケーできるようになっています。

★この哲学と神学の融合体は、結局は数学的発想だし、数学者で哲学者でもあるグッドマンが提唱したシンプルな世界の作り方の5つぐらいのアプローチを体験できます。

★このワークショップの企画運営は数学科の伊東先生とコラボしなければできませんでした。まさに文系人の私との文理融合的なワークショップになりました。全6回ですが、生徒は自分をとりまく先入観など多少払しょくできたと思います。できなかったにしても先入観にとらわれている自分をみつめなんとかしたいという気持ちは湧いたと思います。

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GWE 神崎史彦先生と対話 C3に飛ぶ生徒が生まれる学校や入試

★昨日、鈴木裕之さん(GLICC代表)が、主宰するGWE(GLICC Weekly EDU 第89回「 カンザキジュク代表 神崎史彦先生との対話ー探究ベースの学びと生徒の成長」)で、神崎史彦先生と対話しました。

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★神崎先生は二子玉川にカンザキジュクを展開し、鈴木さんは桜新町にGLICCを展開しています。このエリアは、田園都市線のプレミアムエリアと呼ばれ、その中でも進取の気性に富んだ市民が居住しているといわれています。

★そのような環境で新しい学びを実施しているために、お二人の運営する学びのプログラムなどは尖っています。したがって突き抜けた対話が2時間にもなりました。

★1時間以上は、C3に飛んでしまう生徒がたくさんいる学校やそのような生徒に刺激を与える入試などについて話が続きました。神崎先生は聖学院のGIC(グローバルイノベーティブクラス)でリベラルアーツの授業を実施しています。鈴木さんは、東大をはじめとする大学の帰国生入試で数々の実績をだしています。

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★両者の実践は、まさにC3に突き抜けていく生徒が生まれる授業ですから、リアリティのある対話になりました。そして、他の学校についても紹介がなされていきました。

★後半は、神崎先生の著作をトリガーとして、C3の生徒が生まれる学びのシステムについて深堀りしました。特に3つのチャートをめぐっての話は、グローバリゼーションやイノベーションの概念を拡張するところにまでいたったのです。

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対話は、あっちこっち飛びながらも、C3領域の発想に突き抜けていくものだという実感を抱けた対話になりました。神崎先生、鈴木さん、ありがとうございました。

 

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2022年7月27日 (水)

聖学院 新しい教育の圧倒的設計思考

★7月16日の私立高校進学フェアの参加校の1つ聖学院のパンフレットを拝見しました。表紙は、男子生徒のの好奇心の眼とSTEAMの環境が重なっている様子がすぐに了解できるデザインになっています。そして表紙をめくっていくと、圧倒的な教育デザイン思考がせまってくる見開き1ページが感動的です。

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★6年間一貫教育を見開き1ページで表現すること自体は、そう珍しいことではありません。しかし、他と違うのは、縦軸の項目です。

★一般的には、コース別の項目だったり、科目別だったり、キャリアデザインなどのカテゴリー分けが多いのですが、聖学院は違います。

★「オンリーワン教育」「探究型授業」「STEAM教育」「グローバル教育」「学習・進路指導」という項目で構成されています。

★これらのカテゴリーは、部分的には行われているところもあるでしょうが、生徒全員が6年間学ぶプログラムができているというのは、稀有です。

★男子校は進学中心校が多いので、科目別のプログラムは非常に充実しています。しかし、教科横断型は、部分的には行われますが、学校全体では取り組めないのは、時間割の作成上しかたがないのです。

★もちろん、各教科で探究型の授業展開はできますが、「国語」「数学」「理科」「社会」「英語」などの科目のインデックスが立つと、わざわざ教科横断型にはしません。興味と関心がある教師が行うことは当然あります。

★一般のメディアは、その特別なところを取材しますが、それが学校全体の取り組みなのか、一部の教師のチャレンジなのかはめったに記しません。

★最近、保護者もそのことに気づいて、学校の取り組みなのか、その教師の取り組みなのかは、チェックするようになってきています。

★男子校の中で、聖学院が特別というか独自というか、そういう特色が抜きんでているのは、この学校全体で新しい教育を取り組んでいるところです。そして、この取り組みが、世界に通じる教育であるという点もまた重要なのです。

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2022年7月25日 (月)

海外大学進学準備教育定着(05)八雲学園 海外大学進学準備教育は教育の総合力が土台

★「shuTOMO7月号」で、大学に進んでも、さらに社会に出てからも、グローバルリーダーとして活躍できる人間力を形成する教育の総暴力が土台になっている八雲学園を紹介しました。その総合力は、広く深いので、7月号では、同校の破格の「グローバル教育」のプログラムを紹介しました。OGの豆塚先生(数学科)、ボッサム先生(英語科)のインタビューを参考に、八雲学園のグローバル教育によって生徒がいかに自己変容型の成長ををしていくのかについて述べました。

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★一般に成長の仕方には、3つあります。1つは環境順応型成長です。指示されたことは卒なくこなすことができるようになるのも成長です。2つめは、与えられたチームの中で、主体的に積極的にイニシアチブをとっていくリーダーとして成長する自己主導型成長です。誰かに指示されて動くのではなく、そのチームが最良の状況になるようにリーダーシップを発揮していくのです。

★3つめは、自己変容型成長です。これはあるチームのルールが、現実に合っていない場合、メンバーとディスカッションして、改善をすることができるメタ認知能力を発揮できるリーダーです。グローバルリーダーは、文化や習慣など各国のルールが違いますから、その違いが起こすコンフリクトを解決する手腕を発揮します。そのためには、自国のルールが正しいと主張するだけではなく、互いのルールの正当性や信頼性、妥当性をメタ認知し、第三の合意を創造するように互いを巻き込むイニシアチブをとることが肝要です。

★自分のやり方にこだわるのではなく、最適解を求めて自分も他者も変容していく勇気とアイデアと技術を生み出せるように育っていくこの自己変容型成長を生み出すのが、八雲学園の教育の総合力の面目躍如です。

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先日、同校の高1全員が、中3の春休みに旅立つはずだったUSBAの海外留学に出発しました

★このような教育の総合力を土台に、ラウンドスクエア加盟校のハイレベルな高品質のグローバル環境及びUPAA(加盟海外大学に推薦入学できるコミュニティ)などの柔軟で強固なシステムも有しています。

★海外大学進学準備教育は万全ですし、世界大学ランキング100位以内の海外大学にも毎年合格しています。

★この同校の教育の総合力について、副校長菅原先生と対話をしている動画があります。ぜひご視聴ください。

 →GLICC Weekly EDU 第78回「八雲学園 菅原副校長先生との対話ーVUCA時代のグローバルリーダーが育つ学校の条件」

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2022年7月24日 (日)

海外大学進学準備教育定着(04)成立学園も着々

先週金曜日、GLICC Weekly EDU 第88回「成立学園中学・高等学校 宇田川知己先生との対話ープロジェクト&探究で開かれる生徒の未来」で、宇田川先生と対話をしました。生徒全員がナショナルジオグラフィックを購読し、グローバルな教養を身につけています。また、同校教師によるアカデミックツアーというスペシャルな講座も実施しています。骨太の探究論文作成のプログラムも実施されています。

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★これらは受験学力をはるかに超えた探究する能力を生徒が主体的に身につけ大きく成長する土壌になっています。

★そして、このような探究をベースとした学びは、ストレートに海外大学進学準備教育につながります。

★同校では、海外大学推薦制度も導入しているのです。そして、実際成果がでています。

★成立の探究ベースの学びは、生徒1人ひとりがやりたいことをなんでもやり抜いていく場となっています。

★好きなことからはじめ、それをさらに広く深く探究し、大学に進んでもそれは継続していくという未来の見通しを、学園生活といういまここで見つけることができるいや実感できる学園です。

★詳しくは、GWEの動画をご視聴ください!

 

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海外大学進学準備教育定着(03)自由JAPANの拠点GWE

★海外大学進学準備教育市場がどんどん拡大していることは大歓迎です。しかし、市場は純粋で本物志向はトレンドにはなりません。あのダボス会議やNHKでも欲望資本主義はなんとかしなくてはとなっています。ステークホルダー資本主義だとか倫理資本主義だとか議論がなされています。

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★しかし、それはそう簡単にうまくいかないでしょう。NHKで落合陽一さんとよく登場するドイツの哲学者マルクス・ガブリエルさんは、資本主義なんてのは、近代の産物ではなく、人類が誕生と同時に生まれたのだと。アリストテレスも人間は社会的存在だといってます。もっというと資本主義的社会の存在だということかもしれません。

★まあ、それはともかく、第二次世界大戦のときに、イギリスに亡命したド・ゴールが自由フランスを立ち上げ、ルサンチマンと軍事力が共謀した強欲な帝国と闘ったような戦術が、いつの世も有効なのでしょう。

★ということで、鈴木裕之さん(GLICC代表・21世紀型教育機構理事・事務局長)と共同してほぼ毎週金曜日GLICC Weekly EDU(GWE)で発信しています。しかも多くの学校の先生方をゲストとしてお迎えし、本物教育について長々と語っています。

★表層的PRだと、動画は短い方が良いという言われますが、本物はどうやら長々となるわけです。

★帰国生・国際生・海外大学志望者のみならず本物教育を希求されている方が視聴されてくれています。

★もう88回も続いています。海外大学進学準備教育の定着へ多少なりとも貢献している番組です。ド・ゴールの自由フランスにならって、自由JAPANという気持ちで鈴木さんとがんばります。

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海外大学進学準備教育定着(02)帰国生・国際生入試が注目される時代

★海外大学進学準備教育が定着してきたのは、文科省のIB200校政策や小5・6年での英語教科化の影響も大きいし、2013年から開成学園における大学合格実績の3%を海外大学が占めるようになったというのも市場を刺激したでしょう。さらに、文化学園大学杉並のように、IB級のダブルディプロマのようなシステムを導入する学校が増えたというのもトレンドを創っていったと思います。もちろん、私たち同士校でつくった21世紀型教育機構の影響は実に大きいのです。なんといっても「21世紀型教育」は今や一般名詞ですから。

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文化学園大学杉並のダブルディプロマは、カナダのブリティッシュコロンビア州と提携しています。詳しくは広報担当の染谷先生の動画をご覧ください。

★21世紀型教育機構の同志校の海外大学進学準備教育はすっかり定着し、毎年多くの生徒が海外大学に進学したり、早稲田や立教、上智、南山大学などの留学が単位に認定されるシステムを有している国内大学から世界で学んだりしています。

★この機構を2011年に私たちは立ち上げましたが、本格的に21世紀型教育改革に一斉に着手できたのは、2015年あたりからでした。ですからその一期生がでた2021年は、予定通り海外大学進学者は増えました。

★順調にこのシナリオプランンニングが進行したのは、帰国生・国際生入試にも力を入れ、現地で学んできた帰国生の学びの環境を、国内でもできるようにしたというのも大きな要因だったと思います。

★21世紀型教育機構の動きはいろいろなところに影響を与え、多くの学校が成果を出したと思います。最近では、21世紀型教育機構の同志校以外の学校の成果をメディアが報告し始めました。市場は確実に拡大しています。

★マーケットは、表層的ですが、拡大というのはそういうものです。その表層的な広がりがあるからこそ、本物を見つけようとする進取の気性に富んだ受験生や保護者も増えるのです。

★最近話題になっているニュースと過去の記事ですが、最近アクセスが増えている海外大学進学準備教育関連のホンマノオト21の記事を参考までに並べておきます。

→ 「英検1級の小6がバタバタ落ちる」帰国生中学入試の最難関"渋ズ"合格者のほぼ100%を輩出する英語塾の正体

 →2021年変わる中学入試(14)海外大学へそして偏差値至上主義の無化へ加速 三田国際のデュアル・ディプロマ参入の意味

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海外大学進学準備教育定着(01)地政学×地経学×地叡学

★2013年ころから多くの高校で行われてきた海外大学進学準備教育はかなり定着してきました。相変わらずハーバードだスタンフォードだとかにメディアは飛びつきますが、世界大学ランキング250位くらいまでの海外大学であれば、グローバル教育、PBL、リベラルアーツ、ICT教育を備えている高校からは入れる時代です。

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★世界大学ランキング250位くらいまでにはいっているということは、たいしたことないじゃんと先日言っている方がいましたが、皆さんの大好きな早慶上智などなどの大学は、その範囲にはいっていません。ランキングを出す団体にもよりますが、日本だと250位以内に入れる大学と言えば、東大、京大、東北大学あたりです。だからなんなのとは思いますが。

★学費の問題もありますが、奨学金もありますから、チャレンジする高校生が増えてきました。準1級レベルと哲学や文化人類学などIBのTOKレベルのプレゼンとエッセイライティングのトレーニングをし、自分の信念を貫き通した活動をしていれば、海外の大学は開けます。あまり特別なことをする必要はないのです。

★まあ、そういっても、大学進学ブランド志向はなくなりませんから、海外大学進学準備教育も、結局はランキング競争になるのかもしれません。市場が盛り上がるには、いかしかたがないし、海外大学準備教育が広く定着するには、市場拡大は大切です。

★それゆえ、それはそれで放置しておいて、私たちは、視野を広め、洞察力を鋭く深くし、知の冒険に旅たち、世界の根本問題を掘り起こし、解決できる勇気と知性を生み出す環境を、日本という地政学上危機だけれどバランスオブパワーによる安全を形成できる不思議なアドバンテージのある地で、つくりたいものです。それは平和創造のためでもあります。

★それには、世界の叡智を集約する必要があるので、海外大学進学準備教育をすすめていきましょう。この海外大学進学準備教育は、しかしながら、ストレートに海外大学に進学することだけを狙う必要はないのです。日本の大学に行ってから、留学するのもありなのです。大学院からもありなのです。

★そのような自己変容が起こるには、中高時代、英語とPBLとリベラルアーツ、ICT環境は必須です。特にリベラルアーツは、ミッションーパーパースもしくはビリーフーゴールの循環を生む叡智の泉ですから、これがあれば、生徒の視野はOne Earthに広がります。

★これほど、地政学と地経学が注目された時代も昨今珍しいかもしれません。コロナ、ウクライナ、気候変動は、今や高校生はだれでも探究する3つのリアルな格子点です。その格子点を包括する関数方程式を巡るのが、地政学×地経学×地叡学となるでしょう。

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2022年7月23日 (土)

和洋九段女子 1人ひとりが成長ストーリーを描く

7月16日の私立高校進学フェアの参加校の1つ和洋九段女子のパンフレットを拝見しました。ページをめくるや、<みんな「ストーリー」の中にいる>という言葉が目に飛び込んできました。そして、それぞれの成長を表現する写真が面白いと感じました。

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★1人ひとりのストーリーは、サイトに掲載されています。ぜひご覧ください。みなストーリーは違うのですが、社会課題の解決のためにオリジナリティーを発揮しています。大きく成長しているのがわかります。

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★その成長のエネルギーは、パンフレットにあるように、コネクティッドスクールであることです。

★本当に多くの団体と連携して、貴重な体験を積み上げていきます。多様な体験をつないでいく和洋九段女子は、自己変容の拠点です。

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2022年7月22日 (金)

東京立正の5つの目標 5つの方向から集まる質がさらに融合するイメージ

7月16日の私立高校進学フェアの参加校の1つ東京立正のパンフレットを拝見しました。表紙を開くや、5つの目標がイメージとして一遍に飛び込んできました。このようなパンフレットもいいなあと感じました。

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★目標の1つ目が、実に興味深いのです。<「文武両道の極み」を希求し、授業が面白くて部活動が楽しい学校>とあるのです。「極み」「希求」「面白い」「楽しい」が類義語になっています。

★だから、<「挑戦と失敗」を応援する学校>は成立します。「恐怖」「不安」を払拭する環境は、自らを極めることに面白さと楽しさが大切だからです。

★<「なぜ」を追求する学校>。「追究」ではなく「追求」。開放感があります。開放感は、楽しさや面白さと類義語です。

★そして、格差なんてあると不安だし恐怖だし、ネガティブになります。だからこそ<「全員レギュラー」補欠は1人もいない学校>というわけです。

★これらがそろえば、必然的に<「教室から世界を変える」学校>になります。

★梅沢校長ならではの発想が現場の先生方と共振しているのが目に浮かぶようです。パンフレットの表1のサイズだけが3分の2なのは、なかなかファッショナブルでもあります。

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2022年7月21日 (木)

日出学園のFLYERSが凄い!

7月16日の私立高校進学フェアの参加校の1つ日出学園の資料を拝見しました。生徒の課題活動の「FLYERS」の記事が目をひきました。まるで生徒による企画広報室の運営そのものなのです。

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★ネット検索するとすぐに【特集】「FLYERS」6年目、チャレンジ精神が生徒を動かす…日出学園>という記事が出てきました。記事によると、

<生徒の課外活動「FLYERS」が発足して6年目を迎えた。学校説明会の手伝いが当初の目的だったが、今や企業との会議やテレビ撮影のサポートにまで活動を広げてきた。好きなテーマを選んでやりたい生徒だけが集まる活動だが、大人と関わる中で将来の目標を見つけるキャリア教育の場にもなってきており、その活動は年々進化を見せている。>

★また<最初は10人だったメンバーも年々増え、現在は225人が登録するなど、質、量ともに大きく発展した>というのです。勤務校の総定員数240名にほぼ相当します。

★これは発想の転換になりました。

★いずれにしても、日出学園の人気の理由がわかりますね!

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2022年7月20日 (水)

ノイターキュード代表北岡優希さんとの対話 パウロの森の生活と自己変容について

★本日は、ノイタキュード代表北岡優希さんも聖パウロ学園に御来校。パウロの森での生徒の生活と自己変容について取材していただきました。お忙しいにもかかわらず、猛暑の中、本当にありがとうございました。

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★ここ数日、各学年それぞれのパウロネイチャープログラムを行っていますが、本日は高1の生徒のプログラムでした。パウロの森の広場では、廃材を使った木工や森林を持続可能にするための伐採など森の生活を体験します。また、森奥深く散策することもします。

★森という自然と共生生活、自分より大きな存在との出会い、ときには自らが変わるきっかけとなる場合もあります。

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(昨日の高2のPNPの様子。写真は同学園facebookから)

★この自己変容が、このVUCAの時代に必要なのはなぜか?北岡さんといろいろな角度から対話しました。その模様は、いずれ公開されます。ここでは、次の3冊の本に関連する3つの大きな理由があるとだけ述べておきます。

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★この点に関しては、神崎史彦先生の「小論文ルールブック改訂版」にも実は書かれています。ここでも神崎先生と同期しているのかと、北岡さんと共に感銘し、思わずテレビ電話をかけて、3人で少し対話しました。新プロジェクトを創りましょうで、話は終わりましたが、ともかく、新躍動がウネリ始めている予感がします。

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株式会社リヴィジョン庄司様、新田様、ありがとうございました!

★本日は、株式会社リヴィジョン事業開発部部長の庄司さん、同社メディア事業部部長新田さん、パウロの森にお越しいただきありがとうございました。お忙しい中、かつ34度を超える猛暑の中にもかかわらず、クールなアイデアなどを共有していただき、感謝いたします。

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(左から新田さん、庄司さん)

★日ごろから、学校及び教育の入試情報をご提供いただいたり、新しいビジョンへのヒントを頂いています。今回は、高校入試の現実と理想のギャップについて多くの気づきを得ました。

★そして、何よりそのギャップをなくすあるいはギャップを生み出している根本的な問題を解決するためには、現場の真実を共有する対面型の対話にこそ大きなヒントと励みがあるなと実感しました。

★パウロの森と馬場をご覧いただき、パウロのような高校の意味やよさをそのまま認めて頂き、大いに勇気をいただきました。感謝の念に堪えません。

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2022年7月17日 (日)

私立高校進学フェアに参加しました。多くの発見をいただき、ありがとうございました。

昨日は、私立高校進学フェアでした。勤務校の聖パウロ学園も参加させていただきました。首都圏模試センター及びその仲間のみなさま、ここまでくる準備本当に頭が下がります。また、すばらしい会場をお貸し頂いた駒込中学校・高等学校の先生方、心から感謝申し上げます。さらに、シン「高校受験情報誌」創刊のため(今回のイベントもその一環でした)、首都圏模試センターとその仲間のみなさまが、多くの学校の先生方を巻き込んで、毎週火曜日Zoom勉強会(プレも入れると10回以上!)を開催していただき、多くの知らない情報を教えて下さりありがとうございました。

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★今回、高尾の山から勤務校の入試広報のメンバーが朝早くから(12時集合なのですが、荷物などを車に積んで、会場まで移動するには、9時には出なければならないのです^^;)それぞれ下山して参加させていただきました。北区を中心とするエリアから参加される受験生のみなさんが、高尾の学校の体験授業に参加されることはまずないだろうと思っていました。

★しかし、小学校から大学受験まである中で、高校入試においては、新しい試みはなかなかできない制度的条件があります。にもかかわらず、その中で、制度的枠内で創造的なチャレンジをしようという学校が14校も集まるのです。勉強しに行きましょう!と入試広報部部長の伊東先生が提案したので、そりゃそうだとなったわけです。

★実際参加してみて、非常に勉強になりました。それに、なんと、パウロのミニPBL授業に参加してくれた生徒もいました。もともと勤務校の選択授業で、1人でもいれば授業を行っていますから、少人数の参加でも何の違和感もありません。大いに楽しみました。といっても、私は見守っていただけですが。

★順天堂大学医学部の今年の小論文の素材は、2億5千年後のパンゲアプロキシマの図版でした。この図版をヒントに、ミニPBLの授業を展開しました。PBLの学びはT字型と一見結びつかない事象の結びつきを見つけるというQ字型の仕掛けをします。

★T字型学びとは、横に広げ、縦に深めていくというイメージです。Q字型学びとは、繋がっているサークルに、今まで結びつかないと思っていた事象がさらにつながるというイメージです。〇に\が結合するような感覚。

★T字型はダイレクトな情報を探究します。Q字型は、インダイレクトな情報についてなぜこれっ????というような感じで学びます。

★情報や事象や現象を前にしたとき、私たちは何か思うし、何か考えます。この事態を「思考」と呼んでいます。ですから、ハート形のポストイットと正方形型のポストイットを使います。思いはハートに、認知は四角にメモしていきます。そして、対話します。そのときポストイットを媒介にするとまた新たな発見が生まれやすいのです。ポストイットは触媒の働きをします。

★伊東先生が、ファシリテーターとなり、佐藤先生がPBLを体験するロールモデル(はじめて参加する生徒さんにとっては、同じ目線のロールモデルの存在が必要です)。二人とも、当日まで、テキスト(といっても何の解説もない図や情報が載っているだけです。でも、5冊くらいの本のエッセンスがはいっています)は知らされません。朝集合して、そのとき伊東先生には手わたされます。

★ロールモデルの佐藤先生には、参加する生徒と同じように本番で初めて。

★伊東先生は、内容について、検討するのではなく、タイムスケジュールに合わせ、ポストイットやパターンランゲージのカードを活用するタイミングをイメージしたり、T字型学びのときに使う視点の棚卸、Q字型の学びの視点(数学的思考なので、数学科の伊東先生にとっては暗黙知になっています)などをして、授業イメージを膨らませていました。

★PBLは、ライブ感が大事というかブリコラージュ的発想が大事なので、モーツアルトのピアノコンチェルトのカデンツアスペースを創っておく必要があるのです。用意周到な設計は、テキスト制作者が思考コードベースに行います。ファシリテーターやロールモデルは、当日という役割分担ができています。

★もっとも、普段から3人の役割者は、いつも協働してやっているので、阿吽の呼吸ができています。PBL組織は、常に体験の中で阿吽の呼吸をつくります。

★コロナ禍で、共に食事をする時間がとりにくいのは、阿吽の呼吸をつくるのに、少し障害になるのですが、それは対話の頻度を高めて補っています。

★二人は、時間の合間に、駒込中高の河合校長の講演や庄司先生の講演も聞きながら勉強していました。かえつ有明の体験授業は、在校生が10人以上きて、協働して行っていたので、生徒さんにインタビューしたりもしていました。私は、斜め向かいや同列の教室で行っている学校の先生方と情報交換をしていました。同窓会という感じでしたが(^^)。

★広報戦略の話というよりは、生徒と共に新し地平をみるためのフューチャーアクティビズム的な話で盛り上げっていました。極めてクリエイティブな提案が瞬間的に広がっていました。

★参加してくれた生徒の皆さんは、最終的に魅せるプレゼンをしました。40分のミニPBLですが、伊東先生のインプロ型ファシリテートとリアリスティクリフレクショントークと佐藤先生のロールモデルで、新しい自分を発見してくれたことと思います。

★新しい自分、新しい未来を発見するPBLというドラマティックなバックヤードと舞台の統合された場の重要性に改めて気づきました。生徒の皆さんありがとうございました。

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2022年7月16日 (土)

染谷昌亮先生 人と人との関係にいのちを吹き込むコミュニケーション

★昨日のGLICC Weekly EDU(GWE)の登壇者は染谷昌亮先生。テーマは 第87回「文化学園杉並中学・高等学校 染谷昌亮先生との対話ーダブルディプロマ×STEAM教育×探究プログラムの真価」。染谷先生は、文化学園大学杉並の魅力を引き出す写真16枚を厳選して柔らかい対話を展開しました。

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★シンリオなきシナリオというか、GWEのライブ感をさらに豊かにするコミュニケーションのデザインをしてくれました。

★16枚の写真をランダムに選んで、ビジュアルトークを展開していきます。イメージのインパクトが、同校の魅力を引き出します。

★その魅力は私の拙い文字ベースでは表現できません。染谷先生の息づかいや表情からあふれでてきます。ぜひご覧ください。

★そして、その豊かな感情表現の背景には、PBLやSEL、NVC、アントレなどの理論があることもわかります。

★豊かな感性や感情にもちゃんとロジックがあるのだと驚嘆してしまいます。

なるほど、染谷先生のコミュニケーションは、同僚や生徒、会う人々に対しいのちを吹き込みます。私も元気をもらえました。ですから、ぜひご視聴ください。Well-beingの息吹をもらえます。

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2022年7月15日 (金)

文化学園大学杉並の染谷先生の進化

★毎週金曜日夜9時からGLICC Weekly EDUがYoutubeで発信されます。本日の登壇者とテーマは、<GLICC Weekly EDU 第87回「文化学園杉並中学・高等学校 染谷昌亮先生との対話ーダブルディプロマ×STEAM教育×探究プログラムの真価」>ということで、染谷先生の登場です。

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★ダブルディプロマ、STEAM、探究など同校の特色ある取り組みについて語られると思いますが、実は染谷先生は、「次世代教育開発部の部長」でもあります。

★単純に、それぞれの教育内容やプログラムの説明に加えて、そのような教育実践にかかわる先生方やPBLはチーム力も育つので、生徒も含めて、リーダーシップがどう育っていくのか、そんな話にもなるといいなあと思っています。

★同校は、21世紀型教育機構の加盟校です。同機構の組織観は基本未来型で、STEAMやDXを推進し、実践し、成果をあげていますから、当然Web3.0の流れの中でトレンドになっているDAO(Decentralized Autonomous Organization)は射程に入っています。

★しかし、これでは、21世紀型教育組織としては、少し不足しているので、そこの足りない部分の話にもなると思います。

★なぜ打ち合わせもしていないのに、そんなことがわかるのか?それは、PBLのエッセンスは、チーム、社会、国家、世界というようにだんだん組織が大きくなっても共有できるからです。

★そのPBLのエッセンスを実践して、昨年同機構でSGTの中で最優秀賞のアワードをゲットしたのが染谷先生です。アブダクション的な手法ですが、そういう推理が成り立ちます。今夜、お楽しみに!

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2022年7月14日 (木)

神崎史彦先生の<シン・小論文のルールブック> の読み方

★神崎史彦先生から、「改訂版 小論文のルールブック」(KADOKAWA)を頂きました。ありがとうございました。感動しました。改訂版というよりも<シン・小論文のルールブック>と言った方が良いと思ったからです。

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★同書の目次の構造は、次のようになっていると思われます。

❶世界の作り方を考える存在として使命~第1章小論文の書き方

❷小論文の型の種類~第2章基本形 第3章which形 第4章複雑形

➌小論文問題の型~第5章課題文型 第6章データ型

❹世界の読み方~第7章ビジュアル型

➎世界の読み方の実践~第8章総合問題

★例によって私の独断と偏見による同書の編集構造は、こんな感じだと思います。

★したがって、第1章は、さらりと読んで、第5章、第6章をまず読むとよいでしょう。

★第1章は、何が書かれているのかを最初は眺めるだけです。最初から理解しようとするのは無理があります。まずは、第2章と第3章で体験してみるのがよいのではないかと思います。

★次に、第5章ですね。

★そうしたら、もう一度第1章に戻ります。今度は少しわかりますよ。

★でも、完全ではないでしょう。

★そこで、次に第7章を読みます。すると、第1章とつながるはずです。氷山モデルとビジュアル型の問題が重なります。そして、氷山モデルがシステム思考を紡ぎ出す人間存在そのものであることが了解できます。

★ここまできたら、第8章の総合問題をじっくり。ここまでに理解した人間存在とは、問いを生み出しながら生きていく生命体であることに気づくはずです。

★あとは、第4章と第6章で、トレーニングをします。

★柔らかく思いやりのあるそれでいて事実性を洞察する思考力をモニタリングできますよ。

★以上の読み方は、あくまでも私の独断と偏見ですので(汗)、みなさまは、素直に読み進んでくださればよいと思います。

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聖パウロ学園 入試広報をする教師はTRUST ACTIVIST

★この時期は、私立高校の教師が、中学訪問をする一期目のシーズンです。多くの私立高校が、通学圏の中学校を訪問し、生徒募集のために、自分の学校の教育の魅力を伝えに走り回ります。勤務校の聖パウロ学園もその例外ではありません。すべての教職員が手分けして中学訪問をします。

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★入試広報部だけでは回り切れないので、期末のあとで一斉に中学訪問をする日を決めているわけです。小規模校ですが、いろいろなエリアから生徒が通ってくれます。そのため、一斉に中学に向かいます。

★もちろん、ふだんから、授業や教育活動の合間を縫って、入試広報部のメンバーは中学訪問をします。

★今回も一斉に回る日の前に、入試広報部のメンバーはすでに動いていました。そして、そこで得た情報、つまり中学の教師が知りたい情報を集め、それをまとめた「Paul News」を持ち寄り、すぐに国語科主任で教育イノベーション委員長であり入試広報部のメンバーでもある高橋先生が、キャンバというアプリで、簡易ポスターを創ります。

★中学の先生方も、多くの私立高校の先生方の訪問対応もあるし、急激に増えている新型コロナウイルス感染のこともあります。どうしても少ない時間の立ち話になることも多いのです。

★そこで、アイキャッチ的にパウロの魅力に気づいてもらえる情報を一枚にまとめてデザインするわけです。パンフレットはいろいろな情報がありますが、この簡易ポスターは、入試広報のメンバーが中学訪問をした際に、尋ねられた情報を優先的に集めています。

★こちらが伝えたいフォーマルな情報だけではなく、中学の先生方が優先的に知りたい情報を、その都度出力できるのも、いいですね。

★知りたいこと、現在の子どもたちの問題をいかに解決してもらえるのかという要望など一つ一つに対応していることを一瞬にして伝える表現を開発するのに広報部は一丸となっているわけです。

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(生徒の作品を解説してくれる高橋先生)

★このキャンバというアプリは、シンプルで使いやすいそうです。実際高橋先生は、授業の中でも活用しています。「言葉の特徴やバイアス」などについて、生徒がそれぞれ、キャンバを活用してミニポスターセッションをしていくのです。パウロの国語の授業は、編集やデザイン、哲学的対話など、多様な学びのツールや環境をファシリテートしています。授業技術がそのまま入試広報の活動にも拡張しているのは、なかなかおもしろい景色です。

★英語科は、教室空間の掲示を重視しています。空間が生徒に語りかけ、刺激するわけです。アフォーダンスという心理学の応用ですね。やはり、掲示物のデザインにキャンバを活用しています。

★教育イノベーション委員の高橋先生と情報の佐藤先生は、クロムブックを最大限に徹底的に活用することを授業で展開しています。他教科とも情報共有してパウロのICT教育のコスパの効果を高めています。

★信頼をつなぐマーケティングとそれを伝えるデザイン。ICTの新たな使い方が、私立高校市場におけるTRUST ACTIVISTが活躍するマーケティング手法を生み出しています。信頼づくりこそ市場の原点ですね。

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第31回「全国カトリック学校 校長・教頭合同研修会(4)~サレジアン国際学園の試み 事例報告

★研修会の2日目は、「サレジアン国際学園」の新しい試みについての事例報告から始まりました。女子カトリック校が、共学カトリック校になり、理数に力を入れたり、PBL授業などを行ったり最先端の教育を実践しています。もちろん、創立者聖ヨハネ・ボスコと聖マリア・マザレロが実践した「予防教育法による全人間教育」を行う同校の建学の精神は、貫かれたままです。

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(写真は、同校ホームページから)

★今回の研修会における講演者の共通のコンセプトは、カトリック学校の伝統と革新の統合です。この伝統とは、しかしながら、古いということではないのです。サレジアン国際学園の「予防教育法」は、まさに、新型コロナ感染、ウクライナ侵攻、web3.0というVUCAの時代の壁を乗り越えるのに最も必要な最先端の教育です。

★ですから、革新とは、伝統と言われている精神と教育方法が、実は常に時代の問題を乗り越えるための最先端の教育であることを覚醒するという意味なのだと、サレジアン国際学園の森下校長のお話をお聴きして、改めて気づきました。

★予防教育法とは、生徒を愛することによってスピリチュアリティを授けるだけではなく、生徒自身が愛されていることを感じとり、内面からスピリチュアリティが湧き出てくるような教育でしょう(私の独断と偏見かもしれません)。

★そのような教育が、新型コロナ感染やウクライナ侵攻、サイバー攻撃などの被害を被り、健康面、メンタル面、人間関係の側面、経済的側面、命の側面などにおいて、それぞれに苦しみ、不安に陥っている人々に寄り添い、あるときにはグリーフケアまで行える「世界市民力」を養えるのだと思います。

★この伝統であると同時に普遍的であり最先端でもある「予防教育法」を持続可能にするために、英語をはじめとする言語能力、ICT、PBL、思考力、理数リテラシーなど最先端の学びの環境を創り出すということでしょう。

★サレジアン国際学園の新たな挑戦は、近代教育の過程の中で、忘却されてきた本質を世界が覚醒する大切な契機となると感じ入りました。

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2022年7月12日 (火)

7月16日「私立高校進学フェア」in 駒込中学校・高等学校

7月16日(土)、駒込中学校・高等学校で、首都圏模試センターが主催する「私立高校進学フェア」が開催されます。勤務校の聖パウロ学園も参加します。開催趣旨は、同センターサイトで次のように説明されています。

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<7月16日(土)各私立高校で行われている授業を実際に体験できる”スペシャルなイベント「私立高校進学フェア」を開催します!

パンフレットだけではわからない、私学の特徴ある授業を最大3校実際に体験可能!今回は、各高校が実施している「探究・グローバル」の授業にフューチャーして体験会を実施。LEGOⓇブロックを使った探究授業や、実際に通っている先輩たちと一緒に英語の歌詞から楽しく学ぶグローバル授業、プログラミングを使って身の回りのモノを楽器に変える?!STEAM授業体験など、私学でしか味わえない特徴ある授業を各学校が出張授業します!学校に興味のある方も、授業の中身に興味がある方も、大歓迎!この貴重な機会をお見逃しなく、是非ご参加ください!(※各高校定員になり次第締め切りとさせていただきます)

保護者の方向けには『今求められる新しい学校選び』、『AI時代の私学の教育』と題し、様々変わりゆく社会・教育事情のなかで子供たちにとって最適な学校選びについて基調講演をご用意しております。>

★参加する14校の学びは、VUCAの時代の壁に、はねのけられず、乗り越えて未来を拓く能力を育むという点で共通しています。もちろん、その能力は多様で、それぞれの学校によって特徴があります。

★どのような能力をカタチにするかは、正解はありません。生徒1人ひとりに合った学びの環境は、やはり生徒によって違います。その違いを知るには、授業の体験にまずは浸ることがポイントでしょう。

★中学受験では、授業体験ができる合同説明会を頻繁に開催していますが、高校入試では、意外と少ないですね。各学校の説明会で体験はできますが、多くの学校が集って、一日でいくつかの学校の授業体験ができる機会は、希少価値があると思います。

★ぜひお立ち寄りください。

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パウロの森 myTYPE7月号に取り上げられました。

★首都圏模試センターが発刊している「myTYPF7月号」に、パウロの森の記事が掲載されました。同誌は、適性検査型模試の受検者のご家庭に配られるものであり、市販もされています。聖パウロ学園は、高校だけの学校ですが、公立中高一貫校の適性検査を受験される生徒の中には、高校から受験する生徒もいます。パウロの存在を知っていただければ嬉しいです。

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★ノイタキュード代表の北岡優希さんが、別の雑誌の取材でパウロの森に来てくださったのですが、myTYPEでも記事を書いていただけ、心から感謝です。

★取材の過程で北岡さんといっぱい対話をすることができました。私たちにはふだん当たり前と思っているパウロの森ですが、意外にも多様な価値があるのに気づきました。北岡さんの多角的な視点がすてきです。

★たしかに、パウロの森は、それ自体がカーボンニュートラルの拠点です。

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★そんな地球にやさしい空間を歩いているだけでもインスピレーションが降ってきます。

★また、キャンパスは、コンクリートでできていますが、すっぽりパウロの森に包まれていて、授業もふと窓の外を見ればグリーンで満ちています。

★さらに、パウロの森のCNな循環は、学内の対話やWebを活用した授業の循環のメタファーにもなります。あらゆる教育活動がつながり循環し、身体と心と人間関係の好循環を生み出す場となっています。

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★このようなリソースを経済ベースで考えれば、とても莫大な資本が必要になるでしょう。それが、すでにあるというのですから、改めて驚きです。

★古い校舎ですが、パウロの森と一体となっていると思い返すと、なんとグリーンスクールが高尾にもあった!ということになります。

★こんなコンセプトを拡張していくヒントを得ることができました。心より感謝申し上げます。

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2022年7月11日 (月)

第31回「全国カトリック学校 校長・教頭合同研修会(3)~自分より大きな存在に出会う新しい表現教育「シネリテラシー」

★2人目の講演は、千葉くららさんのシネリテラシーの事例を通して、表現力の新たな可能性を巡るお話でした。千葉さんのプロフィールは資料によると、次の通りです。

神奈川県生まれ。高校時代にオーストラリア・シドニーに留学。Australia Catholic University(人文社会学部)卒業。帰国後、2015年から震災後の福島で災害被災地での地域理解としての映像教育や東京都における多文化共生をテーマにした映像教育などに関わっている。NHK高校講座や放送大学などの教育番組の制作、民放、NHKワールドなどの番組制作に携わっている。

★映像教育=シネリテラシーとは何かは、福島県の広野町のプロジェクト報告があります。詳しくそれでいてわかりやすいので、ぜひご参照ください。

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(図は広野町の実践報告書の中から)

★シネリテラシーは、ドラマやダンス、音楽などの教育と同じ効果を有していますが、極端な話スマホででもできるので、あらゆる生徒が接近できる表現方法です。

★自分ではコントロールできない大きな存在(それは善でもあり災害でもある)に出会ったとき、それに立ち臨む人間の強さや弱さを大づかみに表現する試みです。

★千葉くららさんは、シネリテラシーという言葉が使われていなくても、教科の授業や探究活動などPBLを行っているところは、すでに実質的に行っているケースも多いといいます。

★好奇心、創造性、プロジェクト、協働性、新しい発見、多角的なものの見方などが、確かに刺激されますが、映像の力はなんといってもインスピレーションが漂う不思議なエネルギーがあります。

★しかも、自分で物語を編集するわけですから、そこにスピリチュアリティが降りてくるのは当然です。スピリチュアリティとは、必ずしも霊性ではなく、自分を超えている大きな存在への畏敬の念や共感、感動などの心性です。

★勤務校でも、国語科はシネリテラシー的なスライド編集や物語編集をする時間をとっています。また、志望理由書は、高3に上がる段階で、みな書きます。志望理由書を必要としない一般選抜を受験する生徒も書きます。

★志望理由書は、ある意味自分とは何かについて、物語編集を通して、深めていく道行でもあるからです。最近の総合型選抜では、動画を提出するところもあります。なるほど、志望理由書などを書くだけではなく、動画で編集する機会も作ってもいいかもしれません。

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2022年7月10日 (日)

第31回「全国カトリック学校 校長・教頭合同研修会(2)~トルネードリフレクションと俯瞰視点とミッションのダイナミズム

<第31回「全国カトリック学校 校長・教頭合同研修会~柔らかくラディカルに>のつづき。 

★シスターでもある原敬子准教授(上智大学神学部准教授、援助修道会会員)の講演は、インスピレーションが降りてくるという感じでした。missionの語源はラテン語の<mittere>。「送る」を意味しているということです。これを聴いて、私はミッションの意味に「越境」が含まれるているなあと感じたのです。

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(パーソナルモードでも組織モードでもこのダイナミズムは起こりうる)

★原先生は、カトリックには、ミサや祈りの時のロザリオや様々な媒介項によってリフレクションの契機があって、それが平面的な運動ではなく、リフレクションの繰り返しが俯瞰視点を生成していくというような図を提示されていました。原先生の本意とはズレているかもしれませんが、私なりに図にしてみました。

★この図のイメージは、リフレクションはまるでトルネ―ドのように上昇気流を生み出すということです。

★俯瞰視点があるから、上昇気流が生まれるのか、上昇気流が生まれるから俯瞰視点が生まれるのか、たぶんその両方でしょう。

★俯瞰視点もあるところまでは、先入観が含まれているかもしれません。ですから俯瞰視点もまた、リフレクションによりエポケーされるわけです。

★それゆえ、あるところで、パラダイム転換が生まれるのだと思います。

★そして、俯瞰視点がそのままミッションとイコールになるというより、ミッションと俯瞰視点は漸近線のように近づくけれど、一致はしないという関係なのではないか。地軸が一定の傾きを持っているのではなく、揺れるので、地軸としての働きがあるように、頑なな目標をミッションだと思い込んでいるのを揺さぶるのが、トルネードリフレクションなのだと。

★よく自分軸はブレてはいけないとメタファーで語られますが、自分軸はある一定の範囲で「アソビ」があるわけですね。それによって、俯瞰視点を自己俯瞰する作用があるのだと。

★ただ、やはりそれに気づくには、対話やディスカッションや共有、共感も大切だということでしょう。なぜなら、軸の揺れはそんなに大きいわけではあにのですから、気づかない場合がほとんどです。

★ミッションスクールには、リフレクションと俯瞰視点をスピリチュアリティを有した俯瞰視点であるミッションの関係を模索するミサや礼拝、宗教や聖書の授業があります。

★IBのTOK領域に「宗教」というのがありますが、ミッションスクールの「宗教」は、IBのTOKのようなプログラムエッセンスを導入することで、トルネードリフレクションー俯瞰視点―ミッションのダイナミズムが生まれ、未来の希望を見通せる人間力を育成することができるのではないかと考えるにいたったのです。

★夏期講習の講座で、キリスト教系の大学を志望する生徒向けに「宗教と現代社会」のミニワークショップ型の講義を受け持ちます。数学科と保健体育科の教師とコラボして行います。上記の図を意識してプログラムを分かち合っていきたいと思います。

★なぜ数学科の教師と保健体育科の教師がコラボしてくれるかについては、いずれ触れたいと思います。極めて重要ですから。

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2022年7月 9日 (土)

太田晃介先生 100分で語るTOKの真髄 水都国際の生徒の未来が開かれるわけ

★昨夜、太田晃介先生と100分対話をしました。GLICC代表鈴木裕之さんの主催するGWEで。テーマは、<GLICC Weekly EDU 第86回「大阪府立水都中学校高等学校 太田晃介先生との対話ー知の理論と数学・科学的思考」>です。太田先生自身が実際に授業で展開したTOKの数学領域の事例を通して、TOKの真髄を聴くことができました。100分でわかるTOKの真髄!必見です。

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★昨今、文理融合とか教科横断とか語られていますが、そのためには、超越視点=俯瞰視点がなければ統合とか横断はできません。TOKは、まさに鳥瞰視点というナレッジがどのように形成されるのかその極意を学ぶ時空です。

★教頭としての太田先生が、管理モードにならざるを得ないにもかかわらず、各教科の先生と教科横断的な対話ができるのは、鳥瞰視点としてのTOKを共有しているからです。

★TOKの数学の領域で、数の概念や幾何の様々な概念の真理性あるいはアイデンティティを疑うことによって、知識というものが限られたある枠組みを前提にしていることがわかります。わかるから、その限定的なものを越境する俯瞰視点がまた見つかります。それを言語や記号にすると知識が生まれてくるのでしょう。

★私たちは知識というものは記憶するものだという前提でいますが、実は創る過程というものがあったのです。だから新しい発想や創造性やイノベーションが生まれてくるわけです。

★目からウロコの連続でした。そしてTOKの真髄に気づきました。もっとも、太田先生は、その真髄は本当に真髄なのか?と問うことでしょう。

高校時代に、身近だと思っている知識の奥行という洞窟探検とその広いネットワークの大海原に帆をはる知的冒険は、何より大きな成長を生み出す体験です。ぜひご視聴ください。太田先生遅くまでありがとうございました。

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2022年7月 8日 (金)

第31回「全国カトリック学校 校長・教頭合同研修会~柔らかくラディカルに

★昨日と本日、第31回「全国カトリック学校 校長・教頭合同研修会」がZoomで行われました。全国のカトリック校の校長・教頭が120人以上集結。テーマは、「これからのカトリック学校における教育共同体~気づきと養成~」でした。基調講演者が3人とサレジアン国際学園の実践報告が行われ、2度ほど分科会にわかれ、ブレイクアウトルームで対話をするというプログラムでした。

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★いずれの演者も、伝統と革新の統合の話だったと思います。校長といっても、神父やシスターもいて、人間的変化の話は、うけつけられないというイメージがあるものですが、今回は柔らかくもラディカルな変容の響きがありました。

★最初の講演は、シスターでもある原敬子准教授(上智大学神学部准教授、援助修道会会員)によるものでした。「ミッション・スクール(カトリック学校)のミッションを再考する」がテーマです。

★聴きながら、たぶん理解がズレていると思いますが、私なりに勝手に腑に落ちたのは、制度モデルとパーソナルモデルの関係性の歴史的変化、それを原先生はパラダイム転換と呼び、ディヴィット・ボッシュにしたがって、啓蒙主義以前と以後では、ミッションの捉え方が転換したのだと。

★制度もパーソナルも与えられたものから生み出すものというミッションを認識するパラダイムに変わったのだと。もちろん、その生み出されたものが、スピリチュアリティとして妥当かどうかという問題はあります。その妥当性を見出すために分かち合いという対話がおそらくあるのでしょう。

★これは、世界の聖職者が集う会議でも対話やディスカッションの機会が多いというところからもおよそ推測できます。

★しかし、今回の講演では、カトリック学校は、もしかしたら、まだパラダイム転換をしていないかもしれないと、柔らかく突き付けられたような気がします。

★原先生は、学者なので、その事実性をいろいろな論文や書籍でその信頼性を担保しながら丁寧に語られていました。

★勤務校は、すでに神父もシスターもいないカトリック校ですから、教職員や生徒の内面にパーソナルなスピリチャリティが生まれる環境や学びのプログラムを創っています。原先生のお話とはシンクロする部分がたくさんありました(と勝手に思っています)。

★共に参加した教頭とも、そこは共感できたのは、今後のカトリックミッション校として新たに歩んで行くことができるなと勇気をもらえたような気がします。

★カトリック校がサバイブするには、リベラルアーツとスピリチャリティの統合教育だと私は思っています。それはたしかにエキュメニカルな宣教パラダイムを認識する必要はあるかもしれません。黄金律は、キリスト教の精神というのではなく、あらゆる宗教や民族などの違いを超えて共通する精神だと国連では認識しています。これはおそらく1910年ごろから生まれたエキュメニカルな宣教パラダイムともシンクロしているでしょう。

★そのような関係性が結ばれることに気づいたのは、原先生のお話をお聴きしたからです。ありがとうございました。

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しゅとも7月号(02) 石井雅章教授インタビュー 今こそグローバル・リベラルアーツ。

★「しゅとも7月号」には、絶望とも思える昨今の社会情況を希望に変える動きの記事が掲載されています。それは<SDGsを本気で解決第2回「ビジョンからのバックキャスティング」神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部石井雅章 教授インタビュー >です。聞き手・構成・文/は、市川理香さんです。

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★リベラルアーツという「ことば」は最近よく語られます。私立中高一貫教育の守護神のひとり東京私学教育研究所の平方邦行所長が今年の5月私立一貫教育のガイドブックを作成した際、リベラルアーツの現代化と私学の建学の精神との関係について、深く論じています。

★リベラルアーツの重要性は、昔から言われていましたが、コロナ、ウクライナ、フクシマに象徴される喫緊の人類共通の課題に直面している今だからこそ、リベラルアーツルネサンスが生まれているのでしょう。

★いくつかインスピレーションをいただいた箇所を引用します。

元々、大学は体系化された学問領域ごとに学部学科が構成されていたのですが、複雑化する社会状況に対応し、正解のない課題に向き合うには、心理学が必要だったり歴史学が必要だったり、政治学が、環境学が・・というようにどんどん学際的な、学問の領域を越境した学びが必要になってきたのです。課題解決への貢献と言うと大袈裟かもしれませんが、より良い生き方、より善き世界の実現に向けて学問の領域を超えて学び続けることがリベラルアーツだと思います。

★well-beingとは越境できるということですね!

ローカルな課題もグローバルな課題とリンクしているという視点は重要です。技術的な課題はまだしも、社会的な課題はある特定の学問を学べば解決するというものではありません。だからといって学際的に学んだ人だけで課題を解決できるかというとそうではなく、それぞれの専門性を深めた人と分野を越境してトータルで物事を捉える人がチームを組まないと、『2030 アジェンダ』とSDGs の目指す世界を実現できないと思います。

★ローカルとグローバルがつながる、つまり越境するには、リベラルアーツがポイントだということですね。

リベラルアーツは特定の専門領域を深く追究していないし、技術面での専門的な知識も有しておらず、法的に深い検討もできません。やはりそれぞれの学問分野の専門性は重要です。とはいえ、関心を持っている課題ベースでチームを構成し、現実の世界に向き合いながら、どんな専門性が大事か、どのように組み合わさったら解決できるかを模索し、多様な人たちとコミュニケーションがとれ、チームとしてアクションを起こせるプロを育てることが必要だと思います。

★つまり、リベラルアーツは、実定法領域にはないということですね。かつて自由七科という訳語がつけられていたわけですから当然でもありますが。しかしながら、それを専門に対し弱いととるか、重要なものと認識するかはまた別問題ですね。

日本も、ビジョンを語ることが恥ずかしくない世の中になってきたと感じています。20、30年くらい前は、何となく理想の状態を語ることを恥ずかしく感じる社会だった記憶があります。ビジョンを語ることにあまり価値が置かれていなかったのかもしれません。いまでも意識高い系という表現で揶揄する人もいますが、意識が高くて良いですよね。意識が高くて何がいけないんでしょうか?

★実定法領域にはないからこそビジョンがうまれる価値を大切にしている領域だということでしょうか。愛はl律法を超えるということでしょうか。

より良く生きるために境界を超えて学ぶのがリベラルアーツ 

★より良く生きるため、とはやはり人類愛が生成される状況ということでしょう。グローバル・リベラルアーツは希望の学びということでしょう。

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北岡優希さんの学校を視る目 教育を観る目 時代が変わる時に現れる新しい編集智=インテグレイトデザイン

★昨日、北岡優希さん(ノイタキュード代表)が、八王子に寄られるというので、打ち合わせのためにと、勤務校の入試広報部長伊東先生が打ち合わせに行ってきますと放課後学校を後にしました。私もせっかくならと、だいぶ遅れてですが、ミーティングに参加しました。二人の対話を聴いていて、時代は変わったなあとしみじみ。二人とも超越視点を持っているので、いろいろなものが柔軟に見えるのですが、その超越視点のある場所が、私たちと違うのです。

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★二人とも、制度的な俯瞰視点を知りつつも、そこは距離を置き(エポケーとよばれています)、もっと生徒や保護者や教師という現場の関係性の中の、つまり内面性の中の超越視点を探っているのです。

★その関係性の背景に、北岡さんは受験市場というのがあります。伊東先生は、私立学校という相対的に自由度の高い学習環境の質をどうとらえるかというのがあります。

★だから、その超越視点が互いに違うのですが、それがシナジー効果を生むわけです。

★私なんかは、制度的超越視点に偏りがちですから、どこか保守的です。時代の変わり目にあっては、そこはエポケーしなくてはと思うのですが。。。

★いずれにしても、北岡さんのような編集智の持ち主が、学校の新しい超越視点を持っている教師を刺激し、新しい気づきを引き出し、それを文章と画像・動画とでインテグレイトデザインしていくということには、謙虚に学びたいと思います。

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2022年7月 7日 (木)

しゅとも7月号(01) 首都圏中学受験業界が開く日本進化論

★7月3日合判模試が開催されました。首都圏模試センター主催です。そして、同時発刊された中学受験情報誌が「しゅうとも7月号」。情報誌の編集をがらっと変えていて、興味深いですね。情報誌ゆえ、当然ながら国内外の教育のトレンドに敏感です。一方で、ルビンの壺よろしく、新しい潮流を創る側でもあります。

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★従来の情報誌は、データと情報による編集がメインでしたが、「しゅとも」は、それらに加え、時代牽引ビジョンデザインを前面に出し、その背景に思考コードというコンセプトレンズを埋め込んでいます。

★随分前に落合陽一さんが「日本進化論」の中で、スポーツのWell-beingについて述べていますが、それがいよいよ中学受験にも降りてきています。

★きわめて重要なキーワードです。「しゅとも」には、時代を読むトレンドとしてキーワードが満載。「Well-beig」をはじめ、「リベラルアーツ」「SDGs」「新タイプ入試」「STEAM」「グローバル」「ICT」「プロジェクト学習」「探究」「システムデザイン」・・・。

★それからトレンドというより暗黙知をトレンドな形にするキーワードとして「思考コード」「トランジション」など。

★一見体系的でないけれど、すべてがちゃんとつながっています。というのも「しゅとも」は入試問題という「問い」の泉をカタチとしてデザインしているからです。「問い」とは体系的であり、同時に体系を崩す連鎖です。中学入試問題のおもしろさは、思考をパターン化させる「野暮」なものばかりになるのを嫌うところです。少し崩しますね。その崩し方が「粋」なのか、「気障」なのかは、それぞれの学校の問いのセンスに拠ります。

★麻布の問題が他を圧倒して人気なのは、問いと思考の表現が「粋」だからですね。

★首都圏模試センターは、もしかしたら江戸文化を継承しているのかもしれません。「粋」な世界をデザインし直そうとしています。

★まさに日本型教育というわけですが、文科省の表現では、「野暮」です。そんな違いもおもしろいですね。

★産業構造審議会「経済産業政策新機軸部会」が、今年6月13日、「経済産業政策新機軸部会 中間整理」(産業構造審議会 経済産業省)を公表しました。審議の過程で、経産省の資料に、新機軸のグランドデザインのようなビッグピクチャーがガチっとだされていました。すかさず、落合陽一さんは、こういう発想がつまらないと指摘。出来上がっているようでいて、結局何も生まれないということなのかもしれませんね。

★いつもは、だいたい審議会の過程で使われた資料やデータは、中間報告やまとめの段階でちゃんと活用されるのですが、今回はその図は削除されていました。落合陽一さんの影響力すごいですね。

★でも、落合陽一さんは、アナーキーではまったくありません。岸田総理と同窓ですからね。高橋是清的な発想は文化遺伝子としてあるでしょう。文化遺伝子というより普遍的遺伝子なのかもしれません。グランドデザインは、デノテーションでは、作用しないので、コノテーションとして埋め込むということです。

★世の中は、見える化や可視化など重視するようになりました。確かに大事なのですが、コンセプトレンズは、見える化で終わるとただの絵です。暗黙知に戻さないと。どんなによいことをやっても見える化しないとねと言われます。私もそう思いますが、暗黙知としてそんなによいことがあるというのが、真実で、それこそ価値ある事でしょう。

★価値の転倒をもう一回転してもとに戻す。元の木阿弥ととらえるか、進化ととらえるのか。

★ともあれ、「しゅとも」も、大きな絵はあえて描いていないですよね。それがあると息苦しいからです。いまここにダイナミックに現れている事象を虚心坦懐にとらえ、楽しみ、希望の糸口を見つけ、それを理論化するのはなく、デザイン化してしまう。

★アーティスト的な感覚が編集者の方々の発想なのでしょう。暗黙知の豊かさを見抜き、それをデザインとして表現する。

★私自身は、メタとベタの使い分けが「粋」だと思っているのですが、なかなかバランスが保てません(汗)。精進しなくては(笑)。

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2022年7月 5日 (火)

太田晃介先生との対話を楽しみにしています。

★今週金曜日、GWE(GLICC Weekly EDU)で、太田晃介先生(大阪府立水都国際中学校高等学校 - 高等学校教頭)と対話します。事前のちょっとした対話で、文理融合とか、サイエンスマスを文系のカリキュラムでどう活用しているのかという問答になったとき、TOK(Theory of Knowledge)の話になりました。哲学とはちょっと違うけれど、おそらくそれもベースになっている「知の理論」。IBコース以外でもTOKの授業は実施されていると思います。もしそうだとするとすごいなあと、短いチャットのやり取りでしたが、感じ入りました。

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(同校に取材しにいったときの写真)

★というのも、太田先生によると、「TOKをやればやるほど、自然科学的手法と、人間科学的手法の違いが薄れていきます。。。いくつかの手段や手順を用いる(経る)ことによって、データの信頼性、信ぴょう性を担保したものを、信じるという感じですね。たとえば、お金の価値はどう決まっている?というところに行きついていきます。」

★つまり、価値認識のクライテリアを巡るという哲学的考察の話を太田先生はされるのです。

★もともと太田先生は理科の先生だし、大学院でも研究していましたから、当然そのようなクライテリアの設定と仮説検証の思考のアポリアについては考察続けていたことでしょう。

★それが、高校時のTOKと結びついたのではないでしょうか。

★TOKは、かなり洗練された現代の哲学的というか文化人類学的というか社会学的というか科学哲学的というか、そのようなものを高校バージョンに統合している興味深い学びのプログラムです。

★知るとは何か?知る自分とは何か?Whatの意味するところは何か?そもそもI think~because~の構造で語ることは真なのか信なのか?デカルト的なクリティカルシンキングが発動するあるいはデカルト的な問いが生成される学びのプログラム。

★太田先生のお話をお聴きしていると、哲学的ジャーゴンは使わないけれど、つまり誰でもが理解できる数学的発想に置換えて、結局はフッサール的なデカルトをさらにデカルト化する話になっています。

★考えてみれば、デカルトぐらいまでの時代の思想家は、哲学だけやっているわけではなく、自然科学も芸術も文学も数学もなんでもアリアリでした。リベラルアーツと言えばそれまでですが、もしかしたら、TOKは、そのような多角的というか横断的な思索を現代化しているのかもしれません。

★先ほど、明日長崎で私立学校の研修を行うという平方邦行先生(日本&東京私学教育研究所所長)と電話で話しましたが、究極のところ個人が哲学や芸術を身に着けられる学びをどう設定するかだというところに行き着きました。もちろん、そのためには、オープンマインドが必要で、それゆえのグローバルだし、PBLだし、リベラルアーツの現代化が必要なのだと。

★太田晃介先生の話とも重なるところがあり、今日はすてきな思索の時間を過ごせました。

★そうそう、おもしろいことに、ものごとの認識や判断のクライテリアは、何によって創られるのかという回答が意外なところにあったのにちょっと驚きました。それは金曜日のGWEで。ご期待ください。

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2022年7月 3日 (日)

2つの本「日本進化論」「デジタル日本列島進化論」が描くビジョンは着々進んでいる

★産業構造審議会経済産業政策新機軸部会のメンバーの1人落合陽一さんの書籍「日本進化論」は、ずいぶん前に書かれていますが、その方向性はある程度進んでいます。半導体・デジタル産業戦略検討会議のメンバーの1人若林秀樹さんの書籍「デジタル日本列島進化論」は、岸田政権の路線を下敷きに描いている可能性があり、ほぼ実現していくのだと思われます。

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★明治維新を推進した「富国強兵」もその背景に法律進化論や教育進化論があったので、歴史は繰り返すというかなんというか。ただ、当時の社会的進化論のイメージである優勝劣敗論は、前面にはでていないので、そういう意味でも「進化」はしているのかもしれません。

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★若林さんは自著の中で、上記の図を引用し、自信の発想とシンクロしていると述べています。上記の図は、産業構造審議会経済産業政策新機軸部会の第2回目のミーティングで提出された資料の一部です。

★この図の背景には、田園都市構想のモデルになった、大名庭園やイギリスのレッチワースの田園都市の構想があります。もともと渋沢栄一の息子がイギリスに外遊した時に着想を得て、レッチワースをモデルに田園調布をつくり、この都市に電車を走らせることを東急電鉄の創設者五島慶太がやったわけです。彼らの発想をデジタルバージョンにしているわけですね。

★長い間国土計画の中で練られてきた構想です。田中角栄の土建国家VS宏池会の庭園国家というような派閥の競争があったのでしょうが、もともと吉田茂の系譜の枝分かれですから、政策上は今再び合流しているのかもしれません。高度な政治の動きは全くわからないのですが。。。。

★いずれにしても長い伝統の延長上で動いているのでしょうから、着々と進むのでしょう。

★しかしながら、落合陽一さんの「日本進化論」は、この動きと共通することもありますが、哲学的土壌というか芸術的土壌というか数学的土壌が違いすぎますから、その違いをどのくらい実現していく政策が生まれるのかは、ちょっと期待が大きいですね。

★この違いの実現には、伊藤穰一さんの発想も、当然織り込みまれていきますから、ますます期待が膨らみます。

★私立学校としては、この落合陽一さんや伊藤讓一さんの次元を受けとめ、さらに教育においてさらなるオリジナリティを出せれるかどうかは、上記の図の中にある「教育」や「デジタル人材」の領域を豊かにできるかどうかにかかわってきます。

★それに、落合陽一さんや伊藤穰一さんは、上記の図をどう描き換えるのか想像するだけで楽しくなりますね。

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東京私学教育研究所「所報№87別冊」 バックキャストは未来からではなく、未来を超えるところから構想するというコト

★東京私学教育研究所から、「所報№87別冊」を頂きました。本冊子は、同研究所で研究委託された委員としての私学の先生方の成果を発表する論文集です。しかし、今回は、同研究所所長の平方邦行先生のミッションとビジョンとそれが生まれる根拠としてのパラダイム転換の論考が載せられています。また、第2部ではその実現のために同研究所の所員の方々と「研修コード」を作成して、4月から新たに始めている研修の価値づけをまとめた論文も掲載されています。

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★それゆえ、「別冊」という扱いになったのでしょう。第1部は、今年5月15日(日)に開催された「Discover私立一貫教育2022東京私立中学合同説明会」において、ガイドブックとして来場者の保護者に配布された冊子の転載ですから、「別冊」という扱いは理に適っているといえます。

★恐縮至極なのは、同所報のあとがきで、平方先生が「ガイドブック制作に対して、惜しみない協力をいただいた聖パウロ学園校長の本間勇人先生」と何人かの方々といっしょに名を連ねて頂いたことです。ありがとうございます。

★このガイドブックのタイトルコンセプトは<「変革」の時代に試される私立中高一貫校の教育>です。新しくガイドブックを作成するので、対話をして欲しいということで、なんどか研究所やZoomで議論をさせていただきました。

★基本は、2089年から考えるというバックキャストの時間コンセプトの中で考察するということにしました。2089年というのは、昭和生まれの方々が100歳以上になり、すでにZ世代やα世代が、社会を動かしているエポックだからです。

★まずは、そのときに生き生きとした「私学の建学の精神」の意義づけから再考することになりました。そのとき、すでにバックキャストとは直線的な時間で考えるのではなく、「モモ」的な円環する時間で考えるのだということも了解できました。

★でなければ、普遍性を保つことができないからです。したがって、バックキャストは、未来から考えるのだけれど、その未来でも持続可能な普遍的なミッションは何かということを構想することなのだと。

★つまり、バックキャストは、未来からではなく、未来を超えるところから構想するコトなのだというコンセプトレンスを確認することができました。

★そのレンズで、先見性やイノベーションの概念を再構築しながら、なるほどだから私立学校なのだという多くの気づきを得ました。

★同研究所バージョンの思考コードと同研究所独自の研修コードを論考の中でいかに活用するかというコトも議論しました。

★ガイドブックですから、中学入試の動向や大学と連動する中学入試問題なども入れようという対話もしました。

★また、海外の私立大学や私立高校、インターナショナルスクールが続々上陸する時代なので、地政学的及び地経学的に考察するページも作成しようかと。しかし、これはまだ機が熟していないので、さわりだけにしようとか。ただ、触れておかないわけにはいかないと。

★この手のガイドブックは、保護者ばかりか、学校関係者、塾関係者も目を通すので、まだダボス会議を主催している世界経済フォーラムレベルの見通しをダイレクトには入れられないなど。ただ、私立中高一貫校の卒業生は、そのレベルで活躍しているし、そもそも保護者の中にはかなり進取の気性に富んだグローバルな方々もいるので、そこはやはりイメージしていただけるようにしようとか議論になりました。

★議論の過程で、目からウロコというものは、いっぱいあったのですが、リベラルアーツの現代化が思考コードとCEFRのルーブリックの掛け合わせで、その輪郭が明確に見えたことは感動的でした。

★そして、このリベラルアーツの現代化の領域こそ、未来を超える出来事なのだということも確信しました。もちろん、平方先生は、そこまではあえて書いていません。

★カタカナ言葉は、いっぱい使われていますが、取捨選択されていて、今では多くの方が日常使っているカタカナ言葉を使うようにセーブしていました。さすがです。

★今回私は、本当に貴重な機会をいただきました。今回の体験は、おそらくWeb3.0 を超える道を探すきっかけになりました。地政学→地経学→?ということです。Web3.0は、地政学と地経学のパラダイム転換ですが、その次の次元が実はあります。Web3.0もデメリットはありますから、それを解消する構想力が必要になります。そこの部分が、未来を超えるポジショニングなのでしょう。

★それは何か?2023年に向けて、多くの仲間と対話し、実践していきたいと思います。

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2022年7月 2日 (土)

キリスト教の教会における霊性とキリスト教の学校における霊性の違いと共通点 マインドとスピリチュアリティの対話

★6月29日は、勤務校聖パウロ学園で創立記念ミサが行われました。6月29日は使徒パウロとペテロの祭日でもあります。勤務校の生徒、もちろん教職員もパウロの精神に気づきを得ながら学園生活をおくります。今回は、聖パウロ修道会日本管区長の澤田豊成神父様により創立記念ミサにあずかりました。神父様は本校の卒業生でもあります。イタリアで世界のカトリックの修道会の代表が集まって、会議を行って帰国した直後でしたが、すてきなミサを行っていただけました。

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★ミサ終了後、キリスト教に興味と関心をもっている生徒が神父様のもとに集い、問答も行われていたようです。

★昔と違い、イタリアで行われた会議は、一方通行型のスピーチではなく、ディスカッション形式だということです。それぞれ違う修道会の神父が分かち合うのですから、そこには「霊性(スピリチュアリティ)」が降りてきたに違いありません。澤田神父様もどのような文脈だったか忘れましたが、「霊性」の重要性をふと口にしていました。

★PBL的なスタイルには、なるほど「霊性」が宿るのだなと何気なく思いましたが、ミサに参加する生徒の様子を見ていて、「霊性」に包まれていると感じました。またまたそんなオカルト的なと思われるかもしれません。聖体拝領の時、信者はパンを最後の晩餐よろしくいただきに並ぶのですが、信者でなくても並ぶことができます。聖体拝領はできないのですが、神父様から祝福を受けることはできます。意外にも並ぶ生徒が多くいるのです。中にはありがたい何かを授かるという気持ちの生徒もいるでしょうが、感謝の気持ちが生まれていることは確かで、それはそれでよいのです。

★そんな姿を見ながら、ドイツの若き俊英の哲学者マルクス・ガブリエルさんが、マインドを超えた意味でのスピリチャリティが、これからは大事なんだと言っていた意味が何かわかったような気がしました。

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★今回のパンデミック及びウクライナ侵攻によって、ケアの重要性が浮き彫りになっています。そのようなケアに挑むエッセンシャルワーカーはケアクラスと呼ばれてもいます。このケアは、しかし、マインドレベルなのかスピリチュアリティレベルなのかでは、微妙に次元が違います。

★キリスト教の教会では、神父・牧師及び信者は、自分のマインドを超えてスピリチュアリティに行き着くことを目指します。もちろんなかなかそうはうまくいきません。マインドに引きずられてしまうのが人間というものです。

★キリスト教でもカトリックでは、信者は7つの秘跡(聖体拝領もその一つです)を介して、スピリチュアリティを感じることができます。

★プロテスタントは、ダイレクトにスピリチュアリティとコミュニケーションができます。こんなに単純ではないでしょうが、大きな違いは手法の違いで、スピリチュアリティを感じたいというのは同じでしょう。

★しかし、キリスト教の学校は、その多くが教職員も生徒も信者ではありません。したがって、神様のレベルのスピリチュアリティの話をしても、オカルト的な話としてしか理解できないでしょう。

★ですから、教会とは違い学校では、自分よりも大きな存在としての何かを感じ、自分のマインドをこだわりや頑なな固執から解放されることの重要性に気づくという機会を折に触れ創っていくということでしょう。

★その大きな存在が、キリスト教的なスピリチュアリティに通じるのかどうかは、生徒によって違うわけです。それについては、私たちは何もできません。

★詩人が森を散策しているときに、小さな自分の存在という自分のマインドに気づくということはよくありますね。でも、その存在がキリスト教的なスピリチュアリティであるかどうかは、わかりません。

★いずれにしても、PBLで大事にされているリフレクションは、ネガティブなメンタルモデルに気づく瞬間でもあります。デューイ自体が、PBLにおけるリフレクションをどのレベルでの気づきに設定していたかどうかはわかりません。しかい、ヘルバルト主義という実証主義的世界観を批判していましあから、マインド以上のレベルではあったでしょう。

★マルクス・ガブリエルさんは、マインドだけではうまくいかないというのは、大きな存在をモニタリングできるスピリチュアリティは必要だということなのかもしれません。カント主義は、もの自体はわからないというわけです。そして、わからないものはないに等しいのだとしてきたのですが、わからないからと言ってないというわけではないのだと。

★だから、ガブリエルさんは、マインドだけの中での存在はないのだと過激にも言い放ったのかもしれません。存在は、マインドとスピリチュアリティのコミュニケーションが生み出すものだからというわけでしょう。

★ガブリエルさんは、京都を歩くのが好きなようですし、日本には、ドイツと同じようにマインドを超えたスピリチュアリティを感じる感性があるというようなことをNHKの番組で語っていたような気がします。

★勤務校はカトリック校です。信者を増やすことは目的にしていませんから、スピリチュアリティというのは、まずは自分を見つめる時、大きな存在を感じ、そこから自分のマインドに光を当ててリフレクションするという環境をデザインすればよいのだと私は感じています。

★ケアクラスもマインドレベル、大きな存在を感じるレベル、スピリチュアリティを感じるレベルによって、言動は変わってくるのでしょう。もぎろん、いずれのレベルも尊いことに差はありません。

★やはり、どうもレベル分けをする癖が思考コードでついてしまっている自分のマインドを超えるモニタリングは私自身もしなければならないようです(汗)。

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内田真哉先生 人生はプレイフルラーニング 幼稚園のときに生まれる希望を持続可能にする教育を実践

★昨日、内田真哉先生と対話をしました。鈴木裕之さん主宰のGWEで次のようなテーマでお話をお聴きしました。<GLICC Weekly EDU 第85回「PBLの真髄ー内田真哉先生との対話~PBLの真髄」>。

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★内田先生は、公立学校、聖学院を経て、現在はみずき野幼稚園の理事長。中高生とのかかわりの真髄が、実は園児とのかかわりとの真髄とシンクロしていると語ります。内田先生は、様々なプロジェクトを生徒と共に歩むことによって、かかわりを広げ深めています。

★最近経産省や文科省でPBLなる学習手法が推奨されていますが、内田先生のPBLは手法というより人生そのもの、生徒自身及びその自分自身がかかわる他者との命の躍動を大事にしています。

学校法人聖学院のインタビュー記事の表題は、「先生が楽しそうじゃなかったら生徒は社会に希望を持てない」。まさに内田先生の人生はプロジェクトであり、何よりプレイフル。たしかに、楽しいからこそ希望が生まれます。

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★この希望は幼稚園の頃は、みな持っているのに、いつの間にか、知識暗記や理屈優先的な学びで、希望がみえなくなっていることは否めません。しかし、希望はなくなったわけではないわけですから、内田先生は、希望を取り返す教育の連続体、幼稚園から大学まで、そして大人になてからも生涯通じて持続可能にする教育を多様なプロジェクトを実践しながら、理論構築もしています。

★ESLやレゴを通した学習理論も地に足ついた考え方を組み立てています。

★プレイフルは、豊かな感情を生み、その豊かな感情は幸せな人間関係を生み出し、その心理的安心という環境から創造性が生まれてきます。その環境は、しかし、頭の中で考えたりするだけではなく、たとえばレゴで生徒が自分の想いをカタチにしていくことができる環境です。

★文字で表すと、時系列に並んでしまいますが、内田先生の幼稚園における教育活動の話を聴いていると、豊かな感情、幸せな人間関係、創造性は、順番に出てくるのではなく、園児がレゴを活用したり農業活動などをしていると、いっぺんにすべてが降りてくる感じなのだということに気づきました。

★一方で、園児や生徒が自然とかかわると、自分ではどうしようもない局面にぶち当たり、そこで自分たちは、何を感じ、どのように行動し、どう判断するのかという経験も大事にしています。

★さらに、園児はそもそも1人で行動はできません。先生方がサポートするのはもちろんですが、内田先生は、聖学院の生徒も巻き込みます。いや内田先生が聖学院の生徒に巻き込まれているのかもしれませんが、ともかく、多くの他者がかかわってサポートしています。

★この多様な人間関係やネットワークを大事にすることはまさにスリリングでプレイフルです。この多様性は、聖学院のプロジェクトでも重要なようです。

★とにかく、内田先生のお話は、多様な具体的な体験が中心です。ですから目に浮かぶような話であり、引き込まれていきます。同時に、その体験に理論を重ね合わせているところが、ますますすてきです。だからこそ、その教育活動が他校の先生方にも共感を生み、拡大しているのです。ぜひご視聴ください。日本の教育に、大きな希望があることを実感できます。

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