伊藤穰一さんの新刊本の意味 千葉工業大学にMITメディアラボの日本版以上を創ることかもしれない。
★1998年から新しい中高一貫教育の研究をしようと研究所を創った時、「希望の国のエクソダス」に出遭いました。村上龍さんの小説です。絶望を希望に変える中学生。新しいコミュニティを創る話です。出エジプト記ならぬ出学校記です。そのときの主要キャラクターの一人のモデルが、伊藤穰一さんだという風の便りを聴いて、ずっと気になっていました。
★その教育研究所のプログラム開発の1つに、2001年から本田技研の社会貢献事業部と協働してツインリンクもてぎでの2泊3日の発見体験学習というPBL型のプログラムを企画・開発・運営しました。
★そのときのPBLの発想の1つとなったのが、当時のMITメディアラボのシーモア・パパート教授の3Rから3Xへでした。評価システムはスタンフォード大学に遊びに行ったときに仕入れたエンパワーメント・エヴァリュエーションを使っていました。すでに、チームに2台ノートパソコンを貸与し、夜のリフレクションの時には、エンパワーメント評価項目に入力して、個人の状況やチームの状況を可視化していくシステムです。
★それから2007年には独立して、通信制高校の市場を調査したり、私立中高一貫校のアドバイザーやストラスブール大学と連携して一週間の今でいう探究トリッププログラムを実施したりしていました。そんなことをしていたので、現在聖学院の児浦先生やかえつ有明の佐野先生方と慶応のSFCキャンパスで新しい学びの準備にもとりかかっていました。その日は3・11でした。
★リスボン大地震ではないですが、このままではいけないと心を突き動かす共感の輪が私学人の間で広まりました。それで、2011年に21世紀型教育機構を立ち上げる事務局長をやることになったわけですが、ちょうどそのとき伊藤穰一さんは、MITメディアラボの所長に就任。同機構の土台となる教育はC1英語・PBL型授業・STEAM・リベラルアーツ・哲学ですが、その着想とシンクロする感じがして、伊藤さんのブログや本をフォローしていました。
★伊藤穰一さんに学んだのは、パラダイムービジョンーゴールという全体感でした。また、いろいろな新しい言葉やトレンドの言葉を活用されるのだけれど、他の人と決定的に違うのは、その言葉を自分で創ったり、多様なネットワークの中で時代のキーワードを発見したりしているということです。誰かが使っている言葉をパクっているわけではないのです。
★そして、これが一番肝心なのですが、その言葉を実践に移行できるようにコーディネートしているということです。世界の集合知や集合脳をフル活用していますね。
★これは21世紀型教育機構でも活用しました。ですから、多くの情報を融合しますが、新結合することに務めました。それからIBやAレベル、APのエッセンスに学び、独自のPBL開発や思考力テストという偏差値ピラミッドをフラット化する入試も先生方と開発しました。
★文部科学省の先駆け的なポジショニングを得ようともしました。新学習指導要領で目指されている方向性は、すでに先行的に進めてきたのもそういうわけです。「思考コード」という学びのデザインや授業デザインのコンパスも、先生方と創りました。
★パラダイムービジョンーゴールー言葉ー実践ーリフレクションー次のステージという私の言動は、伊藤穰一さんに影響を受けたと思います。最近では落合陽一さんやマルクス・ガブリエルさんからも影響を受けています。
★そんなわけで、今回伊藤穰一さんが新刊本を出版されたので、すぐにkindleでポチっと。Web3.0、メタバース、NFTなどDAO( Decentralized Autonomous Organization)という組織で起こっていることをわかりやすく書いています。
★このDAOは、現在に到っている700年前フィレンツエで軍事力と経済力と宗教力の闘争の中で輪郭を形成した資本主義というパラダイムを転換するものだという認識を伊藤穰一さんは有しています。ここは私の持論でもあるので、なんか親近感がもてます。
★この新刊書は、未来予言書であると読む人もいます。それもありでしょう。現状の最前線を説明していてわかりやすいけれど、さらに次はどうなるのだろうと読む人もいます。それもありだけれど、それについては、私たちもいっしょに考えるのがおもしろそうですね。
★私はと言うと、ああ、これは伊藤穰一さんがMITメディアラボでやってきたことを、千葉工業大学に継承し、さらにおもしろいことをやりますよという宣言文だと受け止めました。
★2021年11月1日に千葉工業大学は、変革センターを設立。センター長に伊藤穰一さんを迎えています。伊藤さんの元に世界中の叡智が集まるでしょう。希望の国のエクソダスが、現実化する日本でありますように!
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