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2022年5月 8日 (日)

湘南白百合のトランジションモデル 過去問から見えるコト

湘南白百合が今年の過去問を公開しました。帰国生入試の過去問をみて、これはなるほど新しい学びの体験値を積んでいくことが前提になっているなあと感じ入りました。偏差値を伸ばすという意味の学力成長論ではなくて、多角的で奥深い学びの体験値の密度を上げていくという成長論を湘南白百合は明快に採用しているということが了解できます。後者の成長論を私はトランジション教育と最近呼んでいます。極端な対比になりますが、偏差値成長教育とトランジション教育という違いを今後意識することは、学校選びではとても重要です。

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★偏差値成長教育では必ずしも進路先や社会に出たときにVUCA時代に対応できるリーダーシップを発揮する活躍をするとは限らないのは、今までの日本の状態を見ていて明らかです。そこで最近、経営学の組織開発論や人材開発論、社会学、心理学などで、PBLに代表されるクリティカル&クリエイティブシンキング、コラボレーション、コントリビューションなどの資質能力を養う新しい学びの体験値を積むトランジションを経てきた生徒がどうなるか研究が進められてきました。結果は、やはり大活躍というわけですね。

★湘南白百合が、このトランジション教育(この言葉を使ってはいませんが)を最近ダイナミックに展開しているのは、進路先でも活躍できる総合的な人間力を育成する目的があるはずです。

★それを予感させる問題が、帰国生入試で出されています。上記の算数問題をみてください。ペン落としゲームで勝敗を決めるルール創りをする問題です。5回ペンを落として、5つの点が紙につく状態を比較して順位付けをするというわけです。2通り考えて、どちらが公平なのか、主張+理由で記述するというのです。

★確率論的に考えるのか、幾何的に考えるのか、トポロジー的に考えるのか、美学的に考えるのか、正解のない問いかけです。そして、それを算数的にというか数学的に理由付けするわけです。となると客観性と公平性が結びつくのか、主観性をどのように公平に解決するのか、まったくあの大哲学者フッサール問題が現われてきます。こんな素敵な問いを入試段階で考えるわけですから、入学後の授業や教育活動の豊かさがすぐに想像できます。実際ダイナミックでかつ繊細な教育が行われています。それは水尾教頭先生がふだん説明会や広報活動の中で物語る中で十分に了解できます

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★英語も強烈です。2問出題されていて、1問目は課題文付き小論文で、パラグラフライティングの要領が詳しく説明されていて、その条件に沿って書いていくエッセイライティングの問題です。2問目は上記の絵を見て、二人の冒険物語を創作するクリエイティブ・ライティングが出題されています。

★いずれもパラグラフライティングというロジックをベースに、生徒自身のクリエイティビティを発揮する学びの体験を入試段階でするわけです。

★国語も、佐藤淑子さんの『イギリスのいい子日本のいい子』(中公新書)の文章を読んで、まずは「自己主張」についてのイギリスと日本の比較スタディをするところから始まります。そして、海外経験によってコミュニケーションの自己変容がどのように起こったか論述するわけです。

★入試問題の傾向と対策についても同校サイトには掲載されていて、この問題の論述の仕方については、次のように説明されています。

<作文は書き出す前に、まず「全体の構成」を考え、いくつかの「段落」に分けて書くことが大切です。これは読み手に自分の考えをわかりやすく伝えるための工夫の一つです。


「具体的な自分の体験・経験」を交えながら書き、その体験・経験から得られた「考え」や「思い」を伝えましょう。


主語・述語や修飾語・被修飾語など、それぞれの対応関係が正しいかどうかに注意しましょう。また、漢字・語句などは正しく表記しましょう。>

★段落構成やデータや根拠を書くという点で、英語のパラグラフライティングと共通しています。

★このようなトレーニングは、入学してから一般には行っていくのですが、同校の場合は、その素養が入試段階ではやくも引き出されるわけです。

★一般入試のほうもかなりおもしろく、思考力問題は、帰国生入試と共通するコンセプトでデザインされています。

★湘南白百合のトランジション教育は、同校の中学入試問題を学ぶところから始まるのですね。

★このような視点で、今度水尾先生と対話ができればと思います。ホンマノオトの書き込みでは、不足している部分が多すぎますが、水尾先生との対話では、全貌が見えるからです。オンラインとリアルのハイブリッド時代になって、学校の先生の生の声=本物の情報をシェアできる時代になったのは、学校選択の時に大いに役立ちます。そんなところにも、新しい時代の風が吹いているわけです。

★保護者の方の選択眼も豊かになってくるわけです。その眼差しに対応するように学校も教育の質を向上させていくわけです。市場の原理の光の部分ですね。

★とにもかくにも、今後の湘南白百合のトランジション教育の展開は注目していきたいと思います。

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