Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(04)「先見性」の新しい意味付け
★Discoverのコンセプトの第2章は「先見性」。そのサブタイトルは「2089年から考える Z世代とα世代の才能を開発するために」となっています。また次のように2つの節に分けて語られています。
・私学の先見性 100年を見通す力
・私学の先見性 2089年からバックキャストする
★バックキャスト(baskcast)とは、未来に何が起こるのか予想してそこから今をどうするかアイデアを出すということです.。未来を投影してというか投企してといった感じです。そして、これはforesight(未来洞察)という言葉と同じです。この未来洞察こそ先見性と言うことです。
★バックキャストと真逆のforecastとは違います。こちらの方は、今まで積み上げてきたデータや情報から帰納法的な推論をするので、そこから未来が見えてくることはなかなか難しいのです。帰納法的推論の英語表現は、inductionです。これに対し、未来予測は仮説的推論なのでabductionとなっています。
★私立学校の先見性とは、もちろん、過去を研究し、未来を仮説的に推論するわけです。そんなどうやってと思われるでしょうが、実は思想家で社会改革者、アーティストであるウィリアム・モリスは、彼の時代から200年以上も後の未来社会を描いているし、SF小説家で思想家で、日本国憲法の起草者や原案者に影響も与えたH・G・ウェルズもかなりの未来を描いています。
★彼ら二人だけではなく、多くの見識者が未来を予想しています。メタバースという世界まですでに描かれてきました。
★ですから、物質的な変化の推論というより、100年後、どんな問題が起きているかの仮説を立てて、それに対応出来る、体力・知力・社会形成力などを生み出す教育環境をつくるということが私立学校の先見性の本意のようです。
★しかもここでいう私立学校のバックキャストあるいは先見性(未来洞察)の100年というのが、1889年~1989年~2089年という200年の間のことを指しているのが特徴的です。1989年とは明治憲法が発布され、日本が近代社会の仲間入りしたことを意味します。1989年とは、ベルリンの壁が崩壊したことを意味します。2089年は、最後の昭和世代が100歳になり、Z世代もα世代も高齢者になっている時を意味します。
★明治時代に創設された私立学校も、大正時代に創設された私立学校も、戦後創設された私立学校も、近代戦争をいかに食い止めるか、これらの戦争によってもたらされた負の遺産をどう解消するのか、それを教育でなんとかしようとして誕生しています。
★また21世紀にはいってからは、テロリズムや多くの紛争というグローバリズムの影の部分をいかに希望に変えられるか、それを21世紀型教育でなんとかできないかと伝統と革新を統合する教育の変容にチャレンジする私立学校がどっと増えました。
★このような気概をもった教育出動は、建学の精神という基準・指標の視座が高く創造性が豊かだからです。それゆえ100年、200年先からバックキャストできる先見性を有していたと高らかに謳われているのが第2章です。最初と最後の方の一部を引用しておきます。先見性と学費が結びついているのも私学人だからこそ明快に語っているわけで、興味深いですね。
●「私立中高一貫校は、公立中学校とは違い、時代の精神を読み解き、100年先を見通して教育を形成しています。その付加価値があるがゆえに、学費をいただき、教育の質を高め続け、教育の仕組みを進化させているのです。
100年の見通しを立てるとは、100年先からバックキャストして、いまここでの教育をどうするか学内で議論し、教育プログラムを創っていくことです。100年先の教育を実現するために、学校の文化を豊かにし、そのための教師の技量や精神を錬磨していきます。
また、100年の見通しを立てるからこそ、予測不能な出来事が起きても、それを乗り越える意思決定が瞬時にできます。」
●「1989年、私立学校は、グローバリゼーションという国と国だけの関係だけではなく、個人と個人が世界の舞台で活躍できるようになり、パラダイム転換が起きたことを認識しました。
教育は100年の大計といわれるように、私立学校は、目の前の生徒が未来社会をどう創り、どう次世代に継承していくのか、そして、そのような時代を善なる方向に導くリーダーシップをどう輩出するのかを大切にしています。
1995年ごろZ世代というグローバルもコンピュータも当たり前という世代が誕生しました。2011年には、α世代が誕生し、その世代が今の中学受験生です。その世代はデジタルの新しい概念を身に付けると言われています。しかしながら、1989年の100年後である2089年には、彼らも高齢者になっています。だからこそ、私立学校は1989年から1999年の経済の空白時代に、ピンチをチャンスにすべく、2089年から予測して、生徒の未来に役立つ教育を練り上げたのです。」
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