Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(09)中学入試が変われば大学入試も実質的に変わるワケ
★Discoverのコンセプトブックの第6章「大学入試と連動する中学入試」は、さりげなくラディカルな内容になっています。この章の趣旨を簡単に言えば、大学入試改革は、政府や行政の助言指導よりも、私立学校の中学入試の変化に応じて、実質的に変わるということです。でも、本来は海外の大学もそうですが、ナショナルカリキュラムに拘束されている大学入試問題というのは、どこか変です。学問の自由が前提になっていますから、そこを規制されることに何も感じない大学というのがあるとしたら、もはや民主主義国家の大学ではなくなるかもしれないからです。
★まあしかし、研究費や補助金の問題がありますから、そこは文科省をリスペクトしながらなのですが、文科省も大学の学問の自由を尊重する道をちゃんとつくったというのが、今回の文科省の教育改革のすごいところです。しかし、そのような道を戦術的に私学側が巧みに提案したということもあるのかもしれませんが、そこは氷山モデルの海面下です。はっきりしたことはわからないし、憶測でしかありません。
★しかしながら、考えてみれば、中教審の座長や東大総長は私学出身者が多いのです。武蔵や慶応出身者が多いですよね。だから、理想的過ぎる、現場に合わないと批判され、表面的には腰砕けになったようにみえるのが、21世紀にはいって数度行われた学習指導要領改訂です。
★しかし、結局PBLは残るし、CEFRも残ります。探究などはトレンドになっています。ルーブリックは受験業界では思考コードとして着々と広がっています。大学入学共通テストという目に見える部分の大改訂を腰砕けにするという戦術で、本質部分は残したというわけです。
★どうやってか?IB200校計画と留学生30万人計画とGIGAスクール構想という、一見大学入試問題や学習指導要領改訂にかかわりないような環境を創ることによってでした。
★それからもう一つ米国のAPのエッセンスを活用した高大連携の浸透です。そんなのどこにあるの?と思われるでしょう。実はSGHとSSHの流れの中にそれを埋め込んでいるのです。この動きを目敏く読み取った海外勢がUPAAとして入り込んでいるのも凄まじい勢いです。
★学習指導要領の一見外にあるこれらの環境を、私立中高一貫校も大学も同時にリサーチしました。その過程で、大学はセミナーを開いて、高校を巻き込んでいます。
★このリサーチによって得たリソースを中高も大学も、中学入試では新タイプ入試と2科4科の思考型問題に反映し、大学入試では、帰国生入試と総合型選抜、一般選抜の小論文に反映しました。しかも、高大連携によって、中高のカリキュラムの中に浸透させることにもなるのです。
★このような連携によって、大学側は、アドミッションポリシーにそのような学びを経てきた生徒とマッチングするような入試を実質開発するようになったのです。
★中学入試が変われば、それに対応した大学入試にならざるを得ないのは、高大連携で、中高のカリキュラムを大学側が身に染みてわかるようになったからです。しかも、中学入試問題は学校の顔ですから、中学入試問題とカリキュラムが連動することは検証されたために、いちいちカリキュラムをリサーチしなくても、中学入試問題のリサーチで、どのような生徒の成長が卒業する時に生まれているのかについて、大学側もピンとくるようになったわけです。しかも思考コードを理解すれば、それはもっと理解しやすくなるのです。
★高大連携の拡大と進化は、中高と大学の両者が相互理解を深める場だったのです。そこに文科省は直接介在しないのです。やりやすいですね。
★しかし、IBとかGIGA構想スクールとかSGHとかSSHの成果を使うことは、文科省にとっては、自分で設定しているわけですから、ウェルカムだし、このようなシステムを活用するかどうかは学校次第ですから、公平性も一様(あくまでも)大丈夫なのです。
★しかしながら、結果的にこの情報を活用した私学や公立の進学重点校、公立中高一貫校と活用しない公立学校とでは、差が生じてしまうのも現実です。第6章は、明快にそのような差が出ることを記述してはいませんが、読む人によっては敏感にそれを理解する可能性があります。私学の優位性が、新しい大学入試タイプにおいてもあることを示唆しているわけです。
★もっといえば、中学入試問題と大学入試問題は連動しているわけですから、もし中学受験の体験がなかったとしたらどうなるか?推して知るべしというわけです。
★中高一貫校の合同相談会のコンセプトブックだからこそそこまでさりげなくでもラディカルに記述したものと思われます。
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