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2022年5月

2022年5月31日 (火)

複合的な狙いがある「教育未来創造会議」①環境省の資料

★「教育未来創造会議」の座長は岸田首相。したがって、新しい資本主義の構築の人的資本、そのためのDXインフラ資本、脱化石燃料の基盤づくりとしてグリーン化推進人的資本、民主主義国家との連携とサブリーダーのポジショニング確立など複合的狙いがありそうです。もちろん、その背景には、教育の質を上げるのだから、税金も上げますよというのと、今回のウクライナ問題で、より民主主義国家との連携というより同盟を強化しなくてはならないから、その税金の行方は、〇〇力強化にも使いますよという話が横たわっているでしょう。

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★今回の会議でも、他の会議同様、各省庁から多様な資料が提供されています。そのデータや資料の意味するところを考えてみると、教育の未来が見えてきます。

★経産省の資料の中に、上記のような環境省のリサーチ編集資料も盛り込まれています。

★グリーン化人材育成とDX人材育成とグローバル人材育成の3本柱になっています。これが新しい資本主義の担い手ということでしょう。

★グリーン化シチズンシップ、DXシチズンシップ、グローバルシチズンシップのコンビネーションによって、なんとか所得倍増が成り立つか成り立たないかを静かに議論しているに違いありません。だからこんな資料も提供されています。

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★米国は、構成主義的なプラグマティズムですから、3つを融合させるのは得意です。だから、日本もそのような新しい教育を行って、新しい資本主義に突入しましょうということでしょう。

★ただし、それには税金を挙げなくてはね。円安でインフレだからそれもやむを得ないし、ウクライナ問題で日米英との同盟関係を強化するには、〇〇力も足並みそろえなければと。

★化石燃料から脱するには、グリーン化が必要だし、DXの新しい世界を創るには、海底ケーブルの強化と宇宙だよねと。そのためかどうかわかりませんが、同会議のメンバーに身近なものから宇宙船の部品まで、DXを融合した新しいモノづくりの牽引者である大坪正人さんが名簿に名を連ねています。その資料も興味深いですね。いずれコメントしたいと思います。

★所得倍増になれば、たしかに所得税などをあげても悪くないでしょう。しかし、順番を間違えるとちょっと困りますね。

★しかし、同盟のためには、しかたがないでしょうと、そこは何重にも手をうっているわけですね。

★私たちは、この状況をどう捉えていけばよいのでしょう。ただ反対したり批判するのではなく、冷静にメタ認知熟慮をしたほうがよいですね。そして、このような熟慮ができる複眼思考を生徒と共有していくことです。

★あくまで、〇〇力ではなく、知恵と経済で乗り切るアイデアを生成する思考型教育をPBLなどで遂行していくしかないでしょう。

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2022年5月30日 (月)

教育未来創造会議の構成員安宅和人さんの21世紀型人材育成ロードマップ

★昨日触れた「シン・ニホン」の著者安宅和人さん(慶應義塾⼤学 環境情報学部/ヤフー株式会社 CSO)の提供した「“シン・ニホン”⼈類サバイバル時代における⽇本の再⽣と⼈材育成」は、さらりと従来のAI観を問い直し、世間の先入観をひっくり返す図などが掲載されていておもしろいのです。その中で、今回は、次の図を共有したいと思います。

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★この「AI×データ時代に向けた⼈材の増強イメージ」をみて、面白いと思ったのは、初等中等教育と高等教育の学部段階が1つになっていることです。図の中からリテラシー層としての人材像の構成要素を書きぬいてみましょう。

 • 時代に即した基本的なリテラシーを⾝につける。
① ⺟国語、世界語でモノを考え⼈とやり取りする⼒
② 課題を設定し解決する⼒
③ データ×AIの⼒を解き放つ基礎能⼒(ある程度の理数、デ
ザイン素養は理⽂・専⾨を問わず必修化)
• 未来へのマインド、Exponentialな時代のモノの⾒⽅を育てる

★この像は、60%弱しか大学にいかないので、大学以外でも、基本的と言いながらも相当高いAIリテラシーを身につけるというわけです。AIというリテラシーは、技術と哲学の両論をリテラシーとして身に着ける必要がたぶんあります。まさに21世紀のリベラルアーツですね。

★それに①多言語主義で、②プロジェクト思考、③データサイエンス習得必須ということですね。これって、21世紀型教育機構の3つの基本スキルであるC1英語とPBLとSTEAMに対応しています。それ以上なので、21世紀型教育のさらなる次元が見えてきます。

★それから、未来へのマインド、VUCAというよりexponentialというあらゆる領域で指数関数的なビッグバンの小型化が起こる時代に必要な創造的生成思考力。これも21世紀型教育のビジョンと重なります。

★こうしてみると、もはや大学入学小競り合いをやっているのではなく、初等中等教育と高等教育はもっと密接に連携し、大学には全員が進めるようにしたほうがよさそうですね。

★偏差値成長論から21世紀型リベラルアーツ成長論へシフトする教育未来創造を2025年から実行できるように政策を実現して欲しいもです。中高の方では、21世紀型教育のバージョンアップをそれまでに果たしておきます。AI関連のインフラとコーディネーターはどの学校にも整備して欲しいですが。この整備を促進するコミュニティを創ることがまずは優先ポイントでしょう。

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2022年5月29日 (日)

教育未来創造会議の構成員資料がおもしろい。

★岸田首相が座長の「教育未来創造会議」。新しい資本主義を生み出す人材育成強化(特にAIなどのテクノロジー関連)のための政策実行会議何だろうと思います。文科省は、毎週のように各公立学校にコロナ感染拡大防止のための方針や学習指導要領の改訂情報、新しい指導要録や3ポリシーを作ることなどについて指針を示す書類をPdfで配布します。自治体はそれを私立学校にも流します。今回の会議の第一次提案も同様です。先日こんな書類が届きました。

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「教育未来創造会議「第一次提言」を受けたこれからの大学に関する文部科学大臣メッセージについて(周知)

令和4年5月 10 日に内閣総理大臣を議長とする教育未来創造会議において、「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について(第一次提言)」が取りまとめられました。この提言を踏まえ、その実現に向けて社会全体が子どもたちの未来のために力を合わせていくことを目指し、社会の改革の流れを喚起するための文部科学大臣メッセージ(以下「本メッセージ」と言う。)を別添のとおり、発表しましたのでお知らせします。本提言においては、①未来を支える人材を育む大学等の機能強化、②新たな時代に対応する学びの支援の充実、③学び直し(リカレント教育)を促進するための環境整備、に焦点を当てて、今後取り組むべき具体的方策が取りまとめられました。


この中でも、
・理系の学修を行うための大学の受け皿を抜本的に拡充すること
・特に女性が理系の分野で大きく活躍していける社会を構築すること


については、大学・高等専門学校(以下「大学等」という。)のみならず、大学等を志す子供たち自身やその保護者、学校の教職員、そして企業等から広く御理解、御協力いただくことが不可欠であると考えております。」

★「別添」というのが、5ページの資料。中身は、わかりやすいのですが、2014年以来論じられてきた内容をAI人材育成に向けきれいにまとめたという感じです。このとおりいけば、たしかに悪くはないのですが、何かワクワクしません。官庁表現だからしかたがないのです。

★しかし、会議の構成員の資料は実におもしろいです。たとえば、「シン・ニホン」の著者安宅和人さん(慶應義塾⼤学 環境情報学部/ヤフー株式会社 CSO)の「“シン・ニホン”⼈類サバイバル時代における⽇本の再⽣と⼈材育成」は、わかりやすく整理されていますが、その資料にあるように、「出来た社会を回す」表現ではなく、これぞ「未来を変える人」の表現だからでしょう。

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★岸田首相も、安宅さんのような表現をすればこの国は大きく変わるでしょうが、「出来た」というのは、すでにうまく作りあげているという意味と君はなかなか出来た人だねと使うときの意味もあります。岸田さんは、まさに出来た人ですから、弾けはしないでしょう。

★ですから、政府や省庁が出すドキュメントとしてはしかたがないのですが、その背景に提案をどんどんしている構成員の方々の提供する資料は面白いのです。何らかの形で岸田首相は盛り込むように言うでしょうから、楽しみです。

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2022年5月28日 (土)

和洋九段女子 受験学力も伸ばす包括的知恵を豊かにするPBL×SDGs教育 Wisdom Tornado生まれる

★昨日GWE第80回で、和洋九段女子教頭新井誠司先生と対話しました。4回目のご登壇。回を重ねるごとに和洋九段女子の生徒の皆さんの成長ぶりが伝わってきます。その成長とは、受験学力はもちろんですが、それ以上の知恵の広がり深まりの大きさを意味します。思考コードでいえば、受験学力はA軸だけでなんとかなるのですが、知恵はA軸からB軸、C軸にまで広がり深まっていく知と感性の合力です。

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GLICC Weekly EDU 第80回「和洋九段女子 新井誠司先生との対話ーリベラルアーツとPBLが生み出す生徒の成長」

★そのような包括的な成長曲線を、トランジション成長曲線と呼んでいます。6年間通ったときに、受験勉強による合格力のみならず知恵の力が拡大するトランジション成長をする学校和洋九段女子は、コロナ危機、ウクライナ危機、核拡散危機、気候変動危機など重層的な危機に直面している今だからこそ注目されるはずです。

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★そのような教育はいかにして可能か、19枚の写真を使って中1から高3までPBL×SDGs教育がマルチスパイラルに上昇して広がっていく具体的な状況を新井先生は丁寧に語ってくださいました。本当にありがとうございました。

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★その日は、ちょうど中間試験最終日だったので、新井先生は、2人の生徒と大学生にメールやラインで質問を投げかけました。「今ちょうどダボス会議で、各国のリーダーが世界危機を解決するための議論をしています。そのときSDGsと必ず関係づけています。その世界のリーダーのSDGsへの想いを知ったとき、みなさんは、ご自身のSDGsの取り組みについてどう感じますか?」と。

★今回のGWEのテーマの1つトランジション成長、つまり卒業後も進路先やその先の社会で活躍できる成長の例になるかもしれないと思ったからだそうです。ただ、中間試験が終わって、自宅に帰ってから時間もそれほどたっていないはずだから、番組には間に合わないかもしれないと思ったようです。しかし、すぐに返信があったというのです。新井先生も私たちも驚きました。

★そして、そのメールの内容を見て、さらに驚きました。在校生のメッセージは800字くらいのちょとした小論文の出来栄えでした。大学入試の小論文は、800字から1200字が多いですから、合格する力すでにあることがわかりました。しかし、問題はそれ以上のオリジナルの視点の内容です。体験から生成された視点であることは明瞭でした。

★また今春早稲田に合格したOGからは、ラインでしたから簡にして要を得たメッセージでした。それにしても3人とも、世界のリーダーのようには、自分たちの取り組みはまだまだ気づかれていないけれど、取り組みの重要度はそれ以上だと。何せ和洋九段女子の在校生もOGも考えるだけではなくアクションも起こしていますから、そういう誇りをしかし謙虚で柔らかい姿勢で語っています。

★今後おそらくダボス会議などに登壇する世界のリーダーになる人材が輩出されるでしょう。

この和洋九段女子のPBL×SDGs教育が、いかにマルチスパイラルになるようにフレキシブルな設計がなされているか。そして、その先生方が精緻に設計した学習のストーリーをはるかに超えて編集していくWisdom Tornadoが生徒の内面に生じるのか、ぜひご視聴してください。目からウロコの教育シーンが広がっています。

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2022年5月27日 (金)

教師の資産と資本(01)2冊の本にヒントあり

★教師不足が、現場では喫緊の課題。勤務校の高校生が、小学校の運動会で、様々な運営ポイントを支援してくれないでしょうかと要請がありました。ボランティアはカトリック校として大切にしているので宗教担当の教師がコンサルテーション。なかなか良い動きで感心していたのですが、20人以上参加と聞いて少し驚きました。

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★いくら地域で生徒数が多い小学校と言っても、そんなに受け付けの係りの人数がいるのですか?と尋ねたところ、競技の誘導など、運営の支援というか、本来なら教師が行うようなところまでお手伝いさせてもらえるのだというのです。なるほどうちの生徒は普段からそういうことは慣れているから担当教師はGOと意思決定をしたのでしょう。

★参加できない保護者からオンライン中継をして欲しいなど、従来なかったようなニーズが増えたためということのようです。

★勤務校のように小規模な高校だと、在校生が中心になって運営するので、教師もフル回転ですが、運営者が足りないということはありません。しかし、たしかに小学校の場合は、そうもいかないでしょう。

★DXによって、新たな仕事も生まれ、たしかに従来の発想では、教師の数は足りません。

★これから、このようなことは多くの学校で起こることでしょう。それなのに、教師になりたいという大卒者が減少気味というニュースは、困りますね。

★デューイだったら、教師は民主主義社会の形成者だと言うでしょう。今年のダボス会議のテーマは、パンデミック・ウクライナ・核問題などと世界の関係です。たくさんテーマがありますが、その中でインパクトのあるものは、メンタルヘルスです。

★医療と教育がかかわります。医療従事者も教育従事者も、今後極めて重要な役割を果たしていきます。

★しかし、日本の場合は、教師は進学実績をサポートする役割が前面に出ているのかもしれません。本質的な教師の存在意義を共有する場がなかなかないのでしょう。

★教職課程をとるにしても、私学適性検査を受けるにしても、参加する学生は、そもそも教師とは何か、何かしら考えていますが、それ以前に、仕事を選ぶ段階で、教師という役割の意義が共有されないまま、メディアでネガティブ情報が流されているわけです。

★教師の役割を考えることは、人生を豊かにすることだし、社会を健全にすることだし、世界同時的な社会課題に向き合うことでもあります。ダボス会議でも、ライフシフト時代に、その重要性は語られます。特に今回はどのテーマもSDGsに結びつけられて議論が行われています。

★そのSDGsに対してもデメリットの話に偏った情報を提供するメディアも多いのですが、あらゆる物事はメリットとデメリットの両方があり、トレードオフの局面にぶつかるものです。それをいかに解決するか。教師はとても大切な役割を日々果たしているのです。

★ただ、それが目に見える形で伝わらないので、精神論的になりがちです。

★そこで、ビジネス資本に対して教師資本とか教師資産という形で、新しいBS(バランスシート)を考えたいと思います。もちろん、現段階ではメタファーにすぎませんが。

★上記に挙げたハーグリーブス教授も、山本崇雄先生も、人的資本と社会関係資本の力があります。よって書籍にしてちゃんと経済にできるのです。だれでもが出版できるわけではないと批判される方もいるでしょう。それはそうです。しかし、これは一例であって、アウトプットする限り人的資本や社会関係資本がまずは資産としてたまってきます。そうしたら、DXの時代ですから必ず善き経済循環を生み出せるようになるはずです。

★昨今のビジネスでは起業家精神が資産や資本になります。教育ではクリエイティブなリジェネレート(CRG)精神が資産や資本になります。リジェネレートとは再生とか革新の意味ですね。

★ハーグリーブス教授も山本崇雄先生も、まさにクリエイティブなリジェネレート精神の持ち主です。このCRG精神は、人的資本と社会関係資本からも生まれてきますが、もっと強烈になるには、意思決定資本とミッション資本を展開できるかどうかにかかっています。

★お二人は、意思決定資本とミッション資本の持ち主でもあります。

★生徒の学びとは、この起業家精神かCRG精神のいずれかまたは両方を学ぶと自律分散協働系の生きる道を開くことができます。お二人の本をヒントに、起業家先進及びCRG精神が教師からも生徒からもいかにして生まれてくるのか考えてみたいと思います。どこまで進めるかは私もわかりませんが。。。

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パワースポット「千代田区」の私立学校

「首都圏の住みたい街と私立高校在籍者数シェア」で、23区別の私立高校の在籍者数シェアを算出してみたら、千代田区がランキング1位でした。シェアは86.6%。東京全体では58.0%ですから、ダントツです。千代田区は、住みたい街というより、仕事にあるいはパワースポットに訪れるある意味聖地です。

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★なんといっても皇居があるし、1300年の歴史のある神田明神がありますね。

★昨日は一般財団法人東京私立中学高等学校協会の第1回定期総会があったので、その拠点アルカディア市ヶ谷に行ってきました。まさしくここも千代田区です。私学の拠点もパワースポットだったのです。終了後八王子にもどるため、中央線に乗るのですが、千代田区のもう一つのパワースポット上智大学の隣接地にあるイグナチオ教会を訪れ、祈りました。この社会の状態の平和を祈ることしかできない自分についてリフレクションしながら。。。。

★それはともかく、パワースポット千代田区にある私立高校を思いつくまま挙げてみましょう。すぐに思いつくのは、ともにPBLを研究している和洋九段女子です。同校は、私学適性検査の会場や模擬試験の会場、21世紀型教育機構の定期総会やセミナーなどの会場になっています。交通便が何せよいのです。パワースポットのあかしですが、今や私学全体の共有場として快く提供されている同校には頭が下がります。会場を貸すには、同校の先生方が働くということです。本当にありがとうございます。

★和洋九段女子の隣接地には暁星、白百合があります。そこからアルカディア市ヶ谷に向かうと途中に三輪田があります。市ヶ谷につくと、そこには東京家政学院、大妻、女子学院、武蔵野大附属千代田があります。そして、中央線に沿って四谷まで歩くと、雙葉があります。

★さらに、共立女子、東洋高校、錦城学園、二松學舍大学附属、正則学園、麹町学園女子、神田女学園と次々と思い浮かびます。なるほど、多いですね。

★しかも、千代田区の公立高校には、数が少ないとはいえ、日比谷、九段中等教育学校があります。

★千代田区の私立高校の生徒募集は、スタンダードな方法論ではうまくいかないわけです。それゆえ、伝統と革新の結合の仕方の創意工夫が各学校によって行われています。

★そんなことを考えながら八王子に向かいました。あれっ?八王子もそういえばパワースポットでした。ユーミンが訪れると沖縄をはじめあちこちにパワースポットができます。ファンの聖地は、聖ドミニコ学園もある岡本です。

★で、なぜ八王子?ユーミンの生誕の地ですから。

★それはともかく、「八王子」という名前の由来を調べるとなるほどとなるでしょう。それに、千人同心という武田家の系譜は、なかなか重要な役割を果たしたのですが、その心の支えになったのが、武田信玄の娘松姫です。織田信長に武田家滅亡に追いやられたとき、甲州裏街道とも呼ばれる陣馬街道をたどって、八王子に逃れてきたわけです。この陣馬街道と甲州街道の間には、八王子城跡や昭和天皇の武蔵野陵があります。

★その陣馬街道(江戸時代は重要な物産輸送道路)と高尾山の裾野に聖パウロ学園があります。マリア様の力に包まれるパワースポットですよ。陣馬街道から聖パウロに入る入り口付近には、あの将棋の棋士羽生善治さんの母校もあります。

★千代田区と八王子は、遠いけれど、交通便はいいのです。中央線や京王線一本でつながっています。聖地つながりということでしょうか(笑)。

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2022年5月25日 (水)

潜在能力を豊かにそして顕在化する教育 北岡優希さんの動画から

ノイタキュード代表北岡優希望さんが勤務校を訪れ、パウロの森などをリサーチしてくださいました。そして、パウロの森と厩舎の馬の様子、陶芸工房などを動画として編集してくれました。ありがとうございます。その動画をみて、私は、生徒の潜在的能力を顕在化するパウロの教育の絵が浮かびました。

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★この動画は、パウロの授業風景はありません。北岡さんが訪れたとき、延期になっていた新歓レクというスポーツイベントが行われていたからです。しかし、授業のない動画が、私にインスピレーションを抱かせました。

★たしかに、パウロの森や馬術や陶芸工房という体験は、もともと持っていた潜在的能力をさらに豊かにしていきます。そして、生徒はそれによって自分なりに気づいたことをリフレクションしながら潜在力をカタチにしていきます。社会課題を考える視点を身に着けるだろうし、自然と人間の関係について今まで以上の視野を広めていくでしょう。

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★そして、そこにPBLという体験型あるいは対話型の思考型教育を加えることにより、学びや思考のロジックがカタチになります。そして、そのカタチが、潜在的能力を社会課題を解決するロジックだとか信念に転換します。

★潜在的能力は、自然体験によって豊かになり、直観的に自然と社会の関係性を見出します。しかし、PBLが加わることによって、その直感的なものを論理的なカタチに転移させたり、新たなアイデアを創造する確率を高めもします。

★潜在的な能力を豊かさのキャパシティだけではなく技術としてのケイパビリティ(性能)に転換します。

★そのとき、そのケイパビリティはカタチ(form)になります。すると仲間と共有できるのです。

★しかも、そのカタチは、その都度生まれます。アップデートも可能です。

★カタチに固執しないのがPBLの特色ですが、カタチなんていらないというわけでもないのです。

★自然にどっぷり浸って、自分の中で穏やかな心境になるのはすてきですが、その心境を詩というカタチにしたとたん、絵というカタチにしたとたん、音楽というカタチにしたとたん、共感を広めることができます。

★パウロの森、その中に馬術というPBL,陶芸というPBL、教科や探究のPBLがある意味は、そういうことだったのかと改めて気づいたのです。教科のPBLとパウロの森の両方が動画になっていたら、森は授業の背景に退き、図のように氷山モデルの海面下に退いてしまいます。

★しかし、今回授業のPBLがないことにより、パウロの森の意味が前面にでてきました。

★この動画を見たとき、私の中で、細胞分裂が激しく起こるカオスが生まれました。そのカオスがインスピレーションをカタチに変換してくれました。北岡さん、このような機会を頂き、ありがとうございました。

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今数学の授業がおもしろい。

勤務校の数学科の伊東先生が、児浦先生及び芥先生の授業が紹介されていますよと。女子聖学院やドルトン東京学園、明星の紹介もありますと教えてくれたので、これは読まねばと、購入しました。そして、拝読。全国にこのような数学と社会課題とICTとPBLが合力をつくっている動きが広がっているのにワクワクしてきました。

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★紹介されている内容は、VUCAの時代に自分の才能とその才能の協働によって社会解題を解決する視座及び構想力を身に着ける数学力の話でした。

★このような数学力は、①社会の現象や社会の課題に対応できる数学の試みだし、②一方で数学的な哲学の話を埋め込んでいる学問的な領域にもチャレンジしているし、③生徒の反応と教師の目標のギャップをいかに埋めるかのチャレンジもしているし、④生徒自身が自ら解決案や方法を考える創造的な数学授業へのチャレンジも行われています。

★①と④は、生徒の主観とその対話による相互主観を足場にしているし、②と③は、学問的な客観性が足場になっていて、どれが正解かというわけではなく、この4つの諸関係の組み合わせについて、それぞれの先生方が挑戦しているのが、とても新鮮でした。組み合わせの仕方が、十人十色だったからです。

★学習指導要領では、生徒1人ひとりの発想や感性を大事にしながらも、指導要録の段階では、主観性は制約されてしまい、まだまだラディカルな構成主義は難しそうですが、現場ではずいぶん楽しんでいるようです。

★このラディカルな構成主義と社会的構成主義と学問的理論がそれぞれどのくらい影響し合うかは、それぞれの先生方の持ち味になっています。いすれにしても、そのようなそれぞれの関数関係に基づいてデータサイエンスが行われるわけであって、これまたデータの価値が単純なファクトを示すものではないという話になっていきます。

★ファクトは真理なのか、ファクトも相互主観なのか、そんな議論をしながら、社会を見る・診る・観る・・・目を子どもたちが身に着ける未来は希望に満ちています。

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首都圏の住みたい街№2「港区」の私立学校 ああなるほど

「首都圏の住みたい街と私立高校在籍者数シェア」で、住みたい街第2位が「港区」であることを紹介しました。ここは、私立高校があるかどうかというより、日本にある大使館の半分が集結している場所だし、六本木ヒルズや東京ミッドタウン、赤坂サカスに象徴されるように、リッチな場所ですね。江戸時代から江戸の玄関口で、大名屋敷もひしめいていたことでしょう。あの忠臣蔵の舞台でもあります。白金も忘れてはなりません。バイデン大統領がもてなされた八芳園がありますね。

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★開国直後、この地に広がる大名庭園を見た外国人は、ここはパラダイスだと言ったとか。

★そんな場所ですから、明治期から私立学校があったのは当然のことだったのかもしれません。多くの人がすぐに思い浮かぶ学校を思いつくまま挙げてみましょう。

★麻布、芝、東洋英和、慶應義塾、普連土学園、頌栄女子、高輪、聖心女子学院などですね。

★そして、広尾学園があります。広尾と三田国際は、最初の改革者は同じ私学人です。「〇〇国際」とか「インターナショナルコース」「本科」という名称を定着させたイノベーターです。幕末同様VUCAのいまの時代に現れた改革者型私学人ですが、マーケティング手法を徹底するところが、明治期の私学人とは違いますね。時代のなせる業です。ですから、立地も当然しっかり計算しているということですね。

★なるほど「港区」は住みたい街ということでしょう。

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2022年5月24日 (火)

Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(09)中学入試が変われば大学入試も実質的に変わるワケ

★Discoverのコンセプトブックの第6章「大学入試と連動する中学入試」は、さりげなくラディカルな内容になっています。この章の趣旨を簡単に言えば、大学入試改革は、政府や行政の助言指導よりも、私立学校の中学入試の変化に応じて、実質的に変わるということです。でも、本来は海外の大学もそうですが、ナショナルカリキュラムに拘束されている大学入試問題というのは、どこか変です。学問の自由が前提になっていますから、そこを規制されることに何も感じない大学というのがあるとしたら、もはや民主主義国家の大学ではなくなるかもしれないからです。

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★まあしかし、研究費や補助金の問題がありますから、そこは文科省をリスペクトしながらなのですが、文科省も大学の学問の自由を尊重する道をちゃんとつくったというのが、今回の文科省の教育改革のすごいところです。しかし、そのような道を戦術的に私学側が巧みに提案したということもあるのかもしれませんが、そこは氷山モデルの海面下です。はっきりしたことはわからないし、憶測でしかありません。

★しかしながら、考えてみれば、中教審の座長や東大総長は私学出身者が多いのです。武蔵や慶応出身者が多いですよね。だから、理想的過ぎる、現場に合わないと批判され、表面的には腰砕けになったようにみえるのが、21世紀にはいって数度行われた学習指導要領改訂です。

★しかし、結局PBLは残るし、CEFRも残ります。探究などはトレンドになっています。ルーブリックは受験業界では思考コードとして着々と広がっています。大学入学共通テストという目に見える部分の大改訂を腰砕けにするという戦術で、本質部分は残したというわけです。

★どうやってか?IB200校計画と留学生30万人計画とGIGAスクール構想という、一見大学入試問題や学習指導要領改訂にかかわりないような環境を創ることによってでした。

★それからもう一つ米国のAPのエッセンスを活用した高大連携の浸透です。そんなのどこにあるの?と思われるでしょう。実はSGHとSSHの流れの中にそれを埋め込んでいるのです。この動きを目敏く読み取った海外勢がUPAAとして入り込んでいるのも凄まじい勢いです。

★学習指導要領の一見外にあるこれらの環境を、私立中高一貫校も大学も同時にリサーチしました。その過程で、大学はセミナーを開いて、高校を巻き込んでいます。

★このリサーチによって得たリソースを中高も大学も、中学入試では新タイプ入試と2科4科の思考型問題に反映し、大学入試では、帰国生入試と総合型選抜、一般選抜の小論文に反映しました。しかも、高大連携によって、中高のカリキュラムの中に浸透させることにもなるのです。

★このような連携によって、大学側は、アドミッションポリシーにそのような学びを経てきた生徒とマッチングするような入試を実質開発するようになったのです。

★中学入試が変われば、それに対応した大学入試にならざるを得ないのは、高大連携で、中高のカリキュラムを大学側が身に染みてわかるようになったからです。しかも、中学入試問題は学校の顔ですから、中学入試問題とカリキュラムが連動することは検証されたために、いちいちカリキュラムをリサーチしなくても、中学入試問題のリサーチで、どのような生徒の成長が卒業する時に生まれているのかについて、大学側もピンとくるようになったわけです。しかも思考コードを理解すれば、それはもっと理解しやすくなるのです。

★高大連携の拡大と進化は、中高と大学の両者が相互理解を深める場だったのです。そこに文科省は直接介在しないのです。やりやすいですね。

★しかし、IBとかGIGA構想スクールとかSGHとかSSHの成果を使うことは、文科省にとっては、自分で設定しているわけですから、ウェルカムだし、このようなシステムを活用するかどうかは学校次第ですから、公平性も一様(あくまでも)大丈夫なのです。

★しかしながら、結果的にこの情報を活用した私学や公立の進学重点校、公立中高一貫校と活用しない公立学校とでは、差が生じてしまうのも現実です。第6章は、明快にそのような差が出ることを記述してはいませんが、読む人によっては敏感にそれを理解する可能性があります。私学の優位性が、新しい大学入試タイプにおいてもあることを示唆しているわけです。

★もっといえば、中学入試問題と大学入試問題は連動しているわけですから、もし中学受験の体験がなかったとしたらどうなるか?推して知るべしというわけです。

★中高一貫校の合同相談会のコンセプトブックだからこそそこまでさりげなくでもラディカルに記述したものと思われます。

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明治学院の「研究実践紀要」の意味 「新しい人」に

★明治学院中学校・明治学院東村山高等学校の校長伊藤節子先生から「2021年度研究実践紀要第44号」をいただきました。毎年学内の先生方が新しい学びや教育活動に挑戦したその過程とプロダクトが掲載されています。新しいことを表面的に取り入れるだけではなく、学院全体で創意工夫して検証する先生方のこのような行為は、教育の根っこの部分をつねに新しくする大切な活動(リゾーム的ですごいです)です。勤務校でも行いたいのですが、そう簡単ではありません。それゆえ、本当に素晴らしいことだと感じ入ります。

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★しかし、今回の紀要は、もう一つ同学院のミッションが反映されていることを明らかにしています。

★まず、新型コロナウイルス感染症の状況に応じながら、その都度伊藤校長が意思決定して、現場の先生方が創意工夫して教育を続けた軌跡が克明に記述されています。これは、コロナ禍における日々の教育活動を記録することによって、また同じようなことが起きた場合の重要な資料として役立てようということです。

★そして、これを紀要として、多くの学校と共有することで、自校だけではなく他校へも参考になるのではないかというクリスチャンスクールとしての奉仕の精神の現われでもあるでしょう。

★「学校図書館」の活動記録は、読書の在り方についてもう一度きちんと考えなくてはならないと刺激を受けるほどの多元的記録でした。

★家庭科の調理の授業が、調理を目的にするのみならず、ICTの活用や「ルーブリック」作成、「お弁当新聞」という表現活動にまでいたる多様な活動であることに驚嘆しました。常に新しい挑戦をしていることが了解できます。

★「聖書植物園」という発想は、勤務校のパウロの森の今後の活動のヒントに大いになりました。キリスト教にとって「庭園」というのは深い意味があることを、今更ながら思い出しました。

★ボランティアの10年の歩みは、キリスト教学校の真骨頂です。これは勤務校も大切にしていますが、このような表現はしていません。

★このように、同紀要に掲載された数々の挑戦は、たしかにイノベーション教育の側面もありますが、伊藤校長は「新しい人になる」ことなのだと語ります。

★この「新しい人」とは、ノーベル賞作家の大江健三郎さんが大切にしている思いです。新約聖書の中にあるエフェソへの信徒への手紙4-22~24の箇所にそれは記されています。伊藤校長も同じ箇所を引用し、「研究実践紀要」の意味を語っているのです。

★「この1年で私たちは古い人をぬぎすて新しい人になった といえるのかもしれません」という言葉を確信=革新をこめて語られるているのです。

★その境地に、私も歩んでいけるよう精進したいとつくづく思いました。なぜなら、エフェソへの信徒への手紙を書いたのは、使徒パウロ自身だからです。

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区部と市部の格差に負けず奮闘する私立学校 11支部合同相談会 5月29日京王プラザホテル八王子で

★「首都圏の住みたい街と私立高校在籍者数シェア」で区部と市部の私立高校在籍者数シェアの格差をご紹介しました。2021年現在で、東京全体のシェアは58%。区部は63.5%、市部は45.1%です。もっとも市部の中で、武蔵野市、小金井市、東村山市は、60%以上ですから、市部の中でも違いはあります。

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★しかし、そんな中、八王子市、立川市、国立市、多摩市、小平市、昭島市、稲城市、東村山市、武蔵村山市、町田市、府中市、あきる野市にある東京私立中高11支部30校は奮闘しています。

★一般財団法人東京私立中学高等学校協会は、東京都の私立中学校、高等学校、中等教育学校の全419校が会員校です。この会員校は、全部で12の支部に分かれて、協会の理事会と連携して活動しています。上記の市部にある私立学校は11支部の部会です。

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★区部に比べて、あくまで相対的ですが、公立学校の勢いのあるエリアです。というよりも、10以上の市にまたがって、存在しているので、私立学校の塊感が港区や世田谷区に比べて強くないということでしょう。

★しかし、11支部エリアの教育に対する熱は高いので、その熱を豊かにするために、このエリアの私立学校は奮闘しています。

★勤務校も、多くの刺激を受けて成長しています。生徒自身がwell-beingな未来社会を創っていけるように、あるいは、予測不能な衝撃に見舞われても、サバイバルできるように、身体的健康、精神的健康、社会的健康、創造的健康などを身に着けられるように教育環境をアップデートしている11支部です。

★5月29日は、京王プラザホテル八王子で、11支部合同相談会を開催します。ウィズ・コロナの合同相談会とあって予約制・完全入れ替え制です。すでに予約は満席になっていて、盛り上がっています。これまでの2年間、オンライン開催で、久々の対面形式ということもあるのでしょう。

★区部と市部の格差という制約を乗り越えるための創意工夫が11支部エリアから生まれています。

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2022年5月23日 (月)

首都圏の住みたい街№1「世田谷区」に多くの私立学校がある意味

★「首都圏の住みたい街と私立高校在籍者数シェア」で、世田谷区が首都圏の住みたい街で第1位だったという話を紹介しました。その世田谷区には、人気の私立学校が目白押しです。そのことと住みたい街ランキングの相関があるかどうかはわかりませんが、世田谷区といわれれば、いくつかすぐに思い浮かぶ私立学校があります。

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★まずは三田国際学園です。盟友鈴木裕之さんは、GLICCという帰国生を中心にサポートする英語と思考力をベースにする学びの場をつくっていますが、ここから三田国際に国際生入試や英語入試で多くの受験生が合格しています。このような塾はまだまだ少ないのですが、新たな受験市場創出に刺激を与えているという意味で、三田国際は従来の偏差値主義や暗記型教育から生徒自身の内発的モチベーションを燃やす思考型教育にパラダイム転換している唯一無二の私立中高一貫校です。

★1条校で、すべてのクラスがインターナショナルスクール化している学校は確かに、他にありません。

★昭和女子大附属昭和も、破格のグローバル教育やサイエンス教育で注目を浴びている私立女子中高一貫校です。

★世田谷区は東急線、田園都市線、小田急線、京王線が並行して走っていて、23区内校外エリアとして意識が高い保護者が居住しています。恵泉、鴎友、佼成学園女子、サレジアン国際世田谷、聖ドミニコ、東京都市大等々力、東京都市大と伝統と革新の両方をそれぞれ独自の統合を果たしている私学がすぐに思い浮かびます。やはりいずれも多様な実績を出し、人気もあります。

★特に成城学園は、これらの学校が挑戦している新しい教育を、創設以来から実践しているフロントランナー的性格の私学で、根強い人気があります。

★世田谷区と目黒区は接していて、桜新町から歩いていくこともできる八雲学園も教育の総合力という質の高い学びの環境を生み出していて、人気のある学校です。また世田谷区と隣接している溝の口にある洗足学園も超人気校です。

★世田谷区というよりも、田園都市線、東急線の沿線に人気の高い私立学校が多いのですが、東急電鉄の戦略は、創設者五島慶太翁の理念である質の高い教育のある街を今も建設しています。住みたい街№1の理由として、このような私立学校がたくさんあることはやはり何らかの関係があると言えるのかもしれません。

★今後の都市創りには、このうな新しい教育に挑戦している私学を誘致することは重要事項となるかもしれません。

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組織は誰によって壊されるのか 教皇フランシスコのラディカルな考え方

★勤務校は「聖パウロ学園」。使徒パウロに倣いて教育を実践する共同体です。パウロは、元祖コペルニクス的転回を実践した人です。新しい人として自己変容した人です。ルターや内村鑑三に強烈に影響を与えた使徒でもあります。そして、意識しているかどうかはわかりませんが、自己変容論で有名なハーバード大学のロバート・キーガン教授の「なぜ人と組織は変われないのか」「なぜ弱さを見せ合える組織は強いのか」という著書は、まるでパウロの精神をそのまま引き継いだかのような本です。

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★そんなわけですから、パウロについての研究書も多く、そのうちの1冊でも読破できればよいくらいです。しかし、それでは理解が深まらないので、やはり原典であるパウロの書いた手紙(新約聖書に収められています)を少しずつ読みながら、想いを馳せています。

★しかしながら、独りよがりな解釈を生徒と共有するのはまずいので、こういうときは教皇フランシスコの文章をよりどころにします。

★私は、パウロがそうだったように、生徒の才能を拓くには、それに適した組織を創ることが大切だと思っています。勤務校はパウロが望んだようなスモールスクールです。パウロはたくさんの小さなコミュニティ創りからはじめて、1人ひとりの才能と信仰が成長することこそ大きな実りを生み出すことになると確信していました。つまりパン種ですね。

★ですから、パウロに倣いて学校の組織も考えてみるわけです。パウロ学園に限らず、私立学校の組織にも適用できる部分があります。基本パウロはリベラルアーツを学んでいたはずですから、メタファーなどのレトリックが巧みです。したがって、その解読をすれば、キリスト教のコミュニティに限らず広く適用できるものもあります。何せ、ハーバード大学のロバート・キーガン教授にも重なるのですから、2000年の時を経てもなおその精神は普遍なのでしょう。

★さて、教皇フランシスコは興味深いことを語ります。パウロが作ったコミュニティを危機に陥らせる人間が現われることはあるのだと言うのです。これは今の世界秩序のゆらぎにも重ねることができるのですが、教皇はこう表現します(「教皇フランシスコ、2021年6月23日一般謁見演説 1.「ガラテヤの信徒への手紙」に向けた前置き」)

※英語版は、POPE FRANCIS GENERAL AUDIENCE San Damaso courtyard Wednesday, 23 June 2021 Introduction to the Letter to the Galatians

<パウロの絶え間のない司牧的な気遣いについても触れるべきでしょう。それらの教会を築いた後、パウロは、人々の信仰の成長が大きな危険によって脅かされることに気づきました。司牧者は、自分の子らの危険にすぐに気づく父親や母親のようです。教会は大きくなりますが、危険も生じます。「ハゲタカが共同体を破壊しにやって来る」と言われる通りです。>

★共同体を破壊しにやってくるハゲタカとは凄い表現ですね。このハゲタカはどんな人なのでしょう。教皇はこう語ります。

<彼らは、自分たちのことを、何よりもまず、十字架につけられ、復活されたイエスのうちに人間を愛してくださる神の福音を知らせる者としてではなく、キリスト者になる最善の方法に関する――いわば――「真実を守る者」として示します。そして、彼らが信じる真のキリスト教は、過去のある種の形式であると強調し、現代の危機への解決策は、信仰の真正さを保つために過去にさかのぼることだと、強く説きます。>

★いかがですか、教師組織の中でも同じようなコトがあるでしょう。さらに教皇は語ります。

<自由と喜びを与えてくれる福音の教えに触れても、こうした人々の心は頑なです。つねに頑なです。これもしてはならない、あれもしてはならないといった具合です。柔軟性の欠如は、そうした人々の典型的な特徴です。>

★教皇は、共同体を破壊するハゲタカかどうかを見極めるのは、過去の形式や方法論に縛られあるいは囚われ、自由と愛の精神を阻害する頑な(rigidity)心だというのです。

★ハーバード大学のハワード・ガードナー教授も、組織の変化を拒むのは、偏向主義、情報隠蔽主義だと語りますが、まさに頑なな精神に通じます。勤務校は、このような正しいふりをして、頑なな精神を振りまくのを、教師も生徒も警戒します。リフレクションを大切にするのはそういうことです。

★教皇は、では、ハゲタカではない人とはどのような道を歩んでいる人なのかと。柔和さと信頼に満ちた従順の道=the path of meek and obedient trustを歩む人だと。

★ただし、この道は自由と愛という善なる道行であって、偏狭で頑固な形式主義に対し柔和で従順であることはないのです。条件によっては、柔和と従順は、正義を貫く態勢に変化します。寛容さとは冷徹に見える場合もあるのです。学校組織もリスクマネジメントはそういう面をもっていますね。

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保護者とミニワークショップ型対話

★先週土曜日、今年度第1回めの父母の会の委員会がありました。委員会の冒頭でも少しお話しする時間を頂くのですが、ありがたいことに、始まる前に90分ほど10人前後の保護者の方と対話をする機会もつくって頂ています。時期によって、会長がトピクを提案してくださいます。それと私の方で、旬な話をすることにしています。

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★初回は、今年度の学校の組織の変更の意義やウィズ・コロナの行事のあり方と進路指導と教育が相互にかかわり合うようになった最近の傾向などについて情報共有をしました。

★情報共有といっても、私の方で一方的に話すのではなく、保護者の方の新しい進路に向けて、どんな学びや探究のあり方のイメージを持っているのか互いに語るところから始めました。その際、探究パターン・カードを媒介にして、対話をしました。

★参加された保護者の方々がそれぞれどのような学びや探究に対するイメージを持っているかオープンな雰囲気になったところで、私のというより勤務校の学びや探究に対する考え方を語りました。

★そのうえで考え方や価値観のズレを確認し、何か違和感やズレを感じた場合、そこから対話していきましょうという感じのミニワークショップとスピーチを交えた対話の時間となったと思います。

★最後は、ダイアード・ワークショップによって、それぞれ新たな気づきを交えて学びや探究に対するイメージを広げ深めていきました。

★そして、そのイメージの共感ができたとき、勤務校の生徒が卒業時に奇跡を起こす理由が見えてくるというストーリーになりました。ストーリーになりましたというのは、インストラクション型のワークショップではなく、参加者が対話をしながら物語が生成される編集型のワークショップだからです。

★それにしても、保護者の方の認知能力と非認知能力のバランスを見通した学びのイメージは、改めてさすがだと感じ入りました。

★自分だけよければよいという学びではなく、自分の学びを豊かにしていくことが社会に役に立つことに関連するような学びや探究をすることが、進路先や社会に出てからも活躍できることにつながるのだという感覚は参加された保護者の共通のもの見方・感じ方でした。

★学校は、教師と生徒と保護者と同窓力の協力によって、生徒の自立分散協働系の生き方を形成できます。このような協働的生態系コミュニティを生み出すには、学校の組織が柔軟かつ開放的かつ凛としたリスクマネージメントの基盤を創っておく必要があります。

★この1年、森も含めて、協働的生態系の基盤をつくる努力をしていきたいと思います。

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2022年5月22日 (日)

Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(08)入試問題の多様性の意義を私立学校側から語る

★Discoverのコンセプトブックは、やはりラディカルです。第5章は「入試問題の多様性が意味するもの」です。次の3つの節に分けて記述されています。

・先見性・先進性を発揮する理由として予測不能なVUCAの時代

・21世紀は才能発見のために多様な入試が開発された

・多様な入試の種類

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★かつて、もしかしたら今も、2科4科vs新タイプ入試という考え方が各塾によって語られています。それを私立学校側から、両方とも建学の精神に基づいて先見性・先進性を発揮する過程の1つとして入試問題の開発を創意工夫して行ってきた。ご批判するのは構わないが、私立学校としてはすべての入試問題のあり方の意味を大切にしたいという立場の表明をしている章です。メタ戦略の発揮ですね。一部をご紹介しましょう。

<このように「寛容な精神」「相互理解」「自己変容」「テクノロジー」「才能」が、VUCAの時代を乗り超えるためには重要な精神であり知性であり感性です。

それゆえ、私立中高一貫校の授業は、ディスカッションやグループワークなども導入するアクティブラーニングあるいはPBLを実施するところも増えました。もともと土曜講座など、現在行われている「探究」の先駆けともいえるプログラムを実施しており、視野を広げ考えを深める学びを推進しています。

そのような流れに対応して、「入試問題は学校の顔」なのだから、実態に沿って多様な入試を開発することは理に適っているという判断が広がり、新タイプ入試と呼ばれる多様な入試が拡大していったのです。>

★入試情報というのは、大手予備校や塾のシンクタンクが語るものだというのが、今までの慣習でしたが、東京私立中高協会のある意味シンクタンクである東京私学教育研究所が、私学のスタンスとして表明するというのは、興味深いし、やはりラディカルです。

★しかし、もっと驚いたのは、私学版の「思考コード」を作って、多様な入試問題の分析の方法を提示していることです。たしかに、同研究所所長の平方先生が工学院大学附属中高の校長だった時にどこよりも早く「思考コード」を独自に創りました。ですから、塾業界がつくったものをパクったわけではないのです。平方先生は校長時代、経営の論理から、受験市場とはコミュニケーションをとっていました。ただし、相当高邁な理想ですから、意気投合する教育関連産業は限られていたでしょう。その意気投合・共感したところが「思考コード」を拡大していきました。

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★そんな経緯があるため、平方先生にとって、私学側から思考コードを提示するのは当然のことだったのでしょうが、そのような経緯はほとんどの人が知らないわけですから、結構衝撃的なはずです。思考コードについて触れている場所から一部を紹介します。

<多様な才能を受け入れ、また入学後に見出していくために、従来のように偏差値という軸にさらに多様な軸を加えていくというのが、多様な入試の開発が広がった理由です。私立中高一貫校によって、多様な入試の作り方は無限とも言えるほど創意工夫されていますが、3つの軸の思考コードでみると、ねらいがわかり、それぞれの試験に向けて学び方が見えてきます。>

★さすがというか驚嘆なのは、偏差値を否定するのではなく、あくまで多様な評価軸の1つとして包摂してしまっていることです。恐るべしです。

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首都圏の住みたい街と私立高校在籍者数シェア

★大東建託(東京都港区)は居住満足度調査を実施。その結果を「いい部屋ネット 住みたい街 ランキング2022<首都圏版>」として集計。その結果、住みたい街ランキングの1位は「世田谷区」、2位は「港区」、3位は「武蔵野市」となったようです。これをみて、私立学校が多い地区ではないかと思い、東京都のデータを調べてみました。

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★高校在籍者において私立高校在籍者数のシェアを区別ごとに算出し、多い順位並べました。すると港区や世田谷区はシェアが高いですね。私立高校が多いエリアということでしょう。私立高校が多ければ、住みたい街になるかどうか、その相関があるかどうかはわかりませんが、何らかの関係はあるでしょう。

★市部も調べてみました。

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★やはり武蔵野市のシェアは高いですね。成蹊、聖徳学園、吉祥女子などがすぐに浮かびます。住みたいと私立学校の存在はやはり何か関係ありそうですね。小金井市も私立高校の在籍者数シェアが高いですが、ICU高校、中央大学附属高校、東京電機大高校がすぐに思い浮かびます。やはり何か関係があるのかもしれません。

★とにもかくにも、東京都の私立高校の在籍者数シェアが58%というのは、他のエリアにはないことですし、世界でも大都市に私立学校が集結しているというのも珍しいでしょう。

★そして、同じ東京でも区部と市部では、そのシェアには差があります。やはり都心に近い方が多くなるのでしょう。もちろん、武蔵野市や小金井市のように郊外として都心と連動しているところは別です。

★区部でも都内の郊外エリアに接続しにくいところは私立学校の在籍者数のシェアがそれほど高くないというのは、私鉄やJRなどの電車の存在が関係しているのかもしれません。

★交通便と私立学校と住みたい街。要は立地はポイントです。立地が良いとは言えない勤務校は、その制約を超える構想力が必要ということでしょう。

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2022年5月21日 (土)

北岡優希さんと対話~学校・教育・入試情報の新しい発信へ

昨日、GLICC代表鈴木裕之さんの主催するGWE(GLICC Weekly EDU)で、北岡優希さん(ノイタキュード代表)と対話しました。ノイタキュードというコペルニクス的転回を象徴する名称の付け方からもわかるように、北岡さん自身、詰め込み教育から思考型教育に転換したということです。その契機は中学入試における新タイプ入試との出遭いであり、さらに思考コードを介して首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんとの出会いによって、教育情報の編集者にライフシフトをすることになったということです。

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GLICC Weekly EDU 第79回「ノイタキュード代表 北岡優希先生との対話ー新しい学校の探し方」

★好奇心旺盛な北岡さん。そして、常に優しく鋭い眼差しで自分と自分の周りの具体的状況をメタ認知し、問題を発見し、それを解決するために、オープンマインドで多くの人と対話する。その過程で、自らの役割や仕事をアップデートしていく結果、ライフシフトをし、無形のアセットを生み出しているわけです。

★その無形の資産が、学校・教育・入試情報の新しい発信力のキャピタルになっています。

★このような体験と出遭いのプロジェクトを動かしている北岡さんは、北岡さんとかかわる多くの人を巻き込み、新しい何かを生み出していくという可能性を感じました。

北岡さん独特のそれでいて心地よい話し方、さらに、きちんと整理されたアーカイブや動画のデータから響かせる本質的なものの見方や考え方。これをここで説明する力は私にはないし、かえって誤解を生み出す可能性があります。それゆえ、ぜひ直接ご視聴ください。受験生の保護者は新しい学校の見方に気づくはずですし、学校の先生は新しいアイデアをゲットすることができるでしょう。

 

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2022年5月20日 (金)

Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(07)リベラルアーツの新しい意味

★第4章「リベラルアーツの現代化~AI時代だからこそ」もまた強烈です。次の5節に分けて記述されているのですが、これだけ見てもラディカルだと感じないわけにはいきません。私学人でなければ、ここまで書けませんね。

・建学の精神とリベラルアーツ

・なぜ私立中高一貫校はリベラルアーツを継承するのか

・AI時代の変化は加速する

・AIは人間のあり方も変える

・私立中高一貫校のリベラルアーツの現代化

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★リベラルアーツを軽んじるということは建学の精神を軽んじることだと直接書かれていませんが、そういうことをさりげなく宣言しています。逆に建学の精神なきリベラルアーツはあるのだろうかとも。もちろん、次のように気遣いながら語られています。

「私立中高一貫校は、時代の要請に耳を傾け、時代の精神を読み解く先見性を大切にしています。そして、その先見性に基づいて、生徒が自分の潜在的可能性を未来で発揮できる精神性・身体性・知性を学ぶ先進的な教育を創り続けています。

同時に時代を貫く不変の<建学の精神>を変わりゆく先進的な教育の駆動力として継承してきています。したがって、先見性と先進性が日本の教育を牽引するグローバル教育やイノベーション教育を創っているのと並行してそれらを横断あるいは統合する発想として<建学の精神>があるのですが、その精神は、リベラルアーツと深い関係があります。」

★その深い関係をパブリック・スクールやアカデメイア、リュケイオン、ギムナシオンにまで遡って紐解いています。目からウロコです。

★そして、リベラルアーツの現代化とはどういうことかと、次のように記述されています。少し長いですが、私にはまとめる力がとてもないので、引用します。

「このようなAI研究は、少なからず、当時の21世紀型教育や新学習指導要領の議論に影響を与えました。アクティブラーニングやPBLでは、教師は教えるのではなく、ファシリテーションするのだという話題が勢いをました時期と符合します。

こうなってくると、「人間とは何か」をしっかり考え直すクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングを学ぶ必要があります。

クリティカルに人間を拘束してきた鉄鎖を見破りそこから自由に生きていくクリエイティビティは必要ですが、同時にその新たに発明し設計した政策や制度、道具に支配されるのは困ります。

そのリスクマネジメントをするには、リベラルアーツが必要ですが、もともと人間を良い意味で束縛から解放するための知識や、生きるための力を身につけるための手法がリベラルアーツだったのですから、結局はAIもリベラルアーツの発想が生み出したと考えることもできます。

どうやら私立中高一貫校のリベラルアーツは、リベラルアーツ自身をリフレクションできる、あるいはモニタリングできるメタ・リベラルアーツという次元に進む必要があります。私立中高一貫校が大事にしてきたリベラルアーツの発想の現代化とはこの次元の話なのです。」

★このメタ・リベラルアーツということが、後の章で、深められていきます。CEFRの解読と研修コードのページでそれが明らかになるのですが、そんなリベラルアーツ論は、私立学校でしか生まれない発想です。

★恐るべし、東京私学教育研究所です。

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Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(06)イノベーション教育 さりげなくラディカル 

★Discoverのコンセプトブックの第3章のⅡ「先進性 イノベーション教育」は、さりげなくラディカルで、どうコメントしてよいか戸惑っています。イノベーションと言ったら、受験業界では、一般に、エベレット・M・ロジャース、ジェフリー・ムーア、クレイトン・M・クリステンセンという見識者の名前がでてくるのですが、ここでは、シュンペーター一色なのです。

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★シュンペーターは、偉大な20世紀経済学者の1人ですが、その影響力は計り知れないのです。経済のみならず民主主義や包括的な社会理論への根本的な思想を生み出し、その影響はあのハイエクにまで到っているのです。ハイエクと言えば、リバタリアンです。

★その根っことして位置付けられるシュンペーターを前面に出すというのは、未完の資本主義、未完の民主主義をいかに未来に完成させるのかという私立学校の気概があふれているということでしょう。

★もちろん、「イノベーション」という言葉を経済学で最初に使ったのはシュンペーターと言われているし、民主主義と教育について日本の教育に影響を与えたデューイと同時代人(シュンペーターの方が24歳若いけれど)であるということもあるでしょう。現在のアメリカの経済学の基盤をつくったのはシカゴ学派といわれていますが、デューイのプラグマティズムもそのシカゴ大学やコロンビア大学で生まれています。一方、シュンペーターは最終的にはハーバード大学の教授に就任します。ハーバード大学では、デューイとプラグマティズムをともに影響し合ったジェームズもいたし、いろいろあってハーバード大学にかかわりはしたものの結局教授になれなかった天才パースもいました。

★バーボンを飲み交わしたかどうかはわかりませんが、天才たちの思想の影響はあふれていたでしょう。

★私立学校は、経営と教育の両輪です。ケインズを批判したシュンペーター、ヘルバルトを批判したデューイと親和性を有するのは、ある意味なっとくがいきます。明治時代に私立学校が立ち上がった時、私立学校は官学に常に敵視されていました。隙をみせると廃校にされていました。ケインズやヘルバルトは、官僚に迎え入れられました。それと価値を異にするシュンペーターやデューイに私学が影響を受けるのもわかるような気がするのです。

★それにしても、シュンペーターのイノベーションの定義を、教育に置換え、さらにそのイノベーションを生み出す5つのイノベーションを学校現場に適用するとどうなるのかまで、超具体的に記述しているこの章は、公立学校向けの教育論や教職教養、教育学では語られないし、受験業界でもその手前のイノベーター理論やイノベーションのパラドクスを扱うので精一杯でしょう。

★東京私学教育研究所所長平方邦行先生恐るべしです。

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2022年5月19日 (木)

Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(05)「先進性」とグローバル教育の新しい意味付け 

★Discoverのコンセプトブックの第3章は、「先進性 グローバル教育」です。そして次の4節に分けて展開されています。

・国際理解教育の始り

・1970年代~国際理解教育の広がり SDGs及び探究の原点

・1980年代~グローバル教育へシフト 模擬国連も立ち上がる

・21世紀のグローバル教育の始り ウィズ・コロナ及びポスト・コロナのグローバル教育へ

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★「先進性」というと、最近ではinnovativenessという言葉が浮かぶかもしれません。もちろん、第4章でイノベーティブ教育としての先進性が扱われていますが、3章ではグローバル教育というイノベーションが生まれる背景に焦点をあてています。そもそも先進性とは世界の痛みをどう克服するかからはじまる国際的な問題意識に対応するアクションだという立場にたっているようです。

★ですから、国際理解教育→グローバル教育→新しいグローバル教育という流れになっています。その背景には、たとえば、「平和」形成のあり方の変遷があります。

★どうやら、このような言葉の変化は、広報用のコピーライトではないということのようです。学校の時代認識と市場のニーズがときどき微妙にズレるのは、この問題意識をどれくらい共有できているかですが、建学の精神にこだわらないと、市場に振り回されることもあるかもしれません。今回私立学校のコミュニティが主導する説明会であるために、そのことが見えました。市場が作る合同説明会だけだとそのズレが見えず、本質が見えないまま学校選択をすることになります。複眼思考ができる両方の場があることが重要だと改めて感じました。

★この章の最後の3つのパラグラフを紹介しましょう。私立学校の独自の創意工夫の息吹が伝わってきます。

 「IBなどを導入するも、独自のグローバル教育を創るも、いずれにしても2011年から2014年にかけて、各私立中高一貫校は新しいグローバル教育の創意工夫に取り組みました。ところが、2020年以降、新型コロナ・ウイルス感染防止対策を各国がそれぞれ行ったため、ロックダウンや渡航時の隔離期間、オンライン授業などが壁になって、日本に在留する留学生が減っています。

しかし、中学入試における出願総数の右肩上がりは止まりません。これは、ウィズ・コロナ及びポスト・コロナ時代に、私立中高一貫校のリスクマネジメントの独自の創意工夫が評価されたこと、オンラインなどを活用しグローバル教育を止めなかったこと、なにより生徒の命・健康・学力を守り抜いてくれるということに大きな期待がかかっているためです。

それに加えて、もう一つ大きな変化があります。それは、かつて海外大学進学はごく一部の高校に限られていたのですが、今では21世紀型教育を推進している私立中高一貫校ならどこでも、世界大学ランキング100位以内の大学に入学できるようになったのです。グローバル教育は、グローバリゼーションの象徴的な動きの1つであるフラット化を促進してもいるのです。」

★最後のパラフラフにこれからのグローバル教育の本当の目論見が見え隠れしますね。それが何かは、東京私立中学全体の説明会だったので、はっきりとは記述しなかったのでしょう。しかし、私立中高一貫校の新たな未来が見える人には見えます。

 

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2022年5月18日 (水)

Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(04)「先見性」の新しい意味付け 

★Discoverのコンセプトの第2章は「先見性」。そのサブタイトルは「2089年から考える Z世代とα世代の才能を開発するために」となっています。また次のように2つの節に分けて語られています。

・私学の先見性 100年を見通す力

・私学の先見性 2089年からバックキャストする

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★バックキャスト(baskcast)とは、未来に何が起こるのか予想してそこから今をどうするかアイデアを出すということです.。未来を投影してというか投企してといった感じです。そして、これはforesight(未来洞察)という言葉と同じです。この未来洞察こそ先見性と言うことです。

★バックキャストと真逆のforecastとは違います。こちらの方は、今まで積み上げてきたデータや情報から帰納法的な推論をするので、そこから未来が見えてくることはなかなか難しいのです。帰納法的推論の英語表現は、inductionです。これに対し、未来予測は仮説的推論なのでabductionとなっています。

★私立学校の先見性とは、もちろん、過去を研究し、未来を仮説的に推論するわけです。そんなどうやってと思われるでしょうが、実は思想家で社会改革者、アーティストであるウィリアム・モリスは、彼の時代から200年以上も後の未来社会を描いているし、SF小説家で思想家で、日本国憲法の起草者や原案者に影響も与えたH・G・ウェルズもかなりの未来を描いています。

★彼ら二人だけではなく、多くの見識者が未来を予想しています。メタバースという世界まですでに描かれてきました。

★ですから、物質的な変化の推論というより、100年後、どんな問題が起きているかの仮説を立てて、それに対応出来る、体力・知力・社会形成力などを生み出す教育環境をつくるということが私立学校の先見性の本意のようです。

★しかもここでいう私立学校のバックキャストあるいは先見性(未来洞察)の100年というのが、1889年~1989年~2089年という200年の間のことを指しているのが特徴的です。1989年とは明治憲法が発布され、日本が近代社会の仲間入りしたことを意味します。1989年とは、ベルリンの壁が崩壊したことを意味します。2089年は、最後の昭和世代が100歳になり、Z世代もα世代も高齢者になっている時を意味します。

★明治時代に創設された私立学校も、大正時代に創設された私立学校も、戦後創設された私立学校も、近代戦争をいかに食い止めるか、これらの戦争によってもたらされた負の遺産をどう解消するのか、それを教育でなんとかしようとして誕生しています。

★また21世紀にはいってからは、テロリズムや多くの紛争というグローバリズムの影の部分をいかに希望に変えられるか、それを21世紀型教育でなんとかできないかと伝統と革新を統合する教育の変容にチャレンジする私立学校がどっと増えました。

★このような気概をもった教育出動は、建学の精神という基準・指標の視座が高く創造性が豊かだからです。それゆえ100年、200年先からバックキャストできる先見性を有していたと高らかに謳われているのが第2章です。最初と最後の方の一部を引用しておきます。先見性と学費が結びついているのも私学人だからこそ明快に語っているわけで、興味深いですね。

●「私立中高一貫校は、公立中学校とは違い、時代の精神を読み解き、100年先を見通して教育を形成しています。その付加価値があるがゆえに、学費をいただき、教育の質を高め続け、教育の仕組みを進化させているのです。

100年の見通しを立てるとは、100年先からバックキャストして、いまここでの教育をどうするか学内で議論し、教育プログラムを創っていくことです。100年先の教育を実現するために、学校の文化を豊かにし、そのための教師の技量や精神を錬磨していきます。

また、100年の見通しを立てるからこそ、予測不能な出来事が起きても、それを乗り越える意思決定が瞬時にできます。」

●「1989年、私立学校は、グローバリゼーションという国と国だけの関係だけではなく、個人と個人が世界の舞台で活躍できるようになり、パラダイム転換が起きたことを認識しました。

教育は100年の大計といわれるように、私立学校は、目の前の生徒が未来社会をどう創り、どう次世代に継承していくのか、そして、そのような時代を善なる方向に導くリーダーシップをどう輩出するのかを大切にしています。

1995年ごろZ世代というグローバルもコンピュータも当たり前という世代が誕生しました。2011年には、α世代が誕生し、その世代が今の中学受験生です。その世代はデジタルの新しい概念を身に付けると言われています。しかしながら、1989年の100年後である2089年には、彼らも高齢者になっています。だからこそ、私立学校は1989年から1999年の経済の空白時代に、ピンチをチャンスにすべく、2089年から予測して、生徒の未来に役立つ教育を練り上げたのです。」

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2022年5月16日 (月)

Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(03)建学の精神の新しい意味付け 

★Discover2022のガイドブックは、見事なまでにコンセプトブックになっています。その象徴的なが第1章「建学の精神と黄金律」です。東京私立中学184校が集結する合同相談会ですから、各学校の建学の精神をすべて並べるか、一切具体例は挙げないで語るかのどちらかなのですが、平方先生は各学校の建学の精神一覧は掲載しませんでした。それは、保護者が興味のある学校のサイトをスマホで開いてすぐに知ることができるからです。また、一部の学校の建学の精神を例として挙げれば、公平性を欠きます。

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★したがって、書くとしたら、建学の精神の本質部分を書く以外にないわけです。建学の精神は大切ですが、その本質を2000字強で記述するものは、今までに語られたことはありません。個々の学校の建学の精神は語られることもあるし、それが抽象的に教育活動に反映しているという言説はよくあることです。

★しかし、東京私立中学の建学の精神の本質を包括的に記述することはなかなか困難です。

★ところが、平方先生は、次の3つのセクションに分けて物語っていきます。

・共通の世界を抱くことの大切さ

・建学の精神は、生徒自身の成長物語のテーマ

・建学の精神と黄金律

★学校選択の際に、受験生のメンタルモデルが学校の雰囲気に合うか合わないかは重要だというアプローチから始まります。そして、1人ひとりの自分の物語を歩んでいくのだけれど、通奏低音にあるテーマはそれぞれの学校の建学の精神なのが私立学校なのだと。だからこそ卒業後も私立学校の同窓力は勢いがあるのだと。

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★建学の精神が、1人ひとりの才能を開き、個性的な技術を身に着ける。そして社会貢献へという物語編集の通奏低音であるという生徒個人に向けて語る記述はあまりみたことがないし、それこそ本質的です。

★そして、その本質があるからこそ、ニューヨーク国連本部のギャラリーにディスプレイされているノーマン・ロックウェルのモザイク画に刻まれている黄金律に結びついているのだと。

★建学の精神の1人ひとりの才能に染みわたることが世界性を豊かにしていくことにつながるのだという建学の精神の物語。

★ここまで明快に語ることができるのは、受験市場のライター側からはなかなか語れません。能力の問題ではなく、目の前の生徒に建学の精神が反映していく過程を経て卒業していく姿全体を共経験していないので、確信をもって書けないのです。私立学校が学習指導要領をミニマムとしかとらえないのは、この普遍的で具体的で個別最適な建学の精神があるからです。残念ながら、従来型のコンサルタントやライターは、客観的事実にこだわらざるをえません。したがって、学習指導要領を金科玉条のように持ち出すのです。それは仕方がありません。よりどころは、そこしか見当たらないのですから。

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(大正自由教育の本質は今も生き続けているし、これから再び出番がきます。成城学園の青柳先生が熱心に語っています)

★しかし、私学人にとっては、建学の精神が生徒1人ひとりの中で物語を展開していくのは、確信をもって客観的な事実なのです。この確信が映し出されている部分を引用紹介します。

「中高6か年で、建学の精神を軸に自分の物語を描くのですが、実はそれは卒業後も生涯続きます。自分の未来は誰も予測ができません。描くのは自分です。立ちはだかる壁は、未来も現れます。その壁は自分の内側から不安や悩みとして出てくるときもあります。自然の猛威や社会的事件に対する恐れや他者との関係の間に立ちふさがる壁などもあるでしょう。

しかし、大丈夫です。不安や恐れ、苦悩を解決する判断の指標は、<建学の精神>です。自分の物語は、当然自分ひとりの物語ではありません。自然や社会そして他者の精神とのかかわりすべてが詰まっています。生徒が描き続ける、その関係性の中で壁を乗り越えていく行き先は、その都度well-being(幸せ)でなければならないはずです。保護者の方々はそう祈り見守り続けるはずです。

well-beingとは、他者との関係の中で、自分の才能や言動が他者に貢献できていると実感した時訪れます。その一見小さな行為が、気象変動で猛威を振るう自然を穏やかにし、紛争や格差を生み出すような行き過ぎた利益主義を公正な社会活動に回復することになります。

それは、今回のパンデミックショックや国際秩序の揺らぎに見舞われた私たち人類が思い知ったことです。

そして、そのエゴを廃し、磨き上げた自分の才能を他者に貢献するというメンタルモデルが、中高時代に身に着けた<建学の精神>であることは、私学出身者はみな自覚しています。なぜなら、人生の壁に直面し、乗り越えるたびに、母校の<建学の精神>を思い起こすことになるからです。 」

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Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(02)表現の変化 本質を重視 

★今回の東京私立中学相談会は、言うまでもなく高校だけの私立学校は参加していません。勤務校は高校だけですから、私は行く必要はなかったのですが、今回のイベントの本質的なコンセプトの部分について、委員長である東京私学教育研究所の所長平方邦行先生のお手伝いを少しさせていただいたということもあり、具体的な状況に浸りたいと思い参加しました。

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★また同僚の企画戦略室室長伊東竜先生(入試広報部長)ともいっしょに行き、私立中高一貫校と私立高校の違いと共通点を見出し、今後の経営戦略のアイデアをリサーチをするというのももう一つの目的でした。PBLとしては、まずはフィールドワークです。

★さらに、首都圏模試センターの情報誌「shuTOMO」の編集者・表現者の1人北岡優希さんとも合流し、私がお世話になている先生方を紹介するというのも目的でした。北岡さん自身、取材の新たな視点を探索するフィールドワークリサーチだったと思います。

★今、首都圏模試センターは、取締役代表の山下一さんと取締役・教育研究所長北一成さんが、新しい情報誌を発刊しています。かなり斬新な情報誌で、中学入試動向の確固たるデータを基盤に、新しい教育展開のみならず、従来の教育の中にある目に見えない本質を可視化する新しい表現に挑戦しています。

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(生徒と共に未来をwell-beingにする教育を行っている強烈な私立男子校の聖学院の様子)

★そのために中学入試情報のチェンジメーカーを集めています。北岡さんはその1人です。本質をどのようにわかりやすく表現するか。今までの文字ベースの表現だけでは、本質部分を書き込んでいくと小難しくなります。それゆえ、短絡的に難しいからと拒絶され、わかりやすく表現するために本質部分を切り離す表現になりがちです。正解のない時代に、正解のあるわかりやすい表現をするという、編集の矛盾をいかに乗り越えるか、首都圏模試センターはそこにチャンレンジしています。

★そして、実に興味深いのは、東京私学教育研究所が、今回のイベントのDiscoverのガイドブックをパンフレットからコンセプトブックに切り替えたということです。

★従来は、広告代理店に依頼して、監修するというやりかたでしたが、今回は文章それ自体から、平方邦行先生を中心に書き下ろし、デザインから細部に至るまで、平方先生がデザイナーに事細かく編集フィードバックしていきました。

★そのため、今回のコンセプトブックは、私立学校の教師、広報部長、校長、文部科学省のワーキンググループの委員という経験を重ねた平方先生の広く高い視座が反映しています。

★中学入試市場で、私学の各学校の情報を校長や広報部長が語ってきたということはありますが、コンセプトブック丸ごと私学人が書くということは画期的なことです。しかも、東京私立中学全体の教育のコンセプトですから、具体的な学校に偏る部分が一切ないのです。ザ・東京私立学校のコンセプトブックになっているのです。

★受験市場のライターが取材しても、外から見えることしか表現できません。しかし、今回は、学校の日常を知らなければ、見ることができない内容が詰まっています。氷山モデルでいえば、海面下のことも踏まえて書かれているところが随所にあります。

★私立学校は、経営と教育の両輪によって成り立っています。どんなに新しい教育をやりたくても、経営の枠組を知らなければ、何もできません。多くのコンサルタントは、意外にも私学の経営の論理を知らないかのように、無視した発言が多く、現実的ではないことが多いのです。生徒募集が成功すれば何でもできると思っているかのようです。学校の経営者が理想的で、コンサルタントが現実的だとすてきな協力関係が生まれるのです。

★しかし、学校経営者が理想と現実の一致を模索しているのに、教育コンサルとの多くは、空虚な夢を押し付けてくるということも多いのです。その点首都圏模試センターの山下さんは、経営者ですから学校経営者とシンクロする洞察力をもち、その洞察力をベースに理想と現実を一致させる企画を立案実施していくのが北さんです。

★私学と共に未来を創る本質を大切にする教育コンサルト人材が首都圏模試センターに集結しています。

★表面的に新しい教育・古い教育と分断するのではなく、新しくても本質が軽んじられていては生徒の未来はありません。古くても本質が大切にされていれば生徒の未来はあります。その見極めの洞察力と判断力が、私立学校の市場では重要になってくると思います。

★最近北岡さんとコラボしているのは、北岡さんは思考コードを活用したPBLのファシリテーターができる方だからです。ああ、それから押し付けるのではなく、寛容です。寛容こそクリエイティブクラスに必要なのですが、才能と技術があっても、寛容の精神がないコンサルタントは多いですね。ともあれ、才能、技術、寛容性が揃てちるところが北岡さんを尊敬するところです。勤務校の伊東先生も思考コードとPBLを自在に使うクリエイティブクラスです。このような若いコンサルタントと教師が出現する時代であるとういことでもありましょう。

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Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会 変化と普遍 本質と革新(01)私学の教師の仕事は本質的

★昨日、東京国際フォーラムで、「Discover 私立一貫教育2022 東京私立中学合同相談会」が開催されました。ウィズ・コロナの開催とあって、参加者は申込制でした。時間指定人数指定です。1万人定員のところ4万人を超え、抽選となったということです。2014年以来、大学入試改革、学習指導要領の改訂、パンデミック、ウクライナと続く国際社会秩序の動揺、高インフレによる衝撃にもかかわらず私立中学入試の受験生は増え続けています。不安定な世の中だからこそ、不測の事態に対応できる学習環境を選ぶというコトなのかもしれません。

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★開催10時の30分前、相談会の準備をしていた東京の私立中学184校の先生方に、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の会長近藤彰朗先生(八雲学園理事長・校長)から挨拶としてのエールがおくられました。

★パンデミックをはじめ、この予測不能な事態の中で、先頭に立って私立中学の先生方は、創意工夫して、生徒の命を守り学びの機会を守り続けている。いかなる事態にあっても屈しないで、未来をつくる生徒の精神と知恵が育つ環境を創意工夫して乗り切っている。このような本質的な仕事をしている先生方は、医療従事者の方々と同じように、エッセンシャルワーカーであると確信していると。

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★たしかに、オンライン授業で乗り切らざるを得ない時は、オンラインで、しかしリアルな体験がなければ、多感な時代の人間の成長は豊かにならない。そのため、感染症対策を厳しくしながらも。ぎろぎりのところで創意工夫しながら行事や部活や体験授業を行っているのだと。

★現場で、教師は生徒共にリスクをマネジメントしながら、知識のみならず、感性や知恵も豊かにする総合的な教育を実践しています。いかなる事態にも屈せず、勇気をもって正しい言動を大切に生きる体験をしています。もしかしたら、このような状況のデメリットを自分たちを生徒と一緒に強くする経験値を高めているといっても過言ではないでしょう。

★こうして、私立学校は時代の要請に応じて、創意工夫をするがゆえに、新しい教育を展開していきます。しかし、時代の要請は、時代の不安を何とかせよという要請ですから、その不安に屈することなく勇気をもって世界を巻き込み生きていくという建学の精神が時代を超えて存在し続ける普遍的根っこは変わりません。

★コロナ、ウクライナ、フクシマなどの世界の問題が身近な問題と一致しているVUCA時代の真っ只中で行われたのは歴史的な意味があるのだと思います。

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2022年5月14日 (土)

八雲学園の教育の総合力は、ROUND SQUAREを抱え込んでいる。(1)

★まずは、次のイギリスの4つの私立高校の紹介動画を見て頂きたい。このような高校の生徒と八雲の生徒が英語でコミュニケーションをとれるのです。いずれの学校もエスタブリッシュだし、日本の私立学校の学費にくらべると、5倍から10倍です。

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★この4校は、今年イギリスで行われる、ROUND SQUARE(RS)の国際会議に参加するRSの加盟校の生徒が立ち寄る学校です。この動画が出来たときは4校でしたが、現在では5校に増えています。RSは、すでに有名になってきていますから詳しい説明はもうよいと思いますが、世界のエスタブリッシュ私立学校200校の国際私立学校連盟です。

★八雲学園は、その加盟校です。したがって、毎年それぞれの加盟校が属している国や都市で開かれる国際会議に、八雲学園の代表生徒も参加します。ここ2年間ほど、コロナ禍であったため対面型のカンファレンスはありませんでしたが、今年は実施する予定です。

★最初の3日間は、オックスフォード大学に集結し、キーノートの講演を聴いたり、各学校やその国の文化などのパフォーマンスを披露します。キーノートのテーマについて、チームに分かれて対話をします。バラザと呼ばれています。問題解決をするためではなく、もっと多様性を尊重して、互いの感じ方や考え方に耳を傾け、自分の想いを伝え合うという共感の時間です。

★4日目からは、5つの学校の内一つを選び、その学校のアドベンチャープログラムやサービス(奉仕)プログラムを体験したりします。このRSの国際会議に参加する生徒の様子をこの動画で確かめることができます。

★このような生徒とディスカッションし、それぞれの学校の文化や教育に触れることができる経験は、RSでなければできないことは説明するまでもないでしょう。どこの学校でもこのようなっ国際会議に参加できるわけではないのですから。

★そして大事なことは、八雲学園の教育とRSの教育理念やPBLなどの教育方法論が一致しなければ、加盟校として認定されないということです。認定には3年も厳しい審査を受けるのです。

★いくらお金を出しても、加盟校でなければ、参加できないのです。このようなRSの教育は、もはや八雲学園の教育とシンクロしているわけです。したがって、加盟校同士の交換留学は、渡航費以外はかりません。一般の海外研修の場合、コーディネーターに頼みますから、渡航費や宿泊費、生活費以外に、コーディネート料やプログラム企画料がかかります。

★もちろん、国際会議に参加するには、相当な英語力と英語でロジカルにかつクリティカルに考える力、それと芸術や文化、歴史に関する教養も必要です。八雲学園が文化体験を重視していることは、認定の条件として重要なマッチングポイントだったということでしょう。

★それにしても、すごいのは、中1のときに帰国生としてはいってきたわけでなく、初めて英語を学ぶという生徒が、英語で困ることなく、RSの国際会議で、上記の動画にでてくるよな生徒とディスカッションができるようになっているということです。

★どうして、それが可能か?それは中1の時からスモールステップの巧まれたプログラムが目白押しで、小さく始めて大きく育てるようにシステム化されているからです。このことについて、昨日菅原先生と対話をしました。ぜひご視聴ください。

 

 

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2022年5月13日 (金)

数学と情報のクロスオーバー 大事なことは物の見方の交差 聖パウロの数学ミーティングから気づいたこと

★聖パウロ学園の数学科は、月に1,2度MM(Math Meeting)を開催。大学入試問題を通して数学の学び方を分析する対話をしています。解き方を検討することもしますが、生徒がその解法に接近するまでの前提情報とか前提知識とか前提思考スキルとかをポストイットで出し合います。

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(左から伊東先生、松本先生、佐藤先生)

★パウロの授業はPBL20%ルールというのがあり、最低20%は思考を巡らす問いを考えるということになっています。思考を巡らすとは何でしょう。解き方とどう違うのでしょう。

★なかなかそれは分けにくいですね。

★ところが、数学科の中には情報の教師でもある佐藤先生がいます。

★順次分析と解法分岐に分けて、アルゴリズムを作ります。作っては主任の松本先生と詰める対話もしています。

★伊東先生は、東京私立教育研究所の研究委員でもあるので、そのような知見を他校の先生方と対話します。

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★こうして、より広い視野で数学科は、授業を形づくっていくわけです。

★現場と広い視野とを結びつけるものは、実はアルゴリズムという思考のバックステージと思考の踊り場を可視化する発想でした。

★毎回MMで大学入試問題1題を扱います。その対話のまとめを佐藤先生がアルゴリズムにしていきます。

★これが積もり積もれば、凄いことになりますが、松本先生は、だからといってマニュアルではない。なぜなら、あくまで出発点は、現場の生徒だから、その生徒が違えば、アルゴリズムも変わるからだと。

★一方、伊東先生は、その変容を関数化できれば、数学科でそのようなアルゴリズムの発想を共有できると。

★実におもしろいのです。

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八雲学園の教育の総合力をいかに表現するか

本日GWEで、八雲学園の副校長菅原先生と対話をします。八雲学園の教育の総合力が、VUCAの時代に極めて効力を発揮するということがメインテーマになると思います。今まで、八雲学園の教育の総合力を支える4つの柱と同校が加盟しているROUND SQUAREの教育理念は、結びついているけれど、どう結びついているかあまり論じられてきませんでした。

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★実は、上記のように表現することができます。これを見て、氷山モデルを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。

★その通りです。海面下は外から見ているとなかなか見えないのですね。

★しかし、こうしてみるとちゃんとつながっているのですね。

★もしつながっていないとすると、八雲学園はROUND SQUAREに加盟を認められないのです。ところが、加盟が認定されているわけですから、つながっているわけです。

★中学入試情報を発信するライターの方は、ノイタキュード代表北岡優希さんのように、このようなつながりをわかりやすく表現する挑戦をすると、世界を変えられるはずです。少なくとも日本の教育はようやく善い方向に向かうでしょう。

★よく売り物は何ですかと声高に質問する方もいますが、そもそもそのような点でみているといつまでたっても総合的なつながりが見えてこないのです。

★わかりやすくとは、本質をはぎ取るのではなく、本質をイメージできるように表現することです。それは確かに難しいですね。しかし、みなで協力して、本質を見極めましょう。その姿勢が共有できれば、希望は必ず現れてきます。

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2022年5月11日 (水)

高校の新学習指導要領によって際立つコト~聖パウロの国語の試みから

★今年の高校1年生から、新学習指導要領が実施されています。実際現場でやってみて、興味深いことと現実とのギャップがみえてきました。というのは、新学習指導要領と高大接続がまだまだマッチングしていないのです。教科書をやっているだけでは、従来と変わらない一般選抜の内容だと乗り切れないのです。一方で、総合型選抜はいけそうです。

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★たとえば、「現代の国語」では、論理的文章が中心なのですが、国語科主任の高橋先生は、文化人類学や文学などをクロスオーバーして、PBL型授業を展開します。グーグルクラスルームというプラットフォームを活用しながら、スライドや小論文をやりとりし、エンパワーメント評価とかフィードバックとかリアルでもサイバー上でも対話ができます。

★芥川龍之介などは、文学的なアプローチだけではなく、龍之介がその当時、つまり近代の読み解きをしていた法哲学的な視点があります。当時の社会情勢について、親友恒藤恭(当時京大教授)と夜を徹して話したそうです。それでも当時を2分していた社会価値観の両方に納得がいかず、第3の道を探っていたらしいのです。

★そのような論理的文章と文学的文章を背景にまで深めていけばたしかにクロスオーバーになります。

★しかし、一般選抜はそこまで求めないし、古典の勉強もしっかりやらねばなりません。ところが、この路線の学びが、新学習指導要領の国語の学びでは手薄になるかもしれません。

★そこで、進路指導部では、放課後でそこを補填する講座を開いているわけです。ヴェリタス、カリタス、100分学習という3つの体制が、すでにあったわけですが、進路指導部長は、この時間をさらに有効活用する仕組みを考えています。

★私立学校だから、柔軟に理想と現実を結び付ければよいのですが、果たしてそれでよいのかどうか。

★学習者中心主義でいくし、海外大学を希望する生徒もいるので、結局学習指導要領以上のことをやることになるので、現場は対応していきますが、学校の働き方改革を唱えていても、高大接続循環がうまくいかないと、結局はそんな改革もうまくいきません。

★はてさて、それぞれの学校で創意工夫してというのなら、もっと自由な設定をデザインすればよいのにと思うのは私だけでしょうか。

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2022年5月 9日 (月)

聖ドミニコ学園動く

★先月、21世紀型教育機構の定例総会がありましたが、そのとき聖ドミニコ学園の教頭千葉先生が3人の若き俊英である先生方といっしょに参加しました。同学園は、2019年から21世紀型教育機構に加盟し、インターナショナルコースとアカデミックコースを設定。C1英語とPBLとSTEAM教育などの実績を積んできました。

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★すでに大学進学実績は成果がでていますから、受験指導だけでも構わなかったのでしょうがが、同学園が大事にしている対話教育は、それでは満足できなかったわけです。同学園の守護神である聖ドミニコは、13世紀という今と同様のVUCAの時代を先駆けていたといってもよい激動の時代に生きていました。その時代は、資本主義の萌芽と軍事力で帝国をいかに維持するか戦争の絶えない時代です。その中にあって、対話によって平和と愛を説きまくっていたのです。

★軍事力か経済力か知の力(教育力)かだったわけです。この構造は、1世紀にイエスが誕生した時から変わっていません。15世紀マキャベリが理想の軍人のモデルとしたのがチェーザレ・ボルジアでしたが、ローマ教皇の座を巡って彼と競い合ったのがメディチ家です。まさに軍事力か経済力かという構造はずっと続いていたのです。しかも、この軍事力と経済力の負の競い合いに、一石を投じたのがサヴォナローラでした。彼もまた聖ドミニコの意志を継承した修道士です。

★しかも、軍隊の動きや交易は、同時にペストの感染も広げていた暗黒のパンデミック時代です。

★なんだか、今の世界と重なりますね。

★そんなとき、教育力でなんとかしようというのが聖ドミニコ学園なのです。まさにドミニコに倣いてということですね。

★21世紀型教育機構に加盟して4年目になります。まずは基礎固めをして広報で新しい学びのシステムについて広めてきました。この過程で手ごたえを感じてきたわけです。

★そこでさらに新しい学びのバ―ジョンアップをということでしょう。千葉教頭率いる21CEO推進チームが結成されたというのはそのことを示唆しています。そのお披露目を定期総会で行ったのです。

★千葉先生をはじめ3人の先生方の眼が輝き、絶望を生み出すかもしれない今日のVUCAの時代に、希望の教育をもたらそうという意欲を感じました。実際、歴史を振り返ると、絶望が現われるたびに希望を見出す活躍をしたのがドミニコ会士でした。今の時代も同じですね。聖ドミニコ学園の出番がやってきたと思います。

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2022年5月 8日 (日)

湘南白百合のトランジションモデル 過去問から見えるコト

湘南白百合が今年の過去問を公開しました。帰国生入試の過去問をみて、これはなるほど新しい学びの体験値を積んでいくことが前提になっているなあと感じ入りました。偏差値を伸ばすという意味の学力成長論ではなくて、多角的で奥深い学びの体験値の密度を上げていくという成長論を湘南白百合は明快に採用しているということが了解できます。後者の成長論を私はトランジション教育と最近呼んでいます。極端な対比になりますが、偏差値成長教育とトランジション教育という違いを今後意識することは、学校選びではとても重要です。

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★偏差値成長教育では必ずしも進路先や社会に出たときにVUCA時代に対応できるリーダーシップを発揮する活躍をするとは限らないのは、今までの日本の状態を見ていて明らかです。そこで最近、経営学の組織開発論や人材開発論、社会学、心理学などで、PBLに代表されるクリティカル&クリエイティブシンキング、コラボレーション、コントリビューションなどの資質能力を養う新しい学びの体験値を積むトランジションを経てきた生徒がどうなるか研究が進められてきました。結果は、やはり大活躍というわけですね。

★湘南白百合が、このトランジション教育(この言葉を使ってはいませんが)を最近ダイナミックに展開しているのは、進路先でも活躍できる総合的な人間力を育成する目的があるはずです。

★それを予感させる問題が、帰国生入試で出されています。上記の算数問題をみてください。ペン落としゲームで勝敗を決めるルール創りをする問題です。5回ペンを落として、5つの点が紙につく状態を比較して順位付けをするというわけです。2通り考えて、どちらが公平なのか、主張+理由で記述するというのです。

★確率論的に考えるのか、幾何的に考えるのか、トポロジー的に考えるのか、美学的に考えるのか、正解のない問いかけです。そして、それを算数的にというか数学的に理由付けするわけです。となると客観性と公平性が結びつくのか、主観性をどのように公平に解決するのか、まったくあの大哲学者フッサール問題が現われてきます。こんな素敵な問いを入試段階で考えるわけですから、入学後の授業や教育活動の豊かさがすぐに想像できます。実際ダイナミックでかつ繊細な教育が行われています。それは水尾教頭先生がふだん説明会や広報活動の中で物語る中で十分に了解できます

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★英語も強烈です。2問出題されていて、1問目は課題文付き小論文で、パラグラフライティングの要領が詳しく説明されていて、その条件に沿って書いていくエッセイライティングの問題です。2問目は上記の絵を見て、二人の冒険物語を創作するクリエイティブ・ライティングが出題されています。

★いずれもパラグラフライティングというロジックをベースに、生徒自身のクリエイティビティを発揮する学びの体験を入試段階でするわけです。

★国語も、佐藤淑子さんの『イギリスのいい子日本のいい子』(中公新書)の文章を読んで、まずは「自己主張」についてのイギリスと日本の比較スタディをするところから始まります。そして、海外経験によってコミュニケーションの自己変容がどのように起こったか論述するわけです。

★入試問題の傾向と対策についても同校サイトには掲載されていて、この問題の論述の仕方については、次のように説明されています。

<作文は書き出す前に、まず「全体の構成」を考え、いくつかの「段落」に分けて書くことが大切です。これは読み手に自分の考えをわかりやすく伝えるための工夫の一つです。


「具体的な自分の体験・経験」を交えながら書き、その体験・経験から得られた「考え」や「思い」を伝えましょう。


主語・述語や修飾語・被修飾語など、それぞれの対応関係が正しいかどうかに注意しましょう。また、漢字・語句などは正しく表記しましょう。>

★段落構成やデータや根拠を書くという点で、英語のパラグラフライティングと共通しています。

★このようなトレーニングは、入学してから一般には行っていくのですが、同校の場合は、その素養が入試段階ではやくも引き出されるわけです。

★一般入試のほうもかなりおもしろく、思考力問題は、帰国生入試と共通するコンセプトでデザインされています。

★湘南白百合のトランジション教育は、同校の中学入試問題を学ぶところから始まるのですね。

★このような視点で、今度水尾先生と対話ができればと思います。ホンマノオトの書き込みでは、不足している部分が多すぎますが、水尾先生との対話では、全貌が見えるからです。オンラインとリアルのハイブリッド時代になって、学校の先生の生の声=本物の情報をシェアできる時代になったのは、学校選択の時に大いに役立ちます。そんなところにも、新しい時代の風が吹いているわけです。

★保護者の方の選択眼も豊かになってくるわけです。その眼差しに対応するように学校も教育の質を向上させていくわけです。市場の原理の光の部分ですね。

★とにもかくにも、今後の湘南白百合のトランジション教育の展開は注目していきたいと思います。

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2022年5月 7日 (土)

GWEで伊東先生が聖パウロ学園について語る パウロモデルの役割

今年の5月の連休の初日29日の夜、GLICC代表鈴木裕之さんに、GWEで聖パウロ学園の教育のエッセンスについて、同学園入試広報部長・企画戦略室長伊東竜先生と対話する機会を頂きました。想像を絶する多忙な鈴木さんが、久々にゆっくり過ごせる大事な時間をシェアしていただきありがとうございました。伊東先生とは、言うまでもなく聖パウロ学園の教育の真髄をいかに広報するのか、その戦略について毎日のように語っています。そして、話が盛り上がるのは、そのパウロモデルともいえる教育の真髄は、聖パウロ学園の生徒にとってのみ有益なのではなく、日本の高校生300万人にとっても有益なはずだという点です。

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★もちろん、聖パウロ学園だけで300万人を背負うというわけではありません。そうではなく、パウロモデルとしての教育の広報が、高校受験生とシェアするだけではなく、もっと広範囲に浸透させることによって可能になるわけです。パウロモデルをきっかけに多くの高校生が不安や悩みを脱して幸せな生き方ができる教育環境空間がたくさんできることを期待するわけです。その意味で、今回の<GLICC Weekly EDU 第77回「聖パウロ学園 伊東先生との対話ーZ世代に役立つパウロ・モデル」>という番組は大いに助かります。

★GLICCのGWEに登壇する先生方は、私立中高一貫校の先生方がほとんどです。この私立及び公立中高一貫校に通う生徒は、日本全国の中高生600万人の10%である60万人です。中高一貫を経験する高校生は30万人です。

★しかし、聖パウロ学園は高校だけの共学校ですから、残りの270万人の高校生が対象なのです。教育でメディアが大学進学実績で一喜一憂する情報を流していますが、対象は、中高一貫校と公立の進学重点校などに限られます。

★そして、そのような学歴社会的な価値観が教育格差を生んでいるわけですが、その格差を聖パウロ学園は、なくす奇跡を起こしているわけです。そんな大上段に構えるような話は、ふだんの説明会では時間の都合もあるし、知りたい情報の優先順位から言えば低いので、しませんが、教育における社会課題は、270万人の高校生にふりかかっているのですから、GWEのような番組では少し触れさせていただきました。

★そのようなパウロモデルを、プラグマティックにいかに実践しているかについて、伊東先生が語ってくれました。とはいえ、やはり説明会では詳しく触れない点についても伊東先生は丁寧に語ってくれました。

★探究ゼミのシステムや研究者と教科の教師と伊東先生のようにコンサルテーションができる教師のコラボレーションの探究コミュニティが出来ているという話は、そこまで学校説明会では語れません。

★また、パウロの森を活用したプログラムで生徒がどのような刺激を受けたり好奇心を旺盛にしたりするか目に浮かぶような具体的な話が聞けました。体育の乗馬プロラムは、もちろん鈴木さんも驚いてくれましたが、馬と生徒のコミュニケーションの状態についてもふだんは聞けないような心温まる話に思わず聞き入ってしまいました。

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★それから、夜のパウロの森を彷徨うシカの映像もちょっとおもしろいですよ。

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★さらに、鈴木さんは、伊東先生の「PBL授業」と「放課後学習のヴェリタス、カリタス、100分学習」の明快な比較に大いに興味を持っていただけました。PBL授業は、教科の授業ですが、教科書を超えて、常に社会課題や自然現象の課題を意識しながら課題解決の深い学びになっていきます。一方で進学のための自己陶冶として自己マスタリープロジェクトしての放課後学習のスイッチの切り替えのバランスのよさについて、鈴木さんは質問を伊東先生に投げかけていました。

★なぜそんな両方の合力を導くことができるのかという驚きだったようです。それについて伊東先生は丁寧に具体的な状況を挙げて語っていました。

★もともと寮制学校だったいうこともあり、自律分散協働系はある意味パウロの文化だし。スクールモットーが、「人にしてもらいたいことは何でも人にしなさい」という黄金律が日常化しているということだなと、ふだんは自分たちでは当たり前になっていて気づかないのですが、鈴木さんの視点に改めてここは形式知化をしておこうと気づきました。ありがとうございます。

★それから、伊東先生は数学科でもあり、MM(Math Meeting)において入試問題と思考コードとPBLを結び付けた対話や議論をしているという授業のバックステージについても語りました。これも鈴木さんは興味を抱いたようです。

★工学院の教務主任田中歩先生とお互いの学校のPBLの話についてよく語るのですが、工学院は、グローバル教育やPBLは最高を目指しますが、聖パウロ学園は20%を目指します。これが中高一貫校と高校だけの学校の典型的な違いだなと思います。

★中高一貫校は、市場の原理で競争が激しいわけです。最高レベルの鎬を削るわけです。ところが高校だけだと、市場の原理はあまり働かないので、誰もが手が届くというレベルからはじめて最終的に高いハードルを生徒自身がいつの間にか飛んでしまうという状況をつくることが大切です。

自律分散協働系というのは、寄り添いながらも手放して生徒自身が偏差値などの囚われ人から解放される状況を創り出すということです。このパウロモデルが思わぬ成果を生み出します。伊東先生は、それを、八王子・多摩エリアの教育関係者からパウロミラクルと呼ばれていると語りながら、具体的な教育の仕組みを語っています。このパウロモデルは、学校選びのみならず、日本の教育が幸せを作らないシステムではなく幸せをつくるシステムになることのヒントになればと思います。

★今、世界は軍事力と政治経済力と教育力の不均衡状態になっています。軍事力に頼らない幸せなシステムはいかにして可能か。教育に携わる私たちは、そのために、知恵を出し合いたいものです。鈴木さん主宰のGWEは、そのコミュニティ空間になっていると改めて実感しました。いつも本当にありがとうございます。

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2022年5月 5日 (木)

5月の連休で思ったこと メモ

★4月の20日以降から、体調を崩し、学校も3日間も休んでしまい、関係者の皆さんには本当にご迷惑をおかけしました。しばらくホンマノオトも書き込めない状態が続きました。15年書き込んできて、こんなに書かなかった日はありませんでした。書く意欲が湧かないなんて!あるのだと自分の事ながら驚きましたが、少し動けるようになって、久しぶりに和洋九段女子で行われた21世紀型教育機構の総会に参加し、仲間と対話でき、かなり刺激を得て、少し勇気が湧いてきました。翌日、GLICCの鈴木さんに励まされながら、同僚とGWEに登壇させていただき、また力を得ました。

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★その前週、成城学園の青柳先生と対話する予定が、そんな状態だったので、参加することができませんでしたが、後から動画を視聴し、またまた勇気を頂きました。健康を取り戻したときに再度青柳先生と対話をお願いしたいと切に思いました。

★もちろん、PCRの結果は陰性でしたから、まずは学校には迷惑はかけなくて済んで、ほっとしているわけですが、どうも昔の疾患が再発している感じでふと不安がよぎるのですが、とにかく少しずつホンマノオトに書き込み始められるようになりました。

★首都圏模試の山下さんや北さんにも元気づけられ、寄稿のための原案も考えられるようになりました。長野の森の中で、ビールを飲みながら、孫と戯れながら、ぼーっと空を眺め、風の音や虫の羽音、木々から色々なものが降ってくる音に耳を澄ましながら、八雲学園のトランジションについて思い巡らしているうちに、ふといろいろ降りてきました。近藤隆平先生、菅原先生と約束したアイデアを表現したいという意欲も湧いてきました。

★DISCOVERに向けて平方先生と私立学校の模索について一杯宿題をもらいましたが、それらは、21世紀型教育機構のメンバーとの対話や勤務校の同僚との対話ともだんだん結びついてきました。

★同時に、受験業界からの目線と学校からの目線の両方を公平に見られるようになっている自分にも気づきました。受験業界も学校も実はかなり変わってきていて、互いに批判している視点や価値観がかなり古くなっているということにも気づきました。

★やはり私立学校は、進路指導が大事だと。しかし、その進路指導は受験指導という狭い範囲に限られないから大事なのだと。一般に外から見た場合、進路先の結果が目立ちます。氷山の一角です。たしかに、かつては一般選抜のために受験指導をメインストリームとして受験業界も学校でさえもが行ってきたことがあるかもしれません。

★しかし、今では、海面下の見えない部分が重要で、受験業界も学校も、ここの学びの質の部分には力を入れているわけです。ただ、受験業界と学校は、得意不得意がそれぞれあって、たとえば、B社のような教育産業の情報と学校が連携することは必要です。

★その連携の際、氷山の一角の見える部分の情報だけを共有するか、海面下の教育の総合力を共有するのかでは、生徒の育ち方に差異がでます。

★そのことは、今や受験業界も学校も十分にわかってきています。

★進路先でそして社会や世界に出たとき活躍できる人的資本として成長するには、やはり教育の総合力が必要です。最近は学校の働き改革で、なんでも合理化して、この教育の総合力を圧縮しようとする動きがあります。

★そして逆説的なのですが、この合理化は、受験指導という狭い範囲に学校を導いてしまう結果になるわけです。そして、このことが大学合格実績は出せども、人的資源は枯渇するというディストピアを導くことにもなりかねないのです。

★授業をPBLにするだけで、総合的な探究の時間を行うだけで、教育の総合力ができるかというと、それはできませんね。

★合理的なことを推奨する人々の共通点は、自分が苦労して成功している人に多いですね。そんな苦労はしなくてよいという経験からくる考え方です。苦労しないで成功する人は、実は基本いないので、結局そういうことを言っている人々は、個性的というより一つの偏った見方ですね。

★むしろあれもこれもしたかったけれど、自分はできずに成功できなかったという人々の考え方も大事にした方がよさそうです。

★その発想こそがクリエイティビティを生み出すし、コラボレートなんてのは、一見するとあまり合理的ではないですから、やはり成功しなかった人の方が必要とするのです。また、ケアリングも成功者にはあまり湧いてこない発想です。

★学習指導要領は、合理的に考えてよといいながら、合理的にできない現場の時間性を物理的にしか再考しないから、いつまでたってもうまくいかないわけです。

★直線的時間と円環的時間の両方で考えていくと、片方から見ると不合理的に見えたり、非合理的に見えたりするものだということが了解できます。

★直線的に考えると収まり切れない仕事。円環的に考えると収納される仕事。前者は、氷山の一角で、後者は海面下にあるものです。

★それでいて、両者はつながっている。この両方をつなげてみると、今までの教育の議論が大きく変わるわけです。

★そのような氷山全体の諸関係を捉えている教育の総合力が進路先、社会、世界にでてC軸クラスとして活躍する人的資本を生み出すことになります。そのような世界環境をいかにしたら創れるのか。そのような世界環境とはいかなるものか。教育の総合力の出番です。

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2022年5月 2日 (月)

起業家の思考法 教育に逆転換してみるとおもしろい

<起業家の思考法――「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法 ダイヤモンド社>はおもしろい。この「別解力」とは思考コードでいえば、C3領域。起業家精神は「思考コード」に置換えることは可能で、教育と起業は脱偏差値的なトランジションを描けるなあと直感したそのとき、ふと著書平尾丈さんのプロフィールをググりました。すると、海城学園→SFCというまさに新しい学びのトランジションを歩んでいるということがわかりました。

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★前回ご紹介したように、C3思考力を有して、高邁な精神という理想と現実化する力の両立をするタイプは、年収が5000万以上は可能なわけです。年収という言う言い方はわかりやすいから使ったまでで、C3思考力を中等教育時代に身に着け、社会に出たら、年間5000万以上のひと・もの・かね・情報のネットワークをマネジメントしているよということです。5000万どころではないと思いますが。。。

★平尾さんが海城を卒業するころというのは、同校が激しく改革を行っている(このときから今もアップデート持続)ころでしたから、体験値を上げるPAプログラムや骨太小論文を編集するチャンスやコミュニケーション能力を高めるプログラムなどが矢継ぎ早に実現していた時代です。

★東大進学という優れたプログラムと別のプログラムも行い、多様な学びが並行進化し始めていました。そして平尾さんはSFCですから、そのころから別解力を発揮していたのでしょう。

★平尾さんの人生のトランジションを垣間見るだけで、中等教育と起業の結びつきは、東大進学プログラムとは別解のプログラムも存在していることが重要だということが了解できます。

★そして、この本を通して、思考コードは、学びのコンパスであると同時に資産・資本のコンパスでもあることが了解できます。

★well-beingと平和が希求されている喫緊の事態が起きている状況下では、理想の教育は平和を象徴する新しい経済社会を現実化する別解力=C3思考が必要だと理解できます。

★平尾さんは、同書のいろいろなところで、「誰もが思いつく実現可能な選択肢では人は無価値になる時代だ」「 誰もやらないような創造的な打ち手を繰り出さなければ、勝負にならなくなる」と語っています。同感です。ですから、教育の現場でも、学習指導要領の言説を振り回しているようでは、起業家は生まれないということです。

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21世紀型教育機構 新たな次元へ

★先週の木曜日(28日)、和洋九段女子のフューチャールームで2022年度の21世紀型教育機構の第1回総会が開催されました。各校のマネージャーとSGT(スーパーグローバルティーチャー)、及び首都圏模試センター、アクレディテーションチームなど協力団体が一堂に会しました。同機構教育情報センターの主席研究員の児浦先生や田中歩先生、主任研究員の新井先生、田代先生、染谷先生も参加し、熱くSGTの未来構想を語り合いました。

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★そして、理事の大橋清貫先生からは、本格的にSGM(スーパーグローバルマネージメント)部会の座長として、理事長・校長・マネージャーの資質能力向上のためのビジョンが示されました。

★SGTーSGMという21世紀の教育と経営の両輪をいよいよ走らせる段とななったわけです。

★VUCAの時代と言われて久しいですが、今まさにVUCAの真っ只中にいます。もともとVUCAは軍事用語です。それが経済の世界で語られるようになったのですが、現状はまさに軍事用語としてのVUCAの展開を毎日目にしています。私たちも対岸の火事では済まされません。教育で何ができるのかを問い返す総会の雰囲気が広がりました。

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★ですから、最後に八雲学園の副校長菅原先生が一本締めをする際に、この現状化において、グローバルリーダーを輩出することの重要性を説きました。各校well-beingを求めています。しかし、それは新しい平和を生み出すグローバルリーダーを育成してこそ達成できるでしょう。

★グローバルリーダーとはひと・もの・かね・情報を公平にかつ自由市場を持続可能にしながら活用し、民主主義的社会や世界をマネージメントしていく人的資本です。

★したがって、その高邁な精神という理想と活動資金という現実的な力を得る必要があります。理想と現実を一致させる資質能力ですね。グローバリリーダーになれば年収5000万以上は得ることになるでしょう。半分は家族という未来の世界を創る無形資産を持続可能にするために、そしてもう半分は未来を創る資本として自身の活動のために活用されるでしょう。

★教育の世界は、お金に対する正しい認識を教育することを少し怠ってきましたね。イマニュエル・カントでさえ、平和を創るには、金が市場で循環している環境を創ることだと語っていました。教育において道徳はカントが主役ですが、このカント経済循環のお話はほとんどマスクをかけられたままでした。いやいや金融教育をやっているではないかと。いやお金の光と影の両方のシステムをきちんとオープンにしていないのは誰も否定しないでしょう。

★しかも、ライフシフトの時代です。クリエイティブ資本と無形資産の新しいBS(バランスシート)をイメージする必要があるのです。この領域は思考コードでいえばC3の領域です。グローバルリーダーは、この領域を重視します。

★独断と偏見ですが、21世紀型教育機構は、資本と資産の関係を次の図のように描こうとしているように感じました。

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★こうして分類すると、思考コードのC3は年収5000万以上、B3は2000万以上、B2×C2は3000万以上、A3は1000万以上ということになるでしょう。根拠は、それぞれのカテゴリーで活躍する人的資本を想起してということです。具体的には、あまりに衝撃的なので、ここでは述べられませんが。

★起業家精神豊かな生徒はC3ですから、思い起こせば、そういうことになります。このC3人的資本を生み出す教師がSGT[だし、そのような環境を創るのがSGMです。では、SGTの年収は変わるのか?はい、ライフシフトの時代を引き寄せることができると、大転換が起こります。教師になりたいという状況が生まれるでしょう。ただし、SGTの資質能力が必要になります。

★いずれにしても、21世紀型教育機構の加盟校は、すべて海外の大学への道をたくさんの生徒に開いています。これはC3の道でもあるというわけです。中でも三田国際は、140名を超える生徒が海外大学へ進むパスポートをゲットしたということです。21世紀型教育機構は、この教育をはじめた1期生が2021年前後に海外大学進学率を飛躍させると予想していましたが、それは実現しました。

★同機構のSGM及びSGTは、理想と現実を一致させる資質能力を有していることが証明されたわけです。今後は、この高邁な精神と現実化力の両方が機構内で共有されるシステムができたわけです。新たなケミストリーに期待がかかります。

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2022年5月 1日 (日)

成城学園の魅力を支える物語スパイラル

青柳先生の成城学園の魅力を語るその方法の中に、魅力が映し出される仕掛けがあります。今回青柳先生は、3の累乗のスパイラルで語りました。大きく3章に分け、さらにそれぞれの章を3節に分類して語っていきます。その章や節の順番は、思考コードでいうA軸からはじまりB軸、C軸という広がりで話していきます。

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★しかし、おもしろいのは、A軸の章であっても、鈴木さんと対話することによって、A→B→Cのサイクルを回転させる対話になっていきます。随所にそのような話になりますから、デノテーション(外延:要するに形式知)の話の中からコノテーション(内包:要するに暗黙知)を見える化していきますから、そのたびに、小さな花が開花し、視聴している側は魅せられます。

★対話とは、デューイにとっては、ダイアローグです。ダイアローグとは、このような物語スパイラルを広げ上昇気流を生み出していく弁証法のことも意味しています。これもまたリベラルアーツの伝統ですね。ソクラテスの対話から始まって、デューイが批判的に継承したヘーゲルの弁証法です。

★官僚主導の近代教育のベースをつくり、今も継承されているヘルバルト主義は、このヘーゲルの対話を切り捨てる立場から出発します。

★成城学園が大正自由教育のスタースクールであり、先生方が未完の民主主義の教育を完成させるべく今もチャレンジしている姿が、青柳先生の物語る仕掛けに魅力的に映し出されています。

★ヘーゲルは哲学者としてよりもギムナジウムでカリキュラム改革を行った校長先生の顔の方が私にとっては親近感があります。詩を愛し、芸術を愛し、たくさんの生徒や学生と対話をし、紆余曲折を超えたからこその幸せな5人家族との暮らしを送り、最後はコレラに感染しこの世を去ります。VUVAの今の時代に重なる生き方ですね。

★そして、対話と歴史を重視していたのですが、ヘーゲルは若いころ、実は話下手だったというのは、どこか興味深いですね。

★デューイは、民主主義という立場からヘーゲルと対峙しましたが、ヘーゲルの生徒や学生と哲学対話をしたところには、PBLの根っこを見つけていたのかもしれません。

青柳先生が、学園生活そのものがPBLですからと語ったととき、デューイが教育は人生の準備ではなく、人生そのものだと言ったことを思い出しました。そして、大哲学者と言われているヘーゲルが、まだ哲学者として地盤を固められない時代に、中等教育で活躍し、そのとき生徒と共につくった今も読み継がれている「哲学入門」が、のちの大哲学に発展したというのを思い出しました。

★中等教育が成城学園のような教育の魅力を生み出すとき、ヘーゲルがそうだったように、すでにそこに未来が開花しているということでしょう。その花の咲いている姿に魅了されない人はいないでしょう。

★さて、この魅力を、成城学園の在校生が先生方と一緒になって説明会を作り、公開します。まさに生徒にとって、説明会作りもPBLです。同校のサイトにはこうあります。一部紹介いたします。詳しくはサイトをご覧ください。

 中学校見学会「成城学園に集まれ!!2022」

 さて成城学園中学校高等学校では、小学校4年生から6年生のお子様を対象とした学校見学会“成城学園に集まれ!!2022”を開催します。中学受験を考えている皆様に成城学園の雰囲気を感じていただければという思いから、体験型の見学会を企画して今年で20年目を迎えます。コロナ禍により一昨年度は中止、昨年度はオンラインでの開催でしたが、今年は従来の形に戻して開催することを計画しています。
 内容としては「成城学園での学校生活」をよりイメージできるように「体験教室」と並行して「見て!聞いて!私たちの学校」と題した学校紹介を行います。 「見て!聞いて!私たちの学校」では在校生が生徒の学校での様子や部活動、行事について紹介します。この学校紹介は、説明会等での保護者向けの説明ではなく、小学生に向けて成城学園の魅力を紹介する形で行います。また、「体験教室」は科学実験やクイズなどの他に、成城学園の伝統ともいえる芸術やスポーツの分野での企画をそろえ、皆様をお待ちしています。この2つの企画の両方に参加していただくことで、成城学園が大切にしている教育について、保護者の方だけでなく、実際に入学するお子様にもご理解いただけると考えております。

★成城学園の魅力をぜひ満喫してください!
 

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