成城学園 生徒が自分で自分の学びをデザインする
★4月22日(金)、成城学園の広報部長の青柳圭子先生が、GLICC Weekly EDUにZoom登壇。同番組主宰の鈴木裕之さん(GLICC代表)と対話しました。成城学園は、大正自由教育のスタースクールであるのはあまりにも有名ですが、今国際秩序がゆらいでいる事態が対岸の火事ではない状況下にあって、大正時代のお話で終わらない、現代的価値を示唆する重要拠点です。そのことがよくわかる対話が行われています。
(GLICC Weekly EDU 第76回「成城学園 青柳先生との対話ー成城学園の魅力をつくる先進的で豊かな授業」)
★というのも、青柳先生が語る言葉が、いわゆる文部科学省が学習指導要領で使っている言説をただ振り回すのではなく、すっと自然に青柳先生ご自身の言葉で置換えて、成城学園の建学の精神の泉で浄化して語っているからです。
★新学習指導要領は、あたかも未来の教室に向けて学びを変えていく意欲をみせた言説をたくさん使っています。そのことは、私立学校にとっては、とてもやりやすいわけですが、私立中学に通う生徒は全国の中学に通う生徒の7%にすぎません。93%は、公立で、公立では、なかなか転換が難しいのです。
★なぜかというと、成城学園は、105年前に、当時文部官僚だった澤柳政太郎が、新教育を施行する実験学校として設置した学校です。ジョン・デューイなどをはじめとする民主主義を生み出す教育を実践しようと新しい教育観・教育実践がはじめて導入されたのです。
★一般に新しい教育といったとき、そうでない教育についてあまりはっきり言及されないのですが、デューイは「民主主義と教育」の中で、インストラクショニズム的な合理的な指導案に基づいた(=マスプロダクションの象徴であるT型フォード・モデルに重なる)近代教育を徹底的に批判しています。
★澤柳政太郎は、文部官僚でしたから、日本の近代教育が、このヘルバルト主義の流れを汲むことを知っていたはずです。国力を高める労働力を生み出す教育が、当時の先進国に追いつけ追い越せという優勝劣敗主義に突っ走っていることの危うさに気づいたはずです。この官僚主導の近代国家づくりは、民主主義を成熟させないということを身に染みていたはずです。
★成城学園で行われているPBLは、たしかにデューイなどの当時の進歩主義的な教育哲学者や実践家に今も基づいています。しかし、それは決して古いことではないのです。よくデューイを持ち出すと、そんな昔の学習理論はと言い出す人いますが、そのようなことを語る方のベースは、もっと古いヘルバルト主義に基づいているのです。
★したがって、古いとか新しいとか言う話ではなく、今繰り広げられている世界のデモクラシーの危機を見て、デューイが提唱した「民主主義と教育」は、未完であって、まだ実現していないのだと考えたほうが適切でしょう。そして、なぜ未完なのか?デューイの発想が絶対的で完成されたものではないのです。現代化していく必要があるわけです。
★それを成城学園は今も実践しています。青柳先生は、デューイの時代にヘルバルト主義に対して「学習者中心主義」が唱えられたわけです。それは、学習指導要領でも「主体性」とかかわれています。OECD/PISAのエージェンシーという言葉に影響されてもいます。
★しかし、この「主体性」をどのように創っていくのでしょうか。ヘルバルト主義のわかりやすい事態は、学年、クラス、教科時間割の一連のシステムです。このシステムは今も厳然としてあります。これに則っていくと、「主体性」はなかなか生まれません。
★では、この時間割に象徴される教科主義を、全部探究にしてしまえばよいのか。そういう学校もあります。成城学園も105年前は、ドルトンプランを取り入れていましたから、そのような発想があったかもしれません。
★しかし、この発想は、時間概念が、デノテートで、コノテーションを深く考える発想が学習デザインを行う側にないのです。ミウラオリなどの茶室発想が加わることで、つまりアート発想が加わることで、ヘルバルト主義のはずが、全く違う価値観に転換するということが可能です。
★それを成城学園は実現しています。デノテーションというのは形式的表現です。ですから、「学習者中心主義」というのはデノテートな表現です。青柳先生は、デノテーションとコノテーションはコインの表裏なので、「学習者中心主義」や「主体性」を「生徒が自分で自分の学びをデザインする」とコノテーションを引き出す表現に置換えます。
★そして、今回の対話の中で、この「デザイン」をさらに「デザイン思考」プログラムを生徒自身が探究していく教育実践をしているのだという話を展開していきます。
★つまり、成城学園の先生方と対話するとすぐに了解できますが、青柳先生のように、デノテート(外延的)な表現を、1つひとつ丁寧にコノテーション(内包)を引き出す創造的な転換を果たしている先生が多いのです。
★このデノテーションとコノテーションの往復ができるレトリック(修辞法)は、リベラルアーツの基本の1つです。ヘルバルト主義は、このリベラルアーツを実用的な教育を優先して斬り捨てていくことになります。もちろん、ヘルバルト自身はそこまで考えていなかったでしょう。
★このヘルバルト主義の系譜については、最近教育学の中でも研究され始めています。日本の近代社会、現代社会を下支えしてきた教育の中に織り込まれているヘルバルト主義の痕跡を見出したときに、ようやく日本の教育のどこを変えるとよいのか問題の所在が明らかになるでしょう。
★現状の教育改革(?)は、ここが明らかになっていないので、表面的な変化になってしまっている可能性もあります。
★成城学園は、105年前の建学当時から、この問題の所在を認識し、その解決に向けて教育実践を新しいイノベーションを取り入れながら積み重ねています。そこを見出す受験業界の編集者が現われてくると、成城学園の現代的価値を受験生と共有できるでしょう。すでにノイタキュード代表の北岡優希さんがそこにチャレンジしています。そもそもGWEそれ自体が主宰者の鈴木さんの新たな着想によって成り立っています。
★教育の新しい価値は、学校のチャレンジングな実践とその実践の価値を見出す編集者のコラボレーションが欠かせません。そういう時代がいよいよやってきたと実感できた青柳先生の表現でした。(つづく)
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