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2022年4月

2022年4月30日 (土)

成城学園 生徒が自分で自分の学びをデザインする

4月22日(金)、成城学園の広報部長の青柳圭子先生が、GLICC Weekly EDUにZoom登壇。同番組主宰の鈴木裕之さん(GLICC代表)と対話しました。成城学園は、大正自由教育のスタースクールであるのはあまりにも有名ですが、今国際秩序がゆらいでいる事態が対岸の火事ではない状況下にあって、大正時代のお話で終わらない、現代的価値を示唆する重要拠点です。そのことがよくわかる対話が行われています。

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 (GLICC Weekly EDU 第76回「成城学園 青柳先生との対話ー成城学園の魅力をつくる先進的で豊かな授業」)

★というのも、青柳先生が語る言葉が、いわゆる文部科学省が学習指導要領で使っている言説をただ振り回すのではなく、すっと自然に青柳先生ご自身の言葉で置換えて、成城学園の建学の精神の泉で浄化して語っているからです。

★新学習指導要領は、あたかも未来の教室に向けて学びを変えていく意欲をみせた言説をたくさん使っています。そのことは、私立学校にとっては、とてもやりやすいわけですが、私立中学に通う生徒は全国の中学に通う生徒の7%にすぎません。93%は、公立で、公立では、なかなか転換が難しいのです。

★なぜかというと、成城学園は、105年前に、当時文部官僚だった澤柳政太郎が、新教育を施行する実験学校として設置した学校です。ジョン・デューイなどをはじめとする民主主義を生み出す教育を実践しようと新しい教育観・教育実践がはじめて導入されたのです。

★一般に新しい教育といったとき、そうでない教育についてあまりはっきり言及されないのですが、デューイは「民主主義と教育」の中で、インストラクショニズム的な合理的な指導案に基づいた(=マスプロダクションの象徴であるT型フォード・モデルに重なる)近代教育を徹底的に批判しています。

★澤柳政太郎は、文部官僚でしたから、日本の近代教育が、このヘルバルト主義の流れを汲むことを知っていたはずです。国力を高める労働力を生み出す教育が、当時の先進国に追いつけ追い越せという優勝劣敗主義に突っ走っていることの危うさに気づいたはずです。この官僚主導の近代国家づくりは、民主主義を成熟させないということを身に染みていたはずです。

★成城学園で行われているPBLは、たしかにデューイなどの当時の進歩主義的な教育哲学者や実践家に今も基づいています。しかし、それは決して古いことではないのです。よくデューイを持ち出すと、そんな昔の学習理論はと言い出す人いますが、そのようなことを語る方のベースは、もっと古いヘルバルト主義に基づいているのです。

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★したがって、古いとか新しいとか言う話ではなく、今繰り広げられている世界のデモクラシーの危機を見て、デューイが提唱した「民主主義と教育」は、未完であって、まだ実現していないのだと考えたほうが適切でしょう。そして、なぜ未完なのか?デューイの発想が絶対的で完成されたものではないのです。現代化していく必要があるわけです。

★それを成城学園は今も実践しています。青柳先生は、デューイの時代にヘルバルト主義に対して「学習者中心主義」が唱えられたわけです。それは、学習指導要領でも「主体性」とかかわれています。OECD/PISAのエージェンシーという言葉に影響されてもいます。

★しかし、この「主体性」をどのように創っていくのでしょうか。ヘルバルト主義のわかりやすい事態は、学年、クラス、教科時間割の一連のシステムです。このシステムは今も厳然としてあります。これに則っていくと、「主体性」はなかなか生まれません。

★では、この時間割に象徴される教科主義を、全部探究にしてしまえばよいのか。そういう学校もあります。成城学園も105年前は、ドルトンプランを取り入れていましたから、そのような発想があったかもしれません。

★しかし、この発想は、時間概念が、デノテートで、コノテーションを深く考える発想が学習デザインを行う側にないのです。ミウラオリなどの茶室発想が加わることで、つまりアート発想が加わることで、ヘルバルト主義のはずが、全く違う価値観に転換するということが可能です。

★それを成城学園は実現しています。デノテーションというのは形式的表現です。ですから、「学習者中心主義」というのはデノテートな表現です。青柳先生は、デノテーションとコノテーションはコインの表裏なので、「学習者中心主義」や「主体性」を「生徒が自分で自分の学びをデザインする」とコノテーションを引き出す表現に置換えます。

★そして、今回の対話の中で、この「デザイン」をさらに「デザイン思考」プログラムを生徒自身が探究していく教育実践をしているのだという話を展開していきます。

★つまり、成城学園の先生方と対話するとすぐに了解できますが、青柳先生のように、デノテート(外延的)な表現を、1つひとつ丁寧にコノテーション(内包)を引き出す創造的な転換を果たしている先生が多いのです。

★このデノテーションとコノテーションの往復ができるレトリック(修辞法)は、リベラルアーツの基本の1つです。ヘルバルト主義は、このリベラルアーツを実用的な教育を優先して斬り捨てていくことになります。もちろん、ヘルバルト自身はそこまで考えていなかったでしょう。

★このヘルバルト主義の系譜については、最近教育学の中でも研究され始めています。日本の近代社会、現代社会を下支えしてきた教育の中に織り込まれているヘルバルト主義の痕跡を見出したときに、ようやく日本の教育のどこを変えるとよいのか問題の所在が明らかになるでしょう。

★現状の教育改革(?)は、ここが明らかになっていないので、表面的な変化になってしまっている可能性もあります。

★成城学園は、105年前の建学当時から、この問題の所在を認識し、その解決に向けて教育実践を新しいイノベーションを取り入れながら積み重ねています。そこを見出す受験業界の編集者が現われてくると、成城学園の現代的価値を受験生と共有できるでしょう。すでにノイタキュード代表の北岡優希さんがそこにチャレンジしています。そもそもGWEそれ自体が主宰者の鈴木さんの新たな着想によって成り立っています。

★教育の新しい価値は、学校のチャレンジングな実践とその実践の価値を見出す編集者のコラボレーションが欠かせません。そういう時代がいよいよやってきたと実感できた青柳先生の表現でした。(つづく)

 

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2022年4月20日 (水)

shuTOMO 4月号(02)教育DXがもたらすであろうSX(スクール・トランスフォーメンション)?

★shuTOMO4月号の特集で、経済産業省サービス政策課長・教育産業室長・デジタル庁統括官付参事官の浅野大介さんのインタビュー記事が載っています。インタビュアーは首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さん。巧みな問いによって、未来が予想される対話になっています。ともあれ、コロナ禍にあって、GIGAスクール構想は一気呵成に活動的になり、全国の公立学校は、1人1台のICT端末の配備がされたということです。画期的です。

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★ICT端末が入った教室空間と従来の教室空間の違いが鮮明になっています。

★この教育DXによって、変わらざるを得ないのは、学習指導要領の標準時間という考え方、学校時間を規定している校則や部活のあり方だと浅野さんは語ります。

★もちろん、従来の学校が培ってきた良質なものは、大事にし、教育DXと両立できるようにという考え方を展開しています。

★しかしながら、空間の考え方が、サイバー空間とリアル空間ですから、併存はやりやすいですが、両立はにわかには難しいでしょう。

★ただ、日本の経済が復活するには、その難しいところを突破することになります。

★今回の記事では、そこまでは語っていませんが、時間と空間の変容は、学校そのもののあり方を変える化学変化が起こるものです。

★おそらく浅野さんには見えています。私たちもうすうす気づいています。

★毎日報道されているニュースを見ればそれは予想できるはずです。

★ICTの端末は、たんなる学習道具ではありません。生産道具です。この意味が、何を意味するのか。

★それはマックス・ヴェーバーがすでに予言しています。生産手段が1人ひとりに所有されたらどうなるかと。

★生徒が手にしているICT端末は、もはや学習道具レベルではありません。

★経済を生み出す道具です。

★18歳成人の時代。学校は変わらざるを得ないでしょう。すでに中学生が起業する時代です。彼らは、必ずICTを活用しています。

★もし、文部科学省が、この動きを先導していたら、こうはならなかったかもしれません。経済産業省だからこそということもあるでしょう。学校を教育産業としてみたてているということでしょう。

★進路指導も、もはや海外大学をどこの学校も射程に入れるでしょう。偏差値が高かろうが低かろうが、世界大学ランキング100位から200位以内はチャレンジできるのが現状です。THEの世界大学ランキングで、日本の大学は200位までに入っているのでは、東大と京大だけです。

★英語とICTとクリティカル&クリエイティブシンキング、それとプレゼンテーション能力がICTによって鍛えられてしまいます。この資質能力は、もはや学びのための能力ではありません。生きるためのチカラです。ようやく、生きる力の具体化がなされたと言えるかもしれません。

★日本の学校の未来の教室のモデルは、実はすでに世界中にいっぱいあります。

★改革理念を高らかに語らなくても、知の生産手段を1人1台配備することで、静かに大きなウネリが起きています。

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2022年4月19日 (火)

筑駒の2022年の国語入試問題で出題された詩の意味。18歳の時に書いた谷川俊太郎さんの詩「合唱」の歴史を超える深い意味。

★今春の筑波大附属駒場中学校の国語の入試問題で出題された詩が意味することは重い。1950年、谷川俊太郎さんが18歳の時に書いた「合唱」という詩が出題された。第一連は、こう始まる。

遠くの国で物のこわれる音がして
幾千万のちりぢりの会話が
終日僕を苦しめる 

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★この詩は、1950年4月21日に書かれているから、1950年6月25日にソ連が38度線を超えて朝鮮戦争が勃発する以前に書かれている。すでに第二次世界大戦が終わるや、危機は訪れていたから、18歳の谷川俊太郎さんは、耳を澄まして、心を痛めていたのだろう。

★この詩には、戦争のことは具体的に何も述べられてはいない。だから、かえって、今の状況下で詠まれてもおかしくない。

★それほど、人類の痛みは、変わらないということだろう。

★谷川俊太郎さんの18歳の痛みは、戦争以外にも学校の問題をも見抜いている。谷川さんは、学校をやめ、大学に行くのもやめる。痛みを抱えながらどうやって生きるのか。詩を創作しながら、合唱の意味に魅せられる。

★それにしても詩人というのは、世界を見通している。第3連で、詩人は、はやくもグローバル化を既に予想し、苛立ち、グリーン化の大切さに思いを寄せる。

★そして第4連では、恐ろしい予言がなされる。デジタル化のもたらす悲劇をすでに予想している。

★にもかかわらず、合唱という人類のささやかだけれど、それを防ぐことができる魅力をそっと述べて終えている。

★核による抑止力か、合唱による安全確保か。

★ウクライナ侵攻が始まった2月24日よりも前に、2月3日、中学受験生に問うたのである。

★2月1日に麻布が社会の入試問題で「難民問題」を問うた。大きな話題となった。

★問題が解ける解けないの前に、偏差値が高いとか低いとか言う前に、東大たくさん合格させるかどうかを問う前に、このような問いを出題する学校の価値についてもっと語り合う受験業界や文部科学省であって欲しい。いや、まずは自分の学校の価値をもう一度考えてみようと思う。

 

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2022年4月17日 (日)

shuTOMO 4月号(01)日本の教育は変わるのか、変わらないのか?

★本日17日、首都圏模試センターは今年度第1回目の合判模試を開催します。同センターは、中学受験情報誌「shuTOMO」を同時発刊します。受験生には配布され、受験生以外はAmazonなどでも購入できます。私も少し協力させていただいているため、今年度の第1回本、中学受験情報誌「shuTOMO2022年4月号」を頂きました。特集がインパクトあります。「日本の教育は変わるのか、変わらないのか?」。初回から飛ばしています。そして、このような特集を学校側ではなく、受験業界側が提示するというのは、ちょっと他国では考えられない動きです。首都圏模試センターの教育関連企業としての価値はグローバルな視野からみても相当なものです。

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★特集は、首都圏模試センターの取締役・教育研究所長北一成氏が、企画編集しています。まずは巻頭言として、2050年ごろからバックキャストして日本の教育が変わらざるを得ない根拠付けをし、子どもたちが生きる未来により良く生きる力を育てる教育を説きます。それを証拠づけるかのように3人の教育改革者にインタビューをしています。

★まずは教育政策を制度設計する官僚側から、GIGAスクールコ構想などで大活躍している経済産業省の浅野大介さんにインタビュー。

★次に、私立学校側から、日本私立中学高等学校連合会の会長吉田晋先生にインタビュー。私立学校に通う生徒が全国に占める割合は33.6%であり、先進的教育のほとんどはほぼここから生まれていると言っても過言ではないのですが、その全国の私立学校の経営面と教育面の両方をサポートしているのが吉田先生です。政財界の広大なネットワークを生かし、文部科学省にも未来の教育のための教育政策について助言もしています。

★最後に、現場で教育改革を成功させている横浜創英の校長工藤勇一先生にインタビュー。工藤先生は公立と私立両方で改革を成功に導いています。日本の教育を変える行政政策も大事です。しかし、そのマクロの改革は、結局は現場というミクロの領域で動かなければ大山鳴動して・・・ということになります。その意味で、工藤先生のチャンレンジングな現場の教育改革モデルは重要です。

★特集の企画やインタビューのナビゲーター、執筆は北一成所長です。撮影はノイタキュード代表北岡優希さんです。感性豊かな北岡さんのシャッターの眼差しは、それぞれのペルソナ表情をいい感じで映し出しています。

★いずれにしても、この特集、相当気合がはいっています。北所長の時代を俯瞰する認識に沿って、それぞれの立場の共通点がわかるようになっています。

★公立と私立の軸とマクロとミクロの軸が巧みに交差して、日本全体のこれからの教育の変化を一望できます。ぜひお読みいただきたいと思います。

★私もしばらく、同書を読んで、簡単なコメントを書き込んでいきたいと思います。

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2022年4月16日 (土)

大妻中野のグローバル教育の魅力と次の次元

★昨夜、GWEで大妻中野の教頭諸橋先生と対話しました。今回、諸橋先生は、2回目の出演ですから、大妻中野のグローバル教育について絞って語っていただきました。大妻中野のグローバル教育の魅力をたっぷりお聴きすることができました。そして、次の次元に向けて想いを馳せていることがわかる対話の内容となりました。生徒の潜在的可能性を現実化する多様で巧みなアセットマネジメントは必見です。ぜひご視聴ください。

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(GLICC Weekly EDU 第75回「大妻中野 諸橋教頭先生との対話ーArts for Humankindとグローバルリーダーズ」)

★今年の春は、GLC(グローバルリーダーズコース)の一期生が卒業しましたから、その成果及びその成果が生まれる教育内容(アセットマネジメント)の緻密な仕組みを聴くことができます。

★私も諸橋先生のお話を聴きながら、次のような図をイメージしました。もちろん、独断と偏見ですから、大妻中野の先生から見たら、違うかもしれません。ただ、このような絵を頭に描かせる刺激的な諸橋先生の話だったことを確認しておきたたいので、載せておきたいと思います。

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★そして、諸橋先生のお話の背景には、さらなる次の次元を生み出そうという気概があることも伝わってきました。あまりに破格で緻密な大妻中野グローバル教育について、私の能力では説明できません。ですから、ぜひご視聴いただきたい思います。

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2022年4月15日 (金)

6月7日 22年目の私立女子中学に触れる会<shishokukai> 注目です!

★6月7日(火)、私立中学に触れる会<shigakukai>が開催されます。22年目です。21世紀の開幕の響きと共に誕生した同会。そのときの衝撃を今も持続可能にしている最高の合同説明会です。

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★今年の参加校の顔ぶれを見ると、ちょっと驚きです。

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★このような学校を集結させるには求心力が必要です。

★その求心力はどこからくるのか。

★それは幹事校のあの校長のカリスマです。その学校自体、高人気校です。

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変わるというコト(03)高校の生徒がカギ 首都圏模試も動く 日私研も動く 東私研も動く

★もはや予測不能な時代は遠くの話ではありません。VUCAの時代も遠くの話ではありません。コロナ、ウクライナ、フクシマというキーワードの背景には、すでに予測不能だとかVUCAとよばれる時代が来ています。すぐそこにというより、真っ只中というわけです。いまここでこの変化に対応するには、グローバル感覚、グリーン感覚、ゴールデンルール感覚、GRIT感覚は当たり前です。もちろん、そのいずれにもデジタル化は当たり前です。そしてこれらを統合するのは、哲学だった現代化リベラルアーツだったりというわけです。IBのTOKとかSTEAMなどは、この部分集合です。この4G1D×哲学あるいは現代化リベラルアーツを実践するコア領域は、中学や高校という場です。

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(2021年12月22日 一般財団法人日本私学教育研究所調べ)

★日本全国の中高でざっくり600万人の生徒がいます。シンガポールやフィンランドなど教育大国(?)の人口は、どちらも600万人いきません。にもかかわらず、1人当たりのGDP(2020年IMF)は、シンガポールは、日本の1.5倍、フィンランドは1.2倍です。

★別にGDP競争をしようというわけではありませんが、すべての国が豊かになるために、どんな教育にしていけばよいのか考えることは無駄ではありません。

★そのモデルを作るには、今の学習指導要領ではなかなかうまくいきません。だいぶ開かれてきましたが、まだまだ世界標準ではありません。

★やはり相対的ですが、学びの自由度が高い私立学校で始めるのが現実的です。私立中高一貫校は最も先進的ですが、ここに通っている生徒数は、全体の7.7%ですから、ここだけ頑張っても、なかなか変化は広がりません。

★私立高校に在籍している数は、全体の33.6%です。私立中高一貫校だけではなく、高校だけの学校に在籍している数は、全体の25.9%です。

★私立中高一貫校、私立高校が動き出せば、全体への広がりは加速するでしょう。

★ここに挑戦しようという気概を持っている集団が、首都圏模試センターとその仲間です。高校受験情報誌制作プロジェクトを進めています。

★昨日ご紹介した北岡優希さんもその1人です。このチームは数十校の私立高校を巻き込む動きをしています。

★聖パウロ学園ももちろん協力しています。

★GIGAスクール構想とCEFRの考え方の広がりもまた、この動きを支持してくれることでしょう。

★さらに、日本私学教育研究所(日私研)と東京私学教育研究所(東私研)も大胆に動き出しています。

★変化の波は、大きくなります。そうなると私は楽観的に感じています。

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2022年4月14日 (木)

ノイタキュード代表北岡優希さんとの対話 新しい学校の表現を開く

★ノイタキュード代表北岡優希さんは、首都圏模試センターが出版している中学受験情報誌「shuTOMO」の編集を手掛けています。また、しゅともしのオンディマンドプロデューサーなどでも活躍しています。私もよく知っている私学の先生方についても丁寧に取材編集がなされています。その記事をみると、なるほどよく特徴が映し出されているとグッときます。

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★対話をして、思った通り、よき傾聴者です。よき観察者です。そしてよき表現者です。デジタル技術も巧みです。

★北岡さんのような創造的才能者を味方につけた学校は幸いです。

★自分たちでは気づかない価値を見出してもらえるし、新しい学校の作り方のヒントももらえるからです。それが何かは、いずれ!

★それにしても、学校の空間の捉え方がアーティスティックです。そんなワクワクするような空間だったとは私たちは気づかないのです。

★アートな表現は、もっというと超ポストモダン的アートは、私たちが気づかないコト、見えていないコトを見える化してくれるだけではないのです。新たな発想を創出もしてくれるのです。

★5月には、北岡さんはGWE(GLICC Weekly EDU)にも登壇。柔らかく新しい表現をぜひ共有しましょう。今から楽しみです。

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2022年4月13日 (水)

変わるというコト(02)質を上げても次元が変わらないコトもある、質を上げなくても次元を上げるコトもできる

★学校は、教育の質を上げることは当然です。しかし、質を上げても全体としては何も変わらないというコトもあります。実に判断が難しいですね。質が変わっても次元というか組織の枠組みが変わらないということがあります。

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★タイプAが、そのタイプです。質を向上して、飽和状態になると次元がnからn+αになりそうなのですが、実は質の飽和状態とか沸点は読めないのです。多くの場合、携わっているメンバーの自己満足になりがちです。

★質が不十分でも、テクノロジーを加えると化学反応が起きそうですが、そうでもないというのが、Bタイプです。

★テクノロジーを使う場所をn+αの次元で行えば、実は現状の質が不十分でも、高い次元で質を充実できるということがあります。

★ここでいうテクノロジーとは、デジタル技術だけではなく、身体技術、心の技術、人間関係形成技術、ケアリング技術などを含みます。

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★タイプA´は理想的なように見えますが、コストがかかりすぎ、持続可能が難しいかもしれません。そもそもこのようなテクノロジーの使い方はあまり意味がないのです。

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★しかしながら、タイプDという場合もあります。というよりも、この場合が多いかもしれません。

★なぜこうなるのか?

★それは次元nと次元n+αの差異を明快に了解していないからです。

★「了解」?

★正解があるわけではないので、n+α次元は創造しなくてはなりません。構想力が必要です。

★それがなかなか難しいですね(汗)。

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2022年4月12日 (火)

変わるというコト(01)外延と内包の組み合わせ

★組織の変え方と組織の変わり方は微妙に違います。変え方は、どうしてもそのための道具が派手になります。外部の道具を持ち込むことになるからです。変わり方は、変える道具を自ら作ります。内部の力を奮い立たせることが主眼です。

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★両方が必要なのですが、変え方>変わり方というのが本当のところでしょう。

★そして、これは、持続可能が難しかったり、形骸化してエントロピーが増大することがしばしばです。

★変え方<変わり方が、実はシンプルで持続可能性が高いですね。

★では、変える道具を学内の先生方1人ひとりが自ら、そして協働して生み出すにはどうしたらよいのでしょう。

★それは、「レトリック言語」のチカラを活用することです。

★特に、レトリックのレトリックであるデノテーション(denotation:外延)とコノテーション(connotation:内包)の組み合わせを工夫することです。

★学校の広報的には、一見すると地味ですから、ほとんど振り替えられません。

★しかし、これはリベラルアーツの現代化の起爆剤なのです。今のところ、あまり注目されていませんが、引き算の美学が望まれつつある現在、やがて耳目を集めることになるでしょう。

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2022年4月11日 (月)

バックステージの対話が支える入学式・対面式・始業式などの教育活動(了)

★入学式は花曇りでしたが、次の日の対面式・始業式は晴天でした。今年の桜は、花吹雪一歩手前の状況で、全校生徒を迎えることができました。本格的に新年度が始まりました。

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★対面式は、生徒会が主体となって進めました。新入生と在校生の対話が始まるのですが、新入生のプレゼンテーションも生徒会のパフォーマンスも短い時間でしたが、同窓力を生みだす人間関係づくりの響きが広まりました。ここにいたるまでの生徒会のメンバーのバックステージでの準備に敬意を表します。

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(新進路指導部長小島嵩志教諭のレトリックが共感の輪を広げた)

★始業式では、新年度でもあるため、1年の見通しを立てる話を各教師がします。その中で、新進路指導部長の小島嵩志先生のスピーチは、短時間の中に、一年の見通しを圧縮し、しかも共感が広がるメタファーストーリー仕立てでした。

★副教頭で生徒指導部長の勝俣先生の話も、ルールに関する日常の感覚をひっくり返すレトリックが仕掛けられていました。

★聖パウロ学園は、対話型教育ですが、同時に、それぞれ独特の物語るスタイルを持っています。

★このことが何を意味しているのか。

★いずれにしても、各部長は、バックステージで、日々膨大な準備をしています。それをわずか10分前後で一気に語る時、メタファーなどのレトリックを自在に使います。

★もちろん、生徒がハッとしたり、あのことかあとピンときたり、瞬時に世界に移行できるコンテンツを適用します。

★このようなストーリーテラーがたくさん生まれてくる理由は何か。

★今年度もまた先生方に大いに学びたいと思います。

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2022年4月10日 (日)

バックステージの対話が支える入学式・対面式・始業式などの教育活動②

★入学式を機に、久々に織り込んだのは、式に父母の会の会長に祝辞をいただくことと同窓会、理事会から来賓として参列していただくことでした。入学式の段取りプランの全体を教務部と企画戦略室でたててもらうときに織り込むには、父母の会と理事会との事前の対話が必要です。したがって、バックステージは、事務室ー理事会、教務ー父母の会というキャンパス以外の場に広がります。先月開いた理事会もバックステージです。父母の会はグループセッションの中の外部とやりとりできるメールがバックステージになりました。

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★コロナ禍で、ここ2年間は、最小限度の参加者で行ってきました。当日、父母の会の会長、理事会、同窓会の方の参列ができなかったとしても、その絆が失われることはないのですが、新入生が自分たちを支えるネットワークが豊かなのだという実感を抱けるのは、やはり初回の段階では対面型が最適です。

★新年度からは、withコロナにおける行事や研修、部活をどのように運営していくか、具体的状況に応じて柔軟に適した対応をその都度考案していきます。入学式もその一環として、参加者の枠を少し広げました。

★式辞、祝辞は、校長→父母の会の会長→理事長という流れでした。来賓の理事や監事、同窓会の代表のみなさんも壇上に参列していただきました。

★聖パウロ学園は、神父もシスターもいないちょっと不思議なカトリック学校です。最初は修道会が経営していましたが、赤坂から高尾に移ってきて、やがて経営難に陥った時、今の理事長高橋先生が、校長になって復活経営を果たし、徐々に修道会は手を放していきました。

★したがって、復活した聖パウロ学園の建学の精神の創始者は高橋博理事長であると私は考えています。ですから、神父さんではないので、そのスクールモットーは、修道会の理念と共通するけれどもっと普遍的な黄金律にしたわけです。

★そして、聖人パウロの精神を学び続ける修道会を超越した普遍的カトリック学校として存在しています。

★さらに、入学式に登壇した、私をはじめ、父母の会の代表、理事長、理事、監事、同窓会の代表の方は、全員が信者です。

★そういう意味では、クリスチャン信者が経営・運営するカトリック学校なのかもしれません。特にパウロは、ルターや内村鑑三などが大好きな聖人です。プロテスタントでも人気ですから、パウロの精神に学ぶのは、普遍的かもしれません。

★もともと現代の法のあり方や経済システムのあり方について、あるいは経営マネジメントの方法の着想は、多くの学者がパウロの書簡に影響を受けていると言われています。パウロの精神を教職員、生徒、保護者、同窓会、理事会が共有することは、やがてパウロ生の出番に結びつくでしょう。入学式は、黄金律の言葉の響きがそれぞれの式辞、祝辞であふれていました。

★どんな言葉を語るかは、3人は打ち合わせをしません。なぜなら、私たちは自分の言葉を話すわけではないのです。黄金律が反映した話をするようになっています。私たちは、神の計画通りに話しましょうで、通じてしまうということもあります(汗)。

★しかし、ここに来るまでに、パウロの新しいカトリック学校のあり方について、理事長や理事会で多くの対話を重ねています。これもまたバックステージの対話ですね。また、父母の会の保護者の方々とも対話を重ね、入学式のプランをつくるときに、すぐに了解が広まるように、毎月のように行われる父母の会のミーティングに入試広報部長・企画戦略室室長・教務部副部長の伊東先生も参加する機会を創ってきました。

★入試広報は、外部への発信だけではなく、学内の情報共有も大事です。コロナ禍で、先生方が父母の方々と共に行事を運営する機会がなかったので、ときどき対話をする流れを父母の会の会長と対話しながら協力していただきました。

★会長の祝辞は、保護者の眼から見て、スクールモットである黄金律が具体的にどんなシーンで感じられるかという内容でした。保護者の方から、教育活動の評価を得る機会にもなり、新入生も保護者もさらに期待が高まったと思います。そして教職員も自信と勇気をいただきました。たいへんありがたい入学式になりました。

 

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バックステージの対話が支える入学式・対面式・始業式などの教育活動①

★聖パウロ学園の校舎の1階のうち全日制の職員室は、オープンスペースをパーテンションで仕切って、教師スペースと会議室スペースに区分けしています。パーテーションはしっかりしていますが、天井が高いということもあり、仕切りの上部は空間が開いています。風通しがよいわけで、声も筒抜けです。もちろん、守秘義務が必要なミーティングがあるときは、別室にこもりますが、それはよほどのときがないとあまり使いません。

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★ですから、授業、行事の準備であるバックステージの息づかいは響きとなって先生方みんなで共振しながら毎日を過ごしています。学校生活は喜びと苦難の山あり谷ありの連続ですが、その両方を体験して感動するスペースは舞台だけではなく、舞台裏であるバックステージでも同じです。

★ですから、私は、一日そのバックステージとしての職員室にいて、隣の会議室で議論している先生方のパッションと愛情を聴くのが大好きです。職員室で、教科の先生方が授業の企画運営やテストの作り方、評価の仕方について真剣に語り合っている姿、成績処理に集中して立ち臨んでいる姿を目にして、いいチームだなと心の中で微笑んでいるのもいい感じです。

★入学式を執り行うこの季節は、聖パウロ学園に限らず、どこの学校も対面式、始業式、オリエンテーション、模擬テスト、部活紹介などなどめちゃくちゃスケジュールが詰まっています。

★ですから、バックステージの息づかいは集中力と俊敏さの様相を呈します。ふだん私は朝一番に職員室に入り、グループセッション(イントラネット)にあるスケジュール関係を、ホワイトボードに書きます。一日のスケジュールを自己確認することと、誰が出張なのか有休をとっているのか、そして日々の生徒の出席状況のデータをまとめます。一日のメンバーの状況を確認することは基本です。

★どこの学校でも学校法規で定められている「学校日誌」をつくりますが、勤務校でも日直といっしょに作成するための準備が朝の時間でもあります。その準備を朝していると、7時ちょとすぎたところで、おはようございますと職員室に先生方がやってきはじめます。私は、それほど遅くまで残らないので、そこから先は、何かあれば朝連絡が入ります。朝の会で情報共有する内容を説明にくる先生方が8:05までに増えてきます。

★行事が目白押しになると、段取り表を持って、これでどうでしょう。ここは少し工夫しますがどうでしょうとなります。感染症対策のここがいまいちなんですが、情報共有しますがどうですか。家庭内感染の生徒の状況の報告もあります。行事の度に、確認に来るのは、ここで校長の話ですが5分でお願いします。今回は普通に話してくださいとか。。。

★そんな朝から始まりますが、佳境に入ると、私がつく前にすでに段取り準備をはじめに職員室に来ている先生方がいます。入る前にドア越しに漏れている光で、こんなに早く来てくれて、お疲れ様となるわけですが、何か事件があって私をまっているのかもしれないと一瞬思いながら、ドアを開けると、明るい挨拶が聴こえてホッとするわけです。

★入学式の準備の時は、まだ生徒は春休みですが、生徒会を中心に生徒も準備をしにやってきています。先生方と準備をしている息吹も響いてきます。授業が始まると、休み時間ごとに生徒が質問や行事の準備のために先生方を呼び出して話し合っています。昼休みや放課後はさらにヒートアップします。

★どの行事も、このようなバックステージの準備や会場設営(これがなかなか大変です)の時間に比べれば、一瞬です。密度が高ければ高いほど、先生方にとっては、バックステージにかけた力が感動に変わります。もっとも、感動している間もなく次々と教育活動を行っていくわけですが。

★4月新年度を迎える時に、1年の教育活動の見通しを立てるために、重要なコンパスは、「年間計画表」と「時間割」です。聖パウロ学園は、変形労働時間制をとっていますから、柔軟な勤務の時間を「年間計画表」に埋め込みます。それを「時間割」に反映します。部署の会議も時間割に埋め込みますが、柔軟な活動ができるように、企画戦略室による調整が日々見直されます。

★それから大事なことは、中期計画の準備をスケジュールの中や時間割に埋め込むことです。どうやってか?それは授業ーテストー評価ー指導要録の連続体に「思考コード」を埋め込み、それをモニタリングする新しい人事をスタートさせることによってです。つまり、スケジュール表の物理的な時間にはそれは見えないのですが、各部会や教科の活動の中に埋め込み、それをモニタリングする人事とその共有を既存の会議に包摂することによってです。スケジュールの立て方は、直線的時間と円環的時間の統合に拠るのが変形労働時間制の肝です。

★事務室のメンバーが、勤務状況の管理をしてくれますから、変形労働時間制を持続可能にするために、データを持ってきてモニタリングしてくれます。「学校日誌」を日直と一緒に作ることによって、そのモニタリングの共有もできます。マネジメントと生徒や先生方のメンタル・フィジカル・ソーシャル・スピリチュアリティの息吹を感じるために必要な行為です。このバックステージの息づかいの雰囲気でいろいろなことが洞察できます。

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2022年4月 9日 (土)

Gのチカラ(06)創造的対話が「知識と思考を身に着ける」コンセプトレンズ=「対話思考コード」を生成する

★学校の毎日は、対話のフロー体験の連続です。この対話のフロー体験とはいったい何ものでしょう。これについて、語ることができる仲間は、学校だけではなく世の中でも、まだまだ少ないので、いろいろなところで葛藤や紛争が起こっています。遠くの国だけではなく、近くの生活でもそうです。特に今の学校教育は、教科の中に、あるいは最近の探究の中に収納されるジャーゴン(わかりやすく説明するという物象化言語)を使っての対話が対話だと物象化(先入観・固定概念化)されているため、なかなか大変です。学歴社会だとか高校受験の制度の偏差値主義は、そのような対話でますます強化されてしまいます。

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★私たちの身の回り及び遠くの世界においても、常に「現象」というものが発生しています。この「現象」とは、自然と社会と精神の化学反応によるものであり、この3つの循環や関係性が不完全である場合が、今のところほとんんどで、そこから生成される現象は、それゆえ、精神の荒廃、身体へのダメージ、気候変動、戦争などの葛藤を常に含んでいます。

★この現象の背景にある、自然と社会と精神の関係性の循環度を感じることはできても知ることは常に限定的です。感じ取れればそれでよいという考え方もありますが、やはり具体的な変容を生み出す必要があります。知識や思考は、現象を直接つかむことはできず、常に「物象化」されたままです。世の通念としての物象Cをある人は物象Aとつかみ、他の人は物象Bとしてつかみとるわけです。

★日常の対話(A軸)によって、物象C=物象A=物象Bに修正される段階にいくのがやっとです。しかし、物象Cを生み出している3つの関係性が生み出している現象に接近しているかどうかは無自覚です。かりに直感的に感じたとしても、立ち尽くすだけか、心地よい心の安定を求めて現実をさけてしまう場合が多いのです。

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★ですから、次のステージに進みましょう。そこを自覚的にリフレクションしていくモニタリング対話(c軸)では、物象化が起きていることに気づきます。しかし、ここでもまだ、物象化の分析で終わります。しかし、これは、対話が日常対話から始まるのをよしとするから、限界にたどりついたという自覚で終わるだけでなのです。ここまで来るのに膨大な時間を費やしていますから。

★ですから、最終的なステージだと思われているところから始める方が合理的です。もし、初めから物象化を紐解き、関係性の再構築をする脱システムを創ろうという創造的対話(C軸)を相互に行えるメンバーが増えれば、自然と社会と精神の循環度を上げるシステムへとコペルニクス的転回が起こるでしょう。

★今の受験システムでは、この創造的対話を身に着ける体験をして先に進める入試制度は、海外大学の入試制度やIBのTOKや欧米の哲学などの対話ぐらいかもしれません。

★そうはいっても、日本の受験業界では、そのような入試制度はないわけですから、忍び寄る物象化というウイルス以上に質の悪い生権力を寄せ付けない創造的対話をやりながら、日本の受験システムを自覚的に戦略的に見極めながら活用していくしかないでしょう。

★A軸対話やB軸対話は、偏差値ランキングがつきますが、創造的対話は信頼関係を勝ち得るかが評価です。物象Cという氷山の一角の水面下の自然と社会と精神の関係性の不足部分や弱みの部分を修復する新たなシステムを創造することが、葛藤や紛争を乗り越える対話です。

★聖パウロ学園では、創造的対話を忘却しない、つまり物象化された現存在的な知識を自覚的に身に着けることをしつつ、創造的対話によって装着の質を変容させる重層的な対話コードシステムが作動するようなシステム作りをしているわけです。あくまで、「身に着ける」であり、理論を知ることではないのですが、20%は、実践知のみならず理論知も学ぶ必要はあります。

★そのシステムが構築できれば、リーダーフルな状況をさらにアップデートできます。

★物象化言語で語るしかないので、それを使うわけですが、それをそれぞれが解体修復しながら創造的内省対話ができるようになればよいわけです。それには、メタファーと集合論とトポロジーとサイエンス(文理学際的)を日常の中であたかも日常対話として自在に活用できるストーリーテラーが必要です。このストーリーの創造は、各行事などの段取りの編集によって「身に着く」わけです。

★聖パウロ学園に希望があるのは、少人数が故に、教師も生徒も「段どる」実践知によって創造的対話を「身に着ける」ことができる機会があふれていることです。例年通り同じというマニュアル発想は捨て、変容させながら段どる文化を生み出すことによって、ワークショップ型研修にもなります。

★あらゆる段取りに小さな変化を挿入するコト。小さな変更が大きな変化を生み出します。もちろん、大事なことは、その小さな変更において創造的対話をすることなのです。これが伝統と革新の両ベクトルの合わせ技です。

★これであれば、すべての人々が限界を超えるウネリを創造することができます。教科書を使わない。既成の誰かが創った探究を捨てる。でも、教科の授業は行われているし、探究の授業は行われるわけです。そんな小さな変化が大きなウネリとなるでしょう。

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Gのチカラ(05)東大合格者を輩出する学校及びGLICCの特徴 知識か思考力か?「身に着ける」コンセプトで統合する

★昨夜、GLICC代表鈴木裕之さんと対話しました。東大合格者数多い順20位までの学校の学びの特徴と新たにでてきた学校の学びの特徴を対話しました。前者は、知識と思考力のトレードオフを解決する学びを行っています。後者は洗足学園モデルの学びの特徴を持っているのですが、前者と戦略は違いますが、コンセプトは同じなのです。そのコンセプトに着目して多様なプログラムを創っているのがGLICCでもあるわけです。ぜひ、<GLICC Weekly EDU 第74回「東大合格から見える私立学校の意味ー帰国生入試で文科2類に合格したGLICC生2名の学びを通して考える」>をご視聴ください。

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★東大は、他の大学と違い、≪私学の系譜≫と≪官学の系譜≫の軸と能力主義をうくる≪垂直的秩序化≫と能力主義を批判する≪水平的多様化≫の軸のスクランブルの座標が、東大の初綜理の時代から埋め込まれていました。その背景を考えながら、建学の精神を持っている私立中高一貫校の意味も、東大合格実績をめぐって見え隠れします。

★今回はそこはさらりとしか対話していません。メインストリームは、知識と言葉のトレードオフを解決している高校が東大合格者を多数出しているということです。

★一般には、知識を覚えなければ思考力は身につかないと言いつつ、結局知識暗記で終わる学びになりがちです。それをクリティカルに、知識偏重を批判し、論理的思考や批判的思考、創造的思考を身に着ける新しい学びが立ち上がるのですが、これは、知識の暗記に注目すると思考力の学びが軽視され、思考力を重視すると知識の取り扱いが軽視されてしまうわけです。

★知識と思考のこのトレードオフを解決するにはどうするか?それは、知識は覚えると言うが、思考を覚えるとは言はないところに注目すると見えてきます。思考は身に着けるといいます。知識も身に着けるということができます。

★したがって、「身に着ける」というコンセプトレンズでみると、知識と思考のトレードオフは解決できます。

★今回取り上げた学校は、この知識と思考の「身に着ける」方法が違います。しかしながら、コアコンテンツは、東大の帰国生入試の小論文の発想(結局IBのTOKの発想なのですが)です。最近の公立の高校入試の推薦入試で出題される小論文、特に日比谷の小論文問題は、この発想が埋め込まれています。

★つまり、東大合格者の半分は、帰国生がIBやAレベルで学んできた「身に着ける」コンセプトを持っています。「身に着ける」は、思考コードの縦軸の3つのレベルの進化があります。当然3レベルの「身に着ける」になっているわけです。

★これは、リベラルアーツで身に着けるかグローバル教育で身に着けるかの違いはあります。もっともグローバル教育は、自然とリベラルアーツになるので、結局3レベルの「身に着ける」=リベラルアーツという具合になるのでしょう。

★今回はそこまでは対話していません。対話後、そんなことを思いめぐらしていたので、補足しておきますが、なんでそんな論理が飛躍するような話になるの?と興味をお持ちいただいたら、その前段階の対話をぜひご視聴ください。

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2022年4月 6日 (水)

Gのチカラ(04)聖パウロ学園 体験の新しい概念と対話

★聖パウロ学園は、パウロの森と人間関係社会と1人ひとりの精神(黄金律)を結びつける教育環境にあります。自然を愛でながらも畏敬の念をもちつつ森の体験をし、その体験はPBLやアドベンチャーになり、互いに協力し、対話しながらの教育。これは、実際に森にはいらず、教室で授業をしていても同じです。体験とは、自然と社会と精神を結び付けて、生徒1人ひとりが何らかのケミストリーを起こすことです。そのときの触媒や刺激が対話です。

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(教室の窓越しに見える風景です)

★しかし、問題はその対話の精度があまりよくないと、触媒にも刺激にもなりません。森の体験はああ楽しかったで終わります。人間関係は理解のズレに悩まされます。精神は、不安になったり自信がなくなったり愛されていないという妄想がただよったりします。

★生徒の中には、自分のメンタルモデルがなんであるかわからず、不安になって保健室に立ち寄ることがあります。怪我をしたり、体調が悪かったりするときに保健室に行くケースもありますが、メンタルモデルがわからずに、得体のしれないものに不安がったり恐れを抱いたりして、保健室の養護教諭島津先生に相談に来ることもしばしばです。

★島津先生は、そんな生徒とコーチング的な対話をすることで、生徒自身が自分に気づき、自分が囚われていたものを知り、自ら解放しようというイニシアチブを日々生み出しています。もちろん、度合いが強い生徒は、スクールカウンセラーと相談してごらんとアドバイスもします。

★つまり、リジリエンスを自ら生み出せるかできないかで、保健室コーチングで対応するかスクールカウンセラーによって対応していくかを見極めるのです。

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(通学路、パウロ坂の風景)

★そして、非常に興味深いのは、不安という精神は、体調にも影響を与えます。つまり身体という自然です。そして、その不安という精神と体調不良の身体という自然は、友人関係にネガティブな関係を生み出すこともあります。どれが先かはわかりません。人間関係がズレはじめて、不安が生まれ体調を崩すということもあるでしょう。メンタルモデルが自分の気分に影響を与えるところから始まる場合もあるでしょう。寝不足など体調を崩すところから始まることもあるでしょう。

★いずれにしても、そんな自然と社会と精神の悪循環を好循環に、生徒自らが転換していくきっかけづくりをするのが、島津先生の保健室コーチングです。

★そのような話を聴き、実際保健室を活用して元気になっている生徒を見て、これはPBL型授業でも同じだなと気づいたわけです。そこで島津先生に頼んで研修を実施してもらいました。

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★レクチャー50%、ワークショップ50%のPBL型研修です。普段きめ細かい面談や20%ルールのPBL型授業で創造的な対話をしている先生方が、自分自身の改善点に気づいたり、改めて同僚のメンタルモデルを了解したり、実りの多い80分でした。

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★ネガティブな循環も好循環に転換するには、対話によって結びつきそのものを変容させなければなりません。私たちの対話は、いきなり循環しだすことは難しく、たいていは理解のズレ、つまり循環が滞っているところからスタートします。まずはグッドリスナーとして、どこがズレているのかどこが詰まっているからあるいはどこがつながっていないから循環しないのか見極めるところから対話を始めなければなりません。

★よく「がんばれ」という掛け声はストレスを高めると言われますが、それは、この言葉が循環を促すか切断するか相手の具体的状況やメンタルモデルを見極めたうえでの話でしょう。

★自然と社会と精神の循環体験と対話がマッチングした時に、ケミストリーは生まれ内側から探究心や好奇心が旺盛になり、集中力がでてきます。対話のない体験も、自然のない体験も、精神のない体験も、社会のない体験もありません。この3つの循環と対話の質によってネガティブにもポジティブにもなります。

★教育における体験と対話の何が重要なのか。改めて意味が豊かになりました。

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2022年4月 5日 (火)

Gのチカラ(03)聖パウロ学園 パウロの言動の現代化 才能開花のコミュニティ

★今日本中の学校が、入学式、始業式に向けて、つまり新年度へ向けて準備に取り組んでいます。聖パウロ学園高等学校も日々化学反応を生み出しています。小さな学校がゆえに、教師一人一人がリーダーシップを発揮するし、実際何かしらのリーダーの役割を果たしますから、リーダーフルな雰囲気が一年中こんこんと湧いています。準備と研修がここ数日の動きです。実践知ー理論知ービジョンの循環(カトリック学校ではぶどうの木と呼んでいます)が生まれるのは、このリーダーフル状態が一番ですね。

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★ダニエル・ゴールマンとピータ・センゲの共著の翻訳がでました。お二人のそれぞれの本は、2001年から2007年までHondaと共に取り組んできたPBL活動で随分参考にしました。原本はすでに2014年に出版されていて、2011年に私立学校の仲間と立ち上げた21世紀型教育機構のPBLを創り上げるときに当然参考にし、同機構のセミナーでもこのエッセンスをワークショップで共有もしました。当時の聖学院の内田先生がSELのファシリテーターでもあったということもあります。

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★そんな経緯もあったので、邦訳本のタイトルが「21世紀の教育」となっているのを見て、密かに喜んでいます。

★今、聖パウロ学園で取り組んでいる教育は、研修や授業、面談、行事、部活の表舞台だけではなくそのバックステージを見ていると、この「21世紀の教育」をもはや自然体に行っているなあとつくづく思うわけです。そもそもパウロ学園は21世紀型教育機構の加盟校ですから当然と言えば当然ですが。

★新年度は、組織としては、教科横断チームとして「グローバル教育部」を新設。今まで「グローバル部」はあったのですが、それを英語的側面だけではなく、教科横断的視野、多角的視点、黄金律を織り込んだ発想をもつグローバルリーダーが育つ教育環境を創ろうというわけです。部長は主幹教諭の大久保先生が担い、研修のプレゼンで、そのことをコミットしていました。

★もう一つの新設部署は「企画戦略室」です。こちらは業務横断的な部署です。学内の年間スケジュールや臨機応変な変更ーたとえば、パンデミックがひどくなった時に、オンライン授業を速やかに始動したりー段取りを組んで実施したりするには、縦割りの仕事では瞬時にできません。それに、多様な学内外の情報収集とデータ分析をするデーターサイエンスをしてくれます。小さいがゆえにデジタル化は重要です。私立学校は経営と教育は両輪ですが、その調整と進化を進める具体的なチームが必要です。室長は入試広報部長の伊東先生が担い、そのことについてコミットしていました。

★研修というと、ワークショップと思われがちですが、スピーチだけとワークショップだけと日にちを替えて行っています。普段から先生方は対話していますから、日々グループワークやワークショップは行っているので、研修は各部署のリーダー1人5分のスピーチによるコミットメントを中心にするものと普段扱わないトピックはワークショップで研修するわけです。

★こう述べると、役割分担ができているように思われるかもしれませんが、ツリー構造にはなっていません。何せスーモールスクールですから教師の人数は少ないのです。それでいて、業務は学校法規に準じて行うものは、他校といっしょです。したがって、セミラティス構造になっています。

★みなマルチプレイヤーです。おのずとナチュラルなリーダーフル状態になるわけです。

★しかし、里山と同じで、ナチュラルな循環構造はマネジメントしないと崩れていきます。新年度は、このマネジメントの方法をビヨンド ピーターセンゲでいけるように稼働し始めました。SEL的な要素についてはパウロ学園は、黄金律の浸透でノーマルになっています。あとはシステム思考の包摂なのですが、その導入はパウロの言動の現代化によって行っていきます。

★ルターや内村鑑三もパウロの精神を大事にしました。米国の組織開発や人材開発にもパウロの精神は浸透しています。GRITなんていうのはパウロの精神がスーパーモデルです。ただ、パウロの言葉をただ読むだけでは浸透しません。現代化が肝です。現代化とは経験化と言ってもよいかもしれません。

★これによって、ただでさえ、才能開花の学園ですから、より才能開花スクールとなると思います。リーダーフルな先生方の息吹が生徒1人ひとりの奇跡を生み出す環境を創っています。新年度どんな奇跡が生まれるのか密かにワクワクしています。先生方と共に歩んで立ち会いたいと思います。

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2022年4月 3日 (日)

Gのチカラ(02)洗足学園 東大合格者数20名

★ホンマノオト21の3月のアクセスランキングを見ていてあれっと感じたのは、2018年9月21日 (金)の記事「洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。」が33位に入っていることでした。3年前以上の記事ですから、何か話題になっているのだろうと、この時期ですから東大合格者数を調べました。すると、20名ということがわかりました。それは話題になるはずです。

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★この記事を書いたときは、まだ新型コロナウィルスの外部環境の変化を考慮に入れていないので、東京オリンピック・パラリンピック後の中学受験人口の予想は外れていますが、洗足学園の東大の合格人数が伸びるであろうことは予想通りでした。

★洗足学園のグローバル教育の破格さが、大きな理由だと書いていますが、その通りですね。

★最近の同校のサイトを見ると、各種模擬国連や研究論文などで生徒が活躍している様子がわかります。また、それをささえる2日間にわたる教員研修のワークショップの様子からも、自信をもちつつも油断することなく進んでいることが伝わってきます。

★グローバル教育とは、英語教育や国際生教育のみならず、自然と社会と精神の循環を研究するグリーン化、そして予想不能な事態にもGRITの精神で立ち向かう勇気が含まれています。つまりGのチカラを育成する教育です。STEAMやPBLは当然Gの力を生み出す学びの環境です。

★この意味のGの力をたっぷり生み出す洗足学園の教育。2023年の中学入試においても注目されるでしょう。

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2022年東大合格者数から見える「東大と私立学校の矛盾を乗り越える希望?」

★サンデー毎日創刊100周年記念号の学校別の東大合格者数のデータから20位まで表にしてみました。受験業界では、例年通りということなのでしょうか。毎年風物詩のようにサンデー毎日で公表されるデータの背景には何があるのでしょう。世間的にはほとんど興味と関心のない話ですが、≪私学の系譜≫から見ると、結構重要なので、少し触れます。

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★開成とか日比谷、麻布が毎年のように上位にランクインしているのですが、これは、明治の近代教育が誕生して以来、ある意味変わらないシーンです。旧制一高ー東京帝国大学という流れがあって、このトランジション(移行)によって輩出されたのは、日本近代を形成した多くの人物です。思いつくまま並べてみると、夏目漱石も芥川龍之介もそうです。澤柳政太郎、天野貞祐、斎藤茂吉、川端康成、南原繁・・・。Wikipediaで調べれば、ものすごい数です。

★この旧制一高にたくさん合格させる学校が、開成や日比谷、麻布だったわけです。旧制一高ー東京帝国大学は、ざっくりいえば今の東京大学のことですから、今回の結果も昔から変わらないわけです。

★一見どうでもいような話なのですが、当時、東京の私立学校から東大に進学するとそこに矛盾がうまれたのです。というのも、開成の初代校長の高橋是清は、開成から東大にたくさん入れて、正しい官僚制を行えるようにしようとしたと言われています。

★東大自身、そのような面を持っている反面、戦前はそのような普遍主義的な啓蒙主義を捨て、社会進化論的発想で優勝劣敗教育システムを推進した時期もあったのです。開成から東大に入った、石川角次郎はすぐに反論し、反論しているだけでは修正できないと、東大を去り、アメリカに留学。帰国して聖学院の初校長になります。

★戦後は南原繁や矢内原忠雄が、内村鑑三や新渡戸稲造の薫陶を受けていて、高橋是清や石川角次郎とシンクロするような教育政策を推進します。その象徴が戦後教育基本法の作成と成立です。多くの私学人がかかわりました。

★彼らは多くが内村鑑三、新渡戸稲造の薫陶をうけていました。しかし、この二人は今の北海道大学である札幌農学校に進み、東大ではありません。ただ、旧制一高とはかかわりを持っていました。

★二人は、この矛盾の中でどう乗り越えるか時代に翻弄されながらも、思想を貫いていきました。内村鑑三は最後の講和で、「パウロの武士道」を語り、二つのJの考え方にこだわり続けました。新渡戸稲造もあの「武士道」を書きました。エジソンが、平和を考えるために、「武士道」を座右の銘として愛読したほどでした。

★≪私学の系譜≫の第一世代は、福沢諭吉、江原素六、新島襄ですが、東大出身者ではないし、彼らの影響を受けた第二世代の内村鑑三、新渡戸稲造も東大出身ではないのです。しかし、石川角次郎のように、東大に入るけれども矛盾に直面し、米国留学するというケースもあり、矛盾をなんとかしようという東大出身の私学人が多数でます。

★資本主義と民主主義の矛盾をはらみながら、それを軌道修正しながら近代は進み、いまだに未完であると語られるわけですが、その矛盾に気づきそれを解決するように思考し活動する動きが、私立学校が東大に多数合格させる歴史的遺伝子、つまり≪私学の系譜≫が続いていると信じたいわけです。

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★東京大学の教育社会学者の本多由紀氏や中村高康氏は、国全体に多大な影響を与える巨大な学校システをの批判的に研究し、特に能力主義や学歴主義を見える化しています。学問の自治や自由があるとはいえ、その矛盾を発生させる拠点であり、同時にその矛盾を解決しようという学問の拠点でもあるヤヌスの側面をもった東大に所属しています。

★もしこのヤヌスの顔のうち≪私学の系譜≫的側面を失われたとき、日本社会はどうなるのでしょうか。垂直的序列化と水平的多様化の両方がいつもトレードオフ状態になっているのが、現状です。

★ほかの国立大学の合格状況は、20位以内の8割弱が私立学校だということはありません。≪私学の系譜≫の影響力を維持できるのは、良し悪しは別にして、東京大学だけです。ここに希望があると思わなければどこに希望があるのだろうか。。。とふと思うのです。

★とはいえ、この20校の合格者数で、東大入学者3084名の43%を占めています。このような偏りは、能力主義を生み出す危険性があるのは説明するまでもないでしょう。

★私立学校は、高橋是清のように東大に進めることによって近代の正義を保守するのか、内村鑑三や新渡戸稲造のようにグローバルな思索と行為で近代の正義を保守するのか。東大に私学が進路を進める場合、このような理念やマインドを忘れなければよいなあと思うわけです。

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2022年4月 2日 (土)

Gのチカラ(01)GLICC代表鈴木裕之氏 eduJUMP! に登場!

★2089年から21世紀型教育を見通すと、これからは3G×Dの時代であることは間違いありません。3G×Dとは、グローバル・グリーン・グリット・デジタルということです。Dは3Gの中内包されていますから、Gのチカラと総称してよいでしょう。Gのチカラは21世紀型教育の駆動力です。

このGのチカラを育成している21世紀型学習塾GLICCを経営しているのが鈴木裕之代表です。21世紀型の学習塾を標榜している唯一の学習塾です。そして、Gのチカラが作用している多様な拠点を取材している岩辺みどりさんが、鈴木さんにインタビュー。その記事がeduJUMP!に掲載されました。

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★記事のタイトルは「インター生、帰国子女…… グローバルキッズの中高選び」で、グローバルキッズが日本社会においてどのような中高選択ができるか、最近の潮流の情報が語られている貴重な記事です。

★さらに、まだ見え隠れして前面にはでていませんが、あるインパクトが内包されている記事です。記事執筆の岩辺みどりさんのプロフィールは、同記事でこう記載されています。

「一橋大学社会学研究科地球社会専攻修士課程修了。日経系列の出版社で雑誌編集記者とし て経験を積んだ後、退社し、独立。学生時代にオーストラリア、アメリカ、イギリスなど に留学し、20カ国以上を旅する。多様性のある社会をテーマに、ビジネスからライフスタ イル、教育まで幅広く取材、執筆する。二児の母。」

★岩辺さん自身グローバルキッズの先駆けだったのです。Gのチカラの側からみると、日本の強みも弱みも明快に見えます。岩辺さんは、その弱みを強みに転換すべく、いろいろ仕掛けています。

★その一環として、21世紀型教育機構の加盟校も注目し、私立中高一貫校のアップデートインパクトを生み出す記事も幾つか手掛けています。

★しかし、今回は、学校以外にもそのような転換拠点(トランスフォームセンター)を見出したようです。

★さりげなく、国際生・帰国生が進む中高のカテゴリーがデザインされた図が掲載されていますが、これはグローバルキッズの選択カテゴリーと置き換えたらどうなるかという話が背景にあります。

★コロナ、ウクライナ、フクシマが象徴する転換への痛みがニューノーマル時代の生活と密着している今日、国際生・帰国生<国内生という既成概念は崩れています。もはやZ世代はグローバルもデジタルも当たり前です。これからの中学受験生はα世代ですが、この世代はGのチカラが当たり前の世代です。

★ということは、国際生、帰国生、国内生はすべてグローバルキッズとして包摂されます。

★しかし、このような新概念を今の中高の制度カテゴリーでは、収まり切れません。

★というわけで、いずれ文科省あるいは大学は、公立学校と私立学校以外に、インターナショナルスクールを1条校に相当するとみなすカテゴリーを作成せざるを得なくなるでしょう。

★小学校5年、6年で英語を教科化したがゆえに、そうなるのは、文科省も大学も織り込み済みなのかもしれません。すでにTPPの議論が盛り上がっていた2011年ごろから、その目論見はありましたから、ようやくという感じです。

★実際イギリスのパブリックスクールやインターナショナルスクールも日本にやってきています。

★従来は日本の大学を考えるとインターナショナルスクールから日本の中高という流れにならざるをえなかったのです。もしインターナショナルスクールからIBのディプロマなどで大学に行くとなると、それは誰にでも行けるわけではない狭き門でもあります。

★ところが、今は多くのグローバルキッズが英語でも学べる拠点の一定量を欲求しています。公立学校、私立学校、インターナショナルスクールとはまた違うGコミュニティーが出現するでしょう。その一つがGLICCです。GLICCは、学習塾ですがイナターナショナルスクールの機能も活用できるのです。

★多様性の時代とはそのような流れが生まれるものですね。GLICCに限らずどんどん生まれてくるでしょう。

★岩辺さんの眼はそのようなオールタナティブなG拠点を見通しているわけです。

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教師のチカラ(01)聖学院の本橋先生とOB内田先生 教育アーティスト

★昨日、聖学院の本橋先生とOBの内田先生(2年前までは聖学院で本橋先生方と思考力テストをはじめともに教育に携わっていた。現在みずき野幼稚園理事長)と対話しました。至福な時間でした。ありがとうございました。なぜ至福だったのか。構えないで自然にかつ本質的に生徒の存在の価値が豊かになっていく軌跡について対話できたからです。

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(GLICC Weekly EDU 第73回「聖学院中高ーグローバル思考と数学的思考から生まれる賜物:本橋真紀子先生との対話」)

★それでいて、ち密な教育デザインをしているお話は圧巻でした。そして、そのデザインの要所要所に必ず生徒との化学変化が起きている具体的な状況が見通されています。

★内田先生は、今回のGWEで本橋先生が今年卒業生を出した話もするというFacebookでの告知を読んで、自分自身も2年間かかわったので、どんな対話になるのか楽しみにしていますとコメントを入れてくれました。それに対して、だったらサプライズゲストとして登壇してくださいと頼んだところ、二つ返事で、少しだけならと。

★そして、少しだけではなく、最初から最後まで対話をしてくださいました。本橋先生とやはり共感したために、途中で抜けることはできなかったそうです。

★ご視聴いただいた方は、この共感を「共感」していただけると思います。このような共感を広げられる教師は、なかなか得難いわけですが、聖学院には集結しているというのが、今回よくわかりました。

★最後のシーンで、鈴木さんが、お二人はアーティスであることに気づいたとコメントしました。ここでは詳しくは述べられませんから、ぜひご視聴いただきたいのですが、聖学院の教師は、教育アーティストだという話になったんだと思います。

★今回の話題の1つM型思考力入試問題も、実はアートの賜物だったということでしょう。ぜひご視聴いただきたいと思います。

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