2089年から考える21世紀型教育(04)大学地域連携学会と聖パウロ学園
★今月3月5日、大学地域連携学会の第1回大会が開催されました。日本大学文理学部、コミュニティ人間科学部、医学部などの教授陣が多くの大学や地域、学校を巻き込んで新しい学会を立ち上げました。多様な領域における教育の連携を大学と地域で実践し、形式知として理論化し、それをまた現場と共有するという動きになると思います。学校は、地域の文化やリスクマネジメントの1つの拠点となります。
★したがって、聖パウロ学園も、日大文理学部の教授陣と学生・大学院生と毎年年間通じて連携をしています。本学園には、全日制とエンカレッジコース(通信制)の二つの学校があり、濃密な連携をしているのはエンカレッジコースです。
★エンカレッジコースは、文部科学省が教育行政によって、汲み取ることのできない生徒の才能を独自に受け入れる場です。その割に助成金が少ないのはこれからなんとかしなければなりませんが、文科省にあまり頼らず、コミュニティ形成によってそこは突破口を見出したいと思っています。
★すでに、エンカレッジの先生方は、その突破口を開き、多様な文化及び芸術活動を生徒と共にしています。おそらく、日本の普通教育では見えない本質的な教育が行われています。そこには希望のシーンがあります。
★そのシーンを生み出すときに、日大文理学部の方々との連携は欠かせません。連携の基礎はインターンシップで、文理学部の学生がエンカレッジコースの授業に参加し、生徒と教師の理解形成、学びの共有を共に学んでいます。そのプロセスは、学生のみならずいっしょにかかわる教師のプロフェッショナルなマインド、スキルをアップデートすることにもなっています。
★また、そのような連携ができる組織開発のバージョンアップにもつながっています。
★そして、非常に濃密な教師と人間の関係の生成プロセスを、実践知で終わらせることなく、理論知に結実するわけです。その結実の成果発表の場の1つが、今回の大学地域連携学会の役割でもあります。
★聖パウロ学園の教師も授業だけではなく、学校心理士や大学院でのかかわりなどを通して、自分たちが形成してきた実践知を自ら理論知として再構築して論文で発表する機会も得ています。
★エンカレッジでの教育は、認知部分のみならず、教育心理、教育医療、スポーツ教育、ボランティア、自然都市デザインなど言語以外の表現方法によるマルチプルインテリジェンスに広がっています。その意味でも、この大学地域連携学会の幅広い領域の連携の学知との出会いは大切です。
★今回も「大学地域連携学研究」という論文誌に、聖パウロ学園の阿部滉先生が、日大文理学部の伊佐野龍司先生と協働して作成した論文が掲載されています。
★大学と学校の組織開発や人材開発の連携に関する文部科学省の制度変遷とこれからの展望について書いています。お二人の関心は、その制度の中で、いかに生徒の内省的発達を見出せるかという点でしょうから、今後もっと具体的状況における実践知のシステムと理論知としてのシステムのスクランブルの実績が発表されるでしょう。
★すでに、カナダでは、各州の拠点大学と地域の多様なコミュニティが連携し、グローバル市民におけるコミュニティシップ形成が日常になっています。そのコミュニティの1つとして、学校もあり、インクルーシブでハイレベルな学びをPBL的な手法で、つまり体験型対話と言語だけではなく、多様な身体パフォーマンスも活用しながら水平的多様性を重視した教育が展開し、その学びは、学校→地域→州→グローバルと循環するようになっています。
★イギリスや米国、IBなどのモデルが日本では話題になっていますが、カナダの大学とコミュニティの連携によるグローバル市民形成のモデルも有益でしょう。しかし、何より、そのようなリサーチを積み上げながら、日本独自の活動も重要です。日本大学が中心になってつくっていく大学地域連携学会に期待がかかります。
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