2089年から考える21世紀型教育(10)クリティカル&クリエイティブシンキングがカギ 入学時偏差値が低くても、大学に合格するケースはたくさんある❷
★クリティカルシンキングもクリエイティブシンキングもリベラルアーツの中にはいっていて昔からあるから新しいものではないと語る方もいらっしゃいます。まさに、その通りですね。ただ、昔々のリベラルアーツは、すべての人々のお話ではなかったのです。たとえば、かつて麻布の氷上校長先生が、新教養主義と名付けて土曜日の講座を始めようとしたときに、学内で、ものすごい議論がありました。結果的に今、土曜日は、「教養総合の時間」となっていますが、立ち上がり当初は、賛否両論の議論があったのです。
(ハイデガーは、もしかしたらタイプⅣだったかもしれない。彼に限らず、アインシュタインなど世界に影響を与えた人々は、その可能性がある。東大の個別入試では合格しないけれど、東大の帰国生対象の小論文はクリアした可能性大である)
★21世紀型教育機構も、リベラルアーツの現代化を進めています。20世紀型教育は、中等教育段階で、リベラルアーツを授業の中で展開することは稀でした。灘の伝説の教師橋本武先生のような授業をどこの学校でも行っていたということはないでしょう。もちろん、氷上校長の授業もリベラルアーツの要素をいれていましたが、それもレアケースでした。
★しかし、クリティカルシンキングとクリエイティブシンキング(C軸思考)はリベラルアーツの領域だという認識が広まってくれると、20世紀には広く浸透していなかったという意味でC軸思考も包摂した新しい学びが展開することによって、リベラルアーツが授業の中で展開していくことになります。
★これは、麻布でさえも、議論になったくらいですから、20世紀末までは、広く行き渡っていた発想ではないのです。行っていたとしても、一握りの高偏差値校が実施していたというのが本当のところでしょう。前回ご紹介した日比谷高校の小論文の問題を見ればそれははっきりしますね。
★ところが、2014年以降中学入試では聖学院に代表される思考力入試のような新タイプ入試、高校入試の推薦入試、大学入試における総合型選抜(当時はAO入試)というC軸思考を織り込んだ入試問題が注目を浴びるようになってきたのです。偏差値が高いかどうかは関係ない世界です。
★募集人員でいえば、どれも20%程度ですが、大学入学ゾーンがA軸思考一色だったのに、そこに20%C軸思考の要素が生まれたのです。しかもこの20%は、だれにでもチャンスは開かれています。もちろん、高偏差値の大学の一般選抜も開かれていますが、結果的には、高偏差値10%の生徒で占められてしまいます。ところが、このC軸思考の生徒20%は、偏差値が低くても実際に合格を勝ち得る確率が高いわけです。
★なぜなら、C軸思考は、人生の存在価値がベースになっていますから、偏差値の高低にかかわりなく、C軸思考を身につけることは可能です。
★ところが、この人生の存在価値を誰でも持っているのですが、C軸思考を身に付けていないために、その価値に気づかない生徒もいるのです。一般選抜では、タイプⅡやタイプⅢの生徒もいて、合格します。一方タイプⅣは、一般選抜ではなかなか難しいのです。
★一般選抜であれ、総合型選抜であれ、大学にとって(あくまで大学にとって)理想型は、タイプⅠの生徒でしょう。しかし、実際には少ないですね。さて、大学はこの事態をどう考えたのでしょう。いうまでもなく、今や80%以上の大学が総合型選抜を実施しているということは、タイプⅣのように、偏差値という目では見えない人生の存在価値をベースにC軸思考を有している生徒を受け入れようとしているわけです。
★これが、「高校入学時は大学入学者ゾーンにいなくても、卒業時に、大学入学者ゾーンにシフトする生徒はたくさんいる」という事実を構成しているのです。偏差値それ自体は、実は卒業時にそれほど伸びていなくても、総合型選抜によってDソーンシフトが可能なわけです。
★それを偏差値が低いのに受かるのは、大学が青田買いしているからだという人もいるのですが、偏差値で見えない部分を評価する多面的評価をしているわけですから、別の評価レンズでは、実に高いわけです。
★立教大学の中原淳教授をはじめ多くの見識者が、このタイプⅠとタイプⅣの生徒が大学や社会でプロジェクトチームやコミュニティにおいて大いに活躍するという調査をしてきました。このタイプⅠとタイプⅣの生徒のように、C軸思考を身につけていくキャリアデザインを「トランジション」と呼び、その2タイプの人生の痕跡である「トランジション」研究がこれから重要になってくるでしょう。なぜなら、この「トランジション」によって、ライフシフト時代を乗り切る人生の存在価値を広め深めることができるという結果になりそうだからです。
| 固定リンク
« 2089年から考える21世紀型教育(10)クリティカル&クリエイティブシンキングがカギ 入学時偏差値が低くても、大学に合格するケースはたくさんある❶ | トップページ | 2089年から考える21世紀型教育(11)聖学院 本橋先生に聴く 新しいトランジション M型思考力入試も一つの起点 »
「創造的才能」カテゴリの記事
- なぜドネラ・メドウズか?生活市民一人ひとりが参加するコミュニティ多様性のきっかけをつくったから。(2022.08.18)
- SDGsによる認知率と内容理解率のギャップモデル ハートフルからブレインフルへ(2022.08.17)
- 日経新聞 シリーズ「教育岩盤」始まる(2022.08.16)
- 予備校のビジネスモデル岐路~時間の個性化の時代(2022.08.15)
- 21世紀型教育研究センター クルックフィールズで2050年からシナリオプランニング(5)児浦モデル:新しい学びのデザインをメタデザインするWS(2022.08.13)
「21世紀型教育」カテゴリの記事
- なぜドネラ・メドウズか?生活市民一人ひとりが参加するコミュニティ多様性のきっかけをつくったから。(2022.08.18)
- グローバルイノベーター大久保先生に会いに行きました。(2022.08.17)
- SDGsによる認知率と内容理解率のギャップモデル ハートフルからブレインフルへ(2022.08.17)
- 日経新聞 シリーズ「教育岩盤」始まる(2022.08.16)
- 予備校のビジネスモデル岐路~時間の個性化の時代(2022.08.15)
「中学入試」カテゴリの記事
- SDGsによる認知率と内容理解率のギャップモデル ハートフルからブレインフルへ(2022.08.17)
- 日経新聞 シリーズ「教育岩盤」始まる(2022.08.16)
- ウェルビーイングを今の教育で持続可能にするためには、ウェルビーイングをリフレーミングできるかどうかだが。(3)イノベーション行為と制度設計(2022.08.10)
- ウェルビーイングを今の教育で持続可能にするためには、ウェルビーイングをリフレーミングできるかどうかだが。(2)自由とお金(2022.08.08)
- ウェルビーイングを今の教育で持続可能にするためには、ウェルビーイングをリフレーミングできるかどうかだが。(1)メンタルモデルの場合(2022.08.07)
「創造的対話」カテゴリの記事
- なぜドネラ・メドウズか?生活市民一人ひとりが参加するコミュニティ多様性のきっかけをつくったから。(2022.08.18)
- グローバルイノベーター大久保先生に会いに行きました。(2022.08.17)
- SDGsによる認知率と内容理解率のギャップモデル ハートフルからブレインフルへ(2022.08.17)
- 日経新聞 シリーズ「教育岩盤」始まる(2022.08.16)
- 予備校のビジネスモデル岐路~時間の個性化の時代(2022.08.15)
「PBL」カテゴリの記事
- なぜドネラ・メドウズか?生活市民一人ひとりが参加するコミュニティ多様性のきっかけをつくったから。(2022.08.18)
- グローバルイノベーター大久保先生に会いに行きました。(2022.08.17)
- SDGsによる認知率と内容理解率のギャップモデル ハートフルからブレインフルへ(2022.08.17)
- 日経新聞 シリーズ「教育岩盤」始まる(2022.08.16)
- 予備校のビジネスモデル岐路~時間の個性化の時代(2022.08.15)
「高校入試」カテゴリの記事
- グローバルイノベーター大久保先生に会いに行きました。(2022.08.17)
- SDGsによる認知率と内容理解率のギャップモデル ハートフルからブレインフルへ(2022.08.17)
- 日経新聞 シリーズ「教育岩盤」始まる(2022.08.16)
- ウェルビーイングを今の教育で持続可能にするためには、ウェルビーイングをリフレーミングできるかどうかだが。(3)イノベーション行為と制度設計(2022.08.10)
- ウェルビーイングを今の教育で持続可能にするためには、ウェルビーイングをリフレーミングできるかどうかだが。(2)自由とお金(2022.08.08)
「聖パウロ学園」カテゴリの記事
- グローバルイノベーター大久保先生に会いに行きました。(2022.08.17)
- 日本私学教育研究所 新たな時代の働き方改革を目指して~組織マネジメントと法務の視座(2022.08.06)
- 現代化リベラルアーツ(2)いまここで体験は壮大で問いはコンパクトで(2022.08.03)
- 現代化リベラルアーツ(1)志望理由書や面接、小論文の肝(2022.08.02)
- 聖パウロ学園 カトリック学校対象の大学入試に向けての講座(了)根源的なるものと自己~モジュール型システム思考(2022.08.01)
最近のコメント