学校が変容するというコト(24)私立学校の存在意義をもっと多角的なデータで検証したほうが良い 平方先生との対話
【前回の続き】
★平方先生は、私立中高一貫校は時代の精神を読み解き、先見性・先進性を発揮してきたわけだが、その根拠となったデータを提示してこなかったかもしれないと振り返ります。なんだかんだといって、受験業界と同じ種類のデータしか創ってこなかったかもしれないと。もちろん、助成金データなどの経営的データは、受験業界にはないデータで、貴重だが、先見性・先進性を根拠づけるデータを引用しないできたのではないかと。教育内容に関連するデータとしては、結局は偏差値と大学合格実績のデータが中心で、それ以外のデータを活用して、語ってこなかったと。それゆえ、私立学校側の教育研究所として、多角的なデータをますは活用しようと考えているということです。
★たとえば、戦後から2020年までの貿易輸出入額の推移のデータを見ると、1980年代から私立中高一貫校が人気が出たことがよくわかります。また、1998・1999年と2008年と2014年の3つの時期で私立中高一貫校の出願動向が変わるのもよくわかります。
★バブルがはじけて産業の空洞化が始まる時期、リーマンショックという金融危機、TPPに参加を迫られるグローバル危機です。
★産業の空洞化によって、日本のもの作り産業はダメージを受けました。その原因の一つは、経済の空白による金融政策のまずさにありましたから、私立中高一貫校に通わせる保護者に直接的にダメージを与えました。
★さらにITバブルがはじけ、グローバル金融の危機のダメージは、前回とは違い一部の大手企業だけではなく、日本の大企業全体に影響を与えました。ここから日本の産業はものづくりというハードパワーからソフトパワーに転換が迫られました。IT財で優位に立たなければ、輸入超過に陥ります。
★そして、2014年。先進諸国の中で、GDP成長率が停滞においこまれた日本が、TPPに本格的な対応に迫られます。これによって貿易のフラット化、ファスト化、フリー化が進むことになります。
★1989年のベルリンの壁崩壊後に、日本のバブルも崩壊し、グローバルな世界での経済活動に日本は突入しました。労働集約的な日本経済では、資金集約型グローバル経済には太刀打ちできないという経験を幾度か経験します。
★この渦中にいたのは、私立中高一貫校に通わせる保護者です。経済の空洞化は、海外で仕事をする機会を拡大し、そこで活躍する方々がその保護者だったのです。帰国生・国際生入試を各校が行うようになったのには、このような理由があったわけです。
★しかも、ハードパワーからソフトパワーに移行していた渦中にいたわけです。グローバル企業や仕事で活躍している保護者は、英語とICTの重要性を痛いほど理解しているのです。それから、グローバルコミュニケーションで大事なことは、もの作り産業が世界で優位だったころとは違い、ソフトパワーで優位に立つには、ルールが複雑になり、知財や人権など気遣いをしなければならなくなりました。いわゆる強欲資本主義の反省が21世紀に迫られ、倫理的な資本主義とか創造的資本主義が、世界経済フォーラム(ダボス会議)で議論され、パンデミックショックで、グレートリセットとまで言われる時代になりました。
★こういう流れの中で、脱偏差値という発想や海外大学進学という選択肢を増やす動向、グローバル教育、イノベーション教育に舵をきった21世紀型教育が注目されるようになったのは必然だったのです。
★それなのに、この21世紀型教育では、大学合格実績が出せないなどと当初揶揄していたグループは、実にドメスティックな感覚で、この世界貿易の潮流を無視した、つまり保護者が抱えている課題意識に全く応えていなかったということが、改めて了解できます。
★もはや、そのような暴言を吐く人はいないし、まだいたとしても、優先順位はその方々への対応ではありません。大事なのは今ここでと今後です。国際秩序が揺らいでいます。グローバルドミノ危機に直面しています。これを乗り越えるには、クリエイティブクラスのみならずケアリングクラスが重要な意味を持ってきます。再び建学の精神がこのような新しいグローバル人間力を育成する駆動力を発揮する時代になりました。勇気と正義と人類愛とプラグマティックなマインドをもった人間力です。
★sのために、今後平方先生は、日本&東京私学教育研究所において、多角的なデータを読み込みながら、そのファクトに基づき時代の要請や時代の精神を読み解いていくと語っています。もちろん、従来行ってきた保護者からの私学のイメージについてのアンケートなどは、市場ニーズのマイニングとして必要であると語ります。
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