2022年教育動向(19)聖学院と工学院 生徒を集める2つのポジショニング 突出型と共感型
★中学入試がひと段落したとホッとしている間もなく、今週高校入試。雪が心配ですが、互いにメールで励まし合いながら、聖学院の広報部長・国際部長・21教育企画部長それからとにかくマルチペルソナの児浦先生と工学院の教務主任で共感的コミュニケーションベースの田中歩先生と情報交換。詳しくは高校入試終了後にということなので、いただいたメールから推理したこと、つまり独断と偏見をメモしておきたいと思います。一部は、前回ご紹介した新渡戸文化の先生方と対話したことも含まれます。
★聖学院も工学院も上記の図のNew Value School Zoneに入っているのは言うまでもありません。そして、今年の入試は、両校とも出願総数前年対比は、聖学院113%、工学院154%と受験生が集まりました。受験率の平均も聖学院は68%、工学院は62%とかなり高いです。
★児浦先生と歩先生は、21世紀型教育センターのリーダーで、アプローチは違いますが、破格の21世紀型教育を推進し、若手教師をSGT(スーパーグローバルティーチャー)に育成するセミナーを開催しています。
★New Value Schoolを生み出すプロフェッショナル教師です。
★そんな学校ですから、中学入試では注目を浴びているわけです。ただ、その広報戦略は違います。今年は聖学院は、突出型のポジションで広報活動をしました。工学院は共感型のポジションで広報活動をしました。
★ところが、面白いことに、聖学院は3年くらい前は、ポジションニングは共感型でした。工学院は突出型です。
★聖学院ははじめは共感型で、New Value School支持者のみならずそうでないソーンの価値観の受験生・保護者にも目配り気配りしていました。その過程で、思考力入試という強烈な理念メッセージの新タイプ入試で、2科4科で受験する生徒にも、その理念を共有することに成功しました。それゆえ、分厚いファーン層をアセットしたのです。
★ですから、その層を基盤に、全天候が広報ではなく、突出型ポジショニングで生徒募集ができるようになったのだと思います。聖学院理念キャピタルとなったわけです。
★工学院は2014年のプレ21世紀型教育改革から理念先行の突出型ポジショニングで広報活動を踏ん張ってきました。立ち上がり当初からインターナショナルコースをぶち上げ、それは着実に成果をあげましたが、破格過ぎて、英語で入試をしない受験生には、遠くの存在でした。つまりアセットの蓄積が少し足りなかったのです。理念キャピタルが有効にならなかったのです。
★ところが、このコロナ禍で、オンライン授業をベースにICT教育の理解が受験市場で理解されるようになったのを機に、いったんNew Value School市場以外の市場の支持者の共感を得る広報活動に転換しました。それが今年の人気爆発の大きな理由でしょう。つまりファン層アセットを拡大したのです。
★一年単位で見ると、ポジショニングは2つあるように見えますが、それはファン層の厚さによってポジショニングを変えるというのが、広報活動のよき戦略なのかもしれません。つまり、これは新しいBS(バランスシート)の考え方で、今のところ、教育領域のBSです。しかし、これがライフシフト時代の各人のための新たなBSになります。ビジネスBSもやがて新しいBSにシフトするかもしれませんが、日本は産業構造上なかなか難しいですね。
★それゆえ、海外大学進学準備や総合型選抜準備に両校は力を入れています。このトランジションは、新しいBS活用によってライフシフトに対応できます。勤務校も総合型選抜準備に力を入れているのはそういうわけです。もちろん海外大学に進学する生徒もいます。
★ともあれ、両校は、この両方のポイショニングを往復することによって、本物のファン層=ファミリーを拡大していっているんだと思います。そのファミリーは多様性が保証されています。
★もしこれをどちらかにすると、ある危機が訪れます。突出型を続けすぎると、ファン層が固定します。共感型だと、やはりファン層が固定します。
★突出型だけだと先細りになります。共感型だと塾歴社会の危機があります。つまり受験生がある塾生で占められてカリキュラム理念が右に置かれます。
★マーケティングは突出軸と共感軸、つまりクリエイティブキャピタルと無形アセットのという新しいBS関数でマネジメントしていくというのが、どうやら持続可能性を生み出すということです。
★ただし、これは中学入試の話で、高校入試では、New Value Schoolゾーンにいる場合、共感型でいくしか今のところないのです。市場自体がまだNew Value Schoolの無形アセットを欲していないからです。
★工学院は聖学院と違い、高校入試の定員も多いので、その部分は、私の勤務校(高校だけの学校)と同じです。
★しかし、聖学院はGICという突出したクラス1つ分の募集ですから、共感型である必要はないのです。新しい高校入試の広報戦略のモデルになる可能性大です。
★New Value Schoolの高校入試戦略は、聖学院の強烈なアテンションによって、高校入試市場において、無形アセットを欲している潜在的ニーズを顕在化する新たな展開が開示されます。
★しかも、聖学院は23区にあります。工学院と私の勤務校は都下にあります。マーケットの性格が全く違います。つまり、アセットの質が違います。
★中学入試は、全国の同学年の10%の生徒が通う特異点マーケットです。高校入試は残りの90%という標準マーケットです。
★その標準マーケットの価値意識の転換ができたら、そして中学入試がその転換の先駆け者であるなら、日本社会は大きく変わります。
★ある地域だけでは、全体を動かすことができません。これからも協働をお願いいたします。
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