2022年教育動向(14)聖学院の思考力テストが、学びの質を変える 「りんごの世紀」
★聖学院のサイトによると、今年のM型思考のモチーフは「雲」。グローバル思考力入試は「くだもの」だったようです。「雲」であれ、「くだもの」であれ、共通点は、センス・メイキング。既存の事実の背景に隠されている関係をたぐりながら、新しい知識を創る。新しい知識を創るということは、その時点で世界をデザインするということです。既存の世界を経めぐり、そこに自分の存在がかかわるオリジナルな意味を見出し、それを多くの人びとと分かち合う世界作り。
(アーティストnanaに油絵「りんごの世紀」を描いてもらいました)
★知識と思考。よく鶏が先か卵が先かに近い議論をする人々がいますが、知識は思考の物象化(モノ化)であり、思考は物象化された知識を拓き(コト化)、新たな概念を創る作用です。どっちも必要なんだけれど、誰でも新しい知識を生み出しているというところが、一般には忘れ去られています。その生徒1人ひとりのセンス・メイキングのあり方こそ、才能です。
★その才能は、しかし、生徒は自分自身大発見だとは思わず、一瞬にして忘れてしまいます。また、そんな思い付きではダメだ、ちゃんとその知識の定義を確認しなければという通俗的言説で、消し去られます。
★何人かの人々は、こだわり、誰が何と言おうと追究します。そしてその才能がやがて認められます。生前は無理でも死後にということも少なくありません。こうして、大多数の場合は、無形のアセットは、気づかれないまま埋もれていくのです。もったいないですね。
★ところが、聖学院の思考力入試は、その無形のアセットを大事にします。多くの先生方がテストの最中に生徒の言動を観察します。どんな無形のアセットを生み出しているのかと、そして、そのアセットをテコにどんなクリエイティブなキャピタルをプレゼンするのかと。
★受験生は、入学前から、その自分の無形資産と創造資本を認められ、それを知の財産として、入学後6年かけて増やし、活用していくわけです。これをクリスチャンスクールでは、タラントを豊かにすると言います。
★では、2科4科では、それは見つけられないではないのでしょうか。2科4科では、有形資産である、既存の知識をどれだけもち、学力資本として、それをどのくらい活用できるのかを見ます。そして、有形資産と学力資本をもっている生徒は入学後、無形資産と創造資本が豊かな生徒から刺激を受け、無形資産と創造資本をつくっていきます。また逆に有形資産と学力資本が不足しがちな生徒は、それを豊かに持っている生徒からわけてもらうわけです。
★コラボレーションとは、この2つのアセットと2つのキャピタルを結合し、活動資本を生み出すことを意味します。活動資本は、必ずしも活動資金を意味しません。もっと大きな広がりを持っています。
★それゆえ、ケンブリッジは口頭試問で、「りんご」を説明してご覧?と問いを投げかけるのです。「りんご」からどれだけ知の風呂敷を広げられうのか。その広がる先のエッジでどんな新しい知識が発見されたり生成されるのか?
★このような思考の作用について、あの落合陽一さんも次の本でズバリ語っていますね。
★またそのような思考力は、ライフロングもので、幼稚園から育てられるとよいよねと。これは聖学院の思考力入試に長年関わって、今は幼稚園の理事長である内田先生の発想でもあり、それはレゴシリアスプレイの生みの親の1人、MITのレズニック教授の考えとシンクロしています。
★そして、落合さんもレズニック教授も100年の学びを考えていて、まさにライフシフト時代の学びを語っているのです。アダムとイヴ以来、私たちはずっと「りんご」の意味を考えてきたわけですが、今再び「りんごの世紀」という新たな学びのシンボルが現われてきたわけです。
★その知のシンボルを、思考力入試を介して聖学院は投影したのです。「りんごの世紀」というプロジェクトの誕生ですね。
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