学校が変容するというコト(07)「キャリアガイダンス vol.429 2019.10」は重要な意味を問いかけています。<了>社会学的視点 自明性を問い返す
★キャリアガイダンスvol.429 2019.10には、菊地栄治先生(早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)のインタビュー記事が掲載されています。菊地先生は、多様な社会学の成果を独自の基礎理論として構成し、その視点を現場にどっぷりはいって自明視されてきた高校の組織文化や教師の精神性、授業のデザインなどを基礎理論としての専門用語を使わず、現場の教師と問い返し、小さな変化を大きな変化にシフトし、かつ持続可能にするにはどうするかを現場の教師と創っています。
★菊地先生の教育社会学は、マクロの社会システムを地として、そこで展開する日常の学校生活を生み出す教師や生徒を中心とするステークホルダーのかかわりを図として分析しています。この関わり合いは、互いに異なる意味理解をどのように調整するか、調整せずに葛藤を起こすか、自明性としての理念の形骸化を放置するのかなどを現場の教師や生徒と対話によって問い返し、問題性を共有していくというやり方でしょう。
★この日常の学校生活の構成の分析なくして、やれデジタルだやれ〇〇プログラムだと外部からいれても学校は変容しない、いやディストピア的に変容してしまうおそれがあります。
★一方で、外部と没交渉することによって、学校内部だけで理念を共有していく美しい流れは、自明性の問題性を見えなくし、そこにかかわる人間同士の意味理解の違いを無化します。それゆえ、見えない葛藤が学校をネガティブなシステムに変容するおそれがあります。
★この意味理解の関わり合いを、同誌では明言していませんが、随所に「他人事≒自分事」としての1人ひとりの関わり合いが、新しい理念、つまり「普通」の学校こそが、生徒の未来がwell-beingになるような生き方やそれをサポートする社会づくりの源泉を生み出すのだという発想が見え隠れしていました。
★現象学的社会学では、フッサールのそうして日常生活をどう構成するかを問い返す(エポケーする)という考え方を継承しつつも、間主観(intersubject)の継承には、物象化されやすいということもあるのでしょう、継承に慎重です。
★そういう成果も踏まえつつ、菊地先生は、現場の人びとのかかわりの前提として、個人とは主観とかたんに自分事というセットをするのではなく「他人事≒個人事」という新しい個人の概念を創って展開しているのかもしれません。あくまで独断と偏見の予想ですが。
★勤務校のスクールモットーは、「自分が他者にしてもらいたいことは、何でも他者にしなさい」という黄金律です。この他者は具体的な個人であると同時にその背景には本来的な人間の存在を内包しています。この本来的な存在に気づき、共有し、それを現実のものにしていく教育の持続可能性はいかにして可能か。この私なりの自分への問いの解答の糸口が菊地先生の研究によって見えてきたような気がします。
★山下さん、私の自分への問いを探る道の道標として多くの刺激的な記事をこの一冊に集めて下さり、本当にありがとうございました。
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