2022年教育動向(02)麻布の国語 傑作!中学受験生だけではなく大人もチャレンジしてみるとよいのでは。こんなに存在論的な読解は大人にこそ必要かもしれない。
★今年の麻布の国語の入試問題。あいかわらず超長文。9,000字強です。くどうれいんさんの「氷柱の声」作品集から「滝の絵(2011)」が丸ごと素材文として活用されています。やはり女流作家の文学作品で、昨年7月に出版された書籍です。ここ数年の麻布の素材選びのセオリー通りですね。
★長文ですが、語彙などは難しくない物語です。幻想的なシーンは一見するとないのですが、主人公が自己変容するきっかけとなった東日本大震災の描写は、ある意味リアルなそれでいて幻想的なシーンと同じような役割を果たす表現になっています。
★たしかに、主人公は岩手で震災を経験しましたが、自分の体験など津波やフクシマにおける体験とは到底比較できません。そこで起きたことは語り尽くすことができない出来事でした。にもかかわらず、当事者になり切れない自分が、遠くから絵でエールをおくることが許されるのかと深い痛みに襲われます。しかし、マスコミは、その痛みを気遣うことなく、表層的な道徳的な行為を求めて満足します。
★それに加担してしまった自分は、賞を獲得するためとか、道徳的な表現をする義務感とかを捨て、純粋な存在そのものに向かい合う自分を表現していきます。
★かくして、麻布の中学入試は、世間の現存在が気づくことない存在そのものの深層に接近していく自己変容の意味をα世代が受験という場で深く考える時間を持つのです。
★簡単に言えば、本物をひきうける覚悟を読み取るようになる主人公の変容を読み解くわけです。読解の解読という存在論的重層性。物語の読解であると同時に哲学的であり心理学的であり社会学的でもある多角的視点を要する問題です。
★論より証拠、ぜひ解いてみて欲しいです。中学受験観が変わりますよ。そして、今後の受験の意味がこのように変わっていけばそれこそ希望が見えるというものです。
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