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2022年2月

2022年2月27日 (日)

学校が変容するというコト(16)富士見丘のグローバル教育 時代を善へと牽引する生徒

★昨日、本ブログの次の記事のアクセスが急上昇しました。それは「富士見丘(了)思考力と英語力とディーべート力を牽引する模擬国連部の存在」です。「ホンマノオト21 模擬国連部」で検索するとトップにでてきます。おそらく、今起こっているドミノ危機に対し、中高生が何ができるのか、国連の働きにも注目が集まっているということもあり、模擬国連の活動をしているところはどこだろうというような意識から、検索された結果だと思います。

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★平均滞在時間が3分で、直帰率が75%ですから、ピンポイントでアクセスして読了してくれた方が多かったと推測します。

★富士見丘のグローバル教育の破格さについては、多くのメディアが取り上げています。先日もWWLリーダー校として、グローバルな探究の成果を英語で生徒が公開プレゼンする会がありました。高2の生徒17のチームが挑戦していましたから、英語力が優れた一部の生徒とか帰国生(同校の帰国生率はめちゃくちゃ高い)だけがとかがプレゼンしたのではなく、全員というところが同校の徹底ぶりが伝わってきます。

★このときの模様はGLICCの次のサイトで見ることができます。

「富士見丘高校のWWL研究発表会ー圧倒的な英語プレゼンテーション」

★また、同校は、このような公開プレゼンテーションを頻繁に行っています。その様子については首都圏模試センターが取材しています。次の記事をご覧ください。

「のびやかな活動と高い進学実績に受験生親子・関係者から熱視線」

★富士見丘のグローバル教育は、世界の諸問題についてそれぞれの生徒がトピクを発見し、深く探究し、具体的な提案をしていく学びがベースです。したがって、プロジェクトベースです。いわゆるPBLのアプローチで学びを行っていきます。このPBLはパブリックオーディエンスにプレゼンし、社会を善くしていくインパクトを与えていくことがポイントです。

★PBLを行っていても、ここまで来るのはなかなか難しいですね。それをもう10年以上富士見丘は行っています。そんな教育活動の中で、ピンポイントで模擬国連部の記事にアクセスが集まったというのは、やはり今まさに永遠平和のために私たちは何を想い、何を考え、何をすべきかを考えなければならないか時代が呼びかけているからでしょう。

★そして、それにきちんと応えて高い視座で「永遠平和のために」学ぶ生徒が育つのが富士見丘なのです。

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2022年2月26日 (土)

学校が変容するというコト(15)父母の会の力

★聖パウロ学園にとって、<父母の会>は、学校の教育活動が豊かになる大切な存在です。保護者の方々は、ご自身の仕事もあります。幸せな家庭をつくるために力を注いでもいます。その一方で、学校の行事を支援したり広報活動をしてくださいます。

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(父母の会広報誌「ギャロップ」。父母の方の独自の取材と教師とのコラボ)

★昨年は、このコロナ禍にあって、行事に生徒と共に参加することがなかなかできず、写真やインタビューをしていただくばかりした。子どもがスポーツで活躍する姿をみて、応援したい気持ちや文化祭で演じる成長した姿をみて、エールを送りたいという気持ちなどを生徒と共感できなかったことは本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

★しかし、上記写真ように、父母の会広報誌で、生徒の成長する姿、盛り上がる生徒たちの一体感などを編集していただき、本当に感謝申し上げます。

★生徒自身も自分たちの立ち上げた目標に向かって果たしたGRIT精神に気づき、今後の自信につなげられます。教師も、生徒と共に歩んだ信頼感を改めて感じ、明日への教育へのモチベーションがあがるでしょう。

★保護者の方々のエールや温かい眼差しを直接体感するのが一番ですが、こうして広報誌にその温かいハートが転写されるのも得難いことです。

★それから、私立学校の場合、父母の会は、私学振興予算を獲得するための大きな力になっています。各支部でそれぞれの学校の父母の会のみなさんが集い、都議会議員の方々に要望書を出します。さらに、全国の父母の会が集結して国会議員に要望書を出します。私学教育のための経常費補助の拡充強化や教育費の公私間格差の是正を、一致団結して要望してくださるのです。

★2022年度の高1は新学習指導要領になり、卒業時の共通テストでは、「情報」という教科が試験科目になります。ポストコロナにおける特別補助を要望していただき、1人1台端末を実現するための補助金もゲットできているのです。

★学校は、教師の同僚力、生徒の同窓力、保護者の愛情の力が三位一体になって強い仲間のつながりができ、そのつながりにそれぞれの息吹が注ぎ込まれることによって、希望が輝く最高の学校になります。

★教育の質の向上、そしてそのための補助金の拡大。父母の会の存在意義は極めて重要です。

★毎月活動準備のための父母の会で、時々私も対話の機会をいただきます。そこで勇気づけられ、学園の教育に力を尽くそうという内なる光が輝き続けることができるのです。感謝です。今後も、信頼関係を深めていく所存です。

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学校が変容するというコト(14)個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会

★1月14日に、中教審内に新設された「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」。2月7日に第1回のミーティングが開催されたようです。

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★文科省によると、設置の目的は、こうあります。

1.設置の目的
○ 「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(令和3年1月中央教育審議会答申)を受けて、デジタル化などの社会変化が進む次世代の学校教育の在り方について検討する必要。
○ 児童生徒への学習指導・生徒指導の在り方や環境整備について、特にGIGA スクール構想に基づくICT 環境の整備と活用を進める中で、教科書・教材のデジタル化を推進するとともに、既存の教科書・教材との関係を整理し、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実することが求められている。
○ このため、多様かつ専門的な見地から横断的に議論し、検討内容を必要な施策に結び付けていくため、初等中等教育分科会に本会議を設置する。

★そして、検討事項は、こうなっています。

2.主な検討事項
個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実するための、

(1)一人一台端末等を円滑に活用した児童生徒への学習指導・生徒指導等の在り方について
(2)教科書、教材、関連ソフトウェアの在り方について
(3)学校内外の環境整備の在り方について 

★要は、今回のパンデミックショックで実施がはやまったGIGAスクール構想と「主体的・対話的で深い学び」の両立をすぐにも実施しなくてはという話です。しかしながら、ICTを使えば個別最適な学びと協働的な学びは一体化してすてきだなんてことはないのであって、そこは現場でがんばってねということでしょう。

★端末をどう使うか、デジタル教科書やオンラインのためのプラットフォームやアプリをどうするか、Wifiやクラウドをどうするかなどなどはとても現場では大事なことであり同時に個別解が大量に増え、とても大事な生徒の存在そのものが置いてかれることもしばしばです。

★そうならないために、メンバーの一人である上智大学の教授奈須正裕さんの上記写真の本はおススメです。

★ただし、小学校のケースメソッドなので、高校にはなかなか適用できないこともあります。

★いや、小学校から解決できないで先送りされてきた問題が高校で噴出しているのです。そこはICTは逆効果だったりするし、協働学習が傷を深める結果にもなってしまいます。

★つまり、そこでこそ個別最適化が大事なのですが、現状ICTを活用した個別最適化は、マッチングしないのです。ICTがダメなのではないのです。問題が正しく把握されていないのです。

★そして、結局そこは明らかにすることは難しいところです。

★このメンバーが想定している生徒は、およそ日本の生徒の70%くらいでしょう。統計的にはなかなか効果的ではないかということになるのかもしれませんが、なかなか切ないですね。

★私立学校というNPO型法人で、なんとかサポートしていくしかないようです。しかし、そこには補助金の量が少なく、本当にたいへんです。なぜ補助金が少ないかというと、個別最適化や協働学数と言っていながら、ベースが教科学習なのです。

★その教科学習の学び方が、個別最適化で柔軟に対応されず、1人も残さずきっちり履修させることが個別最適化だという前提があるため、その前提を実行しがたい場所には、補助金がたくさんでないのです。本当に困っている部分に回ってこないのです。どうしてそうなるかは、学校の問題ではなく、そこを利益にしようという団体があり、そこを規制することは政府ができないでいるからですね。

★そんなことをしたら、困っている生徒の行き場所がなくなるからです。

★そして、その教科学習から解放できないのは、共通テストがあるからです。実際には共通テストを受けずに進路を決めている生徒も多いのに、にもかかわらず教科学習を卒業のハードルにするのです。

★教科学習が壁にならない生徒は、全体の60%にすぎないのです。のこりの40%に対する個別最適化の議論が必要です。

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2022年2月25日 (金)

学校が変容するというコト(13)グローバル教育の新たな展開 聖パウロ学園の大久保先生

★海外の大学院で研究していたということもあるのかもしれませんが、聖パウロのグローバル教育部長で英語科主任の大久保先生は、Thinking Routines Toolを自在に使いこなします。このToolはアプリとかデジタルな何かという物ではありません。短いQuestionを生徒に投げかけながら、自明性を開いていきます。身近な出来事や一般に当たり前と思われているものの見方や考え方を問い返しながら、生徒でも世界の思想家と同じ視座に立てるようになるのです。

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★英語の授業のときだけでも部活の時間だけでもなく、HRや探究の時にも問いかけます。生徒たちは、初めは驚きますが、徐々に視座を高くしていきます。

★グローバル教育というと、英検2級以上のためのトレーニングとか海外研修旅行とか中長期の留学とか思い浮かべるでしょう。もちろん、そのようなプログラムも大久保先生は英語科の同僚といっしょにプロデュースしていきます。

★しかし、大久保先生は、それはグローバル教育の一部でしかないのだと。

★思考コードのすべてのドメインを生徒自身が身につけることこそが重要なのだと。すなわち、パンデミックショックや今回の平和を揺さぶるような危機ドミノに遭遇した時に、自分は何ができるのか自分はそもそも何ものなのか意思決定し、多様な人々とディスカッションしながら問題解決のために協働していく構想力を身につけることが重要なのだと。

★黄金律を内なる光とし、高い視座と創造力、そしてケアリングを発揮していく生徒が生まれるグローバル教育の環境を作っているのが大久保先生です。

★今回のパンデミックや危機ドミノにおいて、ある共通のイノベーション(政治的に高度な問題なのでここでは具体的には控えます)が急務となっています。それを実現するには高い視座と創造力が必要です。また、そのイノベーションが必要だと確信するには、両方の危機において困っている状況下におかれた人々をケアする過程から生まれてきます。

★そのようなダイナミックで繊細な発想力と実行力を世界の人びとを巻き込んで発揮していくグローバルリーダーを生み出すことがグローバル教育の真骨頂でしょう。もちろん、英語ができなければ、そもそも世界の人とディスカッションができません。このことを忘れてはなりません。

★大久保先生の目からウロコの発想。パウロのグローバル教育の源泉です。

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2022年2月24日 (木)

学校が変容するというコト(12)立体的な読解 聖パウロ学園の国語の授業

★聖パウロ学園の国語の授業はおもしろい。おもしろいとはもちろん興味深いという意味です。先生方は同じ文章を生徒と読んだ時、理解のズレがあるところから始めます。専門家と学習者のズレは当然あります。そのズレをどのように一致させるかあるいは一致させる必要があるのか。少なくとも、こうやって読むんだよと、文章に書かれている言葉を整理しながら教え込むという方法はとりません。

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(高1のセレクティブクラスで、オンライン授業期間に作った『平家物語』に関するスライドの発表。当時の文化や風習について知り、立体的な読解に繋げていく授業。同校facebookから)

★そういう読み方をする人もいるでしょう。しかし、それは唯一の読解方法でしょうか。多くの場合は、そうですね。特に入試問題を解くとなると、解答の根拠を文章の中に求めるし、その文章の全体の構造を整理して、時々行間について問われる問題に対しても、文章内の言葉を根拠に推理していきます。

★入試問題で得点を取ろうとすると、そのような読解方法をとります。そのように問題ができているのですから当然です。

★しかし、これは唯一の読解方法でしょうか。自明の方法でしょうか。

★この自明性について生徒とともにリフレクションして新たな読解という世界を創り出しているのが聖パウロ学園の国語の教師です。

★そのような試みを「立体的な読解」と呼んでいるようです。

★「立体的」とは「多角的」と置き換えてもよいでしょう。あるいは「多次元」と置き換えてもよいでしょう。

★はたまたトポロジー的な読解と置き換えてもよいかもしれません。

★言語は、少し考えてみれば、同じ言葉でも意味も感じ方も違う場合があります。むしろそのほうが多いかもしれません。はじめから、同じ意味や感じ方で同じ言葉を意識することは稀です。

★まして、長文という言語の塊は、そのズレがもっと大きいはずです。

★同じ言葉を作者はどういうい思いでつかったのか、その言葉を読んだ生徒はどのような感じ方や意味を広げたのか。そして、教師の場合はどうなのか。

★読解とは言葉に触れた人々がそれぞれ放つイメージや気持ちやインスピレーションの曼荼羅のような空間をむしろ広げることなのかもしれません。

★しかし、それでは、国語の読解問題で正解に到らないではないか?いや、むしろ、いろいろなアプローチを認識しているからこそ、入試という条件に合うアプローチを選択できるのです。

★もしこの選択する体験をしていないとしたら、総合型選抜の志望理由書は、みな同じになってしまうでしょう。小論文もみな同じになってしまうでしょう。

★聖パウロ学園の国語の教師は、大学入試という条件にマッチングした方法だけが読解であり小論であるという自明性を生徒と一緒に開いていく授業です。そのために、ディスカッション、哲学対話、プレゼンテーション、デジタルなどいろいろな道具を使います。しかし、道具を使うことが最終的な目標ではありません。

★言語が開くオリジナルの世界とそれがいかに公共性の信頼を得ることが可能なのか、「言葉」の本質に迫ること、そしてそれは人間存在の本質に迫ることなのでしょう。そのような本質に触れたとき、生徒の内側からあふれる知恵や使命は多くの人びとに感動の連鎖を生み出していくでしょう。そして、それが生徒が未来に向き合って生きる道を歩んでいくエネルギーにもなるでしょう。

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2022年2月23日 (水)

学校が変容するというコト(11)今年の早稲田の政経の総合問題 3つの思考タイプをみる問題定着か あるいは三角ロジックと3ダクションか

★今年の早稲田大学の政治経済学部の一般選抜は、昨年に引き続き「総合問題」でした。入試要項にそう謳っているわけですから、当然なのですが、共通テストで数ⅠAを課し、個別入試で日本語と英語の素材文を資料として、その資料の読解を通して自分の意見を表現する問題というのは、従来型の一般入試の勉強をしている受験生からは敬遠されます。それでも、このような入試を出題する同学部の多様な想いとコンセプトは何か、そんなことを考えないわけにはいかない重要な入試問題であることは間違いないでしょう。

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(「移民の経済学」は昨年の政治経済学部のグローバル入試で使われた。「他者の靴を履く」で有名なプレイディみかこさんの文章は、「コロナ後の世界を語る」から出題。加賀美常美代さんの文章は「多文化社会の偏見・差別~形成のメカニズムと低減のための教育」から出題。同学部の受験生に学んできて欲しいメッセージには一貫性があるのではないか)

★同学部の総合問題は、思考コードの領域すべて網羅して出題されています。しかも、日本語の文章にしても英語の文章にしても、専門書から出題されているわけではなく、新書や新聞レベルですから、読解の素材としては18歳成人を迎える受験生にとっては、グローバル市民としては標準的です。

★しかしながら、問いのレベルは、A軸・B軸・C軸満遍なく出題されています。また、思考スキルでは、「具体と抽象」「原因と結果」「比較対照」以外に、「置換」のスキルを活用するものも出題されていました。

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★「置換」の問題を出題するというのは、与えられた素材の外に越境して適用するという思考力(B軸)を積極的に診ようとしているということでしょう。本文中に語られている「ステレオタイプ」の例として適さないものを選びなさいという選択肢問題の解答は、本文中に直接書かれているわけでは問題です。共通テスト的な選択肢でもあり、大学入試の変容は、共通テストと一般選抜でも連動していることがなんとか予想できます。

★また、日本語の二つの文章AとBは、違う著者のものです。その二つの文章を読んで、「無知」と「偏見・ステレオタイプ・差別」の関係とそのメカニズムについて200字以内で説明する問題も、共通テストにスタイルは似ています。もっとも、共通テストで果たせなかった論述問題を出題しているところは、思い切りチャレンジングな問いになっているということでしょう。

★一見すると、AとBの文章の内容を踏まえてですから、いわゆる読解問題のように見えますが、著者が違う文章を参考にするのですから、それをつないだり、それをきっかけに自分の考えを書くわけですから、論理的思考だけではなく、クリティカルシンキングやクリエイティブシンキングも求められていることは了解できるでしょう。

★英語の素材文も、ギリシャにおける統計の改ざん問題がテーマですが、経済統計学における「ベンフォードの法則」を活用してEUの統計とギリシャの統計を比較して、ギリシャの統計改ざんを見破る考え方を200字以内で説明する問題は、素材文の中だけでは解決がつきません。ベルフォードの法則については、知らない受験生がほとんどでしょう。しかし、それはきちんと解説されていますから、法則を統計に適用するといっても置き換えればすぐにできてしまう問題でした。

★初見の知識を学び、適用・置換できるかを求める問題で、知識を覚えてくれば対策ができる従来の入試問題とは明らかに違ういことを示す象徴的な問題でした。

★最後に100語ぐらいの英語のエッセイライティングがありました。オンラインの会話に参加する時、匿名か否かについて書きます。英語100語くらいというのは、日本語では200字くらいでしょうから、今回は、200字論述の思考スタイルを身に着けてきて欲しいというメッセージが明快に投げかけられたということでしょう。

★スタイルと言っても、表面的な形式の話ではなく、思考の形式というかメカニズムのコトを意味します。

★思考コードでいえば、縦軸の世界に対する視座がどこまで高いかどうか、横軸の論理的思考・クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングすべてをトレーニングしてきているかどうか、それから、他者の発想を理解したり自分お発想を創り出したりするときに活用する思考スキルをトレーニングしているかどうかです。

★思考スキルは、なにか受験テクニックだと勘違いされますが、数学的思考の基本的なアプローチです。世の受験テクニックは、それを活用しているにすぎず、またそのテクニックが数学的思考から発出していることを示さない、あるいは気づいていないのがもったいないですね。

★もしそのつながりを受験生が意識すれば、このような「総合問題」を考えることは、受験勉強でありながら将来自ら何かを創っていくときの源泉になる学びをしていると価値づけができるでしょう。

★同時に知識を暗記するだけの学びでは、その価値づけをするには不足だということも了解できるはずです。

★早稲田の政治経済学部の個別入試の「総合問題」は、教育を変える実質的な方法を提示しているといえましょう。

★なお、先ほどの思考スタイルについてですが、思考コード、思考スキルを別の角度からトレーニングする方法があります。たとえば、三角ロジックや3ダクションの思考トレーニングというアプローチでも語れます。どれも最終的には同じコトになるのですが、思考スタイルを構築する方法は、人それぞれ相性があります。ピンとくるものを選択すればよいと思います。

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2022年2月21日 (月)

学校が変容するというコト(10)21世紀型教育機構の新しい学校の作り方 10年後に学校の景色が完全に変わる

★昨年、21世紀型教育機構は創設10年を迎えました。昨日、2021年度の最終定例会が行われ、4月から新しい次元の学校市場を創る準備が整いました。そのための離陸式が、昨日行われたのです。この新しい次元の学校市場のリーダーシップ&コミュニティシップを発揮するのはSGT(スーパーグローバルティーチャー)です。グローバル化×デジタル化×グリーン化ベースのPBLを自在に行えるクリエイティビティを生成することができるプロフェッショナルです。

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★21世紀型教育機構の加盟校がそれぞれに自由に行っているPBLは、ハーバードやMITメディアラボ、スタンフォードなどで研究されているPBLと肩を並べるほどです。これらの大学で行われている学問的なPBLは、英語で書かれているために、何か凄いもののように思えますが、読んですぐに了解できることは、私たちも創意工夫している方法論と同期します。

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★上記の本のようにハーバードなどで協働して研究された成果は、著者1人の力でできたものではなく、ダイバーシティ&コラボレーションで生まれているということをはっきりと語っています。もともとプロジェクトという研究による成果なので、日本の教育関連の書籍のようにTTP(徹知的にパクる)が当たり前で、クレジットを明らかにせず、あたかも自分のアイデアだけでできたかのような勝ち組負け組の枠の中で、偏差値などを批判したり、学校を批判する自家撞着は回避されます。

★ところが、21世紀型教育機構の加盟校の先生方は、そんな自家撞着は起こしません。互いのアイデアを尊重し、それを共にブラッシュアップしようというコミュニティシップを発揮しています。

★そのようなSGTがたくさん集い、その互いのアイデアを最適に活かしたSGTをたたえる表彰が行われたのです。

★称賛の声は、偉そうにこれはこうしたほうが良いという指摘をする愚かなものではありません。もっとこんなものを共に創っていこうというエンパワーメント型のエールを贈り合うものです。

★しかし、この10年前からそうだったわけではありません。脱偏差値主義を標榜し、その偏差値市場の中で、別の市場を創出しようというやり方でした。その市場では機構以外の学校も21世紀型教育風の教育を行ったとき、それをなんちゃって21世紀型教育だと差別化しようとして必死になったものです。

★しかし、それは結局旧エリート主義に対する新エリート主義の勢力拡大を図ることに自ら陥ってしまったというわけです。しかし、10年経って、同じ偏差値市場の中で、そんな競争をしていたのでは、日本の教育を変えたり、今後ますます困窮する日本社会を救うことができないと気づいたのです。

★今後は、SGTの活動が教育の質を変えることになり、同時に新しい次元の市場を創ることになります。偏差値市場はそのままあってもよいのです。それをどうのこうの言っている暇はありません。新しい別次元の市場を創り、豊かにしていけばよいだけです。そのことに21世紀型教育機構は気づいたのです。

★ライフシフトの時代です。マルチワークの時代です。偏差値市場と別次元の市場のパラレル教育経済社会があって構わないのです。どちらの市場を選択するかは、保護者や子どもたちの私事の自己決定にすぎません。それによって、両者がシナジー効果をだすのか、どちらかが消失するのか、それはわかりません。それぞれぞれが真理を遂行していると信じて行っていけば、自ずと結果はでます。

★とはいえ、この別次元の教育市場は、欧米ではすでにたくさん生まれています。

★日本経済新聞などでは、このことに日本の教育が気づかない理由が最近書かれています。1月31日の記事を読んで、はっとしました。

★いったいそれは何?TTPを回避するために、今ここでは述べません。4月以降それが徐々に見える形になります。秘密主義ではありません。同志には共有されますから。TTPと同志が共有することは似て非なる行為です。エゴかMFO(Men for Others)かの違いです。

★今回のパンデミックショックで、エゴよりもMFOが大切であるということが世界で共有されています。エゴ市場からMFO市場へトランスフォームする時代がやってきました。この流れは、21世紀型教育機構だけではなく、首都圏模試センターも別のアプローチでつくっています。

★2024年に合流して大きなベクトルが現われると確信しています。

★10年前、21世紀型教育機構の教育の基礎作りをしていたとき、多くの人はC1英語なんかできるわけでがない、PBLなんて大学合格実績を生み出せない、ICTを推進している学校は偏差値が低い学校だと一笑に付していました。思考コードを否定したり、思考力入試を否定したりする人もたくさんいました。しかし、真理は自由を生み出すのだと信じ、機構の先生方はみんなでセミナーを開催して、真理の道を追究してきたのです。

★もっとも、今、そういうことを言う人はいません。逆に「21世紀型教育」という言葉は一般名詞になったよねと言われます。

★時代を創るキーワードを生み出したということは、その時点で、空が灰色になったということです。それは再びミネルバが飛び立つ合図です。新しいMFO市場はライフシフト時代を促進する市場です。4月以降、知の女神ミネルバと共に、21世紀型教育機構は新たな動きを生み出していきます。大いに期待しましょう。

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2022年2月20日 (日)

学校が変容するというコト(09)21世紀型教育機構の定例会でSGTアワード 最優秀賞1名 優秀賞5名 表彰!

★本日、21世紀型教育機構の定例会がオンラインで開催されました。2021年度最終定例会でした。その中で、21世紀型教育機構の加盟校の中から、6名の先生方が、SGT(スーパーグローバルティーチャー)として受賞しました。

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★同機構は、毎年アクレディテーションという第三者による21世紀型教育のクオリティをエンパワーメント評価するシステムがあります。PBLの授業のみならず、グローバル教育やSTEAM教育、世界大学ランキング100位以内の実績、4技能の教育の質などなど多面的に、リアルな学校フィールドのリサーチやオンラインインタビューなどのリサーチによってエヴァリュエーションしていきます。

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★そのリサーチの過程で高クオリティのPBL授業を展開したかどうか、21世紀型教育研究センターで実施しているセミナーで自分の授業をプレゼンして貢献したかどうか、同機構の教育研究活動に貢献したかどうかなど多角的な側面から総合的に評価して受賞が決まります。アクレディテーションなど授業の動画を同機構のアクレディテーションプラットフォームで分析した結果なども加えるなど、今年度からは、アナログ時代からデジタル時代に対応した多面的なエンパワーメント評価になっています。

★今回は、上記写真にあるように、最優秀賞1名、優秀賞5名が受賞しました。今後のSGT(スーパーグローバルティーチャー)として生徒に好インパクトを共鳴させていくことでしょう。その共鳴音が、学校を超えて響いていく広報活動を同機構はあらゆる機会を活用して展開していくでしょうから、機構10周年を迎え、次の10年の新たなステージが具体化してきたと、機構の理事会は認識しているようです。

★学校の組織カルチャーは、このようなSGTが育つ文化に変わっていくと、それは日本や世界の新たな社会づくりにダイレクトに善い影響を与えるでしょう。同機構のPBLが、World Making Learningと呼ばれる理由でもあります。今後も受賞者に続くSGTがどんどん増えていくと思われます。

★つまり、これこそ21世紀型教育機構の理念であるゴールデンルールとしてのMFO(Men for Others)の実現です。加盟校の教育理念と同機構の理念のダイアローグによって生まれる理念と現実のダイナミックな相乗効果が、新しい時代を切り拓いていくテコになります。

★受験市場に足場を置きつつ、同時に社会貢献する社会的インパクトを教育においても可能にするコミュニティとして大きく飛躍する次の10年がスタートしたのです。

★なお、各受賞者の所属する学校のサイトで、受賞へのリスペクトが公開されていくそうです。

参照)聖学院サイト「【21世紀型教育】本校・伊藤大輔教諭が、21世紀型教育機構・SGTアワード優秀賞を受賞しました」

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学校が変容するというコト(08)石川一郎先生の痛快丸かじりのトーク 学校組織のカルチャーと教員のマインドと思考コードと

★先週の18日(金)、石川一郎先生と対話しました(GLICC Weekly EDU 第67回「2022〜23年中学校選びのポイントはここ~石川一郎先生が学校選択の肝をズバリ解説する」)。今年の首都圏の私立中高一貫校の学校選択の大きな潮流の話に集中しました。多くの視聴者は、石川先生の痛快丸かじりかつ歯に衣着せぬトークに魅せらるたことでしょう。ぜひご視聴ください。

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★今回は、首都圏で英語入試を実施した146校のリスト(実は英語入試を行っているところは思考力入試や自己発見入試など多様な新タイプ入試を実施しているところがほとんどです。リストは首都圏模試センターのサイトを活用させていただきました)を見ながら、それぞれの学校の特徴を話題にしながら、それが同時に人気を高めた理由であるということについて石川先生が明快に解説。ここだけでの話(とはいえ、公開動画ですからギリギリのところでとめてはいますが)がガンガンでてきてます。

★そのような具体的なケースの後に、東洋経済ONLINE 2022/02/17 で、辻野 晃一郎(アレックス社長/グーグル日本法人元社長)さんの記事 <日本人が「GAFA人材に勝てない」メンタル5大問題 グーグル日本元社長「日本人にも絶対にできる」>で語られている次の5つのポイントと思考コードを結びつけて、石川先生に学校の組織カルチャーと教師のマインドについて語ってもらいました。

❶「失敗を許容しない」対「失敗は成長プロセスの一環」

❷「雑用は下に任せる」対「何でも自分でやってみる」

➌「不正には目をつむる」対「不正は許さない」

❹「正確さが大切」対「スピードが大切」

➎「上が決定する」対「現場の決定を上がサポートする」

★人気のある学校は、組織カルチャーや教師のマインドが、上記のリストの右側の要素を持っていることとこの要素は思考コードのC軸が重要な働きをしているということを、具体的な学校を挙げながら、ズバズバと石川先生は語ります。あっという間に対話の時間は過ぎました。ぜひご視聴ください。めちゃくちゃ新鮮な情報が飛び交っています。

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学校が変容するというコト(07)「キャリアガイダンス vol.429 2019.10」は重要な意味を問いかけています。<了>社会学的視点 自明性を問い返す

★キャリアガイダンスvol.429 2019.10には、菊地栄治先生(早稲田大学 教育・総合科学学術院 教授)のインタビュー記事が掲載されています。菊地先生は、多様な社会学の成果を独自の基礎理論として構成し、その視点を現場にどっぷりはいって自明視されてきた高校の組織文化や教師の精神性、授業のデザインなどを基礎理論としての専門用語を使わず、現場の教師と問い返し、小さな変化を大きな変化にシフトし、かつ持続可能にするにはどうするかを現場の教師と創っています。

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★菊地先生の教育社会学は、マクロの社会システムを地として、そこで展開する日常の学校生活を生み出す教師や生徒を中心とするステークホルダーのかかわりを図として分析しています。この関わり合いは、互いに異なる意味理解をどのように調整するか、調整せずに葛藤を起こすか、自明性としての理念の形骸化を放置するのかなどを現場の教師や生徒と対話によって問い返し、問題性を共有していくというやり方でしょう。

★この日常の学校生活の構成の分析なくして、やれデジタルだやれ〇〇プログラムだと外部からいれても学校は変容しない、いやディストピア的に変容してしまうおそれがあります。

★一方で、外部と没交渉することによって、学校内部だけで理念を共有していく美しい流れは、自明性の問題性を見えなくし、そこにかかわる人間同士の意味理解の違いを無化します。それゆえ、見えない葛藤が学校をネガティブなシステムに変容するおそれがあります。

★この意味理解の関わり合いを、同誌では明言していませんが、随所に「他人事≒自分事」としての1人ひとりの関わり合いが、新しい理念、つまり「普通」の学校こそが、生徒の未来がwell-beingになるような生き方やそれをサポートする社会づくりの源泉を生み出すのだという発想が見え隠れしていました。

★現象学的社会学では、フッサールのそうして日常生活をどう構成するかを問い返す(エポケーする)という考え方を継承しつつも、間主観(intersubject)の継承には、物象化されやすいということもあるのでしょう、継承に慎重です。

★そういう成果も踏まえつつ、菊地先生は、現場の人びとのかかわりの前提として、個人とは主観とかたんに自分事というセットをするのではなく「他人事≒個人事」という新しい個人の概念を創って展開しているのかもしれません。あくまで独断と偏見の予想ですが。

★勤務校のスクールモットーは、「自分が他者にしてもらいたいことは、何でも他者にしなさい」という黄金律です。この他者は具体的な個人であると同時にその背景には本来的な人間の存在を内包しています。この本来的な存在に気づき、共有し、それを現実のものにしていく教育の持続可能性はいかにして可能か。この私なりの自分への問いの解答の糸口が菊地先生の研究によって見えてきたような気がします。

★山下さん、私の自分への問いを探る道の道標として多くの刺激的な記事をこの一冊に集めて下さり、本当にありがとうございました。

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2022年2月19日 (土)

学校が変容するというコト(06)「キャリアガイダンス vol.429 2019.10」は重要な意味を問いかけています。②

★前回ご紹介した「キャリアガイダンスvol.429 2019.10」で語られている「普通の学校」は、生徒がwell-beingな未来を創れる学校という意味が込められています。たしかに、そうですが、結構ラディカルです。当時の編集長の山下さんのことは多くの学校の先生方がよくご存じの通り、めちゃくちゃ紳士/真摯ですが、知的ユーモアに満ちています。「普通」という柔らかい表現に誘われて読み続けて興奮してふと振り返るとめちゃくちゃ高い視座に立っています。落語はそのギャップはオチになり、がくんと落ちて笑いが巻き起こりますが、山下さんのは、ゆるやかな坂に気づかずいつの間にか山の頂に立たされ、そこから振り返ると傾斜が絶壁かと思えるほどであることに気づきます。やられたという笑みがもれます。これがユーモアってやつでしょう。

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★同誌には、“Most Likely to Succeed”の映画をプロジュースしたテッド・ディンタースミスの講演抄録が掲載されています。「世界を変える唯一の方法は、献身的なノーと言わない人々の小さなグループから始まる」で締めくくられています。

★おおそうだ!と思った瞬間、やられたと思います。その理由は簡単ですよね。献身的なノーと言わない人々の小さなグループと言うことそれ自体がめちゃくちゃハードルが高いからです。

★テッドのかかわっているHTH(ハイテックハイスクール)が、ラディカルにできるのは、チャータースクールだからでもあります。自治体と保護者や民間がコラボレーションしてつくる学校です。日本にもありますが、米国の場合、州によっても違いますが、シリコンバレーエリアだと、教育委員会のメンバーは立候補制ですから、保護者も参加できます。おまけに、豊かなエリアですから、公立学校も税金が豊かに注がれるでしょう。おまけに、オバマ大統領の時にはつくられましたが、日本のようなナショナル・カリキュラムはありません。

★地域の大学と現場の教師が研究コミュニティーをつくりながら、ち密で柔軟なシラバスをつくりながら公立学校を運営するところもあります。

★ひとり現場の教師ががんばるわけではないのです。だから、自然と献身的なノーと言わない人々の小さなグループができやすいのです。ホームスクールという制度もありますが、めちゃくちゃ濃い教育コミュニティが広がっています。

★したがって、テッドの実験が日本で行われるには、まずコミュニティを創る必要があるということです。NPOとか民間企業が学校を支援するという柔らかいコンサルテーションはなく、コミュニティを創り出すリーダーシップ=コミュニティーシップが必要です。

★しかし、これもまた自分の学校がまず大事だという段階の日本では、とてもコミュニティシップは期待できません。

★テッドのような投資家あるいは起業家あるいは慈善事業家(?)、つまり資金調達ができる人とトニー・ワーグナー(ハーバード大学教授)の二人のような協力者がコミュニティシップをも持ち合わせているという大前提をつくるのはいかにしたら可能か。

★山下さんに誘われて緩やかに見えたスロープを登ったものの、いざ戻ろうと見降ろした時には、そこはもう断崖絶壁のスキージャンプ台です。さてはてどうしましょうか(笑;)。

★ということで、コミュニティを創りたいと思います(微笑)。

 

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2022年2月18日 (金)

学校が変容するというコト(05)「キャリアガイダンス vol.429 2019.10」は重要な意味を問いかけています。

★パンデミックショック直前に発刊された「キャリアガイダンス vol.429 2019.10」は、今読み返すと極めて重要な視点が掲載されています。当時、私は中高一貫校の学校との付き合いが中心でしたし、高校だけの学校も21世紀型教育を推進していました。そのため、編集長の山下真司(当時)さんの巻頭言の次の言葉は、見過ごしていました。

<では、新学習指導要領の前文や総則に記されている「持続可能な社会の創り手」を育てるために、どのように学校づくりに取り組んでいけばいいのでしょうか。新たな学びをカリキュラムの中核にして、リソースを集めて新しい学校を創る、そんな先進的な事例もあります。しかし、いわゆる多くの“普通の学校”はどうすればいいのでしょうか。そして、先生方に求められるものとは?

未来を目指した改革こそが、多くの生徒たちの将来、そして社会が変わっていくことにつながると信じています。doingではなくbeing 先生方の思いと強みを大切にしながら、未来を共創する学びに取り組む学校が増えていくことを願っています。> 

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(このイラストの吹き出しがポイントです)

★今、私の勤務校は高校だけですから、中高一貫校とは違う高校の具体的状況について、以前よりは少し見えてきました。日本の教育において、大事なコトは、山下さんの指摘する「普通の学校」が、教員の思いと強みを大切に「未来を創る主体」を育む学校づくりへ共に向き合うことです。

★そのためには、学校の組織カルチャーがどう変容し、教員のメンタル(あるいはマインド)がどう変容するとよいのか、それが問題なのだなあと。

★そのヒントは、同誌でインタビューされている菊地栄治教授(早稲田大学)の語りにあります。

★菊地先生は、教育社会学で苅谷剛彦先生もポジティブに引用していますから、私立中高一貫校に関しては、教育社会学の多くの教授がそうなように批判的かもしれないなあと思いながら読みました。

★どうやら私学の歴史的な経緯からきちんと検証し、たんに富裕層の子弟が通う学校だからという批判はしていないことに気づきました。私立公立両方の問題を社会科学的に冷静に見ているのです。

★私立中高一貫校でも、併設型は高校入試があり、そこは菊地先生が構想している高校改革のビジョンが当てはまります。よって、そのような公平な視点で論じている菊地先生の本も読んでみようと思うに至りました。

★いずれにしても、しばらく、高校1学年は100万人います。私立中高一貫校と公立中高一貫校に通学している生徒は約10%です。たしかに、この10%の生徒の通う学校は、新たな学びをカリキュラムの中核にして、リソースを集めて新しい試みをしています。

★しかし、パンデミックショック以降明らかになったのは、10%のみならず、他の90%の「普通の学校」こそが、すべての生徒がwell-beingになるための学びの機会を設定する必要があります。

★そのための学校の組織カルチャー、教員のメンタルはどう変わるとすてきなのか?同誌を大切なヒントにしたいと思います。もし、100万人通うすべての学校が変容したら、日本の政治経済社会はディストピアを脱することができるはずです。学校教育はいろいろ批判されますが、実は重要な無形資産が蓄積されていく機関です。そんなことに改めて気づきました。山下さん、ありがとうございます。

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学校が変容するというコト(04)2022年慶応義塾大学 法学部小論文の問い 三角ロジックとアブダクション

★今年の慶応義塾大学の法学部の小論文は、よくできています。一般選抜の勉強でも、教科知識だけではなく、いわゆるリベラルアーツ的素養も身に着ける勉強をすることにになっています。単なる調べ学習で終わったり、体験主義で終わったりするようなプログラムでは学べない本質的な問い作り=アブダクションが必要になります。

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(國分功一郎さんの解説は必読です)

★素材文は、1971年の田中美知太郎さんの文章。「道徳問題としての戦争と平和」で著作集10巻に収められています。問いは、<次の文章は「戦争と平和」の問題について論じている。著者の議論を400字程度に要約したうえで、著者の立論に連関して考察を深めてください。なお、論述に際しては、論旨を補強するために、あるいは思考を深めるために的確と考えられる具体的事例への言及を行ってください。>

★おもしろいことに、この問いの形式の構成は、法学部の総合型選抜であるFIT入試と同様です。そういう意味では、志望理由書とか、面接はないけれど、小論文で要求してくる力は同じということです。いよいよ一般選抜と総合型選抜の差異が縮まってきましたね。

★問いの話に戻ります。まず、「戦争と平和」についての文章を読んで、要約しなさいとあるわけですが、「戦争と平和」についてあなたの考えをかきなさいと誘導しているわけではないのです。むしろ、田中美知太郎の思想から気づいたことを深めていけばよいわけです。

★入試問題を読めばわかりますが、戦争をただ「悪」とみなしておしまいではなく、悪をただしていくにはどうするのか?それには「立法」という制度設計が必要だろうと。戦争を防ぐ制度設計をどうするのかなんていうところに気づきがあれば、そこを深めていけばよいわけです。

★大テーマから、自分の着眼点を見出すところからはじまる思考の自由度があります。

★そして、その主張のデータとしての具体例を推理せよというわけです。演繹的推理でもなく、帰納的で推理でもなく、主張を成り立たせるための根拠データを推理するのは、アブダクションという思考作用です。これは数年前から、神崎史彦先生が総合型選抜で学ぶ大事な思考作用として論じていて、著書の中でも書かれています。

★また、主張と根拠とそのデータの3点セットを編集する三角ロジックについては、成城学園の青柳先生が授業の中で展開しています。私は、お二人の先生からそのアイデアを共有させていただき、Tninking Routines Toolとして、生徒と共有しています。

★明日の夜、知人のお子さんとワークショップをやるのを頼まれているのですが、この三角ロジックとアブダクションを合体させながら対話していくつもりです。

★それにしても、さすがは慶応の法学部です。田中美知太郎さんは、たしかにプラトン学者で有名なのですが、プラトンは、晩年アテナイのアカデメイアで暮らしていた幸せな哲学生活を一時停止して、隣国の軍師になっていくのですが、そこで大変苦労し、命を狙われながらも、なんとかアテナイに戻ってきます。

★そのときにプラトンが執筆したのが「法律」です。田中美知太郎さんは、プラトンを語る時に、この「法律」という現実の具体的状況から語るのです。もちろん、ここに、中世から啓蒙期に渡って議論され続ける自然法と実定法の葛藤がマインドセットされています。この葛藤は今もなお決着はついていません。サンデル教授の白熱教室でも題材になっていましたね。

★法の正しさや正義の基準をその時代の道徳的判断に任せるのではなく、どう構成していくのか。今年の慶応の文学部の小論文ともシンクロしています。

★パンデミックショックで、あらゆる基準が見直されています。ロックダウンするのかどうか、その基準がいつも揺れ動きます。天からご宣託は降りてこないのです。民主主義も多数決ではなく3割決になっているということが問題視されている文章が、今年の慶応の経済でも出題されています。

★入試問題は選抜のための問題ですが、このような問題を思考する学びは無益ではないでしょう。むしろ高校時代に善悪の基準について思考し議論することは有益だし、欧米の哲学授業でも重要な問題です。グローバル教育とは、本来こういう問題を思考し、議論できる能力を養うことなのではないでしょうか。

★このような問いを普段の授業の中でできたら、学校は自ずと変容するというものでしょう。

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2022年2月17日 (木)

学校が変容するというコト(03)2022年慶応義塾大学 文学部小論文の問い 「正義論」をモチーフにThinking Routinesの取り組み

★今年の慶應義塾大学の文学部の小論文は荒谷大輔教授の「使える哲学」の【第4章正義ー「権利」への欲望】から。第4章のうち、正義というのは、自由と平等を保障するともいえるが、その正義や正しさを成立させる自由とか平等って何んだろうという問題提起のところで終わる切り取り方をしていました。

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★この章の最初の部分(つまり出題された箇所)は、リバタリアニズムとしての正義論を、ハーバーマスとロールズが、それぞれのアプローチで批判している話が中心ですが、それが権利をどう扱うかによって、正義論の構成が変わるという問題提起がなされています。この部分を慶応大学は、要約させ、正しさについて自分の考えを論じなさいと問うわけです。

★ハーバマスの考え方は、彼の著書「公共性の構造転換」から引用しています。ロールズは「正義論」からです。今年の新高1から新しい学習指導要領になり、「公共」という科目ができるわけですが、その教科書には、ロールズは扱われているはずです。そういうトレンドも配慮してなのか、このような問いを出題したのでしょうか。

★それとも、パンデミックショックによって、新しい資本主義とかグレートリセットとかいう新しい考え方が時代の精神ということもあり、文学部としては時代のパラダイムを読み解くという観点からこのような問題が出題されたのでしょうか。果たしてそうなのかそうでないのかはわかりませんが、本質的な問題ですね。

★法学部で出題されても良いぐらいです。

★ただ、法学部だと、この文章の続きを出した方がそれらしくなります。もっとも、この後の権利についての論考は、ホッブスとロックについてで、自然法と実定法の葛藤とそこからうまれる権利に対する考え方の相違についてですから、これは、東大でも京大でも名古屋大でもよく出題されるテーマなのでそう難しくないわけです。

★その点、今回の問題は、その権利が生まれ出ずる「正しさ」という前提を問い返し、概念と社会の葛藤を考えさせる根本的な基礎的問題になっています。

★「正しさ」を多様な価値から接近して捉え返すわけですから、大学に入ってから探究や研究をする際に必要な複眼思考とセンス・メイキングの思考の基礎を持っているかどうか診断する問題です。

★この思考の基礎を診るには、モチーフを「正しさ」にする必要は必ずしもなく、オックスブリッジの「りんご」について説明せよとか「カタツムリ」には意識があるかなどのようなモチーフでもよいのです。

★実は、この思考の基礎は、最近ではハーバードのプロジェクトゼロなどで研究されている、思考力育成のプログラムのシークエンスの最初のThinking Routinesと呼ばれているメソッドです。

★このプログラムのシークエンスの最終段階は探究ベース思考になります。

★そういう意味では、入学する前に、この最初の段階を身に着けてくるようにというメッセージがこめられていると言えましょう。

★これは、慶応義塾大学だけではなく、多くの大学で課される小論文の思考力のレベルだと考えてよいと思います。

★すると、一般入試で求めらる思考力というのは、このThinking Routinesだとおそらくなるでしょう。

★一般入試ですから、高校の教科の授業で行う思考力レベルは、ミニマムには、Thinking Routinesレベルはやっておかなければならない時代になたっということです。教科で扱う思考力と総合的な探究の時間で扱う思考力のレベルは戦略的に分けて統合するカリキュラムがよさそうですね。

★学校が変容するのに、必ずしも大きなプログラムを導入する必要はなく、日々の教科授業にこのThinking Routines Toolを埋め込むだけで、ケミストリーが起こるのではないかと思っています。

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学校が変容するというコト(02)聖学院 問いの戦略がヒカル

★先日21世紀型教育研究センターのリーダー児浦先生(聖学院21教育企画部長・国際部長・広報部長・マルチプレイヤー)の話を聞いていて、なるほどそうだなと感じたこと。それは、聖学院の先生方はみな「問いの戦略」を体得しているなあということです。その象徴が思考力入試におけるデザインです。

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★日本では、まだまだ英語教育が遅れているので、グローバル教育で旗がなびきます。またデジタル化も産業構造が硬くて相当おくれています。ですからデジタル化のことをイノベーティブ教育だと考えまたまた旗がなびきます。

★ところが、欧米では、英語はあたり前ですし、デジタル化も教育では日本に比べ相当進んでいます。したがって、この2つを教育の柱としても、それがなんだということになります。でも、それがゆえに、今の日本では、英語とデジタル化の教育は重要なのです。

★それはともかく、欧米では何を大事にしているかというと、思考力を育成する壮大な緻密なダイナミックなプログラムの実践です。それこそがイノベーティブなのです。ハーバードのプロジェクトゼロとかMITメディアラボとかで幼稚園から大学にかけてまで、思考力ベースのプログラムが日々更新され蓄積され、議論され現場でシェアされというプラットフォームがあちこちに広がっています。

★ハーバードのプロジェクトゼロなど、各国の教師が参加し、全米どころか、たとえばオーストラリアなどにも飛び火して現場の教師がシェアして活用しています。

★21世紀型教育研究センターの先生方が実践しているPBLや思考力入試で毎年生成される問いという無形資産は、量としてははじまったばかりですから少ないですが、クオリティとしてはプロジェクトゼロの先生方に匹敵します。もし、英語で21世紀型教育研究センターのSGT(スーパーグローバルティーチャー)のみなさんが参加したら、一目も二目も置かれ、そのデザインやツールをシェアさせてくださいということになるでしょう。

★しかし、このことを知っている人は、日本では数少ないのです。まったくもって日本の教育は損をしています。

★それはともかく、それがゆえに、問いの戦略を小さく始めて大きく育てるアイデアを持っている先生方があふれると、言い方を変えると、すべてのクラスで「問いの戦略」デザインが展開されると、学校は自ずと変容するのです。

★聖学院は、「問いの戦略」が光り輝いています。子どもたちの未来を描く保護者にとって、それは希望のランターンになるでしょう。

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2022年2月16日 (水)

学校が変容するというコト(01)学校と向き合うコトは「老い」と向き合うコトに似ている つまりデジタルネイチャーと向き合うコトなのです。

★今、私は勤務校と向き合い、学校林という森と向き合い、21世紀型教育機構と向き合い、多くの生徒たちと向き合い、先生方と向き合い、保護者と向き合い、家族と向き合い、教育市場と向き合い、とにかく日々多くの他者と向き合いっています。つまりライフシフトの時代とは、私と多様な自然や社会や精神といった他者と向き合うコトを意味します。そして、その私も他者も「老い」と向き合うわけです。「老い」とは「誕生から死」という一回性の歴史であります。そして、この他者とのかかわりがあって初めて自分と向き合うということが言えます。

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★落合陽一さんの新著中に、落合さんが養老孟司さんと対談している章があるのですが、それを読んで、そんなイメージが広がったのです。国語の先生からしたら、「自分事」というのは他人事の反対語として構成上認められなくはないが、違和感ありという言葉です。

★なぜ違和感があるかというと、自分事はすでに他人事とかかわってはじめて成立するので、反対語にはならないからでしょう。

★それに、落合さんと養老さんの対談を読めば、「老い」の到達点「死」は、一人称である「私」は語ることができず、三人称という「it」でコトはすまされないコトでもあります。「死」という具体的状況は、結局二人称である「あなた」とかかわる中で知り得ることです。

★さらに私は自分の「誕生」も語り得ません。記憶としてあるという話もありますが、実感はないですね。かくして、私自身は、私自身の「誕生から死」までの歴史を完全に語ることはできません。二人称とのかかわりの中で物語るコトができるだけです。

★学校というのも、同様ですね。私は、勤務校の誕生の時を知りません。勤務校の「死」を迎えるコトも知り得ません。しかも、学校組織は私と違い「死」を迎えるコトは、森と同じで悠久のかなたでしょう。

★学校の歴史は、いまここで学校のメンバー、学校の置かれた状況などとかかわるコトでしか物語れないのです。

★かくして、自分事としての歴史は他者と向き合い関わり合うコトでしか物語れないのです。

★落合さんと養老さんの対談で、そのかかかわる他者には、当然人工と一体化した自然に広がっていきます。落合さんの新しいテクノロジーと自然が一体化した概念「デジタルネイチャー」と「老い」はどう向き合うのか。それが問題です。

★「老い」はデジタルネイチャーと向き合うコトで、エントロピーの増大を遅らせ、持続可能な状態という「変容」を生み出します。「私」は日々細胞の多くが入れ替わることによって、持続可能な変容を生み出しています。

★一方、「老い」は、放っておくと、その変容ができななくなり、それが止まった時、「死」を迎えます。そうならないためには、持続可能な変容という一見パラドキシカルな行為を余儀なくされます。それがデジタルネイチャーと向かい合うコトです。身体の一部が器械で代替されたり、臓器の一部が人工臓器で代替されたり、衣服もスーパースーツになったり。。。

★どうですか?学校が変容するというコトは、まるで、「老い」が持続可能な変容をとげるのと似ているでしょう。成績や勤怠処理のデジタル化やオンライン授業、AIによる個別最適化。。。

★学校もまた、デジタルネイチャーと向かいながら持続可能な変容をしていくのです。デジタル化、グリーン化がキーワードなのは、そういうことなのでしょう。そして、向き合うコトや関わるコトというのは、一人称や三人称を二人称化する気遣い=ケアということでしょう。

★デジタル、グリーン、ケア。DGCシステムの活用を持続可能な変容を生み出すプロジェクトにするコトが、学校が変容するコトと重なるでしょう。

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2022年2月14日 (月)

21世紀型教育研究センターの先生方との対話で感じる新しいリーダー像

★中学入試、高校入試、大学入試の合間で、21世紀型教育センターのリーダーがZoomに集いました。若きSGT(スーパーグローバルティーチャー)のことや生徒のことで話が湧きました。ライフシフトの時代を豊かにハッピーにするのは、Z世代の教師や生徒です。善き社会を創るには善き人間が必要ですが、リーダーの皆さんの話は、三人称ではなく、二人称としての具体的な状況における存在の重要性についてです。そして、その具体的状況の中に確かに未来のプロトタイプが生まれています。

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★リーダーの対話に耳を傾けて、岸見一郎さんのことを想いだしまた。新しいリーダー像として、叱らない、ほめない、命じない、それでいて勇気づける言動が輝いています。

★一般には耳の痛い話も、はぐらかさず、誠実に正直に語ります。

★しかし、その言動に触れている方は、自分の心の底から勇気が湧いてきていることに気づきます。

★学校のあり方を否定することなく、肯定しながら、パラレルに新しい学校の実存が新しい次元で生まれます。

★パラレルワールドメイキング。ああ、これだなと。多様性は、かくして平等に自由にそして友愛を生み出しながら生成されるのだと感じ入りました。

★具体的なデジタルワールド構想は、いずれご報告します。

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2022年2月12日 (土)

思考コードについて近頃感じるコト(02)外延の明快さと内包の深遠さの多面体 明快さだけでは社会課題は解決しないが、わかりやすさの神話が内包の深遠さにマスクをかける ICTの個別最適化がクリエイティビティを阻むかも ICTのパラドクスを解くために外延と内包を往復する

★最近というか、昔から、常に<わかりやすさ>という<ひとの壁>(養老孟司さん風に)にぶつかっています。教育現場では、そう簡単ではないからというわけではありません。現場は<わかりやすさ>を求めて<複雑>にするのが常です。というのも<わかりやすさ>とは大切なプロセスや一貫性をつくるための関係性をショートカットしてしまうのです。

★ショートカットは見た目は合理的ですが、プロセス循環を無化するので、非合理的な場合もあります。ところが、このプロセス循環は目に見えませんから、思考停止しているとショートカットしてしまいます。これは何も教育現場に限らず、<わかりやすさ>やAIなんかで<効率性>を求めることを鼻を膨らませて得意げに語る方々にあるあるケースですね。それもしかし、世の常です。

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★だからといって、ICTやWebを否定しているわけでは毛頭ありません。実際この3週間は、オンライン授業でしのぎました。ですから、目に見える明快な部分ももちろん必要ですが、これは外延的な表現です。その表現の背景に関係性が入れ子のようにつながっています。これは目に見えないというレトリックは使いますが、目に見えない=わかりにく=ないものにしようという短絡思考、つまり思考停止してしまうのも世の常です。

★養老孟司さんは、こういうのをかつて<バカの壁>と呼んだわけですね。

★でも、<バカの壁>の真骨頂は、その目に見えない部分を<わかりやすく>表現してくださいよお~と著作権を平気で奪取するような口調で語ってくるのです。しまいには、わからないのはあなたのせいだと夜遅くに電話をかけてきたりする始末です。かつて思考コードの件ではよくどなられました。そのような叱るのを何とも思わない人材のいる職場がハッピーなわけないですね。

★かくして、思考コードを巡っては、組織のリーダー論が透けて見えるリトマス試験紙にまでなってしまっているなあと最近つくづく思います。もちろん、勤務校では、すんなり思考コードを活用して対話できるし、仲間の多くの学校の先生方とも語り合えます。そういう学校は、生徒募集がうまくいく傾向にもあります。

★ところが、思考コードについて対話している時に、対話ではなく正解を教えてくださいという場になってしまうときがあります。それは思考コード=ルーブリックだと外延的表現に固定して考えたいというインストラクション型症候群の人に多いですね。

★図に表したように、思考コードは、左の図のように9つの領域を外延的表現であらわしています。しかし、実際授業という生ものでは図の右のように、9つのそれぞれの領域に入れ子のようにまた9つの思考コードが現われるのです。思考コードのフラクタルになっているのです。これが思考コードの内包的関係性です。

★この複雑性に耐えられなくなって、ルーブリックでインストラクションしてしまおうという思考停止が生まれる現場では、知の雰囲気がふくらまないのです。インストラクション型症候群が蔓延してしまうでしょう。

★インストラクション型症候群蔓延防止のために、対話は欠かせません。勤務校の数学科の教師と入試問題研究をしていると、その問題をC軸思考という深淵にアクセスするにはどうするかとか、A軸の問いの中でもC軸はマインドセットできるねとか関数関係の話になります。複素平面的どうのこうのとかなっていくと、私はついていけなくなりますが、私の役割は場が知の雰囲気を膨らませていくようになる触媒ですから、いいねいいねと思っています。

★かつて私がいいねいいねというと、楽観的だとか軽薄だとか深くないとかおよそ軽薄なことを深刻な顔で強迫観念的表情で向かってくる人もたくさんいましたが、創発の機会損失を行う養老孟司さん風にいうと<バカな壁>同然の人もいましたね。

★一方で、探究だ、個別最適化だとか、すてきな試みですが、思考コード=ルーブリックになると、実は偏差値とあまり変わらないのです。いやむしろ基準を恣意的に固定することになっていることに気づいていないという厄介な雰囲気が生まれる時もあるのです。

★関数というのは、たしかに図式化すると座標軸が現われますが、座標軸はいったいどこに設定されているのでしょう。見える化は固定化です。<わかりやすい>ですが、そこで終わらず、再び関数方程式化する必要があるでしょう。つまり見える化は外延化であり、関数方程式化は内包化です。

★数学的思考とは、外延と内包を自在に往復できることです。外延は個別解です。内包は全体解です。個別解と全体解に分析するのが固定化であり、その両方を往復するのが統合です。したがって、数学的思考とは、思考そのものです。

★論理的思考とか批判的思考とか創造的思考とかは個別解です。全体解は思考コードです。そしてその外延という明快さと内包という深遠さをルビンの壺発想に収めるのが統合です。

★最近は、こんな話をしてもだいぶ平気だし、このような対話ができるプロジェクティビストの先生方は、極めて実存的で合理的で成果も生み出します。ぶつぶつ不平不満を言ってくる人は、実は何もやらない人だし、好きなことしかやらない人です。

★合理的で数学的な思考をフルに生かしている教師が、何かあったら人知れず朝5時くらいに出勤していたり、さっさと帰宅したかと思えば、構想アイデアを自宅で創って、メールで送ってきてくれたりします。学校が違うにもかかわらず、夜遅くZoomで助言してくれたり、それぞれの学校にいるのに、援護情報を送ってくれたりするのです。互いに苦戦もするときもありますが、必ずや乗り切り、突出した成果に到るものです。

★身体感覚で申し訳ないのですが、共感共振は相互にエンパワーし勇気づけ、善き雰囲気を広げます。市場を浄化するのです!新しい資本主義とは、システム改変も必要ですが、すぐにできることは市場の浄化プレイヤーの協働です。そういうプレイヤーを私はプロジェクティビストと呼びたいと思います。

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2022年2月11日 (金)

思考コードについて近頃感じるコト(01)共通言語化しつつある。

★首都圏模試センターが、思考コードをロゴ化するほど、中学入試市場では、思考コードの共通言語化が広がっていると感じる今日この頃です。実際、新タイプ入試を行う学校の先生や受験生、イノベーティブな教育関係者とまで、この問題はC軸問題だねとか、A軸の問い中にどうC軸の問いを潜在化させるかだねとか対話するようになりました。晶文社が「首都圏中学受験案内」に各学校の入試問題を思考コードで分析して3年以上経つと思いますが、その影響も大きいですね。

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★また、ここ数年、そしてさきほども、京都橘大学の池田修教授(発達教育学部 児童教育学科)とメールのやりとりをしていたのですが、池田先生は未来の教員を育てる時に、その学生と思考コードを共有しています。

★児童が楽しく探究する授業デザインを、学生とPBL型で展開しています。最終的には、学生も児童もパブリックオーディエンスにどう表現するかそのデジタル方法を巡っても研究が進んでいるということです。

★そのとき、思考コードが共有されているなんて、生みの親(ということになっているらしい^^;)としてはワクワクしてきます。

★大事なことは、思考コードで児童や生徒、学生、教師、一般市民が、それぞれクリエイティビティを発揮できるような問いを生み出して、楽しくハッピーに生きていく契機になればよいのだと。そしてそれぞれがみなそうなることは、互いに貢献し合う社会になるのだとシンプルに思う近頃なのです。

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2022年教育動向(20)八雲学園の最強経営戦略 3人の副校長の教育と経営のグローバル戦略

★八雲学園は、今年の中学入試の募集結果を公表しました。単年度だけではなく、3年度分。実受験者数も織り込まれています。もちろん一般入試も帰国生入試も公開。両方合わせた出願総数の前年対比は、115.2%。一般入試の受験率は47.5%。帰国生の受験率は100%です。この結果が出たことは、2021年4月からの新体制と2022年度から学費を上げる決断の両方の成功を意味します。私たち私学の経営戦略にとって極めて重要なロールモデルです。

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★新体制とは、3副校長体制になったことが大きな変化でしょう。しかも、3副校長と対話していると、役割分担ではないんですね。教育のベースは共通していて、経営部門で、グローバル広報戦略、国内広報戦略、21世紀型教育広報戦略=ラグビー精神戦略の3つのベクトルが合力になるようにロールプレイする体制になっているのです。最強ですね。

★そしてもう一つ教師同窓力ベクトルというのが、合力に加わります。このベクトルはラグビー精神戦略の賜物でしょう。

★その結果、感動的な生徒の成長力が生成されています。

★それから、学費を値上げしても、出願が増えたということは、実はマーケティング戦略が、前回紹介した「突出型」と「共感型」の両立を仕掛けているため、シナジー効果が現われたのです。

★八雲学園の中学は、Z世代誕生年である1995年に再開したのですが、そのときから八雲学園の教育の総合力を支持している絶大なる受験市場をずっと大切にしています。この点では共感型マーケティングです。

★ところが、受験市場の中には、教育の総合力より塾歴社会のニーズを満たすエリアも21世紀になって生まれています。そこで受験勉強している受験生の保護者は、実はこの共感型市場にはいないのです。したがって、共感型マーケティングだけだとそこの保護者に八雲の教育が届きません。

★そこで、2013年ころからグローバル教育広報戦略を着々と進化させてきました。すると塾歴社会から向こうに本当の教育があるのではないかと気づく受験生・保護者が現われてきたのです。これは突出型マーケティングですね。

★また、この突出型マーケティングによって、遠くの世界で学んでいた帰国生にも見えるようになってきました。

★既存の塾が、このことに気づき、この突出型市場を取り込むことによって、自分たちも市場創出の機会を得られるということにもなってきました。つまり、非塾歴社会の受験市場にとっても有益なのです。

★八雲学園の新体制に到る道のりの中で、この突出型と共感型の2つのベクトルが合力をつくったともいえます。

★わたしの勤務校でも、3副校長というタイトルをつけるわけにはいきませんが、そのロールプレイを参考にして組織を創りたいし、教師同窓力を少しずつ広められるよう状況にもなってきたかなと思っています。とはそっくりそのままとはいかないので、アレンジしなくてはなりません。そういったことをいつも気づかせていただき、ありがとうございます。

 

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2022年2月 8日 (火)

2022年教育動向(19)聖学院と工学院 生徒を集める2つのポジショニング 突出型と共感型

★中学入試がひと段落したとホッとしている間もなく、今週高校入試。雪が心配ですが、互いにメールで励まし合いながら、聖学院の広報部長・国際部長・21教育企画部長それからとにかくマルチペルソナの児浦先生と工学院の教務主任で共感的コミュニケーションベースの田中歩先生と情報交換。詳しくは高校入試終了後にということなので、いただいたメールから推理したこと、つまり独断と偏見をメモしておきたいと思います。一部は、前回ご紹介した新渡戸文化の先生方と対話したことも含まれます。

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★聖学院も工学院も上記の図のNew Value School Zoneに入っているのは言うまでもありません。そして、今年の入試は、両校とも出願総数前年対比は、聖学院113%、工学院154%と受験生が集まりました。受験率の平均も聖学院は68%、工学院は62%とかなり高いです。

★児浦先生と歩先生は、21世紀型教育センターのリーダーで、アプローチは違いますが、破格の21世紀型教育を推進し、若手教師をSGT(スーパーグローバルティーチャー)に育成するセミナーを開催しています。

★New Value Schoolを生み出すプロフェッショナル教師です。

★そんな学校ですから、中学入試では注目を浴びているわけです。ただ、その広報戦略は違います。今年は聖学院は、突出型のポジションで広報活動をしました。工学院は共感型のポジションで広報活動をしました。

★ところが、面白いことに、聖学院は3年くらい前は、ポジションニングは共感型でした。工学院は突出型です。

★聖学院ははじめは共感型で、New Value School支持者のみならずそうでないソーンの価値観の受験生・保護者にも目配り気配りしていました。その過程で、思考力入試という強烈な理念メッセージの新タイプ入試で、2科4科で受験する生徒にも、その理念を共有することに成功しました。それゆえ、分厚いファーン層をアセットしたのです。

★ですから、その層を基盤に、全天候が広報ではなく、突出型ポジショニングで生徒募集ができるようになったのだと思います。聖学院理念キャピタルとなったわけです。

★工学院は2014年のプレ21世紀型教育改革から理念先行の突出型ポジショニングで広報活動を踏ん張ってきました。立ち上がり当初からインターナショナルコースをぶち上げ、それは着実に成果をあげましたが、破格過ぎて、英語で入試をしない受験生には、遠くの存在でした。つまりアセットの蓄積が少し足りなかったのです。理念キャピタルが有効にならなかったのです。

★ところが、このコロナ禍で、オンライン授業をベースにICT教育の理解が受験市場で理解されるようになったのを機に、いったんNew Value School市場以外の市場の支持者の共感を得る広報活動に転換しました。それが今年の人気爆発の大きな理由でしょう。つまりファン層アセットを拡大したのです。

★一年単位で見ると、ポジショニングは2つあるように見えますが、それはファン層の厚さによってポジショニングを変えるというのが、広報活動のよき戦略なのかもしれません。つまり、これは新しいBS(バランスシート)の考え方で、今のところ、教育領域のBSです。しかし、これがライフシフト時代の各人のための新たなBSになります。ビジネスBSもやがて新しいBSにシフトするかもしれませんが、日本は産業構造上なかなか難しいですね。

★それゆえ、海外大学進学準備や総合型選抜準備に両校は力を入れています。このトランジションは、新しいBS活用によってライフシフトに対応できます。勤務校も総合型選抜準備に力を入れているのはそういうわけです。もちろん海外大学に進学する生徒もいます。

★ともあれ、両校は、この両方のポイショニングを往復することによって、本物のファン層=ファミリーを拡大していっているんだと思います。そのファミリーは多様性が保証されています。

★もしこれをどちらかにすると、ある危機が訪れます。突出型を続けすぎると、ファン層が固定します。共感型だと、やはりファン層が固定します。

★突出型だけだと先細りになります。共感型だと塾歴社会の危機があります。つまり受験生がある塾生で占められてカリキュラム理念が右に置かれます。

★マーケティングは突出軸と共感軸、つまりクリエイティブキャピタルと無形アセットのという新しいBS関数でマネジメントしていくというのが、どうやら持続可能性を生み出すということです。

★ただし、これは中学入試の話で、高校入試では、New Value Schoolゾーンにいる場合、共感型でいくしか今のところないのです。市場自体がまだNew Value Schoolの無形アセットを欲していないからです。

★工学院は聖学院と違い、高校入試の定員も多いので、その部分は、私の勤務校(高校だけの学校)と同じです。

★しかし、聖学院はGICという突出したクラス1つ分の募集ですから、共感型である必要はないのです。新しい高校入試の広報戦略のモデルになる可能性大です。

★New Value Schoolの高校入試戦略は、聖学院の強烈なアテンションによって、高校入試市場において、無形アセットを欲している潜在的ニーズを顕在化する新たな展開が開示されます。

★しかも、聖学院は23区にあります。工学院と私の勤務校は都下にあります。マーケットの性格が全く違います。つまり、アセットの質が違います。

★中学入試は、全国の同学年の10%の生徒が通う特異点マーケットです。高校入試は残りの90%という標準マーケットです。

★その標準マーケットの価値意識の転換ができたら、そして中学入試がその転換の先駆け者であるなら、日本社会は大きく変わります。

★ある地域だけでは、全体を動かすことができません。これからも協働をお願いいたします。

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2022年教育動向(18)新渡戸文化学園の先生方との対話を通して②Zone & Area

★New Value SchoolのZoneと生徒が集まるAreaを重ねてみることにしました。すると、中学入試と高校入試では違いがでてくることを確認し合いました。

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★中学入試の場合は、新タイプ入試を行う首都圏私立中高一貫校は毎年増えています。もはや3分の1の学校が実施しているでしょう。新タイプ入試を実施する学校の多くは、New Value School Zoneに位置します。

★新渡戸文化学園も同様です。しかも、ぶっちぎりでC軸思考ですから、生徒が集まるエリアから少し離れますが、それでも昨年比165.5%ですから、中学入試のNew Value School Zoneに位置する受験生・保護者が増えてきたということでしょう。

★同校の場合、はじめからα世代を対象にした探究的な学びを行っていますから、ちょうど今年の受験生とマッチングしている可能性があります。ただ、市場がまだようやくZ世代を意識し始めたばかりですから、少しズレがあります。しかし、来年以降はα世代は注目されていきますから、中学入試市場における新渡戸文化学園はさらに受験生が集まるでしょう。

★一方で、高校入試におけるゾーンとエリアは次のようになります。

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★まだまだ高校入試においてNew Value Schoolは認知されていないわけです。それゆえ、勤務校は20%ルールから始めているわけです。もともと定員が80名ですから、従来の高校入試市場にわかりやすいように語る必要があるからです。

★東京の高校入試の場合は、推薦入試と併願優遇入試が2本柱です。第一志望入試やフリーで受ける入試もありますが、出願はそう多くはありません。この制度は、中学入試から見ていると分かりにくいと思います。高校の場合は、98%進学ですから、そこは、中学入試のように競争主義は限定的で、公正な配分主義がベースです。

★それゆえ、中学入試における新タイプ入試を多様に花咲かせることは事実上難しいのです。

★ですから、推薦入試で問いの中に、メッセージを込めるという創意工夫を各校行うのです。

★そういう意味では、6500人くらいの受験生は、潜在的なNew Value School志望者で、それを掘り起こすことはできます。

★まずは、ここから始めるわけですが、それは、高校のNew Value Schoolの価値が広まっていないからです。もし広まれば、まずは潜在的なNVS志望者は顕在化します。

★そこからようやくウネリが出てきます。推薦入試の創意工夫とNVSどうしの啓蒙活動。前者の努力は各校実施していますが、内包されているので、外には見えにくいですね。後者は外延的表現になりますから、見える化できるのですが、一校一校バラバラにやっていると、インパクトは生まれません。

★しかし、高校入試の場合、わたしたちはNew Value Schoolですと宣言するわけにもいきません。したところで、見向きもされないでしょう。それは、なぜか中学入試にはない要因があるのです。それはご想像にお任せいたします。

★それゆえ、別のプロジェクトが必要になるのです。

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2022年教育動向(17 )新渡戸文化学園の先生方との対話を通して①New Value School Zone

★昨日1時間ほど時間を頂いて、新渡戸文化学園の先生方とZoom対話をしました。中学入試がひと段落したようですが、また今週すぐに高校入試があるという忙しい中、インスピレーションをいただき、ありがとうございました。ここで私なりにリフレクションして、この1年新しい企画を共にする同志の皆さんと共有できたらと思います。

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(新渡戸文化学園の理念のシンボル。たしか在校生が描いたと記憶しています。違うかもしれません。とにかく、同校サイトからです)

★新渡戸文化学園の先生というのは、次の3人です。統括校長補佐・教育デザイナー山本崇雄先生、統括校長補佐・教育デザイナー山藤旅聞先生、ブランディングデザインチーフ・ラーニングテクノロジーデザインチーフ奥津憲人先生。それぞれのタイトルが、一般の学校と違います。肩書きというより、それぞれのペルソナを感じます。このような点に敏感に感じる進取の気性に富んだ受験生や保護者が、同校を志望するのでしょう。

★今年の中学入試は、先生方は手ごたえを感じているということでした。首都圏模試の出願倍率速報(2022年2月7日現在)でも、出願総数の前年対比は、165.5%ですから、中学入試の市場における同校支持者がかなり増えたことは間違いありません。

★勤務校からは、私とプロジェクティビスト伊東竜先生でした。私たちは高校だけの学校ですが、新渡戸文化学園同様、New Value Schoolを標榜しています。この言葉自身はこれからですが、21世紀型教育推進校です。

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★座標でいえば、上記のような感じです。新渡戸文化学園も勤務校も、「思考コード」を共有しているので、上記のような座標を分かち合う時に、説明がほとんどいりません。

★A軸思考というのは、知識・理解という思考の軸です。B軸思考というのは、A軸で獲得した知識や理解したことを、別の場面や相似した内容に適用したり、論理的に構成し直したりする思考の軸です。C軸思考は、適用や再構成そのものをクリティカルに見直し、少し進化させたり、構築し直したりするクリエイティブな思考の軸です。

★しかし、もともと知識は誰かが作ったり発見したものですから、知識もまたC軸思考の産物です。ですから、その作ったり発見したりするC軸思考をまずはやってみようと稼働させるところから始まったり、それをカタチにするために論理的に整理したりするB軸思考を活用する学びから始まるのが、New Value Schoolの共通教育ベースです。

★知識はその過程で、当然取り込みますし、調べ直します。知識が不要なのではなく、知識の出来上がるプロセスで働くB軸・C軸思考を優先しているだけです。ですから、山本先生は、あの有名な言説「教えない授業」「教えない教育」という象徴的な表現をしています。

★勤務校は、教えない部分は20%ルールで、教える部分と教えない部分を意識して授業をするので、完全に山本先生方の実践と同じということはないのです。とにもかくにも、新渡戸文化学園のその教育は理想的です。

★ところが、このことは実は中高一貫校と高校だけの学校との違いでもあります。そして、新渡戸文化学園も併設型中高一貫校ですから、高校から入ってくる生徒もいます。

★すると、中学入試と高校入試は同じよう感覚で行きたいものの、現状ではそうはいかない。それはなぜか?そして、それを乗り越えることはいかにしたら可能か?そこの課題意識は私たちと同様です。ですから、そこをどうシフトするのか、まずは改めて、課題意識の共有をしたわけです。

★対話それ自体は、1時間ほどだったので、一応はそこに到達して終わりでしたが、チェックアウトしたときのそれぞれのメッセージが次の対話を予想する問いでもありましたから、しばらくその問いの解答につながるかもしれない視座を広げてみたいと思います。

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2022年教育動向(16 )今年人気が高かった学校や注目されたこと 2月1日から始まった中学入試1週間の期間ログ

★2022年中学入試もひと段落。2月1日から7日までが中学入試のピークでもあったので、その間の本ブログのアクセスランキングベスト30まで見てみましょう。今年高人気だった学校がわかるし、同時に私のプライベートブログにまでアクセスされているぐらいですから2023年も引き続き人気となる学校でしょう。

1:2022年教育動向(02)麻布の国語 傑作!中学受験生だけではなく大人も...
2:2022年教育動向(01)2月1日注目校から思うコト
3:2022年教育動向(08)2月1日 東京 私立共学中学入試の前年対比95...
4:2022年中学入試 三田国際の「超人気」の意味。
5:2021年中学入試情報(38)工学院大学附属 応募者数 前年を上回る勢い...
6:【速報】GLICCの成果 英語と思考力で楽しく深く学んで合格する時代 ク...
7:2022年教育動向(07)2月1日 東京 私立男子中学入試の前年対比95...
8:2022年教育動向(03)開成の国語も超長文。
9:2022年教育動向(06)2月1日 東京 私立女子中学入試の前年対比95...
10:2021年中学入試情報(39)横浜創英 応募者総数 前年を上回る!工藤勇...
11:2022年教育動向(12)聖学院の人気の理由の質が変わった
12:2022年教育動向(05)やはり工学院大学附属中学と文化学園大学杉並注目...
13:2022年教育動向(11)2月1日 神奈川 私立共学中学入試の前年対比9...
14:2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(35)三田国際が突き抜...
15:2022年教育動向(14)聖学院の思考力テストが、学びの質を変える  「...
16:2022年教育動向(04)武蔵の国語も超長文。メタファーの解読。
17:2022年教育動向(15 )工学院が今年人気だった理由 一般中学受験市場...
18:三田国際学園 世界の学校へ突き抜ける 2027年中学受験地図はガラリと変...
19:2022年教育動向(13)大妻中野 中学入試の段階から多様性
20:2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(42)インターナショナ...
21:2022年教育動向(09)2月1日 神奈川 私立女子中学入試の前年対比9...
22:2021年中学入試情報(07)かえつ有明が躍進するわけ 1月29日、副教...
23:2021年中学入試情報(18)品川翔英 はやくも前年対比112.2%: ...
24:2021年中学入試情報(22)新渡戸文化学園の存在の意味が広がる。新しい...
25:2022年教育動向(10)2月1・2日 神奈川 私立男子中学入試の前年対...
26:2021年変わる中学入試(14)海外大学へそして偏差値至上主義の無化へ加...
27:思考コードがつくる社会(07)ブランドを切り崩すブランド戦略 洗足 vs...
28:【速報】かえつ有明中学校 2022年国際生入試 出願また増える
29:2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(38)文化学園大学杉並...
30:2021年中学入試情報(11)フェリス女学院応募者増の意味 

★それぞれの学校の記事と同時に、今年一年の教育の新しいビジョンについての記事も共有されていますから、新しいウネリも続くのだと思います。

★それにしても、ここにあがっている学校は、すべて出願総数前年対比100%以上です。ほとんどがサーチエンジでアクセスされているので、当然と言えば当然ですが。

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2022年2月 6日 (日)

2022年教育動向(15 )工学院が今年人気だった理由 一般中学受験市場でも支持された。

★本日、先鋭的な21世紀型校育を推進している工学院の最終中学入試が行われました。あとは今夜の合格発表で無事終了するでしょう。先ほど、教務主任の田中歩先生から、一報有りました。今年の中学入試は出願者も受験者も昨年を大きく上回りました。手続き率も昨年より伸びそうです。詳しくはまた!というメッセージでした。

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★今年工学院が超人気になった理由は、実は、一般中学入試市場で支持者が増えたからです。従来は、21世紀型教育を推進している学校を志望するマーケットで認知されていましたが、今年は、そこから一般市場でも支持者が増えたのです。

★21世紀型教育市場は、新タイプ入試市場と重なります。しかし、これは首都圏市場全体の20%シェアです。新しい教育を知っている玄人好みの市場です。また帰国生など国際バカロレアの状況をよく知っている進取の気性に富んだ保護者がたくさんいる帰国生・国際生市場とも重なります。この市場は、全体の6%シェアです。

★したがって、これまでは工学院は爆発的に応募者を増やすというわけではなかったのです。結構耐えたと思います。2013年から21世紀型教育を推進し、ともすれば、辞めようかと迷った時期もあるかもしれませんが、貫き通した結果、2022年入試はある意味爆発したといってよいでしょう。

★首都圏模試センターの出願倍率速報(2022年2月4日現在)で、出願総数の前年対比は151%でした。最終的にはもっといっているでしょう。

★この結果は、21世紀型教育市場や帰国生・国際生入試市場以外に、一般中学入試市場でも工学院は注目されたからなのです。それは、大学通信が調査している学習塾の先生方のアンケート結果に反映していました。

★この調査は、首都圏の学習塾にアンケートを実施し、289学習塾の塾長、教室長から回答を得ているものです。項目別に学校を5校連記で記入してもらい、最初の一貫校を5ポイント、次を4ポイント……として集計しているようです。

★この項目は、5つあります。そのうち3つの項目で、工学院はランキング入りしているのです。それだけ、工学院が支持されているということを示しています。

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★特にICT教育に力を入れている学校という項目では、第1位です。グローバル教育については、第9位。理数教育に力を入れている学校については14位です。

★大学通信のサイトでは、30位まで掲載されていますから、この結果は、相当評価が高いとみなすことができるでしょう。

★この5つの項目に、工学院と同志校である21世紀型教育機構のメンバー校6校(加盟校は10校です)はいずれに入っています。グローバル教育に力を入れている学校では、ちなみに八雲学園が第1位です。

★工学院の支持者が、21世紀型教育市場、帰国生・国際生市場から一般市場に広がったことによって、今後21世紀型教育機構のメンバー校全体にその影響が広まっていくでしょう。その意味でも工学院はさらに進化を目指すことになると思います。

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2022年教育動向(14)聖学院の思考力テストが、学びの質を変える  「りんごの世紀」

★聖学院のサイトによると、今年のM型思考のモチーフは「雲」グローバル思考力入試は「くだもの」だったようです。「雲」であれ、「くだもの」であれ、共通点は、センス・メイキング。既存の事実の背景に隠されている関係をたぐりながら、新しい知識を創る。新しい知識を創るということは、その時点で世界をデザインするということです。既存の世界を経めぐり、そこに自分の存在がかかわるオリジナルな意味を見出し、それを多くの人びとと分かち合う世界作り。

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(アーティストnanaに油絵「りんごの世紀」を描いてもらいました)

★知識と思考。よく鶏が先か卵が先かに近い議論をする人々がいますが、知識は思考の物象化(モノ化)であり、思考は物象化された知識を拓き(コト化)、新たな概念を創る作用です。どっちも必要なんだけれど、誰でも新しい知識を生み出しているというところが、一般には忘れ去られています。その生徒1人ひとりのセンス・メイキングのあり方こそ、才能です。

★その才能は、しかし、生徒は自分自身大発見だとは思わず、一瞬にして忘れてしまいます。また、そんな思い付きではダメだ、ちゃんとその知識の定義を確認しなければという通俗的言説で、消し去られます。

★何人かの人々は、こだわり、誰が何と言おうと追究します。そしてその才能がやがて認められます。生前は無理でも死後にということも少なくありません。こうして、大多数の場合は、無形のアセットは、気づかれないまま埋もれていくのです。もったいないですね。

★ところが、聖学院の思考力入試は、その無形のアセットを大事にします。多くの先生方がテストの最中に生徒の言動を観察します。どんな無形のアセットを生み出しているのかと、そして、そのアセットをテコにどんなクリエイティブなキャピタルをプレゼンするのかと。

★受験生は、入学前から、その自分の無形資産と創造資本を認められ、それを知の財産として、入学後6年かけて増やし、活用していくわけです。これをクリスチャンスクールでは、タラントを豊かにすると言います。

★では、2科4科では、それは見つけられないではないのでしょうか。2科4科では、有形資産である、既存の知識をどれだけもち、学力資本として、それをどのくらい活用できるのかを見ます。そして、有形資産と学力資本をもっている生徒は入学後、無形資産と創造資本が豊かな生徒から刺激を受け、無形資産と創造資本をつくっていきます。また逆に有形資産と学力資本が不足しがちな生徒は、それを豊かに持っている生徒からわけてもらうわけです。

★コラボレーションとは、この2つのアセットと2つのキャピタルを結合し、活動資本を生み出すことを意味します。活動資本は、必ずしも活動資金を意味しません。もっと大きな広がりを持っています。

★それゆえ、ケンブリッジは口頭試問で、「りんご」を説明してご覧?と問いを投げかけるのです。「りんご」からどれだけ知の風呂敷を広げられうのか。その広がる先のエッジでどんな新しい知識が発見されたり生成されるのか?

★このような思考の作用について、あの落合陽一さんも次の本でズバリ語っていますね。

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★またそのような思考力は、ライフロングもので、幼稚園から育てられるとよいよねと。これは聖学院の思考力入試に長年関わって、今は幼稚園の理事長である内田先生の発想でもあり、それはレゴシリアスプレイの生みの親の1人、MITのレズニック教授の考えとシンクロしています。

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★そして、落合さんもレズニック教授も100年の学びを考えていて、まさにライフシフト時代の学びを語っているのです。アダムとイヴ以来、私たちはずっと「りんご」の意味を考えてきたわけですが、今再び「りんごの世紀」という新たな学びのシンボルが現われてきたわけです。

★その知のシンボルを、思考力入試を介して聖学院は投影したのです。「りんごの世紀」というプロジェクトの誕生ですね。

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2022年教育動向(13)大妻中野 中学入試の段階から多様性

★大妻中野の中学入試がひと段落したので、教頭諸橋隆男先生と少しやりとりをしました。すでに首都圏模試センターの出願倍率速報で、総出願数の前年対比は、109%だったのは知っていましたから、今年も人気だったというのは認識していました。そして、今回実受験者数の状況をお聞きし、量が増えただけでの話ではなく、多様性という質の変容もあったことに気づきました。

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(写真は、大妻中野のトップページから)

★特に海外帰国生入試と新思考力入試、グローバル入試は、激増でした。出願総数の前年対比は、帰国生が124%、新思考力が140%、グローバルが141%でした。

★教科テストである2科・4科入試も増え、新タイプ入試も増えたのです。

★中でも、グローバル入試は驚きです。帰国生入試との併願も多いので、実質倍率は1.0倍でしたが、2ケタ台の生徒が合格しています。そして、重要ポイントは、入試科目をみると、受験生はかなりハードルの高い条件を要求されているということです。このような厳しい条件にチャレンジした国内生がいたのだと驚かざるを得ないのです。

★その条件とは、英語だけの入試ではなく、国算も受けなければなりません。しかも英検準2級及びそれに準じる他の英語資格試験のスコアが必要なのです。ただし、2級以上だと、面接(日本語・英語可)だけでよいというのです。英検準2級は、普通中3で取得しても凄いねといわれるレベルです。それを課し、さらに2級以上も。2級で上智や立教の総合型選抜はクリアできてしまうというのに。

★現状で、ここまでの小6生は一握りです。にもかかわらす、大妻中野に集結するとは。それだけの魅力を感じ取っているのでしょう。

★かくして、このような4種類の入試のどれも出願数が増えて、それぞれ特徴を有した受験生が果敢にチャレンジしているのが大妻中野です。

★カリキュラムはすでに多様性対応ですから、入試も多様性対応になるのは当然ですが、これはライフシフト時代に対応できる教育環境が整っていて、かつ毎年進化していることを示しています。2023年も楽しみですね。

参考)GLICC Weekly EDU 第23回「New Power Schoolへの道ー大妻中野中学校・高等学校 諸橋先生との対話」

 

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2022年2月 5日 (土)

2022年教育動向(12)聖学院の人気の理由の質が変わった

★今年の聖学院の出願総数の前年対比は、112.3%。前々年比は126.9%。したがって、年々市場の評価は高くなっているのです。その理由は、いろいろありますが、注目したいのは、Only One For Othersという理念が、今回のパンデミックショックで、ひとり聖学院のものだけではなく、世界中の人の胸に響いたということです。今自分たちが人間としてできることは、困っている人々をどうケアし、共に困難をいかに乗り越えていくのか。真正面からこの理念を引き受けることが、たんに道徳的使命ではなく、人間の存在の根源から湧き出ていることであるという共通認識が世界に広がったことでしょう。

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(写真は、同校サイトから)

★つまり、私たちは「リンゴの世紀」であることに再び気づき、新しいやりかたでその人類の大問題をα世代、Z世代と共にクリエイティブに駆け抜けようとしています。しかしながら、それは言うは易く行うは難しです。それを実践している学校はどこか?その代表格が「聖学院」です。偏差値という仮象の基準を捨て去り、人間存在そのものを問う言葉と行いを追究する思考力と共感力とパッション(情熱以上の意味があります)を基準に教育を行っています。

★今までの受験市場に、そのような誠実かつ進取の気性をもったプレイヤーが現われたわけです。いや、そのようなプレイヤーを10年かけて、覚醒し掘り起こしてきたと言ってよいかもしれません。その革新的姿勢を、従来の受験市場に右顧左眄するのではなく、聖学院は、誠実に正直に語り続けてきた結果、それが今の人気になっているのでしょう。

★そして、その革新的姿勢の粋が、聖学院の思考力入試です。この試験の方法はあまりにも有名なので、私が説明する必要はないでしょう。それに同校のサイトに行けば、その様子を見ることができます。ぜひご覧ください。

★いずれにしても、聖学院の人気は、もちろん、今でも面倒見がよいから、大学進学実績が伸びてきたから、破格のグローバル教育を行っているから、デジタル化の進化が凄まじいから、PBL型授業が好奇心、自己開示、クリエイティブシンキングを開発するからなどなどは当然のことながらあるでしょう。

★しかし、それはもはや同校の目的でも目標でもなくなっています。それがゆえに、生徒1人ひとりの才能を生かし、その才能を社会実装するカタチに転換することで、大きな成長=自己変容の翼を広げることができるという確信を抱ける市場の支持者が多数登場させることに成功したということでしょう。

★このことは、聖学院の人気の量が増えただけではなく、質も変わってきたということを示唆します。

★それから、グローバル思考力入試を終えて、帰ってきた知人の合格者が、「おもしろかった!自分のアイデアや意見を語ることができました。C軸思考最高!」と語ってくれたのです。思考コード使っているんだとふと思いながら、それはともかく、楽しくて深い学びができる受験勉強がここにあると実感。

★受験勉強のあり方も変容するのが、2022年なのでしょう。

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2022年2月 4日 (金)

2022年教育動向(11)2月1日 神奈川 私立共学中学入試の前年対比95%以上リスト 

★前回同様、2月1日の神奈川の共学の私立学校の出願前年対比95%リストを作りました。横浜創英の躍進が凄まじいですね。理由は私が言うまでもないでしょう。

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★受験生も保護者も本当に望んでいることは、何か?そこを語る同校の校長先生の話に耳を傾けるとよいということですね。どう感じようが、構いませんが、実践するとなるとなかなかどうして難しいのです。頭が下がります。

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2022年教育動向(10)2月1・2日 神奈川 私立男子中学入試の前年対比95%以上リスト 

★引き続き神奈川の男子の中学入試の出願前年対比95%以上リスト(日能研倍率速報2022年2月3日現在)。ただし、神奈川エリアの男子校は少ないので、1日と2日の両日でソートしました。

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★鎌倉学園の躍進が目立ちますね。

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2022年教育動向(09)2月1日 神奈川 私立女子中学入試の前年対比95%以上リスト 

★今度は、2月1日神奈川の私立女子中学入試の前年対比95%以上リストを作りました。捜真、湘南白百合、カリタス女子、横浜女学院は、割合だけではなく、出願数もインパクトありますね。

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★上記の表にあがっている学校は、やはりそれぞれ創意工夫して前に進もうという意志と行動を示しています。

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【速報】GLICCの成果 英語と思考力で楽しく深く学んで合格する時代 クリエイティブコース1期生の成果が凄い。

GLICCという21世紀型学習塾の実績が興味深い。GLICC代表鈴木さんから連絡がはいりました。予定通り、GLICCの生徒は、英語と思考力で楽しく深く学んで次々と合格しているそうです。21世紀型教育やNew Power School、New Value Schoolは、国際生・帰国生入試、英語入試、思考力入試、英語と国算の組み合わせ入試など、つまり新タイプ入試を実施しています。

★要するに、GLICCの生徒は、三田国際、かえつ有明、聖学院、文化学園大学杉並など新タイプ入試で合格を勝ち得ているわけです。完全に言語的思考力と数学的思考力のベースを、中学入試というシステムを通して、創っていくという新しい受験勉強を鈴木さんは開発したわけです。

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★鈴木さんと私のコラボは、もう30年以上です。出会った頃は、麻布や開成、武蔵、桜蔭、女子学院、雙葉、フェリス、灘などの問題を徹底的に分析して、そこに流れる言語的思考力と数学的思考力を抽出して、4年生から6年生までのカリキュラム、授業デザイン、テスト作成方法、テスト測定方法(コード作り)などを開発していました。もちろん、実績はたぶん伝説的です(自分で言っていてはいけませんね。汗;)

★そのうち鈴木さんはシンガポールや香港、オーストラリアで英語をさらに研鑽し、帰国生入試の第一人者になっていきます。私は私立学校研究家として、私立中高の先生方と、生徒募集方法、PBL授業デザイン、≪私学の系譜≫、思考コード開発など学校が仕事のホームベースになっていきましたが、2020年までは、大学の帰国生入試の小論文指導の方法論や中学受験における言語的思考力開発について少し支援させていただいていました。実際には、私が勉強させてもらっていたというののが本当のところです。

★とにかく、カリキュラムやプログラム作りをするときに、GLICCにかかわっていると、国際バカロレアのIBJapaneseの話や英語4技能の話が中心です。そういうコースがあるからです。それからケンブリッジ大学出身の哲学教師アレックス先生の英語の哲学授業のコースの話も盛りだくさんです。ですから、当然、TOKベースの実践的な話題も常にしています。

★ただ、二人は、教育という限られたシステムを導入するのではなく、認知科学や社会学、プラグマティズム哲学、グッドマンなどの数理&芸術哲学がベースですから、そこからカリキュラムやプログラムデザインについて30年来対話してきています。

★その知の景色から眺めて、知という広がりや深さにシンクロしたのが麻布の入試問題だったし、ケンブリッジの口頭試問や東大の帰国生入試(一般入試とはけた違いの思考力)だったのです。そして、21世紀型教育を支援し、そこで行われる新タイプ入試の質や構造、デザインについても多くの先生方と対話もしてきました。

★そして、いろいろ新タイプ入試はあるけれど、麻布やケンブリッジの口頭試問や東大の帰国生入試とシンクロするレベルの入試に挑戦する生徒を集めようと鈴木さんはGLICCを開いたのです。3年前に新タイプ入試が広まって、市場の認知をうけたのをきっかけに、それまで、大学の帰国生入試対策コースだけでしたが、中学受験の新タイプ入試に対応するクリエイティブクラスを開講しました。

★今年その一期生が成果をドッと生み出したわけです。

★私は2021年から学校に勤務したので、直接GLICCとかかわれないのですが、毎週金曜日GWE(GLICC Weekly EDU)というYoutube配信の番組で、コメンテーターとして参加させていただいています。

★勤務校をはじめ21世紀型教育を推進している学校やNew Power School、最近ではこれらの学校をNew Value Schoolと呼んでもいますが、そのような学校の先生方と鈴木さんといっしょに、知識を暗記することをベースにする学びではなく、思考力(論理だけではなくクリティカルそしてクリエイティブな思考力、要するにC軸思考)をベースとして知識を取り込んだり新しい知識を生み出す学びをしている生徒にエールを贈る対話をしています。

★たとえが適切かどうかわかりませんが、ド・ゴール大統領が亡命先のロンドンからラジオ放送で、民主主義のためのレジスタンスを呼び掛けたのと心境は同じです。新しい学びのための知の共創の拠点放送みたいな感じで、新たなコラボを鈴木さんと1年ほど前から開始したのです。

本日も、2022年の知の共創の行方を対話したいと思います。

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2022年2月 3日 (木)

2022年教育動向(08)2月1日 東京 私立共学中学入試の前年対比95%以上リスト 

★2月1日 東京私立共学中学入試の前年対比95%以上リスト(日能研倍率速報 2022年2月2日現在)を作りました。やはり工学院はここ数日語て来たようにいい位置にいます。それにしても品川翔英の勢いは凄まじいですね。

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★東京の共学校の2月1日の入試の70%が出願前年対比95%以上です。今年の中学受験人口は、前評判通り昨年よりも増えているでしょう。今月中には、各シンクタンクが、数字を公表すると思います。そのときに詳しいこともリリースされるでしょう。

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2022年教育動向(07)2月1日 東京 私立男子中学入試の前年対比95%以上リスト 麻布と海城の物語の素材文は同じでした。

★前回同様、2月1日 東京私立男子中学入試の前年対比95%以上リスト(日能研倍率速報 2022年2月1日現在)を作りました。

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★上記の学校が、それぞれの魅力を打ち出した結果、出願募集が良好だったのでしょう。

★それにしても、麻布と海城(1回目)の国語の素材文が同じで、かつ重要な問いも重なっていました。質の高い教師のコンセプトレンズはシンクロするということでしょう。

★麻布と海城の社会の問題もなかなかおもしろいのですが、まだ分析できていないので、いずれ。歴史の通時的視点と共時的視点のスクランブルや文化人類学的な視点はやはり傑出しています。

★もしかしたら、麻布と海城の併願は、学びの方法や学びの視座は共通点も多く、受験勉強がしやすいかもしれません。入試問題からみた学校選択は、実は最も学校の質を見出す方法であり、多くのメディアがアプローチし損ねている可能性が高いですね。。

★入試問題は学校の顔ですが、もっというとその学校の教師の質です。そして、教師の質とは、生徒との対話において、どのような問いをたてるのか、深いのか浅いのかなどなどということでしょう。

★メディアは、問題の解き方に終始しますが、それだけではなく、その問いの価値に光をあてなければなりません。シンプルに問いの価値は存在の価値でもあるからです。

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2022年教育動向(06)2月1日 東京 私立女子中学入試の前年対比95%以上リスト

★2月1日 東京私立女子中学入試の前年対比95%以上リスト(日能研倍率速報 2022年2月2日現在)を作りました。最終的には実倍率が重要になってきますが、そこは受験生には見えません。したがって、2月1日の出願で前年対比95%であれば、実受験者数も前年対比100%を超えるだろうと推測し、95%以上を実施には、昨年よりも受験生が増えただろうという設定にしました。

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★東京の2月1日の私立女子中学の試験件数は132件ですから、65.9%が、前年対比95%以上です。新設入試は、前年度なかったわけですから、その分今年は受験生が増加したとみなし、このリストに含めました。

★出願者数と実受験者数とは違います。出願者数が減っていてもそれが半数以下であれば、市場全体としての実受験者数は減っていない可能性が高いわけです。

★そういう状況の中で、出願数の前年対比が、100%を超えているというのは、何かしら学内で創意工夫をしているはずです。今後気になる学校を調べていきたいと思います。

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2022年2月 2日 (水)

2022年教育動向(05)やはり工学院大学附属中学と文化学園大学杉並注目浴びる!

★東京・神奈川エリアの中学入試は2日目を終えました。この時点で、2日間のホンマノオト21のアクセスランキングを15位まで並べてみます。すると、今年は工学院大学附属中学校(以降「工学院」)と文化学園大学杉並(以降「文杉」)が注目を浴びているのがわかります。

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(写真は工学院のサイトから)

1:2022年教育動向(01)2月1日注目校から思うコト
2:2022年教育動向(02)麻布の国語 傑作!中学受験生だけではなく大人も...
3:2022年教育動向(03)開成の国語も超長文。
4:2021年中学入試情報(38)工学院大学附属 応募者数 前年を上回る勢い...
5:2021年中学入試情報(39)横浜創英 応募者総数 前年を上回る!工藤勇...
6:2022年中学入試 三田国際の「超人気」の意味。
7:2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(42)インターナショナ...
8:2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(35)三田国際が突き抜...
9:2022年教育動向(04)武蔵の国語も超長文。メタファーの解読。
10:2021年中学入試情報(18)品川翔英 はやくも前年対比112.2%: ...
11:2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(38)文化学園大学杉並...
12:2021年中学入試情報(11)フェリス女学院応募者増の意味
13:【速報】かえつ有明中学校 2022年国際生入試 出願また増える
14:2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(41)市川中の「社会」...
15:2021年中学入試情報(07)かえつ有明が躍進するわけ 1月29日、副教...

★東京・神奈川エリアの中学入試がスタートしたので、2月1日注目校の記事がトップに来るのは常です。また麻布、開成、武蔵の国語の入試問題については毎年、教育関係者はみるので、上位にランキングするのもわかります。

★この時期常連は、三田国際とかえつ有明です。根強い人気が持続している学校です。フェリスも同様です。横浜創英と品川翔英は、昨年からランキング入りをしていてます。

★そんな中、人気はここ数年でてきている工学院と文杉ですが、この時期、ここまで上位に食い込むのは、今年が初めてです。

★特に工学院の記事は昨年のものですから、ホンマノオト21を普段からご覧いただいている方々だけではなく、検索エンジンでアプローチしている方が多いのだと予想します。広く人気があることを示唆ししています。

★2022年の教育教育ビジョンはもう見えているのですが、ここに挙がっている学校は、そのビジョンを支える根拠として善きモデルケースとなるでしょう。

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2022年教育動向(04)武蔵の国語も超長文。メタファーの解読。

★今年の武蔵の国語の入試問題も、超長文問題と漢字の書き取り問題の2題構成。超長文はすべて記述で、50字から80字以内で書くものばかり。6つの問いが出題され、見た目は開成と同じ。長文の字数も8000字くらいだから、長さは開成や麻布とも同じ。ただ、随筆だから、物語を出題した開成や麻布とはやはり違います。武蔵らしいこだわりがあります。

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★それは、美学者でありながらかなり鋭い科学者の眼を持っている伊藤亜紗さんのレトリックとしての表現の背景にあるというかそれが表している事実としての自然現象の内容を説明させるという問いです。

★すべての教科で、この事実のディテールにこだわった視点を要求してくるのが武蔵の特徴なのかもしれません。

★伊藤さん自身、普段気づかないような身体としての記憶と思考と介在するモノとのあいだの関係について克明に描いています。しかも、普遍的な身体論ではなく、インタビューをしている自分の身体と記憶と思考とモノの関係と相手の身体と記憶と思考とモノの関係のズレと共通点というローカル・ルールにこだわり、その事実性を積み上げていくことで人間としての共通ルールに行き着く見通しを立てています。

★まるで、この思考様式に武蔵の学び方や思考のスタイルがシンクロしているかのような問題でした。

★それにしても、麻布にしろ、開成にしろ、武蔵にしろ、大人が読む本から8000~9000字くらいの文章を出題するとは。しかももう30年以上続いているわけです。幼い時からピアノやヴァイオリンを習い、若いうちからコンクールで活躍をしている音楽家たちがたくさんいます。アスリートの場合も同様です。ある意味、この3校に入学する生徒は、幼いころから読書量を積んで、その都度質が向上しますから、小6の頃には、新書版ぐらいの本が読めるようになっています。知のアーティストあるいはアスリートといった感じでしょうか。

★このことがよいのかどうかわかりませんが、子どもたちの才能開花の可能性に蓋をするのはどうやらよしたほうがよいのでしょう。

★一方で、読書がすべてではないわけですから、そのような体験がそれほど多くない場合、これらの学校を目標にすると、なかなかシンドイかもしれません。もちろん、国語が苦手でも算数や理科で振り切る生徒もたくさんいます。

★しかし、その算数や理科の問題をみると、これまた尋常ではないのです。ある意味才能が必要です。

★4教科のうち1教科でも突き抜ける才能者だったら、コレラ3校を目標にするのは、ワクワクするようなゲームになるでしょうが、どれも平均的だけれど、頑張るんだとなると、相当ストレスは高いでしょう。この3校でなければ、未来がないということは全くないのです。4教科の国際コンクールでゴールドメダルを取る生徒がたくさんいるのが、この3校の生徒たちです。それはすばらしいことですが、すべての生徒がゴールドメダリストになる必要はないのは、すべての人がオリンピック選手にならなくても幸せな人生を歩けるのと同じです。

★それぞれの受験生のペルソナに合った学校を探すことの方が楽しみながらそれぞれの才能を開花して、多様なライフシフト時代をサバイブできるのではないかと余計なことを考える今日この頃です。

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2022年2月 1日 (火)

2022年教育動向(03)開成の国語も超長文。

★今年の開成の国語の入試問題も超長文一題構成。森沢明夫さんの「おいしくて泣くとき」の一節を出題。

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★問いは、すべて記述。50字から80字感覚の記述。ただ、主人公の気持ち、気持ちの理由、事実を説明するシンプルな問い。麻布のように物語の構造的な分析はそれほど必要なさそうです。

★行動と反応の展開を読みながら追っていけるかどうか、物語だけれど、情報処理能力がポイントという感じです。

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2022年教育動向(02)麻布の国語 傑作!中学受験生だけではなく大人もチャレンジしてみるとよいのでは。こんなに存在論的な読解は大人にこそ必要かもしれない。

★今年の麻布の国語の入試問題。あいかわらず超長文。9,000字強です。くどうれいんさんの「氷柱の声」作品集から「滝の絵(2011)」が丸ごと素材文として活用されています。やはり女流作家の文学作品で、昨年7月に出版された書籍です。ここ数年の麻布の素材選びのセオリー通りですね。

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★長文ですが、語彙などは難しくない物語です。幻想的なシーンは一見するとないのですが、主人公が自己変容するきっかけとなった東日本大震災の描写は、ある意味リアルなそれでいて幻想的なシーンと同じような役割を果たす表現になっています。

★たしかに、主人公は岩手で震災を経験しましたが、自分の体験など津波やフクシマにおける体験とは到底比較できません。そこで起きたことは語り尽くすことができない出来事でした。にもかかわらず、当事者になり切れない自分が、遠くから絵でエールをおくることが許されるのかと深い痛みに襲われます。しかし、マスコミは、その痛みを気遣うことなく、表層的な道徳的な行為を求めて満足します。

★それに加担してしまった自分は、賞を獲得するためとか、道徳的な表現をする義務感とかを捨て、純粋な存在そのものに向かい合う自分を表現していきます。

★かくして、麻布の中学入試は、世間の現存在が気づくことない存在そのものの深層に接近していく自己変容の意味をα世代が受験という場で深く考える時間を持つのです。

★簡単に言えば、本物をひきうける覚悟を読み取るようになる主人公の変容を読み解くわけです。読解の解読という存在論的重層性。物語の読解であると同時に哲学的であり心理学的であり社会学的でもある多角的視点を要する問題です。

★論より証拠、ぜひ解いてみて欲しいです。中学受験観が変わりますよ。そして、今後の受験の意味がこのように変わっていけばそれこそ希望が見えるというものです。

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2022年教育動向(01)2月1日注目校から思うコト

★本日2月1日から東京・神奈川エリアは中学入試がスタート。全貌はまだまだ見えていませんから、私の独断と偏見にすぎませんが、メディアが注目する一部の高偏差値の学校だけが人気になるということはもはやなくなり、偏差値が高い低いにかかわらず、受験生が自分にとって価値ある学校を冷静にかつ世界的視野で判断して学校を選んでいるという潮流が強くなってきたのではないでしょうか。

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(湘南白百合のサイトがすばらしい。)

★それを裏付けるような動きをしている学校は、たとえば次の学校です。湘南白百合のように高偏差値の学校が、同レベルの学校とは全く違う革新的な動きをしている結果がでています。他の高偏差値の学校にインパクトを与えることになるでしょう。日本の教育全体にとってもいいことですね。

★いずれも1月31日現在(首都圏模試センターの出願倍率速報)、前年対比100%超えています。東京・神奈川エリアの中学入試総志願者の前年対比はまだ100%超えていないにもかかわらず。

・湘南白百合学園 : 179.9%
・富士見丘 : 145.4%
・工学院大学附属 : 136.6%
・順天 : 131.4%
・文化学園大学杉並 : 128.3%
・八雲学園 : 102.8%

★いずれも、破格のグローバル・イノベーティブな革新的な教育を実践し、その成果を上げていると同時に、普遍的な利他的貢献精神も実践している学校です。パンデミックショックで世界中が取り戻したいと思っている人間力をベースにし革新的な教育を実践している学校です。このような革新性で、最も大事にされているのは、1人ひとりの才能の開花と協働性です。

★それと上記学校の共通点は、フェアネスや共感性の雰囲気が学校にあふれていて、何か特権的なものを感じるような雰囲気がないということです。グローバルシチズンシップが誰にでも開かれている感じです。

★さて、今まで中学入試というと多くのメディアは次のような学校を名門校とかいって特別扱いして取り上げてきました。今もそれは変わりませんが、それらの学校も見てみましょう。

・武蔵:109.6%
・フェリス女学院:106.7%
・女子学院:106.4%
・麻布:106.0%
・雙葉:99.0%
・開成:97.0%
・桜蔭:95.9%
・栄光学園:92.5%
・駒場東邦:87.6%
・筑波大学附属駒場:85.1%

★隔年現象がありますから、前年対比の増減は、上記の学校の経営には、まったく影響を与えません。ただ、言えることは、これらの学校は無理をして受けるのではなく、冷静に判断して選ぶ学校になっているということです。

★これらの学校の競争は相当厳しいですから、受験生側は無理をして競争に参加することに意味があるのか判断するようになったということです。

★小学校時代、高偏差値の私立中学に合格するための競争ゲームに明け暮れるのではなく、未来の見通しを立てるための学びの選択にシフトしているのだと思います。その競争ゲームを楽しめるのであれば問題ないのですが、高ストレスを感じる場合は、そうでない道を選べばよいのだと。

★2022年は、やはりライフシフト時代に対応でき、自らのかけがえのない価値を生み出せるNew Value Schoolを選ぶ時代の幕開けではないでしょうか。

★そして、湘南白百合のように高偏差値の学校が自らその道を開いたのです。極めて重要な歴史的出来事ですね。

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