2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(18)大学入学共通テスト2つの「万歳論」 サバイブ力が鍛えられる?
★「万歳」は本来祝いの所作ですが、その所作のカタチから転じて「お手上げ」という意味もあります。今回の大学入学共通テストに対する受験生や教師、受験業界人、一般市民の反応は、まさにその両方でしたね。なぜそうなるのか。たとえば、世界史Bの次の問題をみてみましょう。
★これを見てどう感じますか?一般市民は、ウラマーとかスーフィーなんて知らないよ、難しいんじゃない。塾講師は、織り込み済やや易しいかな。教師は、共通テストでこんな細かいところまで出すなんて、まあ念のためと思っていたからよかった。受験生は、予想していたよ、難しい、適当などなど様々。
(絶版ですが、池田央先生の本はわかりやすく勉強になりました。数学的な見識も知りたい場合は、高橋信氏の本は参考になります)
★テスト測定学を研究し、その成果を入試センターに提案している専門家は、完全解答にしているから、技術的に難しくなっているし、IRT(項目反応理論)からいえば、信頼性はともかく、妥当性、正当性に欠くなどなどとなります。
★塾予備校の入試問題分析研究センターでは、さらに誤答や正解への認知科学的な痕跡を計算します。この問題は知識暗記で解けるのか、文章を読んで理解する技能で解けるのか。次の4パターンで考えます。
★ウラマーもスーフィーも、山川出版の「世界史B」に掲載されています。意味もほぼゥの選択肢のまんまです。ただし、記載されている箇所は、本文の下段の「注」の書かれている場所です。塾や予備校では、ここまで記憶するように指導しますから、イもゥも知識暗記でできるとなるでしょう。
★塾予備校に行っていなければ、教科書の読み込み次第では、上記の図では、他の3つのパターンのいずれかですね。
★ゥの選択肢は、与えられた文章を読めば理解できます。いわゆる読解問題ですから、暗記していなくても読解技能で解けます。
★しかし、イは文章には書いてありませんから、記憶していなければ、カンであっているかどうかによって得点できるかどうかが決まりますね。
★そのカンですが、たとえば、ウラマーの最初の音U、スーフィーの最初の音Sを思い浮かべ、イスラムの文化はヨーロッパキリスト教にも影響を与えています。中世は、キリスト教もイスラム教同様、法源は聖典です。ですから、神の法と人間の実用的な法は結びついていました。
★つまり、スピリチュアリティとユージュアルは密接に結びついていたわけです。それで、Sの方が神に関することで、Uの方が実用的なことに関することだから、なんか語源的に関係あるのではないかと推理して、たぶんめちゃくちゃ間違っていると思うのですが、そのような主観的な想いで推理して正解してしまうということもあります。
★そんな感じで、偶然にもできたとしても、推理という理解でアプローチしたわけです。そういう意味では、推理と読解というイもウも両方とも「理解」でできるというパターンもあるわけです。
★「知識」+「知識」、「知識」+「理解」、「理解」+「知識」、「理解」+「理解」どの考え方でアプローチしてもいいわけですが、確実なのは、山川の教科書「世界史B」を覚えていた方が正解率は高いかもしれません。しかし、これは解答集を覚えたうえで答え合わせするのと同じ行為です。
★しかも、ゥの方は「理解」であっていても、完全解答ですから、イを「理解」のアプローチで間違った場合、不正解になります。
★この行為はしかし、すてきではないですか。それなのに。。。と感じる教師もいるかもしれませんね。
★テスト測定学的には、信頼性がチェックされます。
★結局、選択肢の問題であっても、わからないときには、カンを覚醒すればよいわけです。推理、この場合はアブダクション型推理ですから、予測不能な事態にであったら、サバイブするときに必要な能力です。
★大学入学共通テストはサバイブ力を鍛えるテストとしては素晴らしいというわけで「万歳!」です。
★とはいえ、たった1問の分析で、こんなに時間がかかるのです。専門家以外、本当のところは誰もわからないし、テスト測定学やIRTのことを知っている現場の教師もそんなに多くないのです。ですから、メディアが取り上げているあるいはSNSで出回っている分析は実はあまり科学的ではないということです。完全にお手上げです。そういう意味で「万歳;」です。
★まっ!私の場合は、PBLで3つのダクション=三角ロジックを養うのを楽しんでいるわけですから、「万歳!」の意味で大学入学共通テストを受け入れています。
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