2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(14)今日から大学入学共通テスト 留学生の思考力に対する考え方とシンクロするか?湘南白百合の水尾教頭のメッセージ大切。
★今日から2日間、大学入学共通テストが始まります。昨年からセンター試験から切り替わって2回目ですね。英語4技能や記述、CBTなど当初の目論見は果たせなかったですが、選択肢であっても思考力を埋め込もうという文科省や入試センターの努力の痕跡がみられたというのが昨年の大方の評判です。今年はどうでしょう。受験生が単語としての知識を暗記(「知識暗記」と呼んでおきましょう)するのではなく、それぞれの知識がシステムや関係性の中でどのように使わているのか「知識思考」(と呼んでおきましょう)や関係性の中から未知の知識を推理する「知識思考」を発揮できるテストであることを期待しています。
★しかしながら、まずはオミクロン株の爆発的感染拡大の中ですから、体調をマネジメントして臨んで欲しいと勤務校の受験生だけではなく、すべての受験生のことを想い祈っています。文科省も受験機会確保の路線で動いています。頭が下がります。しかし、同時に昨年に引き続いてコロナ禍の受験を通して、学びの概念や思考力の概念も変わってきたような気がします。
★それは昨夜、今東大で研究しているイラン出身のフラさんとGWE(GLICC Weekly EDU 第62回「『世界』で生きる学びとはーイランからの留学生フラさんとの対話」)で対話したときにしみじみ感じました。勤務校の小島嵩先生ともちょうど話していた内容ということもあって、なおさら重要だなと感じています。
★どんなことかというと、「知識」の扱い方の違いです。先述したように「知識暗記」と「知識思考」という差異があるということです。今までは「知識暗記」「論理的思考」「創造的思考」と分類してきました。それは間違っていないのですが、フラさんは政治学を学ぶ前提として言語について深い考え方を持っているし、小島先生も国語の教師で言語を極めています。
★そのために、言語は形式的表現と内容的表現(外延と内包というのが適切かもしれませんが)のカップリングになっているという考え方を暗黙知かもしれませんが持っているような気がします。
★ですから「知識=暗記/思考」「論理=思考/暗記」「創造=思考/暗記」という考え方で語っているわけです。そして、暗記とは形式知なのだと。
★つまり、「知識」も「論理」も「創造」も「形式知」と「思考」という暗黙知を形式知化しようという「作用知」の両義性があり、そのどちらを図とするのか地にするのかで、同じ「知識」「論理」「創造」という言葉を使っていても、内実が変わるということです。
★そこを確認しながら対話できるのかフラさんや小島先生だったのだと気づきました。
★たとえば、ローマ滅亡史において、年代や人物や文化や経済のそれぞれの細項目の「名称」は、暗黙知を形式知化しようという作用知を発動する思考の産物であるから、その名称つまり「知識」の背景にある滅亡史のシステムや構造を明らかにしてそこまでを「知識暗記」による「形式知」化しておけば、現在の国際政治における経済状況や税金の問題に、その「形式知」の背景の「作用知」を適用することによって、打開策を見出すヒントになるわけです。
★フラさんが母国とオランダ、日本で学んだり研究したりしている中で、その作用知を稼働させる言動は必然的に生まれているようです。比較政治学や比較文化論というコンパラティブスタディの視点が対話の中で見え隠れしていたのは、そういう理由があったのかもしれません。
★もし、受験が「知識暗記」と「知識思考」の統合、あるいは「形式知」「暗黙知「作用知」の連合がなされたなら、受験競争という概念は、「偏差値競争」から「思考の質の競争」になるでしょう。
★今注目されている湘南白百合の広報部長をしている教頭水尾先生は、毎日のように多くの受験生の保護者からいろいろな相談を受けています。そしてそのとき、必ず、親子でいい入試にしてくださいね、と声をかけるのだそうです。中学入試は、同時にキャリアガイダンスにもなっているのですね。
★水尾先生は、一人ひとりにストーリーがあることを忘れず、学校側も「良い入試」を生み出していきたいのだと。すてきですね。水尾先生ご自身、自分の経験から、自分にとって、受験は、良い入試だったので、受験の学びは、人生のいつかの時点で振り返って、そこから今があると自分にエールを送り続けることができる起点になることを祈っていますということです。
★それは、中学受験生だけではなく、高校受験生にも大学受験生にもあてはまるでしょう。今日の大学入学共通テストも、コロナ禍を乗り越えられる「良い入試」となって欲しいと祈っています。
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