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2022年1月31日 (月)

2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(41)市川中の「社会」の入試問題 意欲的かつ新しい問題のモデル

★今年の市川中の「社会」の入試問題は意欲的だったし、新しい問題のモデルだと直感しました。社会に限らず算数や国語、理科もそうでしたが、ファクトとオピニオンの両方を数多く問うていたのは社会でしたので、その意味を少し考えてみたいと思います。

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★これまで、社会の入試問題というと歴史的地理的政治経済的な事実としての「知識」を知っているかどうかストレートに問われてきました。ところが、今回の市川の問題は、「知識」の活用と「意見」にまで広がっています。しかも選択肢で創意工夫しています。大学入学共通テストの選択肢の作り方の一部を活用しているといえるかもしれません。

★「意見」が選択肢で出されるというのは、想像しにくいかもしれません。なぜなら、意見なのですから正解はないのではと思われるでしょう。しかし、意見でも事実誤認の場合や論拠が誤っている場合、推理が誤っている場合などが埋め込まれているのです。

★創造的思考力は問わないけれど、論理的思考力や批判的思考力を問うと、選択式の問題で対応できます。問題を作成する側は大変ですが、すばらしいチャレンジです。

★教科試験の中でしかも選択式形式で、十分に「思考力問題」を出題できるというのは新しい傾向です。今後のモデルになるのは必至ではないでしょうか。

★それにしても、最終問題の課題文が、斎藤幸平さんの『人新生の「資本論」』から出題されているのには驚きました。たしかに、気候変動や新しい資本主義について注目されている時代ですから、この本が扱われるのは当然のような気がしますが、本来ならなかなか難しいはずです。というのも、どの学校でもSDGsや貧困問題に関する探究を懸命に進めているのに、斎藤幸平さんのこの本を読むと、それは間違っている表層的だ、根本をみていないと、マルクス的な視点でバッサリ切られてしまいかねないラディカルな内容だからです。

★もちろん、批判的思考としては大事なのですが、学問的な成果以上の活動の導きを説いているようにも見える部分も少なくありません。大学の社会学部や経済学部の入試問題としては、扱われるかもしれませんが、中学入試では難しいだろうと思っていました。

★ところが、市川中は、文章をそのまま扱うのではなく、「中略」することで、そのような箇所に触れないように配慮しています。この配慮がまた絶妙です。

★いずれにしても、市川中は昨年も、アマルティア・センの本から出題しています。新書レベルの文章が解読できることが前提になっていることと、テーマから言って、社会課題に対する意識と批判的思考力が求められているのは間違いないでしょう。

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★グローバル教育とは、いまここで世界の課題を洞察できる視点を身につけられるかどうかです。市川中の教育の奥行きを入試問題でたっぷり感じ取ることができます。

★同校の問題は、麻布や武蔵、成城学園のように教科の問題がすでに思考力入試になっているのです。市川中の今回の問題もそうでした。しかし、市川の受験生数は3000人弱です。インパクトがあります。この傾向は今後各学校に広がるかもしれません。

★知識の定着、活用をベースに論理的思考や批判的思考にまで広がる入試問題。中学受験勉強が本質的な学びに転換する時代がやってきたのでしょう。

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