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2022年1月16日 (日)

2022年ホンマノオト21で描くビジョンを考える(16)大学入学共通テスト 中学受験と直結 藤原辰史さんの視点

★昨日から行われている大学入学共通テスト。パンデミックに対するリスク管理、自然災害による中止など危機管理、刃物で切り付けられる危険など足元そのものが予測不能な状況下での受験です。これらの事態や事件は、偶然重なったのか、何らかのつながりがあるのか、今のところわからないですが、この受験制度がなければ、起こらなかったものばかりでもあることを考えると、私たちは、対症療法ではなく、Upstream思考(上流思考)ができるか問われているのかもしれません。

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★それにしても、引用箇所が妥当だったかどうかは、メディアがあれこれ言っている部分もありますが、今回の国語で藤原辰史さんの文章が出題されたことの意味は考える価値がありそうです。

★宮沢賢治のよだかの星の生きることの難しさ、食べるものと食べられるものの入れ子のような連鎖での痛みをどう解くのか。今回のパンデミックはある意味、宮沢賢治がすでに問うていた問題を私たちの足元に突き付けています。

★それに対し、藤原さんは、歴史学者として環境史的な側面から全く違う問いを投げかけています。

★現代国語の問題として、文学そのものを読解するというより、今回のように「食べる」という身近なことを巡る多角的な認識を受験生がどのように柔軟に解読するのか問うのは、果たしてどうなのだろうという声もあるでしょう。

★しかしながら、一方で、インターナショナルスクールやイギリスのパブリックスクールが日本に上陸する中、TOKのようなグローバルな認識能力を養う必要性があるのも事実です。とはいえ、それを欧米のように文学と哲学にきちんと分けてカリキュラムを組むのではなく、国語の中で行えというのは無理がある可能性もあります。

★探究があるじゃないかと言われるかもしれませんが、それであれば、国語の共通テストの存在の意味はどうなるのでしょう。

★私自身はTOKも必要だし、文学も必要だと思いますが、それを国語の中ですべて求めるのであれば、学習指導要領や教職課程の見直しをしてからだと思います。

★そうでないから、読解なのか学際的認識論なのか現場が戸惑う中途半端な問いにならざるを得ないのかもしれません。もっとも、現場の国語教師は、すべて織り込み済みで柔軟に創意工夫をしています。

★そこにいくと、総合型選抜だと、自由に柔軟に組めるわけです。せっかくこのような入試タイプもあるわけです。しかもこの入試で入学するっ生徒の数はまだ全体の10%くらいだとしても、80%の大学でこの制度を使っているわけです。

★それぞれの制度の役割や機能を明快に整理して、多様な入試制度を明らかにすることによって、多様な生徒の個性や才能にマッチングする入試制度ができるでしょう。

★それはともかく、藤原辰史さんの文章の意味に戻りましょう。2020年4月2日に岩波書店が運営するwebサイト『B面の岩波新書』に「緊急寄稿」として公開された「藤原辰史:パンデミックを生きる指針——歴史研究のアプローチ」は記憶に新しいでしょう。当時40万件を超えるPVがあり、大反響を呼びました。

★政府が、特措法をつくって、1回目の緊急事態宣言を出す間に、藤原辰史さんは寄稿したのです。

★それは科学万能主義でも道徳主義でもない、地球市民としてそれぞれが足元をクリティカルシンキングとケアの精神をもって生きる指針を提案したものです。そして、それが心ある市民の前提になりました。

★ですから、藤原辰史さんの文章を出題するというのは、共通テストという目前のハードルではあるけれど、足元から世界を見て、世界の痛みを感じ、世界を創る知性を特別な専門家だけではなく、市民一人ひとりが学び社会実装することを暗黙知として提示しているということでしょう。

★大学受験勉強がたんなる偏差値競争に終わってしまうのではなく、well-beingをどうやっ手に入れるかを考え行動しようとすることにつながるのなら、大学受験の学びは、豊かになるし、競争に勝てないからと苦しむことはないでしょう。

★これは中学受験にも当てはまります。高校受験にも当てはまります。

★教育の節々で行われるテストというのは、資格試験とは違って、このような意味あいがあってこそ「生きる」ということに立ち向かえる善き機会になると思います。もちろん、捉え方一つで、どんな制度でも、いかようにも考えることができるでしょう。

★しかし、自己責任論で終わらせるのではなく、今回の政治経済の共通テストの中でも問われていた「公共の福祉」の意味合いを、公共の試験制度であるのであれば、持たせるのは、実用的なことだと思います。

★ちなみみ、栄光という私立男子中高一貫校は、すでに昨年の国語の入試で上記表紙の藤原辰史さんの本から出題していました。共通テストの倍以上の長文を出していました。そして、問いは記述式です。

★中学入試問題が大学入試問題に直結するわかりやすい証しでしょう。

★なお、今回の共通テストで黒井千次さんの文章も出題されていましたが、黒井さんの作品も、フェリスや麻布ですでに出題されています。しかも、やはり記述論述形式です。

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