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2021年12月 7日 (火)

放蕩息子のたとえ話 芸術・文学・心理学・政治経済学のプロトタイプ 新しいカトリック学校のために

★カトリック学校の一つの課題は、聖職者の高齢化問題があります。勤務校のように、神父、シスターが常駐していないカトリック学校が増えていくという問題です。それでも、多くの学校の校長は信者であるという場合が多いのですが、それも必ずしもそうでないというケースも増えてきています。勤務校の場合は、ミサや宗教の時間はありますし、校長をはじめ理事会メンバーは全員信者ですから、カトリック学校の最小限の条件は満たしているかもしれません。しかし、大事なことは教育活動全体にカトリックの精神が染みわたっているかです。

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★さて、それをどうするか。このような課題は、常にイノベーションを起こします。今までは、ミサは神父様のネットワークに頼んで、宗教の先生にカトリック精神はお願いするというカタチをとってきました。それを、学内全体で広めるにはどうしたらよいかとなりますと、当然対話を巻き起こります。これがやがてイノベーションにつながります。

★勤務校の場合、聖書の中の黄金律をスクールモットーにしているため、学内で広めることに対する姿勢ははじめからあります。NY国連でもノーマン・ロックウェルのモザイク画をディスプレイしています。黄金律を謳っている作品です。そして、これはキリスト教のみならず、民族も、人種も、宗教の違いを超えて共通するルールだと国連はみなしています。

★したがって、信者であろうとなかろうと、黄金律を尊敬し実行することは、グローバル市民として大切なことなのです。グローバル教育を行う基礎には、この精神があることは大切です。したがって、教師は、この精神を胸に、生徒と対話し、小論文指導をし、進路指導をします。医療関係や介護の道に進む生徒は、今回のパンデミックで、この精神の重要性を深く受け止めて取り組みます。

★上智や南山大学などのカトリック大学に進む生徒も、神学部に進む生徒のみならず、経済や経営に進む生徒も、強欲資本主義ではなく黄金律的配分の正義に基づいた経済社会システムを考えるチャレンジをします。そして、カトリック大学ではなくても、法学部や政治経済学部に進む生徒も、ニューコモンズの新しい流れを黄金律的な発想と重なることに気づいて、構想を練ります。

★カトリック学校に進む生徒や新しい経済や都市構想を考えている生徒、SDGs関連や哲学に進む生徒の中には、私に問答をして欲しいと訪ねてくるので、対話をします。

★そんなことをしているうちに、いっしょにワークショップをしてくれる教師もでてきました。今では、その教師は複数いて、自分の授業でも創意工夫しています。カトリック精神の分有が生まれてきたとき、私たちは自己変容型マインドを共有することになります。

★それは、エンカレッジコースでも同じです。10月以降各学年各クラス、後期の特別講座を2回ずつ受け持つのですが、学年の先生方や日大文理学部のインターンの学生のみなさんとコラボして行っていきます。

★通奏低音のテーマは自己認識とアガペーです。表のテーマは、物語分析方法を学ぶです。前期はダ・ヴィンチの最後の晩餐をメインに暗号解読的アプローチで、表現を読み解く作業をしました。後期は、聖書を物語としたとき、物語分析をどうしていくのかをメインに登場人物の感情分析曲線をツールとして介してワークショップを行いました。参加した教師もインターの学生も、生徒と一緒に分析します。

★昨日は3年生の最終講座だったので、「放蕩息子のたとえ話」を使いました。勤労・勤勉・倹約と自由奔放贅沢三昧の対比や嫉妬と改心と愛が凝縮された物語で、後世の芸術や文学、心理学、政治経済学のプロトタイプになった有名な箇所です。

★ですから、即興劇を演じてもらうところから始まりました。兄と弟と父とナレーターを買って出てくれる生徒がいたので、配役はすぐに決まりました。他のメンバーは、全員友人だったり、祝いの席のメンバーだったりと教室全体がインプロ劇場です。

★そのうえで、感情分析曲線で分析する個人ワークをします。物語を読むだけではなく、ロールプレイをしていますから、当事者意識が広がっています。ここは以前と比べ物にならない程のスピードでできたので、自分のシートを語るダイアードを行いました。語り合うのではなく、語る人と傾聴する人の役割を明確にわけるペアワークです。シャッフルしていくので、仲間の考えや感じたことを共有できます。他者との違いをリスペクトすると自己の考え方や感じ方をリフレクションすることができます。自分で自分に即して感じる機会を創りたかったわけです。

★でも、直接自分を見つめることは避けています。感受性豊かな生徒が多いので、直接そこには向かいません。あくまで、自分で自分に寄り添う姿勢を大事にします。

★そのあと、心理学でもこの物語は活用されるという体験をします。兄と弟のメンタルモデル分析です。そして、そのあとに父の役割について考えます。一般の物語や小説では、このような父はいないので、バッドエンドになりがちです。聖書は救いが明示されているので、そこはたしかに心理学の肝かもしれません。もっとも、フロイトの流れでは、この父はまた別のキャラに読み替えられるわけで、複雑です。

★この分析もダイアードで盛り上がりました。

★時間がなかったので、「放蕩息子のたとえ話」は政治経済的アプローチではどうなるかについては、講義で終わってしまいましたが、サンデル座標で分析してみました。

★来年の高校の新学習指導要領では、各教科は、自然現象や社会課題にどう結びつくのか、社会実装としてどう役に立つのかが問われます。だとするならば、聖書も解釈にとどまらず、社会の制度設計にどうすでに役立っているのかを学ぶ機会を増やしていくことは重要です。

★新しいカトリック学校は、あらゆる分野ですでに社会実装されている聖書の発想を取り出して共有することとその発想でさらなるイノベーションを生み出す機会をデザインするということではないかと思っています。

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