2022年教育の変容始まる(06)帰国生に人気の学校の実用的な意味 2030年が見える①共学校(東京)
★数ある入試の中で最も先鋭的かつ先進的な考え方で実施されているのが中学入試。中でも昨今の帰国生入試と新タイプ入試は2030年の社会のあり方を見据えています。したがって、未来ビジョンや理念、理想に燃えていますが、その実、極めて実際的・実用的な根拠をもって実施されています。小学校入試や高校入試、大学入試も2030年に向けて実用的な意味づけを学ぶには格好のモデルです。
★2022年中学入試の倍率速報でどんな学校が人気なのか?現段階で10人以上集めている東京の私立中高一貫校を見ていきます。まず共学校から。
★こうしてみると、2つの実用的な意味が見えてきます。1つは、海外大学進学実績をすでにあげているもしくはその期待値が高い学校ばかりです。たとえば開成に行かなくても、世界大学ランキングで東大級あるいはそれ以上の大学に入れるのです。しかも、そのための環境はPBLやアクティブラーニングなど現地校の学びの環境を継続できる可能性が高いのです。帰国生に人気がでればでるほど、その環境は充実していきます。上記表の17校は、すべてそのような学びの環境になっていますね。もちろん充実度の差異はあるでしょうが。
★それからもう1つ実用的な理由は、哲学のエッセンスを盛り込む日本の学習指導要領にはない学びができるということです。もちろん日本の学習指導要領でも、やろうと思ったら総合学習や探究の時間でできないことはないのですが、担当教師によってやったりやらなかったりでしょう。
★ところが、帰国生が期待している学びは哲学的エッセンスが必要なのです。なぜか?そのような本質的で、人間の存在やその痛みについて考えることが社会課題を対処療法的に考えるのではなく、根本的なところから解決できるようになるからであり、気候変動やパンデミック、民主主義の危うさに直面している今だからこそ必要なのだと。もちろん、それもありますが、海外では哲学という授業が大学入試に役立つからです。エッ!?そんな実用的な理由なのと思うかもしれませんが、まあそうなのです。
★ただし、日本の倫理社会のような選択肢問題が中心なのではありません。たとえば、カタツムリに意識はあるか?エンパシーとは何か?を論じなさいというエッセイライティングの力も必要なのです。
★ただ、哲学というと、プラトンだカントだヘーゲルだフッサールだ、いやそんなのは古いガブリエルだメイヤスだとかギリシア時代から現代にかけて数え切れない程哲学者がいて、偏らないように生徒と思考を共有にすることはなかなか難しいですね。
★そのため、現代はつ哲学の一般化が図られています。その典型がIBのTOKです。ですから、上記17校は、IB校でなくても、TOKのエッセンスを研究し、独自の方法で取り入れています。文化学園大学杉並や三田国際(まだ公開されていないので、上記には掲載されていませんが、少なくとも300人は集まっているでしょう)などのようにダブルディプロマを実施しているところは、提携した海外校のカリキュラムの中に盛り込まれています。
★かえつ有明の国際生や工学院のインターコースなどでは、英語で哲学を学ぶ講座が開設されています。
★開智日本橋は、土屋先生という哲学専門の教師がいるぐらいです。もっとも、同校はIB校です。
★成城学園や成蹊、ドルトン東京学園は、もともとそのような哲学や全人教育をベースにしています。
★八雲学園や工学院に代表されるように、ラウンドスクエアなどの国際的な私学のネットワークに加盟していると、そこでの交流はそのベースに哲学がありますから、自然と哲学ベースの学びの環境が広がっているところもあります。
★2030年は、海外大学のみならず、海外の中高も日本に続々上陸しています。上陸と言ってもリアルではなくメタバース上での話になると思いますが。また、高度外国人材も、高度IT人材が70万人くらい不足しますから、たくさん受け入れることになるでしょう。したがって、今までの外国語教育やICT教育では、帰国生は満足しません。
★かくして、帰国生のニーズは、時代の要請に通じる部分もたくさんあります。
★したがって、帰国生に人気の学校は、そのニーズや時代の要請に対応していく柔軟で強烈な教育力を日々生成しているということでしょう。理想と刻一刻変化する現実の一致を実践していくのが実用的なものの見方・行動力です。
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