存在の意味の創造(01)生徒理解における相互のズレの軌道修正の過程 超越論的PBLのビジョン
★勤務校のエンカレッジコースで教師及び生徒と対話していると、教育とは人間存在の意味を創っていく生き生きとした体験を生み出していくことだと身に染みて感じます。どうしてそう感じるかというと、エンカレッジという教育の場がそもそもそうなっているからです。そこには、「教える」「ケア」「才能を生み出す」とい3つが統合されて生徒1人ひとりの存在を共に織りなしている場となっているからです。
★教師は教える過程で、生徒1人ひとりが、ネガティブな感情やポジティブな意志、ネガティブな言動、ポジティブな言動の関係態に触れます。この組み合わせは生徒によって違います。したがって、たとえば、教師は、ポジティブな言動をとっていても、ネガティブな感情を実際には持っていたりする存在に寄り添うことになります。
★3年生の総合型選抜や指定校推薦のときの指導では、ネガティブを受け入れながら、それをポジティブに転換できる可能性を懸命に探ります。しかも、教師は押し付けることはしません。押しつけると、開かれた才能が一気に閉じてしまうという経験を何度もしているからです。
★しかしながら、あるところまでくると、教師と生徒は強い信頼関係の場の中にいることになり、それに気づかないので、生徒は教師は決して押し付けているのではないのだという理解に到達します。こうして相互に理解のズレの軌道修正が行われていきます。
★ところが、今度は、教師は、もしこれが外の世界にでたときに、再び理解のズレが起こり、ネガティブ感情や言動がうまれるのではないかと心配になります。そこで、内部内外部である私と生徒の対話をセッティングします。
★とはいえ、私だってケアの精神を背景に有しながら対話するわけですが、そのことが直接言葉で表現されていなくても、生徒が察知する感受性を育んできたときに、響き合いますし、その響きの音を実際の外界に出たときにも、絶やすことはないだろうという確信を共有しあえたところまでいけるとよいなあと思っています。
★もちろん、大事なことは、理解のズレから対話は始まるものだという真理を共有することが大事だなあと最近は思っています。
★上の表は由佐美加子さんと天外伺朗さん共著の「ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジ 2019/8/31」からヒントを得て作成しました。実際の生徒と対話するときに生徒の存在の意味の理解の糸口をみつけるときに活用知すようにしています。
★また、エンカレッジの教師は、日大の文理学部の教授や大学院生、学生と連携して生徒理解をフッサール現象学に基づいて展開しています。生徒の存在の意味を現場と研究の成果を結び付けながら行っています。
★私もそのチームの1人土屋弥生先生(日本大学文理学部准教授)にアドバイスをもらっています。特に「生徒理解におけるフッサール現象学の意義」(「臨床教育学研究第9巻」2021年3月31日)で展開されている理論には啓発を受け、エンカレの教師(フッサール現象学を基礎とした体育教育の実践をしている)に教えを乞うてもいます。
★同論文のビブリオの中で扱われているマックス・ヴァンマーネン,著「生きられた経験の探究―人間科学がひらく感受性豊かな“教育”の世界」2011/5/1も、刺激的でした。
★ただ、ヴァンマーネンの教授法はへルバルト主義を暗黙の了解としているため、プラグマティズム流儀のPBL主義者である私にとっては、受け入れる時に組み替えなければなりません。そのうえで、エンカレの教師と対話する時は、逆に私の流儀をいったんヘルバルト主義に差し戻して理解のズレを修正するという対話をしています。
★そうすることで、今度はPBLをエンカレの教授法の中に活用してもらえるシーンも出てきました。
★勤務校の2つの学校を往復している私にとって、今までのPBLのあり方は、万能でないことが了解できたし、ヘルバルト主義とプラグマティズムを統合する超越論的PBLの必要性に気づきました。
★この視点からすると日本の教育はまだまだ抑圧的であり、その中での手法論や学習理論は、抑圧をフラットという言葉で転移的強化をすることになりかねないといくことも了解できました。
★今のところ、これについて対話できる仲間はまだ少ないのです。というのも、超越論的PBLについて新しい言葉を私自身がまだつくれていないので、対話ができていないということです。
★これから精進していきたいと思います。
※異なる主義や理論を組み換える超越論的な方法は、成城学園の青柳先生から教えて頂いた三角ロジックの弁証法的な展開を活用します。弁証法的な展開は三角ロジックの連鎖をつくることなのですが、それを行う時に、deduction、induction、abductionという3つのdutionという数学的推理方法を活用します。
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