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2021年11月17日 (水)

教育の2022年問題 パンドラの箱を開けた改革かもしれない。。。

★不動産の2022年問題は、東京の私立学校にとっては経営上警戒しなければなりません。すでに今回のパンデミックで国も東京都も財政は潤沢でないことは明らかですから、ここのところスクラム組んで私立学校関係者は議員に訴えかけていますが、それ以上に経済的には危ういですね。スタグフレーションもやってきているようですから、トリプル経済不安定要素が忍び寄っています。

★1986年以降の中学受験の大衆化は、バブルがはじけて長引く経済の空白の影響で、1998年・1999年にいったんストップがかかりましたが、脱ゆとりの波に乗って、再び右肩上がり。しかし、リーマンショック以降2013年まで下降します。経済要因は私学経営にはストレートに影響します。しかし、2022年に高校の新学習指導要領が本格実施することで、2013年から始まった新しい学びの教育改革は初等中等教育すべてにわたって行き届くことになります。この流れに乗って、いやこの流れを牽引して中学受験はそれ以降右肩上がりを続けています。

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★ところが、その2022年本格実施の高校の新学習指導要領は、どうやらパンドラの箱を開けてしまいました。2022年は経済的にも教育的にも危うさがあるわけです。それはともかく、新学習指導要領は、全ての教科等を、①知識及び技能、②思考力、判断力、表現力等、③学びに向かう力、人間性等の3つの柱で再整理したわけです。この3つの柱を実践するために「主体的・対話的で深い学び」という名のアクティブラーニングやPBLをやるのです。

★なんだ本間が日ごろ言っていることじゃないか、何が問題なんだといわれるでしょう。たしかに、そうなのですが、指導要録において、各教科の3観点で評価する段になって、急に<「学びに向かう力・人間性等」に示された資質・能力には、感性や思いやりなど幅広いものが含まれるが、これらは観点別学習状況の評価になじむものではないことから、評価の観点としては学校教育法に示された「主体的に学習に取り組む態度」として設定し、感性や思いやり等については観点別学習状況の評価の対象外とする必要がある>というのです。

★つまり、「学びに向かう力、人間性等」=「主体的に学習に取り組む態度」+「感性や思いやり等」として、「感性や思いやり等」は観点別学習状況の評価から外すとあるわけです。

★要は、客観的に評価しづらい主観的なものは外すということです。これが、総論賛成各論反対となり、新しい学びを進めない大きな理由です。進もうかなと思ったら、でもやっぱり評価は客観的でないととなるわけですから、好奇心や興味・関心は大事だよと言いながら、現場では評価しないわけだから、結局はやらないわけです。

★いや、やっているつもりでも、そこを評価しないので、結果的に元の木阿弥だということです。

★しかし、感性や思いやり等についてその育成をやめるとは言わないわけです。となると、評価しないわけですから、この部分の研究はストップします。何が問題か?

★研究はしないけれど、実際には主観が現場で溢れるということです。現場では、今までの客観と主観の図式で捉えるしかないですわけで、主観は抑圧するか野放しにするかどちらかの指導になるわけです。

★このことがパンドラの箱を開けたことになるのですが、そのことにピンとこないのが世間なのです。GIGAスクール構想って喜んでいると、実はどんどんパンドラの箱は広くのです。SNSの光と影がここから生まれている可能性が大なのです。いよいよ、世界の終わり。。。

★現場では、今、大急ぎで、パンドラの箱が閉じられる前に、最後に箱に残される希望をつかみとろうと必死です。

★この希望をつかめば、客観と主観の近代の生み出した効率的なものの見方だけれど、矛盾をたくさん生み出したアポリアを解消することができるかもしれません。村上春樹さんが1985年に描いた世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドの最初のページにはこんなことばがあります。

<ただ前後の状況を考えあわせてみて、エレベーターは上昇しているはずだと私が便宜的に決めただけの話である。ただの推測だ。根拠というほどのものはひとかけらもない。:村上春樹. 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上下)合本版(新潮文庫) (p.13). 新潮社. Kindle 版. >

★推理はするけれど、根拠は実のところない。それでも・・・・。そういう不安定な時代の世界の終わりは、新しい世界の誕生となるのでしょうか。村上春樹さんがこの本を出版した頃、すでに哲学や社会学、文化人類学、心理学などでは、この客観と主観の図式を解決するアイデアがたくさん議論されてきました。

★その必要性が、教育現場にもようやく降りてこようとしているのか、スルーしてしまうのか。今のところここを現場レベルで議論している教育学者やコンサルタント、ジャーナリストの方はいないですね。そんな本書いたら売れませんからね。もちろん、評価の方法を書いている本はいっぱいあるのですが、現場で起こっていることにマッチングするものはなかなかありません。ほとんどがノイズです。でも、売れれば、経済が循環するから、それはそれでよいわけですが。

★ノイズを遮断し、いまここに現場にある本物のシグナルを察知する仲間が増えることをただただ期待しています。

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