世界モデル作りの話は、多様なWhatの構成で。
★学校は、現状の世界理解だけ対話しているわけではありません。これからの世界作りの対話もします。しかし、そのときなかなかスリリングなのは、現状の世界理解の対話と決定的な違いがあるからです。現状の世界理解は、その世界を表現する既存の言葉があります。しかし、新しい世界作りには、そのための言葉を見つけなければならないのです。
★新しい世界づくりをするために新しい世界言語を創るわけにはいいきません。ですが、既存の言葉で新しい世界作りを表現すると、いつの間にか古い世界に戻っていたりします。そこで、モデルをつくってシミュレーションするわけです。
★そんなとき、寺田寅彦のエッセイは大いに役に立ちます。特に、上記の本の中の「茶碗の湯」はいつも活用します。しかもこの気候変動の重要性を身に染みてわかっている≪Z世代≫と対話する時は、今も生き生きと光り輝いているエッセイです。
★ホワイトボードに、Uの字を描いて、お湯をここまで注ぐよと線を引きます。これ何?科学の話は、実はWhy?から入ることはないので、対話もリラックスできますね。なぜ?は価値観を含むので、いきなり重たいのです。世の中のなぜ?はしかも本質的なものではなく、因果関係を聞いているだけなので、視野狭窄になりがちです。そして、それがいつの間にか価値になるのです。視野狭窄が生み出す価値はイデオロギッシュで、抑圧的なので実はしんどいですね。
★それはさておき、この線の下と線の上で何が起きているのか?と問います。対流と蒸発とと即答。ですから、サイクルの矢印と温泉マークみたいな線を書き込みます。次に、ガラス板で蓋をするよとまた線を引きます。眼鏡をしたままお風呂に入ると何が起きると聞きながら、ガラス板がどうなるか問います。当然くもると即答ですよね。曇っている様子をズームアップすると?水滴がとなります。ですからガラス板を表している線に粒々を表す小さな〇を並べていきます。
★で、この粒はどうなるのと。落ちていくでしょうと即答ですよね。
★で、今度は隣に日本列島と太平洋描いて、暖流と寒流の交差する潮目を描きます。ここらへんまでくると当然生徒は、茶碗の湯の「事実」は、地球規模の自然現象を表現する「見立て」の話だったのかあとなります。
★かくして、whatだけで対話をしていきます。そして、ファクトをメタファーに置換えます。科学の話は、便宜上理由は聞きますが、それはすべて時間と空間と離散集合の関係であって、そこに価値は入らないのです。でも、その関係に興味を持ったり好奇心を抱くとき、価値が生まれてきます。それはなぜか?わかりません。
★なぜ地球があるのかわからないのと同じです。でも、ファクトを描くメタファーというモデル作りをすると、価値が生まれて来るという事実があるのです。
★ただ、世界を闇雲につくっていても、疲弊感が漂うだけで、価値がある行為であっても、価値を感じて生きていくことができない場合が多いですよね。
★世界作りは、どうやらまず世界モデル作りからかもしれません。そして、その世界モデルを現象に当てはめてみる。するとそこに世界が出現します。次にそのことについて対話します。すると、そのモデルで説明ができないことに気づきます。
★再び、モデルを作り直します。すると、また新たな世界が生まれてきます。スリリングですよね。
★現状のモデルの理解確認しかしない人は、現状のモデルの正当性をマウンティングするために、なぜなぜなぜを連発します。同調世界を押し付けます。なぜが好きな人は変化を好みませんね。ここらへんが、総合型選抜のトレーニングの時のジレンマです。新しい世界を創りたい生徒はいっぱいいるのに、大学がどこまでそれを求めるかは予測不能です。ただ、わかることは、なぜですか?という問いは多いので、やはり圧倒的に既存の世界理解の問題が多いということです。小論文であっても。
★もちろん、大学や学部学科によって違いますから、そこをリサーチ分析して、生徒とは相手をみて、互いにまずは理解し合える関係づくりをしようと作戦をたてています。
★というのも、新世界ばかりが世界ではありません。なぜという因果関係を確認して現状理解をすることと諸関係を見出すモデル作りをすることのバランスが大切です。これが世界ですから。生きるということですから。
★昨日もエンカレッジの2年生12人と、茶碗の湯の話からはじまって、気持ちを読み取る関数グラフモデル作りをして、四コマ漫画に適用したり、即興ロールプレイをして、そこに現れる気持ちの変化をモデルを活用してそれぞれチームに分かれて対話しました。
★言葉だけで対話するのは難しい刻々変化する気持ちの世界も、世界モデルを自分で創って、それを媒介として対話すると、いい空気が生まれます。その空気こそが価値なのでしょうね。
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