総合型選抜や適性検査型(思考力入試)の増加の意味~メタ相互主観の時代がゆえの対話の重要性
★大学入試ではまさに総合型選抜入試がピークを迎えている時期ですが、文部科学省によると2021年は2020年に比べ国公立大学学部で実施している同入試は増えています。おそらく2022年春までに行われる総合型選抜はさらに増えているでしょう。
★一方首都圏中学入試における新タイプ入試(適性検査型入試・思考力入試・PBL型入試・自己PR入試等)も、首都圏模試センター教育研究所調べによると増えています。
★2021年度入試において、総合型選抜を実施する国公立大学・学部の割合は、いずれも50%を超えています。また、首都圏中学入試における新タイプ入試実施校は30%を超えています。もちろん、これは実施校数であり、受験者数はまだそこまではいっていないでしょう。
★ただ、大事なことは、組織としての大学や学校が、従来の一般選抜入試だけではなく新しい入試システムを開発・導入するシェアが増えたというコトの意味です。
★一般選抜は、大学入試においても中学入試においても知識・技能が中心です。つまり思考コードで言えばA軸B軸の領域です。一方総合型選抜や新タイプ入試は、論理的思考・批判的思考・創造的思考、つまり思考コードでいえば、B軸C軸の領域です。
★これは、客観的な知識やデータを論理的に扱うだけではなく、生徒の主観も評価対象にしようという流れがマイナーではなくなったということを意味します。
★今までは、そんな主観的なアイデアは、評価できないよという話でした。ですから、授業も客観的とされている内容ばかりを扱っていたのです。何を言ってもいいかもしれないけれど、それは主観だからテストには関係ないと斬り捨てられてきた領域です。
★ところが、思考力というのは、主観が重要です。好奇心や興味関心、主体性を大事にするとなると、当然ながら主観の領域が加わります。多様な考え方や感じ方が大事だということは、シンプルには主観が大事だよというコトです。
★主観は自由です。この領域に対し、コントロールという指導が入ると、個性はだいなしになります。思想や表現の自由の領域でもありますから、指導は容易ではありません。しかし、この領域こそ、クリエイティブクラスの真骨頂があるわけです。
★この主観の領域を実は探究だとかPBLだとかいう学びの場に持ち込んだのが、今回の学習指導要領でもあります。
★個別最適化というのは、いまのところ、客観的知識記憶と操作の定着度の違いを細分化して、効率よく到達度を高めるシステムで、生徒の存在の成長には直接関係ありません。ですから、個別最適化をやっているということを誇らしげにしていると、いつのまにか生徒の存在は無視されているということもあり得ます。なお、個別最適化=ICTではありません。むしろICTは主観性の発露なのです。
★それはともかく、主観の部分を大切にしているチュートリアルを導入している学校や大学は、まさに主観の部分を大切にし、クリエイティブクラスが生まれる環境を作っていると言えます。そして、総合型選抜や新タイプ入試を実施している大学や学校は、そこを自覚しているということを意味します。
★しかしながら、この主観は恣意的なものも含みます。その正当性・信頼性は検証しまなければなりません。それゆえ、アブダクションという仮説型推理が重要なのですが、正当性・信頼性のある主観というのは、独善的でも恣意的でもないがゆえに、相互に信頼し尊重する主観です。これをインターサブジェクトというのだと思います。インタサブジェクトあるところに、コモングッドがあります。これがブランドアクティビズムという新しいマーケティングでもあります。マーケティングは主観を昔から扱う学問ですね。
★また横道にそれましたが、インターサブジェクトは日本語では、相互主観とか間主観と訳されています。第二次世界大戦前夜までフッサールが提唱してきた概念ですが、全体主義者には、こんな主観は危ういので、排除されたものです。実際ユダヤ人であったフッサールは追い詰められて亡くなります。100年たって、今ようやく教育現場に相互主観が導入されたわけです。
★総合型選抜では、志望理由書や口頭試問で、この相互主観をベースにした自分の考えを語らなければなりません。そして、さらに大事なことはこの相互主観が独善的でないことをモニタリングしておくことが大切です。このモニタリングを経て形成される相互主観をメタ相互主観と呼びましょう。
★現状の総合型選抜や新タイプ入試というアドミッション領域で起きていること、それをウケて授業でPBLが行われているというコトは、このメタ相互主観を尊重する時代になったというコトを示唆します。
★それゆえ、メタ相互主観の形成過程では、多様な葛藤が起こります。今までは客観的でないと抑圧していればよかったのですが、解放されたのです。望ましいことではありますが、学校現場ではその形成過程にありますから、様々な葛藤が沸騰し、内面のカオスを生んでいます。コーチングとカウンセリングを発揮しなければなりません。文部科学省はそこを乗り越える制度設計をしなければなりませんが、そこは全く動けていません。
★現場でなんとかしなければならない状況になっています。そして、一方で、その中でコーチングとカウンセリングを駆使するリーダーが現場から生まれていることも確かです。しかし、問題は彼らをリーダーとして認識する眼鏡を経営陣が持てるかどうかですが、そこは当面、現場と経営のギャップがあるでしょう。2045年に向けてこのギャップを埋める対話が噴出することです。
★そのギャップを埋めない組織は淘汰されます。メタ相互主観を尊重し生成する対話の時代だということは間違いないでしょう。
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