革新的教育×自己変容型マインド(07)八雲学園や工学院に代表される絶望を希望に変える教育の場を求めて GLICC代表鈴木さんと言いたい放題。小さな気づきが大きな変化を生む。
★昨夜、<GLICC Weekly EDU 第48回「自己変容型知性を伸ばす学校はどこか?ー首都圏中学入試の新しいトレンド」>で、本番組主宰者で、GLICC代表鈴木裕之さんと対話しました。いつもはだいたいゲストをお招きし対話するのですが、折に触れ中学入試や大学入試、グローバル教育などを俯瞰する話題を共有します。
★幸い保護者の方から質問をお寄せいただくようになりましたので、教育全体にかかわる場合は、鈴木さんと二人で対話することになります。今回のトピクも、保護者の方からの質問がきっかけでした。「革新的教育を行っているからと言って自己変容型知性は必ずしも育たない、環境順応型や自己主導型で終わることのほうが多いのではないか?」という質問です。
★たまたま、ロバート・キーガン教授とピーター・センゲ教授の考え方に影響を受けていたので、この質問に回答できるかもしれないと思い、鈴木さんと同番組で企画することになりました。
★今回48回を迎えていますが、ここまで、デューイをはじめとする元祖プラグマティストの考え方やピアジェやレヴィストロースの発想を汲むMITメディアラボの教授陣、ハーバードのガードナー教授などの話も折にふれしてきました。もちろん、今回のように前面にはだしてきませんでしたが。
★もう30年以上前に、鈴木さんとわたしは、ある中学受験専門塾のカリキュラム大改定の時期にいっしょにプロジェクトチームを組んで、カリキュラムデザインやテスト評価のコーディング開発をしていました。授業に関しては私は今でいうPBLをやっていて、これは孤独でした。周りからはうるさい授業だと嫌がられていました。個別最適化記述指導は、インターネットはまだなかったですから、f網というネットワーク(全教室がファックスネットワークでつながっていました)を活用して行いました。こちらは、現在富士見丘の副教頭の佐藤先生と二人で、複数の教室と実施しました。さすがに、これは好評でした。
★こういう現場で仕事をするときに、鈴木さんとわたしは、当時池上嘉彦先生の文章が入試頻出だったので、インタビューにいったりして、言語学や記号論に影響を受けました。また児童文学も入試で頻出されていたので、児童文学を出版ている銀の鈴社とも提携をしました。
★記号論は物語構造論にもつながるので、児童文学は実におもしろかったし、池上先生もロジックばかりではなく、イマジネーションを伸ばす教材を作りなさいとアドバイスしてくださっので、小学校3年生のテキスト開発はその路線でチャレンジしました。これは正解が1つではないので、教室からも講師からも大不評でした。しかし、力があって教師や講師の信頼もされているフランス語堪能な講師が、このテキスト使った授業が一番楽しいよとインフルエンサーになってくださり、その後好転していきました。
★記号論は、当然コミュニケーション論につながりますから、ハーバーマスとも結びつきました。ハーバーマスのコミュニケーション論は、社会学的視点だけではなく、またまたピアジェやエリクソン、コールバーグなどとも結びつきました。
★こういう流れの中で、権力的コミュニケーションから双方向的コミュニケーションへというビジョンでカリキュラムやテキストをデザインしたわけです。制作過程で出会った先述した先人の多様な知恵をインテグレート(格好よく言っているだけで、都合よくといったほうがよいかもしれません)していったわけです。
★それぞれ独立した後も、IBやPBLの情報を共有し、21世紀型教育機構を立ち上げる企画をしたわけです。今は事務局長は鈴木さんが務めていて、私は大船に乗った心持で、ついていっているわけです。
★そういうこれまでの多様なアカデミックな流れが、ロバート・キーガンには、すべてあるので、対話しやすかったわけです。しやすかったというより、言いたい放題対話できました。
★多くの方が、主体性が大事だと言っていますが、その主体性がキーガンのいう自己変容型マインドまで意識していないというのが現状です。これは、日本私学教育研究所の所長であり、21世紀型教育機構の会長の平方邦行先生もいつも語ることです。
★しかしながら、数少ないながらも八雲学園や工学院は、自己変容型マインドを生み出す環境。自生的な変容組織になっています。
★昨年も、ふとしたことで知り合った保護者が、直前に受験相談してほしいというので、2時間くらい行いました。ラウンドスクエアの話をしたときに、知らなかった。もっとはやく情報を入手していたらこんなに苦しまなかったと語り、実際に説明会に参加しました。
★そして、すぐにメールが送信されてきました。「決めました!ラウンドスクエアだけではなく、多様な国際的な行事があって、楽しそうとうちの子が言うんです。それに、高校生のプレゼンテーションに魅せられました。帰国生でないのに、あんなに思慮深くポジティブな姿勢で話せるようにうちの子もなるかしら。そうなりたいと私も憧れました」と。
★このように、八雲学園は在校生だけが自己変容型マインドを豊かにしていくのではなく、いわゆる偏差値にこだわって学校選択をして苦しんできた保護者の認識の眼鏡までもトランスフォメーションしてしまうわけです。
★絶望を希望に変える教育の場が八雲学園にはあるわけですが、そのことに気づける方は幸いです。そして、八雲学園のみならず数は少ないとはいえ、工学院などのように、まだまだそのような学校はあるのです。
★受験市場における小さな気づきが大きな変化を巻き起こす。そう願っています。
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