革新的教育×自己変容型マインド(08)湘南白百合の探究学習 内在的価値とその成果
★昨日8日(金)、GLICC Weekly EDU 第49回「世界を舞台に活躍する女性を輩出するー湘南白百合学園中学高等学校教頭水尾純子先生との対話」で、湘南白百合の教頭水尾先生とGLICC代表鈴木さんと対話をしたということについて、前回ご紹介しました。
★水尾先生のお話をお聞きしながら、湘南白百合の探究学習が、生徒1人ひとりの<視点>の顕在化、<興味>の拡張化、<関心>の深化をもたらしていることが了解できました。
★リサーチ、仮説推理、議論、編集、プレゼンのサイクルが中1から高3に到るまで行く層にもわたり積み上げられています。積み上げというより螺旋状に上昇しているということがわかりました。
★イギリスの数学者であり哲学者でもあるトゥールミンのモデル「三角ロジック」が丁寧に活用されているし、問題発見とその解決策の提案をする際に、システム思考によって、関連領域も見つけているということもわかりました。
★トゥールミンもシステム思考の生みの親であるドネラ・メドウズも亡くなっていますから、その考え方や業績は普遍化し、いろいろなスタイルで探究学習の考え方の基礎として流れ込んでいます。したがって、三角ロジックとかシステム思考という言葉を生徒が意識しているわけではないでしょう。
★しかし、お話をお聞きしながら、その2つの知のアイテムを実用化しているなあと感じていた矢先、2019年の東大工学部の推薦入試(現「学校推薦型選抜」)で合格した生徒さんの小論文の答案をもとに水尾先生が話されました。すると、その答案には、三角ロジックとシステム思考がそのまま記述され図式化されていました。
平成31年度 東京大学工学部推薦入試 小論文課題
以下の設問を読み、小論文解答用紙(別紙)に解答しなさい。(600~800 字、図中の文字は含まない。)
私たちの食について考えよう。食は、美味しく、楽しく、健康的に、安く、早
く、安全に、無駄なくなど、様々な価値基準から論じることができる。あなたが
入学後に取り組みたい工学分野の研究や開発によって、どのように食の価値を
向上させることができるか、独自の考えを具体的に記しなさい。必要に応じて自
筆の図を用いてもよい。
★取り組みたい研究の仮説を立てる時に、データを収集して裏付けるのですが、このデータは何か文献をカット&ペーストすればよいというものではないわけです。その生徒さんは、様々な体験や仮説実験によって得たデータなどを収集して分析をして、研究の重要性の根拠づけをするわけですが、ある意味データのデータとしての有効性や妥当性を証明するというファクトの信頼性・正当性づくりをしています。
★そのうえで、研究の関連領域やそれがどこにつながっていくのかループ図を描いているのです。システム思考はこのループ図が循環しない場合どうなるかを予想することができるので、問題発見ができるわけです。問題発見ができれば、再び仮説推理を発動するわけです。
★東大の課題は、食を、美味しく、楽しく、健康的に、安く、早く、安全に、無駄なくなどの様々な価値基準からアプローチするループ図を描き、その循環が途絶えることによる価値の低下を見つけ、そこを修復することで価値の向上を生み出す研究・開発について論じるわけです。当然、三角ロジックとシステム思考は工学的問題発見とその解決のビジョンを描くときに役立ちます。
★中1からの探究学習の螺旋的な上昇進化が、最終的にこのような問題を科学的に同時に価値の向上という倫理観も生成しています。
★そして、食の価値の向上を深く受けとめ創造していくのは、生徒自身です。人類の食問題の価値を多角的にアプローチして工場させる循環を構想できる生徒の内在的価値が高く豊かであることは言うまでもないでしょう。
★湘南白百合の革新的教育が、生徒の内在的価値を豊かにしていくということは、これこそが生徒の自己変容型マインドを生み出す学校なのだということの証しでしょう。
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