総合型選抜の行方?コモンズの意味やメカニズムをどこまで求めるのか?探究のパラドクス。やっぱり教科授業がよいとなってしまう。
★今回の長引くパンデミックで、世界共通の財産や価値のシェアや配分の正義がクローズアップされました。たとえば、入院できるトリアージを富裕者優占にしたら暴動がおこるぐらい世界の世論は、メディアで騒ぎ立てました。ワクチンも権力者や富裕層が先にうったとしたら、同じように世界の世間が騒ぎ立てました。
★医療技術やワクチンは、実はコモンズ(共有財)だったのだということを世界が改めて自覚したのです。それとともに、地球それ自体がコモンズだと。それなのに、貧富の格差が広がり、コモンズを独占している富裕層や権力者、GAFAのような巨大プラットフォームを寡占状態にしていることに対し、不満がさく裂したわけです。一瞬経済法則のコモンズの悲劇が訪れるかのようでした。
★しかし、同時に、公平に共有する動きもでたわけです。コモンズの悲劇を喜劇に転じる政策を次々と各国政権は打ち出してきたわけです。
★ただ、あまりうまくいきませんでした。なぜなら、「自由」というコモンズを一方で縛ったからです。ロックダウンや緊急事態宣言で。
★税金も実はコモンズです。それを偏った使い方をすると、暴動が起きます。反発が生まれます。革命が生まれます。ローマ帝国の崩壊、フランス革命、米騒動。。。不平不満を無視すると、時の政権は危機に陥るというのが歴史の教訓でしょう。
★というわけで、今年の総合型選抜や小論文で問われるテーマは「コモンズ」でしょう。東洋経済の表題にあるマルクスについては問われないでしょうが、WIREDで特集されているような、プラットフォームによるコモンズの喜劇というあたりまでは問われるだろうなあと。
★しかしながら、所詮はそこまで。それ以上はまだ研究テーマにないから、それ以上のことを、つまり第三のコモンズについて論じると、うまくいかないでしょう。つまり、これが本当のコモンズの喜劇です。
★あっ、やはり悲劇。。。
★今、最先端の理屈は、ハイエク辺りをもちだし、リバタリアン的市場の原理でコモンズを逆にいかに生み出すかといった話で寸止めになると思います。
★これは、SDGsというコモンズ発想も同じです。
★ということは、この第三のコモンズについて問い返す大学があるとしたら、そこは頼もしい限りです。
★おそらく、それはどこかの工学部で問われるかもしれません。
★それ以外は、コモンズそのものを問うのではなく、自然と社会の循環について問うということは、生命科学や環境科学ではあるでしょう。
★スポーツ科学やスポーツマーケティングなどでもコモンズの喜劇のレベルまでは問うてくるかもしれません。
★しかしながらカーボンゼロとしてのコモンズを洞察すると、第三のコモンズ発想はでてくるし、すでに工学的にあるいはエンジニアリング的に研究も進んでいます。しかし、それがなかなか進まないのは、コモンズの悲喜劇が規制しているからです。
★この規制について問うと、日本の文科系の大学は自らの首を絞めるので、問う勇気はないでしょう。
★問えるのは、工学部と宗教系の大学でしょう。
★それ以外は、市場の原理の枠の中で解決するコモンズアーキテクチャーをデザインするということになりそうです。
★しかし、それはコモンズの悲劇を回避することはできません。
★コモンズの悲劇を乗り越えようとしたのは、たしかに「ドイツ・イデオロギー」でしたし、モリスの「ユートピアだより」でした。それを法学者キャロル・ローズは「コモンズの喜劇」として乗り越えようとしたわけですが、どちらのシステム思考も、決定的なワンピースが足りません。それゆえ、もう一つの循環項が見えないままです。
★マルクスに拠っている段階では、コモンズの悲劇は乗り越えられないし、ハイエクに拠っていても、乗り越えられません。
★社会学や経済学や文化人類学、法学などでは、これ以上の新しい知見が今のところないのです。
★あるのは、工学と宗教です。しかし、宗教的な切り口で入試に立ち臨めるのは、上智大学を代表するような宗教系の大学だけでしょう。となると、あとは工学部ですね。しかし、ものづくりをベースにすると見えなくなります。コトづくりという世界作りをベースにしないと。それはなかなか難しいですね。
★新しい学習指導要領の探究がなかなかうまくいかないのは、こういう文脈があるわけです。
★それゆえ、探究の時間はワクワク好奇心に満ちた時空であればよいということになります。
★となると、やはり大切なのは教科の授業ということになります。ここは、足りないワンピースを見つける知識とスキルの宝庫だからです。ただ、そのように知識を変換する数学的思考は必要です。講義形式ではこれはできません。PBL型授業である必要は、この希望のワンピースをZ世代が見出せる環境を作るためです。もちろん探究でもできるのですが、世界作りではなくもの作りが優先するので、難しいのです。
★第三のコモンズ段階までは、さすがにわからな~いといわれるので、受験情報誌では書けません。疑似コモンズのブログプラットフォームでしか書けないのです。まだ自由のコモンズはありそうですから。。。。
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