セカサク・ワークショップ(01)多様なアプローチが1つの理解に到達することの重要性
★今年の4月から勤務校で始めたことの1つは、数学とことばの交差点としての記号とは何か?その記号が生み出す過程は思考なのかアートなのか?つまり世界を創る(セカサクと呼ぼうと思います)とはどういうことなのか?などを探究しつつPBL授業の質的変容を試してみることでした。理論優先ではなく、すべての授業で行いつつ、動きながら考えるという実際的手法でまずは進んでいます。20%ルールを共有して、通常授業の中に生徒の思考作用が活性化する問いを生み出すという動きをしています。
左から伊東教諭(広報副部長)、小島綾子教諭(教頭)、佐藤教諭(数学・情報)、松本教諭(教務部長)
★勤務校は21世紀型教育を推進しています。ですからPBL授業を行っているわけですが、PBLを構成するアクティビティの中にはレクチャーもあります。したがって、一つの単元を授業する時、あるときはレクチャー一色、あるときは議論一色となってとりあえずはよいわけです。
★これは教員全員が同じ思いです。とはいえ、やはり人によって違います。単元によって違います。勤務校は高校だけでの私立学校ですから、どうしても、知識を無視できません。
★この場合、一般的には、知識を覚えてから考えるという発想になりがちです。しかし、これは、必ずしもすべての生徒の学力をアップするということにはならないのです。
★知識は覚えなければしかたがない場合もありますが、定着するのは結局知識を活用した時です。それから知識を発見した時です。さらには複数の知識を組み合わせたとき、それが混合ではなく、化合する場合がありますが、そのとき知識を創造することになります。このレベルは生徒が最もワクワクする瞬間です。
★ですから、覚える、知る、使う、混ぜる、化ける、創るといった知識のダイナミズムがポイントです。このことはみな了解済みです。であるならば、毎回化けるとか創るという時間を20%設定したならば、モチベーションアップのきっかけが増えるのではないかと仮説を立てたわけです。簡単に言えば、覚える、わかる、できるという流れですが、覚えるにはどうしたらよいか、わかるにはどうしたらよいか、できるにはどうしたらよいのかの仕掛けづくりは、意外とそれぞれの教師の暗黙知の中に隠されています。
★それから、勤務校はカトリック精神を大切にしていますから、そのできるには、社会貢献実装が含まれます。そこまで、授業で、それぞれの教師が行っています。
★ところが、教師が自分自身でも気づいていない場合があります。そこで、20%ルールを意識することで、暗黙知を自ら形式知化できるかもしれないと。
★そして、それを共有すれば、学校全体で知識のダイナミズムが生まれるのではないかと。知識のダイナミズム。それは記号の生成過程であり、思考ということでしょう。何度も繰り返しますが、ここでいう知識は、既知のものだけではなく未知のものも含み、その両極を往復し、渦巻きになっていく記号の過程が思考です。
★結果的に、その過程が映し出される段階になったとき、ようやくモニタリングができるのですが、そうなるまで1年かかるでしょう。とはいえ、1年後にそれを行うというのでは遅いので、教頭(国語科教諭)と教務部長(数学科教諭)と広報副部長(数学科教諭)と情報・数学の教諭とで、それぞれが20%ルールで繰り広げている自分の視点を共有するミーティングを同時並行していきました。
★同じ文章、同じ詩、同じ写真、同じグラフを見て、自分ならどう理解していくのか、どう新しい視点を発見するのかなど1学期はミーティングをしていきました。授業研究の前に、ケース研究です。
★すると、4人とも同じ理解に行き着くのですが、そのアプローチが4通りであることがわかりました。衝撃でした。なぜなら、教科横断とは一つの方法を共有することではななかったのです。多様な方法で同じ理解に行き着くという経験だったのですから。
★つまり、それぞれの世界作りが同一のモノへと収束するのです。
★そして、同時に衝撃でした。多様な理解の方法のうち一つを生徒に教えた場合、実はマッチングしているかどうかの違いが学力差を生むかもしれないということです。つまり、マッチングしていない生徒は理解ができないとか能力が低いとかいうことではなかったのです。(つづく)
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