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2021年8月22日 (日)

茨城モデルの北風があるいはエネルギー型太陽が2027年の首都圏中学入試を変える。そして10万人海外大学進学準備市場ができる。

★来年2022年度には、茨城県は14の県立中高一貫校が揃います。これらの高校卒業生の数は最終的には合わせて2300人くらいになるでしょう。茨城県の高校の卒業生の約8%シェアになります。これは大きいですね。しかも、県教委は、民間校長を公募し、21世紀型教育を進めようとしています。公募の問いかけがそれを物語っています。これについては、石川一郎先生との対話をご覧ください(→GLICC Weekly EDU 第42回 「2027年に教育を変えるニューパワー教師の価値ー石川一郎先生との対話」)

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★21世紀型教育というと東京と静岡の21世紀型教育機構に加盟している先鋭的先進的な学校を思い起こすかもしれませんが、そこまで行く必要は現状ではないのです。また、21世紀型教育とは何かという話になると、理念面、3ポリシー面、授業スタイル面、破格なグローバル教育面と複合的で、話が長くなります。

★しかし、ざっくり簡単に言うと、上記の図のように、教科の授業だけでよいというパラダイムから探究型の学びも取り入れようというパラダイムに移行する実践があることと一般入試に向けて自己責任で学べばよいというパラダイムからWorld Makingを意識した学びによって海外大学も射程に入れるというパラダイムにシフトする実践が起きていれば、21世紀型教育になります。

★茨城の県立中高一貫校は、そちらに変容することを校長公募の条件で明快に宣言しています。

★となると、茨城の私立学校もそれに対応しなければなりません。おのずと海外大学や探究型の授業によって総合型選抜を選択する進路指導にならざるを得ません。そして、このような方向性を実現するには、アクティブラーニングやPBLにならざるをません。

★授業の変化が学校を変えるだけではなく、ディプロマの変化が学校を変えるということにもなるのです。21世紀型教育機構が授業を変えることが学校を変えることになるという作戦を選択したのは、10年前には、海外大学や総合型選抜がなかたからです。つまり、石川一郎先生のいうエネルギー型太陽作戦でいくのは必然だったわけです。

★しかし、これは難しい道のりです。ディプロマが変わらないのに、授業を変えるというのはいかにして可能か。それは生徒の成長や目の輝きがPBL型の授業や教育活動をあと押ししたということが大きかったでしょう。これによってZ世代の活躍の拠点校ともなっているのです。

★ところが、2021年からは海外大学や総合型選抜が受験市場でも認知され始めたので、ディプロマを変えることによって学校を変える、必然的に授業のスタイルも変わるというアウトプットからの動きになってきたのです。ある意味北風作戦が復活したともいえるし、すでに先行している公立中高一貫校が、授業スタイルを変えているので、エネルギ型太陽でいけるのかもしれません。

★動機付けは違っても、つまりアプローチは違っても結果的には上記座標のⅠ型とⅡ型のディプロマやカリキュラムが生まれてくるという流れは茨城県では明快になったわけです。公立中高一貫校が動けば、私立高校もそれを乗り越えようとしますから、ディプロマ型21世紀型教育になります。これが茨城県の高校人口の約40%を占めるようになります。

★茨城の受験市場もシフトせざるを得ません。

★茨城県としては、茨城から日本の教育を変えるという野心に燃えていますから、幕末の様相を想起するかのような新しい水戸学が生まれるのかもしれません。

★同県の少子化は勢いを止められませんから、テレワークの時代に同県への移住を促進するためにも、そのような家庭の嗜好性に合わせた教育の整備も必要なのです。

★それから、茨城から成田も近いですから、海外の留学生に門戸を開放しておく必要もあります。地政学的に、アジアにおける安定した民主主義国家である日本は、欧米から注目されているし、東南アジアの国々からも期待されています。ただ、英語の問題とPBL型授業の問題が、今まではありました。また海外大学への進学準備教育の問題もありました。

★しかし、ディプロマ型21世紀型教育の整備によって、それが解消されます。テレワークと英語とPBLと海外進学準備が茨城県を新しいグローバルな自治体に変容させていくことでしょう。

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★高校の入学者数は、上記の表にあるように上位13の自治体で60%を超えます。この自治体が、ディプロマ型21世紀型教育にシフトすると茨城県が考えているようなことが日本の教育に反映していきます。

★すでに東京には3ポリシーすべてにわたって21世紀型教育を先鋭的に実行し、2021年春にその有効性を証明しましたが、そこまでいかなくても、ディプロマ型21世紀型教育にならざるを得ない状況は同じです。

★ディプロマ型21世紀型教育は、上記の図のすべてを行うわけです。海外では、大学進学準備教育は大学受験勉強とは違い自分とは何か、自分が社会に貢献できる社会実装は何か、それによる自分の価値は何かを自己探究する道を意味しますから、日本もⅠ型Ⅱ型にシフトすることは、大学進学準備教育が受験勉強から離れることができるので、ウェルカムですが、残念ながら指導要録の在り方が変わっていませんからⅢ型Ⅳ型も残ります。

★学力の3要素でつくっていくように指導要録は変わりましたから、変わっていないということはないのですが、新しい酒も古い器では変わりようがないのです。

★ですから、ディプロマ型21世紀型教育校は、Ⅰ型嗜好は30%、Ⅱ型は3%といったところから始まるでしょう。しかし、20世紀型教育は、Ⅲ型Ⅳ型がほぼ100%だったわけですから、2027年の変容率は急激です。

★現在、民主主義国家は、非民主主義国家に比べ、まだ少ないとも言われています。シンクタンクによって違いはありますが。いずれにしても、第二次世界大戦後増加しています。今回のパンデミックで、独裁的、つまり北風国家の方が有益なように見えるとメディアでは言われてもいます。何せ、アジアの政治的情勢は不安定ですから、そういう見方になるのかもしれません。

★そんな中、階層構造はあるものの階級構造がない大衆化した民主主義国家である日本は、留学生にとってはパラダイスです。日本の大衆化は禅の世界の十牛図の最終段階に達した状況だからです。オルテガの大衆の反逆で語られるような欧米のエリートが批判対象にする大衆とは違います。欧米のエリートが自分たちの階級維持装置を崩されるリスクのある大衆民主主義国家として日本はあります。

★なぜかというと、欧米のように化石燃料を日本は持っていないのに、民主主義国家を維持しているからです。化石燃料がない分、労働集約的な仕事をしてきたのですが、それが化石燃料を代替するエネルギーを開発する道も生みました。今までは、それを前面に出すと化石燃料関連の国際貿易のバランスが崩れるので、国や自治体は動きにくかったのですが、今回のパンデミックで、世界同時的に代替エネルギーへのシフトが起きています。

★これはしかし、階級構造をつくってきたアッパー層にとっては打撃です。自らがイノベーションを起こしつつ、法の支配という国際的な民主主義ルールを形成するか、独裁的に非民主主義的統治をしていくかせめぎあいが鮮明になってきます。

★そんな中で、日本は民間レベル個人レベル、つまり大衆レベルで自前で代替エネルギーを創ることができるようになります。その動きの準備がディプロマ型21世紀型教育です。探究ゼミなどで循環型都市を創る学びが起きています。これは何も環境経済だけを目指すのではありません。里山資本主義的な素養のある日本の都市は、DXを活用しもっとスマートな循環型都市がすぐにできます。茶室や庭園の発想ベースの都市モデルはイギリスやドイツにもありますが、もともとは江戸の大名庭園がアイデアのもとです。水戸学の背景にはこういう庭園都市創りの発想があります。今回茨城モデルが立ち上がったのも歴史的な偶然というより必然かもしれません。

★茨城モデルの発想はもともと静岡県の知事川勝さんの研究成果でもあります。静岡にも静岡モデルを創ろうと静岡聖光学院が動いています。

★京都も動き始めています。

★東京、神奈川、千葉、埼玉も茨城モデルに対応する動きはすでに起きています。

★京都が動けば、大阪、兵庫も動きます。それに大阪にはすでに動いている学校もあります。公立では、水都国際という民間と連携している学校があります。ただ、ここはIBを導入しているので、大衆化が難しいということでしょう。

★広島も活発に動き始めました。まだ広島モデルというのができていないのが不思議です。やはりIB導入ということを考えると、階級構造が忍び寄ります。ノーブレス・オブリージュなき階級構造の導入は、大衆化しにくいので、そこはどうするかです。10の学習者像を自治体全体で共有すれば、一気呵成に進みます。新しいモデルができますが、大衆化とは少し路線が違いますね。

★愛知は、トヨタが完全にシフトチェンジをしていますから、教育も変わるでしょう。

★埼玉に人口移動が起きているのも、ホンダがシフトチェンジをしているからでしょう。その点からいっても埼玉も教育が変わるはずです。

★北海道も、神崎史彦先生を招いてⅡ型にシフトしようとする学校もでてきました。北海道は道立王国であり、同時に≪私学の系譜≫の聖地でもあります。内村鑑三や新渡戸稲造が学び、私学を生み出し、そこで河井道にも出会います。道立高校もなかなか革新的です。1998年以降、メインバンクが倒産してから北海道の経済はずっと窮地に立たされ、今回のパンデミックです。変わらざるを得ないでしょう。

★かくして、2027年には、上記の表の13の自治体の教育は少なくともディプロマ型21世紀型教育に変容します。すると、3%は海外大学に進学するようになると思います。すると2万人強は海外大学に進学するようになります。

★この動きは13の自治体に限らずおきます。すると、日本全体から、高校卒業生の中から毎年3万人強は海外大学進学者が輩出されることになります。これが2027年に起こることです。

★首都圏の中学受験市場は、一学年5万人(4年生から考えると30万人規模)です。海外大学進学準備市場が十分成り立つのは推測に難しくありません。高校1年生から3年間最低準備しますから、10万人規模の海外大学進学準備市場が創出されるということになります。

★とはいえ、すでに10万人くらいは日本人留学生はいますから、エッと思われる方もいるでしょう。しかし、これはまだ市場というより、個人ベースで行っているものがほとんどです。海外進学準備教育という市場としては確立していないのです。それに、市場となるからには、海外大学であればどこでもいいというわけにはいきません。学校が取り組む以上、そこのリサーチがしっかり必要となるでしょう。この動きが市場をつくる契機になります。

★海外大学進学準備は、テレワークがベースになりますから、GIGAスクール構想と小学校の英語教科化が、下支えするということも見逃せません。

★そして、その大前提は日本がアジアの中で安定した大衆民主主義化国家(この大衆は禅でいう最高レベルの庶民の対話の当事者という意味)であるということです。八雲学園や工学院のように、ラウンドスクエアに加盟している学校が重要なのは、世界の民主主義国家のリーダースクールの仲間入りして、アジアにおける安定した大衆民主主義モデルを伝えることができるということです。

★観光におけるインバウンドだけではなく、学びのインバウンドを生み出す茨城モデルの動向に今後注目です。

★そして、何より重要なのは、この学びのインバウンドを生み出すのはZ世代とその世代と連携するSGT(スーパーグローバルティーチャー)です。今回のパンデミックで、水面下には、リーマンショック以上の痛みがあります。今回ばかりは日本も回避できそうにありません。

★国家>大衆から国家<大衆になるのが日本です。これができなければ、人々の生活は維持できません。ああ、それから自衛隊の力は強化されます。むしろ国家は自衛隊(救命使命も含めて)、公衆衛生、教育は守っていくでしょう。それ以外は、民間といういより起業家民間にシフトしていきます。

★何を言いたいかと言うと、すでにメディアがここ数年取り上げているように、金融機能の大変容です。

★G7にとっては、これは防ぎたいわけですが、もはや対応を考えているはずです。

★十牛図の10番目のレベルの大衆コミュニケーションが信用を築き上げる新しい金融機関の創出、ある意味渋沢栄一が考えていた論語とそろばんの話に立ち還るのかもしれません。

★明治維新は、銀行も資本主義も学校もなかったところから出発しています。

★いよいよ21世紀は20世紀の資産をすべて新しく変えて進化していくのかもしれません。

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