セカサク・ワークショップ(02)ネルソン・グッドマンの発想実装に挑戦
★ネルソン・グッドマンという数学者であり哲学者の発想に久しい間着目してきたが、勤務校の先生方と対話している過程で、すでにそれは各教師の着想の中に暗黙知としてあることに気づきました。この暗黙知を形式知化する、つまり記号化の過程を目に見えるようにするチーム作りが私の役目だと明快になったのが4月から8月にかけての有意義な時間でした。
★ネルソン・グッドマンの発想とは、上記写真の「世界制作の方法」の中のたとえば次の言葉です。
「世界は何から作られているのか。世界はどのようにして作られているのか。その制作にさいして記号はどのような役割をはたしているのか。さらに世界制作は知識とどのように関連しているのか。これらの問いを正面から取り上げなくてはならない。たとえ、完全無欠で最終的な答えがはるか先にあるとしても。」
★完全無欠ではないかもしれないけれど、先生方はその一つの解答を持っています。ただ、教科横断的に真摯に正面からオープンダイアローグをしないと、その暗黙知を形式知化しようという動きがでてきません。
★多くの研修では、だれかの形式知を背景にもったシステムを紹介され、それを持ち帰って授業に適用しようとする。そのとき、自分なりのシステムを深層に置いたままにしておき、いつしか忘却してしまいます。
★勤務校の教師と対話していて、それぞれの推論システムが表現され共有されました。このことは得難い経験です。そして、おもしろいのは、ここに広報副部長が参加していて、広報という領域で表現できる部分とそうでないことをきちんと区別できるということです。一般には、こんな難しいことは広報してもウケないから無用だと無視されます。
★多くの経営陣の場合は、なおさらです。
★しかし、教務はある意味開発部門だし、実践部門です。パソコンのわかりやすい使い方と複雑なシステムの両方を研究して、日々改善しています。広報部は、さらに、そのわかりやすさが生徒のモチベーションと学力にいかに役立つか、受験生と保護者と共感できるプレゼンの創意工夫をします。
★どの局面も必要です。しかし、多くの場合、わかりやすさだけが強調され、そのノウハウが活用されています。ヘビーユーザーで構わないと言えば構わないのですが、総合型選抜は、複雑なシステムを探究したうえで、ユーザーフレンドリーな社会貢献解決策を見出すことが求められます。そういう時代です。
★勤務校では、教師全員がICTを活用しますが、ICTで生徒と思考を共有するのではなく、記号の過程システムを見出す推論方法を共有しています。そしてこの記号の過程システムは、教師1人ひとり違うし、実は生徒1人ひとり違います。
★面倒見がよいということは、一つの記号過程システムをすべての生徒にインストラクトすることではないのです。1人ひとり違うシステムを見える化するソクラテス的産馬術対話をすることです。
★昨今のICTを活用した個別最適化は、一つのシステムをすべての生徒が活用できるようになるためのものです。生徒によって、理解度が違うので、一斉授業ではなく、個別にその段階に応じた問題を提示し、あくまで他人のシステムを強要することです。
★そのシステムを使える生徒は成績があがります。そうでなければ停滞します。しかし、それは能力がないからではないのです。能力を封印されているからです。
★もちろん、小難しいことを生徒と共有しようということなど毛頭いっていません。むしろ生徒1人ひとりの記号過程システム=世界制作の方法が自然と浮き出てくるようなアーキテクチュア―=仕掛けを創ろうということです。その仕掛けを、<セカサク・ワークショップ>と勝手に呼んで、夏期講習で実践しました。数学的思考がどうしても必要です。ネルソン・グッドマン自身が数学者でもあるので、数学科の伊東先生とこの夏期全部で1800分の授業を協働しました。
★セカサク・ワークショップは、完全無欠ではありませんが、共に手ごたえを感じています。これからも挑戦は続きますが、実践までようやく到達したので、日々伊東先生とはリフレクションしていますから、その備忘録としてこのシリーズをしばらく続けていきたいと思います。
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