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2021年8月

2021年8月29日 (日)

工学院の卒業生仲野想太郎さんとの対話

★今年工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)を卒業生て大学に進学した仲野想太郎さんとZoom対話をしました。以前、田中歩先生とのつながりでインタビューをしたことがあったということもあり、総合型選抜で入学したその後の話を聴きたいと思ったからです。やはり、思った通り、総合型選抜の準備に取り組む背景になった実践的学びが生きていました。

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★その理由は何か?またつくづく工学院の教育は先進的で、大学や社会で役立つベースができるという話にも花が咲きました。

★そして、何より田中歩先生をはじめ同校の先生方が<共感>という言葉や行動を大切にしているように、仲野さん自身もまた<共感力>に満ちていました。

★中高一貫校の質は、6年間だけでは完全にはわからないとしみじみ感じ入りました。

★仲野さんには、GLICC Weekly EDUに登壇していただくことになりました。卒業生が語る工学院、総合型選抜が大学生活を豊かにするなどなどまだ未定ですが、そのようなことを対話できると思います。新しい切り口の学校選択の話やどの学校でも、受験生も知りたい総合型選抜の取り組み方を明快に語る仲野さんの登壇をご期待ください。

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聖学院 思考力セミナー まるでダ・ヴィンチ・プロジェクト

昨日、聖学院は学校説明会を開催しました。緊急事態宣言延長もあり、デルタ株の予測不能な動きもあったためでしょう、ハイブリッド説明会に変更されたようです。オンラインでできるセッションとリアルで行うセッションを分けたようです。そんな中で、本橋先生の行う思考力セミナーは、リアルに行われたようです。写真3枚と簡単なキャプションがあっただけなので、詳しくはわかりませんが、ポリドロンと平面図形のワークシートが映っていたので、トポロジーの思考力を今まで以上に発展させて行ったということが推理できました。

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(写真は同校のサイトから)

★たぶん、中学入試界で、セミナーなどで黄金比・白銀比やトポロジーを使いながらアブダクション(abduction)型の推論思考を体験しながら学んでいくプログラムを実施している数学教師はいないでしょう。

★数学の教科書では、硬い幾何学はやるけれど、柔らかい幾何学はやりません。それにdeductionとinductionはやるけれど、abductionは意識してやることはないでしょう。

★しかし、生命科学や化学、建築、アートの世界では当たり前の推論思考法です。

★ただ、そのような現象を扱う学問では、根源的な記号過程の思考方法を直接学ぶことはありません。これは欧米ではリベラルアーツにおける数学の領域です。ある意味哲学です。

★IBでも扱うかなあ。ああ、デンジャラスマスでならやるかもしれません。

★最近の数学はよく社会課題に結びつくようにといいますが、柔らかい幾何とか世界作りの方法とかやらないと、ただ現象をなぞるだけのものになりがちです。

★社会課題に役に立つとは、空気から食物や壁の素材、水などを生成する考え方を見出さなければならないわけです。それには柔らかい幾何であるトポロジー的発想や、普遍的な数論をやらなくてはなりません。

★そもそもその領域が中高の教科書には抜けています。

★しかし、本橋先生は、ちゃんとカテゴライズという集合論的発想を媒介にして、異次元に飛ばしています。

★集合論は教科書に入っていますよね。それが異次元に結びつくサプライズ。シンプルにワクワクする高度な学びです。でも、生徒は高度だなんて思わずに遊べてしまう。リアルな思考力セミナーの醍醐味ですね。

★一般的に、PBLは結局現象にこだわったモノづくりになりがちで、そのモノが成立する記号過程を学ぶことはありません。この根源的な記号過程にこだわって科学が成立するわけですが、それを最初にやったのは、あのダ・ビンチですよね。

★探究がダ・ヴィンチのように記号過程の原理に迫っていくものだと、社会を変えることができます。

★記号過程の原理は実にシンプルです。原理はシンプルで、現象はそれを覆い隠すように複雑なのです。湯川秀樹がそんなことを言っていたような気がします。

★本橋先生の数学は、まるでダ・ビンチ・プロジェクトであるかのようです。

★こういうプロジェクトが自由にできる聖学院がいかに学問的背景が広く深いかということです。2027年に首都圏の中学入試の枠組を変える学校とは、かくして根源的な学問を根っこにもっているということですね。

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21世紀型教育機構 SGTの躍動が日本を変えると実感

本日13:30から、21世紀型教育機構のセミナーが行われています。<次世代SGTが創る「授業→学校」デザイン>というテーマで、本来静岡聖光学院で行う予定でしたが、緊急事態宣言延長の折、バーチャルセミナーになっているわけです。したがって、空間はサイバースペースの中です。ただ、ファシリテーターは静岡聖光学院の教師5人のSGTです。

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★今ちょうど、ブレイクアウトルーム(BOR)に分かれてワークショップセッションをやっています。そのチームのファシリテーターを静岡聖光学院のSGTが行っているわけです。

★私は、そこには参加しないので、あとは同僚に楽しんでもらえればよいので、退室しました。

★おそらくシナジー効果があふれでて、同機構の加盟校の先生方は大いに盛り上がり、明日からの授業に活かせるものは試してみようということになるでしょう。イノベーションの共有こそ本セミナーの目的ですから狙い通りになると思います。

★BORセッションに入る前にファシリテーターによるパネルディスカッションがありました。そこはウェビナーとして参加したわけですが、ナビゲーターの聖学院の児浦先生や静岡聖光学院の田代先生のコミュニケーションが実にコンフィデンスコミュニケーションになっていていい感じでした。

★コンフィデンスとは信頼と自信の二つの意味が融合した言葉です。本当にお二人とも、未来を創っている自信に満ち満ち、互いに信頼している様子が参加者全員に心地よい雰囲気を創っていました。

★そして、それはファシリテーターの若いSGTも同様でした。

★もちろん、このような雰囲気を生み出している両校のリーダーのマネジメント能力がすばらしいということも伝わってきました。

★人気校の共通の特徴は、学校が「自由」と「試行錯誤」と「前のめり」と「信頼」と「誇り」が溢れているということですね。

★マネジメントの極意は、まずはその5つの関係のデザインということでしょう。SGTの皆さんはBORで学びのデザインで盛り上がっていることでしょう。

★明日にでも、同僚にその様子を聴いてみましょう。

★私の方は、授業のデザインが学校デザインを生み出すという環境をマネジメントすることの重要性に改めて気づきました。日本の教育は、制度変更によって改革されることは難しい社会です。やはりSGTの躍動感が正のバタフライ効果を生み出すのだと実感。

★その辺については、9月3日、GLICC Weekly EDUに、静岡聖光学院の校長星野先生が登壇されるので、じっくり傾聴させていただきたいと思います。

★この歳になっても、刻々と学ぶことがたくさんあるのですね。

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富士見丘 中学入試市場で最も注目される私立中高一貫校(03)教師の育てる力とプロデュース力の相乗効果が卓越

富士見丘の副教頭佐藤先生と対話していると学ぶコトがとても多いです。ドラスティックな改革をせず、同校の教師は育てる力をフルに発揮し続け、多様性の環境をプロデュースする力と両立させています。たいていの場合、これは二極分解するのですが、合力になって相乗効果が生まれています。そのエビデンスが、高3の英検2級以上の取得率です。約80%の高3生が2級以上合格しています。準1級でも約30%です。

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★6年かけてここまで持ってきたわけです。2027年までには準1級以上が80%以上で、1級が30%ということになっているでしょう。

★注目すべきは、一般に、国際生入試を行っている学校の多くは、中学入学時にすでに2級以上を持っている生徒が多いのです。ですから育てる必要はないですね。しかし、富士見丘は、中学に入学してから英語を本格的に学ぶわけです。ですから育てる力が半端ないということです。

★そして、多様性の環境やプログラムをプロデュースする力と合力をつくるチームワークが強力だということですね。

★ネイティブスピーカーをたくさん雇い、ドラスティックに多様性を生み出すやり方もあります。

★しかし、冨士見丘は、今いる先生方が協力し合ってこのような結果をだしているのです。

★多くの場合、このような学内にいる教師だけで改革をやっても成功しないと言われています。

★そのような常識を完全に覆したのが富士見丘の先生方です。

★もっとも、はじめから優れた教師を集めていたということなのでしょう。

★さて、以上のような育てる力とプロデュース力とは具体的にはどういう力でしょう。このことについても語りたいと思いますが、詳しくはYoutubeをご覧ください。

 

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World Makingの時代(01)2089セカサク覚書

★2089年には、Z世代は70代から80代になっています。そのときZ世代はα世代のための未来を創っているでしょう。したがって、私たちは、今目の前に広がっているデストピアをなんとか好循環に転換させる世界作り(セカサク)をしておかねばなりません。あらゆる領域においてです。私は教育の現場にいるので、教育の現場でも行っているわけです。その一つの現実態として教育出動したのが21世紀型教育機構作りでした。同士が集まり今やその価値は教育市場の中では一定のポジショニングを得ています。

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★今、私は同機構のメンバー校の一員で、理事は退いています。機構の新たなビジョンであるWorld Makingというグローバル教育4.0を現場でどのように現実化するか動き始めています。動きながら考えるプラグマティックな性格がゆえに、4月から勤務したばかりなので、イメージが結ぶのに少し時間がかかりましたが、セカサクワークショップができる探究の環境を教頭を中心に学校全体で生成してくれたおかげで、プレ実践も出来、上記のようなイメージが降りてきました。

★men for othersはキリスト教の理念でありますが、ニューヨーク国連の平和のためのギャラリーにも掲げられ、民族や宗教、文化の違いを超えた地球全体の共通の理念となっています。それがゆえ、21世紀型教育機構は前身の21世紀型教育を創る会の時から、機構の理念はmen for othersになっています。アクレディテーションの度にこれは確認されます。

★そのために、世界の人びととSDGsのような社会課題を解決するコミュニケーションができるようになるため、C1英語、PBL授業、ICT(今はSTEAM)、リベラルアーツ、哲学、海外大学進学準備教育などを共有してきました。

★また、men for othersは地球市民にとっての民主主義の理念にも重なります。そういう意味で、19世紀末から20世紀初頭に生まれたパースとジェームズとデューイのプラグマティズムの考え方をベースに100年以上たった今の時代に適合するように現代化する学びの環境を作っています。

★おもしろいことに、彼らの考え方は記号過程としての思考を教育で実現することが即民主主義に結びつくというものです。考えてみれば、当時は近代国家も脆弱だったし、民主主義国家も少数派でした。今でも、民主主義国家は50%を切ると試算するシンクタンクもあるぐらいです。

★したがって、私たちは、プラグマティズムの系譜としての≪私学の系譜≫を引き継ぐ作業をしているのだと思います。そして、2089年には、200年という歳月を通して、プラグマティズム的な民主主義が地球市民社会市場として広がるように実現する教育出動をしておく必要があるのだと考えています。

★私は幸い理事ではないので、自分の考えを自由に言えます。私の考えに賛成してくれる教員といっしょに21世紀型教育機構に寄与できるような実践を自由にできるというのが私の役割です。

★上記の図は、学校だけではなく、他の団体にも当てはまるように一般化しました。21世紀型教育機構のメンバー校のSGT(スーパーグローバルティーチャー)は、今上記の図のワーキング層であるPBL授業のデザインの実践研究を協働して行っています。

★学校改革論は、いつも国家に紐づく制度改革の話や組織開発論、マーケティング論に終始し、授業をいかにデザインするかという話にはなかなかなりません。しかし、同機構は授業デザインをテコにZ世代にとってwell-beingな学びの環境を作っています。結果的に組織も変わり、学校改革は成就し、生徒も集まるという状況になっています。

★このような学校改革の話は、今のところ同機構以外ではあまり聞きません。そこで、同機構の教育研究センターのリーダーSGTが、機構以外にも拡大していくことで、日本全体の教育が変わるという作戦を遂行し始めました。すばらしいですね。

★一方私の方は、勤務校がスモールサイズだということもあるし、カトリック校なのでそもそも理念がmen for othersですから、上記の図のmen for othersと根源システム=記号過程としての脳神経身体宇宙全体のシステム思考がつながる試みを始めました。同僚の先生方も幾人か協働してくれています。

★スモールサイズということは、組織論や授業デザイン論、経営論に関しては複雑ではないのです。まして、私立学校なので国家に縛られることはありません。民主国家としての法理念とmen for othersとしての規範は共通するところが大なので、縛られているのではなくて、共有しているだけです。

★したがって、理念と根源システムがダイレクトに結びつくかどうかが見えやすいのです。

★サイズが大きくなると、それぞれの層の規範が必ずしも一貫性がないので、葛藤を起こし、目先の解決に時間がとられ、根源システムにはたどりつかないし、そうなると理念はスローガン化します。

★そうならないようにモニタリングしているのが、21世紀型教育機構のアクレディテーションの役割でしょう。

★こうした上記の7つの層が循環し、一貫性がでてくる世界を創るというのがWorld makingです。同機構のおもしろいのは、同一システムで動いているわけではないのです。それが国際バカロレア機構と違います。

★国際バカロレアの姉妹コミュニティであるラウンドスクエアに近いあり方だと思います。加盟校の私立学校がそれぞれ独自性を発揮するコトが大事です。しかし、同時にIDEALSという理念は共有しています。

★国際バカロレアの10の学習者像、ラウンドスクエアのIDEALSという理念は、最終的にはmen for othersに収束します。

★そういう意味では、このようなコミュニティが互いに世界に広がっていくということは2089年の世界作りに大いに貢献するでしょう。21世紀型教育機構が、世界と結びつくコミュニティになることがグローバル教育4・0の目標でもあります。

★マイルストーンとしてまずは2027年に日本の中等教育段階での学びの実践が大きく変わることになると思います。そのビッグバーンは21世紀型教育機構も契機の1つになると思います。

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2021年8月28日 (土)

富士見丘 中学入試市場で最も注目される私立中高一貫校(02)巧まずして飛躍する大学進学実績

副教頭の佐藤一成先生と対話をして、いつも感心するのは、コミュニケーションのスタイルが謙虚でありながらロジカルでシンプルな雰囲気だということです。富士見丘は、基本大学進学実績を前面に出して語ることはありません。ただ、3ポリシーの情報の一環として、公開せざるを得ないわけです。そのリストをみると、実にシンプルに、凄い!と感じます。

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★海外大学、東京外国語大学、上智大学、国際基督教大学、立教大学などの実績を見れば、それは富士見丘が中学入試市場で注目されるのは明らかです。ただ、この実績は2018年から出ていたわけです。

★3年経ってようやく国内で気づかれたというのは興味深いですね。3年前は、すぐに帰国生はことの重大さに気づいたのに、国内ではなぜか気づかれない。

★それは、前述したように、進学実績という結果を前面に出して宣伝しないからということと、サンデー毎日などで大学合格実績を集約しているシンクタンクの恒例の記事では、総合型選抜などの推薦で合格した人数を収集せずに公開しているからです。

★上記のデータの( )内は、総合型選抜(旧AO入試)や推薦入試の結果ですが、それは収集されないわけです。それからこのタイプの入試は、一般選抜入試のように多数併願するというわけにもいかないのです。ポートフォリオをきちんと書類にしなければならないので、膨大な時間がかかり、結果的に1大学しか出願しないということは大いにあるのです。

★サンデー毎日などで公開されるデータは、一般選抜入試の結果です。しかも進学者数ではなく合格者数ですから、1人で3大学くらいは合格するでしょう。すると富士見丘は量では目立たないわけです。卒業生数も80名強ですからなおさらです。

★それから海外大学の実績も受験業界の情報誌では、あまり注目されませんでした。ただし、2021年以降は、多くの学校でも海外大学進学の風が吹いていますから、その点でも富士見丘はますます注目されるでしょう。

★先ほど、東京外国語大学、上智、国際基督教大学、立教大学実績について触れましたが、なぜこれらの大学かというと、今回パンデミックで、海外大学進学を国内に切り替えた生徒も多かったようで、その生徒の国内の行先の大学が、こうした大学です。ポストパンデミックの時代に、再び海外大学進学が増えるということがこれらの大学の進学実績に示唆されているのです。

★それにしても、このような大学に合格させるための指導をしていないのに、自然に出てしまうというのはなぜでしょう。実績は論より証拠シンプルにすばらしいというのがわかりますが、それが自然に出る同校の教育システムは実に丁寧かつ多層構造になっていて複雑系です。教育のクオリティを創っているこの複雑系についても語っていきたいと思いますが、まずは、詳しくは、佐藤先生との対話をご覧ください。

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富士見丘 中学入試市場で最も注目される私立中高一貫校(01)注目されているコトの意味

★昨夜(8月27日)、<GLICC Weekly EDU 第43回 「6年間で伸びる進学校ランキング1位!富士見丘の教育の質 佐藤一成先生との対話」>がありました。今や中学入試で大注目されている富士見丘。その奥義を副教頭佐藤一成先生と対話しました。この奥義はシンプルですが、その背景は複雑です。質の高い教育とは、見える部分はシンプルですが、見えない部分は複雑系です。見える部分は複雑だけれど、見えない部分は空洞化しているという学校も少なくない今日、見えない部分を見通すあるいは感じ取る感度の高い保護者と受験生に富士見丘は注目されています。

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★中学入試市場で注目されていると述べました。これは中学受験市場で注目されているというのとは差異があります。この差異は、今までは帰国生しかわからなかったのです。なぜなら、それぞれの帰国生が学んでいる海外の国では、そもそも中学受験市場というのはメジャーではありません。もちろん、海外にも中学受験塾は進出していますが、Webの時代ですから、中学入試情報は動画や学校のサイトに直接アクセスできてしまいます。

★それに帰国生の保護者や受験生の多くは、偏差値ランキングが意味不明です。自分の判断で学校を選択します。そのときの基準は、それぞれの海外にある私立学校やインターナショナルスクールです。それを基準として学校を探すと、富士見丘が光るのです。

★息子を持つ親からは、女子校なんですね。共学校だったら、ぜひ通わせたいと言われる程なのです。

★ところが、今までは、中学受験塾主導の中学受験市場では、偏差値ランキングや大学進学実績で選ばれてきたため、富士見丘は国内ではあまり目立ちませんでした。

★2013年ころから、富士見丘はグローバル教育やICT教育、PBL授業の準備を始めました。特にC1レベル(英検1級)を目指せる環境を整えていましたので、帰国生はすでに注目していました。

★ところが、2013年、富士見丘を筆頭にそのような動きを見せた学校に対し、今聞くと問題発言ではないかというようなことをある大手中学受験予備校が、言い放ちました。4教科入試をちゃんとやって大学進学実績をだしてれいばよいのであって、ICTだ英語だとか、ましてPBLとか適性検査型入試とかやっている学校はダメでしょうと。

★しかし、市場というのはおもしろいもので、その大手中学受験予備校とは違う路線の市場をつくる塾が現われてきたのです。そのようなNew Power School(NPS)をサポートしようという路線です。NPS、中でも21世紀型教育推進校は、チームになって新しい学び、特にグローバル教育、PBL、ICTを3点セットとして束になって推進したので、塾ではなく学校主導の中学入試市場ができたのです。

★すると、その市場をサポートしようと参入する塾が次々と生まれてきました。また、大手中学受験塾や模擬会社の中にもこの市場を応援するところがでてきました。

★当時、私が中学入試市場と中学受験市場は違うと言ったとき、受験業界のライターでさえも何言っているの?と訝し気でした。それはそうですよね。受験市場で御三家ピラミッド情報を流しているわけですから、偏差値ランキングを無化しようという中学入試市場を見るメガネをかけていないのです。

★ところが、帰国生はまっすぐにそこを見ていました。しかしながら、今回の長引くパンデミックで、国内の受験生及び保護者もオンラインでダイレクトに学校にアクセスできるようになり、また中受験市場の4科主義から中学入試市場の新タイプ入試主義市場が30%シェアを果たしたということもあり、中学入試市場の情報をゲットすることができるようになったのです。

★すると、そこに富士見丘という真正≪私学の系譜≫でありながらNPSである学校が光を放っているのに気づいたのです。

★今年の4月24日号の週刊ダイヤモンドでは、東京で伸びる中高一貫校ナンバーワンが富士見丘であると公表されました。また5月29日発刊の週刊東洋経済では、首都圏で第3位に富士見丘が位置しています。

★中学入試市場と中学受験市場は差異はありますが、3つのポリシーの情報を収集しているという点では共通しています。中学受験市場に属しながら、中学入試市場にも参入しているプレイヤーが、富士見丘の教育の質の高さについに気づいたのです。

★そして、このことが市場再編の引き金になります。2027年は中学受験市場は大きく変容します。オセロのように中学入試市場のシェアが拡大するでしょう。

★その契機となっている富士見丘。なぜ注目されているのか、その奥義については、しばらく語っていこうと思いますが、まずはYoutubeを実際にご覧ください。納得がいくと思います。

 

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2021年8月26日 (木)

正しい21世紀型教育 静岡聖光学院の進化の意味

★今月29日(日)、バーチャル静岡聖光学院21世紀型教育機構のオンラインセミナーが開催されます。今回は加盟校限定ですが、いずれ公開セミナーを開始すると、今回の主催者である同機構の教育研究センターのリーダーの先生方は目論んでいます。なぜいったん限定セミナーかと言うと、まずは自分たちで正しい21世紀型教育の促進者SGT(スーパーグローバルティーチャー)とは何者かを実感しようということでしょう。

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★正しい21世紀型教育とは今更何か?その答えは、静岡聖光学院のSGTにあります。このようなセミナーは、20世紀型教育は、偉い人や大学教授を招いて行うのでが通例です。それはそれでよいのですが、なぜそうするかというと、外部の人を集めてセミナーを行ったとき、時代を語ったり、未来を語ったり、ファシリテーターをやったりすることを、若手教師が自前でやることは、今まではなかったのです。

★静岡聖光学院も、5年前は自信はあったでしょうが、まずは外部の講師やファシリテーターを招いて実施していました。ところが、今や5教科のワークショップのファシリテーターはオール静岡聖光学院の教師です。このこと自体、静岡聖光学院は正しい21世紀型教育を推進しているということの証です。もちろん、同機構の加盟校はすべてそうです。しかし、ここまでSGTが大量にいるのは、同校の面目躍如でしょう。

★そして、またちょっと小難しい話をすると(おじいちゃんはクドイのです)、正しい21世紀型教育は、20世紀型教育のパラダイムを転換しているということが絶対条件です。20世紀型パラダイムは、簡単に言うと大量消費・大量生産・大量移動・大量情報の洪水の中で椅子取りゲームをして階層構造をつくることです。

★しかし、21世紀型教育は、階層構造はフラット化します。消費や生産や移動や情報は、質を生み出すというパラダイムです。質が莫大な価値を生み出す。その価値を公平に配分できるから、すべての人がwell-beingなクオリティライフを送れるのです。もちろんその価値は目先の金のお話ではありません。金以上の価値です。

★そんなものあるのか?そう思った方は、20世紀型パラダイムが心地よいのです。偏差値ランキングが好きなのです。それはそれで選択の自由ですから、いいのですが、そのパラダイムで21世紀型教育をやっていると嘯くのはフェイクですよ。

★それはZ世代にとって迷惑です。まあ、しかし、Z世代はそれを見抜く目を持っていますから、何の心配もありませんがね。

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2021年8月25日 (水)

工学院の田中歩先生と対話 好奇心旺盛になるPBL授業

★本日、工学院大学附属中学高等学校(以降「工学院」と表記)の田中歩先生(教務主任)と対話をしました。工学院と私の勤務校は東京私立中高協会の11支部の仲間であり、21世紀型教育機構の仲間でもあるので、いろいろな局面で情報共有のコミュニケションを行うことになります。

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★いつものように、トピックは様々でしたが、どんな話も、最終的には、PBL授業で生徒のGrowth Mindsetがいかに膨らむのか、共感性が豊かになるのかについて収束していきます。

★授業デザインは、コンストラクショニズム(C)とインストラクショニズム(I)の掛け合わせでできますが、歩先生はC>IというPBLを実践します。また私の知っている同校の先生方も同様です。

★そして、C<Iでないがゆえに、極めて創造的な授業になります。それが故に生徒は好奇心に満ち満ちるわけです。歩先生と対話していると、ノーベル物理学賞受賞者のファインマンが、科学者の条件は、好奇心、開放的精神、疑問だと語っていたのをいつも思い浮かべます。

★PBLは問いを教師が提示するというより、生徒が自ら疑問を抱き仮説を立て検証していく推論過程を大切にしています。そのためには、議論も必要で、開放的精神、つまりGrowth Mindsetがポイントになります。

★何より、その発火点は好奇心です。

★こうなるには、教師がPBLをインストラクションしていくデザインを決めすぎると生徒の存在は一色に塗り固められます。

★余白が大事なんですが、歩先生のPBL授業は余白が多いかもしれません(笑)。

★いずれにしても、発火点は好奇心。興味と関心を生徒自身がどう生み出すか。

★工学院の先生方のすてきなところは、興味と関心あるものを追究していくことを大いに肯定しながら、片方で生徒が関心を持っていないものにも、興味と関心を生み出せる授業をしようとチャレンジしているところです。

★C>Iというのは、その証拠ですが、おもしろいことに、そのコツは教師によって違います。

★ふだんから共感的コミュニケーションベースの先生方は、そのことに気づいたとき、互いのコツを絵に変換して共有しました。

★ふだん慶応義塾大学の教授井庭崇さんのパターンランゲージを活用しているようですから、それを適用・発展させて自分たちで創ってしまったようです。

★来月、それについてGLICC Weekly EDUで対話しようと思います。PBLといっても多様体です。その多様性を大事にするのが歩先生です。教務主任のリーダシップが光ります。創造性は結局多様性から生まれます。

★勤務校の教師も歩先生と少しの時間でしたが対話することができ、刺激を受けていました。

★刺激を受けるとは興味と関心のモチベーションが生まれるということですが、やはり多様性の前提は共感的コミュニケーションです。出会うや否や、この足場(scaffolding)づくりができる歩先生の才能に改めて感銘を受けました。貴重な時間をいただきました。ありがとうございました。

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2021年8月24日 (火)

セカサク・ワークショップ(02)ネルソン・グッドマンの発想実装に挑戦

★ネルソン・グッドマンという数学者であり哲学者の発想に久しい間着目してきたが、勤務校の先生方と対話している過程で、すでにそれは各教師の着想の中に暗黙知としてあることに気づきました。この暗黙知を形式知化する、つまり記号化の過程を目に見えるようにするチーム作りが私の役目だと明快になったのが4月から8月にかけての有意義な時間でした。

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★ネルソン・グッドマンの発想とは、上記写真の「世界制作の方法」の中のたとえば次の言葉です。

「世界は何から作られているのか。世界はどのようにして作られているのか。その制作にさいして記号はどのような役割をはたしているのか。さらに世界制作は知識とどのように関連しているのか。これらの問いを正面から取り上げなくてはならない。たとえ、完全無欠で最終的な答えがはるか先にあるとしても。」

★完全無欠ではないかもしれないけれど、先生方はその一つの解答を持っています。ただ、教科横断的に真摯に正面からオープンダイアローグをしないと、その暗黙知を形式知化しようという動きがでてきません。

★多くの研修では、だれかの形式知を背景にもったシステムを紹介され、それを持ち帰って授業に適用しようとする。そのとき、自分なりのシステムを深層に置いたままにしておき、いつしか忘却してしまいます。

★勤務校の教師と対話していて、それぞれの推論システムが表現され共有されました。このことは得難い経験です。そして、おもしろいのは、ここに広報副部長が参加していて、広報という領域で表現できる部分とそうでないことをきちんと区別できるということです。一般には、こんな難しいことは広報してもウケないから無用だと無視されます。

★多くの経営陣の場合は、なおさらです。

★しかし、教務はある意味開発部門だし、実践部門です。パソコンのわかりやすい使い方と複雑なシステムの両方を研究して、日々改善しています。広報部は、さらに、そのわかりやすさが生徒のモチベーションと学力にいかに役立つか、受験生と保護者と共感できるプレゼンの創意工夫をします。

★どの局面も必要です。しかし、多くの場合、わかりやすさだけが強調され、そのノウハウが活用されています。ヘビーユーザーで構わないと言えば構わないのですが、総合型選抜は、複雑なシステムを探究したうえで、ユーザーフレンドリーな社会貢献解決策を見出すことが求められます。そういう時代です。

★勤務校では、教師全員がICTを活用しますが、ICTで生徒と思考を共有するのではなく、記号の過程システムを見出す推論方法を共有しています。そしてこの記号の過程システムは、教師1人ひとり違うし、実は生徒1人ひとり違います。

★面倒見がよいということは、一つの記号過程システムをすべての生徒にインストラクトすることではないのです。1人ひとり違うシステムを見える化するソクラテス的産馬術対話をすることです。

★昨今のICTを活用した個別最適化は、一つのシステムをすべての生徒が活用できるようになるためのものです。生徒によって、理解度が違うので、一斉授業ではなく、個別にその段階に応じた問題を提示し、あくまで他人のシステムを強要することです。

★そのシステムを使える生徒は成績があがります。そうでなければ停滞します。しかし、それは能力がないからではないのです。能力を封印されているからです。

★もちろん、小難しいことを生徒と共有しようということなど毛頭いっていません。むしろ生徒1人ひとりの記号過程システム=世界制作の方法が自然と浮き出てくるようなアーキテクチュア―=仕掛けを創ろうということです。その仕掛けを、<セカサク・ワークショップ>と勝手に呼んで、夏期講習で実践しました。数学的思考がどうしても必要です。ネルソン・グッドマン自身が数学者でもあるので、数学科の伊東先生とこの夏期全部で1800分の授業を協働しました。

★セカサク・ワークショップは、完全無欠ではありませんが、共に手ごたえを感じています。これからも挑戦は続きますが、実践までようやく到達したので、日々伊東先生とはリフレクションしていますから、その備忘録としてこのシリーズをしばらく続けていきたいと思います。

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セカサク・ワークショップ(01)多様なアプローチが1つの理解に到達することの重要性

★今年の4月から勤務校で始めたことの1つは、数学とことばの交差点としての記号とは何か?その記号が生み出す過程は思考なのかアートなのか?つまり世界を創る(セカサクと呼ぼうと思います)とはどういうことなのか?などを探究しつつPBL授業の質的変容を試してみることでした。理論優先ではなく、すべての授業で行いつつ、動きながら考えるという実際的手法でまずは進んでいます。20%ルールを共有して、通常授業の中に生徒の思考作用が活性化する問いを生み出すという動きをしています。

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左から伊東教諭(広報副部長)、小島綾子教諭(教頭)、佐藤教諭(数学・情報)、松本教諭(教務部長)

★勤務校は21世紀型教育を推進しています。ですからPBL授業を行っているわけですが、PBLを構成するアクティビティの中にはレクチャーもあります。したがって、一つの単元を授業する時、あるときはレクチャー一色、あるときは議論一色となってとりあえずはよいわけです。

★これは教員全員が同じ思いです。とはいえ、やはり人によって違います。単元によって違います。勤務校は高校だけでの私立学校ですから、どうしても、知識を無視できません。

★この場合、一般的には、知識を覚えてから考えるという発想になりがちです。しかし、これは、必ずしもすべての生徒の学力をアップするということにはならないのです。

★知識は覚えなければしかたがない場合もありますが、定着するのは結局知識を活用した時です。それから知識を発見した時です。さらには複数の知識を組み合わせたとき、それが混合ではなく、化合する場合がありますが、そのとき知識を創造することになります。このレベルは生徒が最もワクワクする瞬間です。

★ですから、覚える、知る、使う、混ぜる、化ける、創るといった知識のダイナミズムがポイントです。このことはみな了解済みです。であるならば、毎回化けるとか創るという時間を20%設定したならば、モチベーションアップのきっかけが増えるのではないかと仮説を立てたわけです。簡単に言えば、覚える、わかる、できるという流れですが、覚えるにはどうしたらよいか、わかるにはどうしたらよいか、できるにはどうしたらよいのかの仕掛けづくりは、意外とそれぞれの教師の暗黙知の中に隠されています。

★それから、勤務校はカトリック精神を大切にしていますから、そのできるには、社会貢献実装が含まれます。そこまで、授業で、それぞれの教師が行っています。

★ところが、教師が自分自身でも気づいていない場合があります。そこで、20%ルールを意識することで、暗黙知を自ら形式知化できるかもしれないと。

★そして、それを共有すれば、学校全体で知識のダイナミズムが生まれるのではないかと。知識のダイナミズム。それは記号の生成過程であり、思考ということでしょう。何度も繰り返しますが、ここでいう知識は、既知のものだけではなく未知のものも含み、その両極を往復し、渦巻きになっていく記号の過程が思考です。

★結果的に、その過程が映し出される段階になったとき、ようやくモニタリングができるのですが、そうなるまで1年かかるでしょう。とはいえ、1年後にそれを行うというのでは遅いので、教頭(国語科教諭)と教務部長(数学科教諭)と広報副部長(数学科教諭)と情報・数学の教諭とで、それぞれが20%ルールで繰り広げている自分の視点を共有するミーティングを同時並行していきました。

★同じ文章、同じ詩、同じ写真、同じグラフを見て、自分ならどう理解していくのか、どう新しい視点を発見するのかなど1学期はミーティングをしていきました。授業研究の前に、ケース研究です。

★すると、4人とも同じ理解に行き着くのですが、そのアプローチが4通りであることがわかりました。衝撃でした。なぜなら、教科横断とは一つの方法を共有することではななかったのです。多様な方法で同じ理解に行き着くという経験だったのですから。

★つまり、それぞれの世界作りが同一のモノへと収束するのです。

★そして、同時に衝撃でした。多様な理解の方法のうち一つを生徒に教えた場合、実はマッチングしているかどうかの違いが学力差を生むかもしれないということです。つまり、マッチングしていない生徒は理解ができないとか能力が低いとかいうことではなかったのです。(つづく)

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2021年8月22日 (日)

学習塾・習い事の可能性 日本の大衆民主主義の期待値

★スポーツニッポン新聞社 2021/08/21 22:46によると、「俳優の鈴木亮平(38)が主演を務めるTBS日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(日曜後9・00)の第7話が15日に放送され、平均世帯視聴率は15・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことが16日、分かった。」ということです。この高視聴率の高さは何でしょう。

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★1つは、脚本家があの黒岩勉さんだったということもあるでしょう。社会派系の作品が巧みですね。今回の医療ドラマも、まさに今救命搬送ができない喫緊の課題を抱えている現状と言うこともあるでしょう。しかし、一方でドラマで救命救急の新しい解決策としてスマートシティならぬスマート救命室を創ってしまっているところがすごいですね。

★今回のパンデミックは、現場は凄いことになっていて、こんなことをいうと叱られますが、日本の公衆衛生がいかに質が高いかを世界に映し出しています。しかし、それでも回避できない問題があります。救急救命士の活躍ができる法的整備の歴史は実に凄いのですが、それは救急救命医との連携が拍車をかけてきました。しかし、それでも解決できない搬送できない事態。それを解決する一つの提案が今回の番組でもあります。

★もう1つは、何といっても主演が鈴木亮平さんというのもあるでしょう。背が高いし、モデルで活躍していたということもあるでしょうが、東京外国語大学出身で、C1英語レベルの持ち主です。中学の時からオーストラリアやアメリカに短期留学をしていたようです。これは、ネット情報ですが、英会話教室に通っていたからだということのようです。

★つまり、鈴木亮平さんのものの見方や考え方に影響を与えたのは学校生活ばかりか、英会話教室という学習塾や習い事の文化の影響ということがあるわけです。

★多くの子どもたちが今や学習塾や習い事の影響を受けています。医療従事者の話や英語というキーワードには敏感です。視聴率があがるのも了解できます。しかし、これは同時にmen for othersが大衆化しているということでもありましょう。日本の大衆民主主義が階層構造を作りながらも、階級構造は無化するというパラドキシカルな質の高さが今回の高視聴率に現れているような気がします。

★とはいえ、そんなことは、まあ、証明のしようがないので、また本間の妄想かということになりそうです。それでも、黒岩勉さんは1973年代生まれで、首都圏は中学受験の大衆化がちょうど始まる時代に小学校時代を過ごしています。 鈴木亮平さんは、1983年生まれで、首都圏は中学受験の大衆化の完成時代に小学校時代を過ごしています。

★お二人とも中学受験とは縁がないかもしれませんが、高校受験の学習塾・予備校や英会話教室をはじめとする習い事が最盛期を迎える時代を小学生として通過しています。サブカルチャーにもお受験ものが取り上げらっるようになっていた時代です。当然、キャッチしているでしょう。

★最近の中学受験は、この習い事出身の受験生が活躍できる新タイプ入試が盛況です。ますます学習塾・習い事文化が私立中高一貫校を支えることになっています。

★このような事態を嘆くのが20世紀型教育で、21世紀型教育は、学習塾や習い事の発展版の新しい学習コーディネーターとの連携まで迎え入れているぐらい学習塾と習い事との連携は進んでいます。国が法的に認可する学校組織と民間の学びの組織が文化として共存するのが日本の大衆民主主義の教育基盤です。吉田松陰先生が今も尊敬されているのは、そういう文化があってこそです。

★なんて当たり前のことを言っているのだろうと思われるかもしれませんが、このような状況を創れないのが、他国の現状です。今回のパンデミックが先進諸国でさえ、日本ほど自由に学習塾や習い事が生まれることはないということを私たちは知るようになりました。階級構造のある先進諸国では、アッパー層は塾に行く必要のない高額の学費の私立学校(日本の私立学校の10倍くらいの学費です)に通わせればよいし、そうでない階級層は放置されたままです。

★そして、ここ最近、アジアの情勢がそんな文化どころか教育そのものが危うくなっているシーンをニュースで目にします。国名をあえてだしませんが、影響は大ですね。そんな世界の情勢とは真逆なのが日本です。国の認める学びの組織と民間組織が連携でき、しかも大衆化している学びの文化があるのは日本の大衆民主主義の特徴でもあります。

★階層構造という格差は今後解決しなければなりませんが、公衆衛生や医療保険などの恩恵に浴することができる大衆がメインの日本です。階級構造に比べれば相当良い情況だと考え直すこともできます。ですから、各国のアッパー層にいない学びの意欲のある人々にとっては期待値が高い民主国家です。

★前回も言いましたが、この大衆は禅の十牛図でいう最終段階の悟りの境地の庶民の対話ができる当事者のことを意味します。GAFAがZENやマインドフルネスに憧れるのはそういう意味です。

★私たちは、ここを捉え返し、同町主義ではない、正しい大衆民主主義を探究し続けたいものです。

★そうしないと、続々世界のアッパー層がやってきて、労働集約型成果の果実を刈り取っていくようになります。実際、東京商工リサーチ情報部の坂田芳博さんお記事によると、2020年度の決算で、日本で役員報酬1億以上をゲットしているトップテンの8人は外国人経営者です。。。

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茨城モデルの北風があるいはエネルギー型太陽が2027年の首都圏中学入試を変える。そして10万人海外大学進学準備市場ができる。

★来年2022年度には、茨城県は14の県立中高一貫校が揃います。これらの高校卒業生の数は最終的には合わせて2300人くらいになるでしょう。茨城県の高校の卒業生の約8%シェアになります。これは大きいですね。しかも、県教委は、民間校長を公募し、21世紀型教育を進めようとしています。公募の問いかけがそれを物語っています。これについては、石川一郎先生との対話をご覧ください(→GLICC Weekly EDU 第42回 「2027年に教育を変えるニューパワー教師の価値ー石川一郎先生との対話」)

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★21世紀型教育というと東京と静岡の21世紀型教育機構に加盟している先鋭的先進的な学校を思い起こすかもしれませんが、そこまで行く必要は現状ではないのです。また、21世紀型教育とは何かという話になると、理念面、3ポリシー面、授業スタイル面、破格なグローバル教育面と複合的で、話が長くなります。

★しかし、ざっくり簡単に言うと、上記の図のように、教科の授業だけでよいというパラダイムから探究型の学びも取り入れようというパラダイムに移行する実践があることと一般入試に向けて自己責任で学べばよいというパラダイムからWorld Makingを意識した学びによって海外大学も射程に入れるというパラダイムにシフトする実践が起きていれば、21世紀型教育になります。

★茨城の県立中高一貫校は、そちらに変容することを校長公募の条件で明快に宣言しています。

★となると、茨城の私立学校もそれに対応しなければなりません。おのずと海外大学や探究型の授業によって総合型選抜を選択する進路指導にならざるを得ません。そして、このような方向性を実現するには、アクティブラーニングやPBLにならざるをません。

★授業の変化が学校を変えるだけではなく、ディプロマの変化が学校を変えるということにもなるのです。21世紀型教育機構が授業を変えることが学校を変えることになるという作戦を選択したのは、10年前には、海外大学や総合型選抜がなかたからです。つまり、石川一郎先生のいうエネルギー型太陽作戦でいくのは必然だったわけです。

★しかし、これは難しい道のりです。ディプロマが変わらないのに、授業を変えるというのはいかにして可能か。それは生徒の成長や目の輝きがPBL型の授業や教育活動をあと押ししたということが大きかったでしょう。これによってZ世代の活躍の拠点校ともなっているのです。

★ところが、2021年からは海外大学や総合型選抜が受験市場でも認知され始めたので、ディプロマを変えることによって学校を変える、必然的に授業のスタイルも変わるというアウトプットからの動きになってきたのです。ある意味北風作戦が復活したともいえるし、すでに先行している公立中高一貫校が、授業スタイルを変えているので、エネルギ型太陽でいけるのかもしれません。

★動機付けは違っても、つまりアプローチは違っても結果的には上記座標のⅠ型とⅡ型のディプロマやカリキュラムが生まれてくるという流れは茨城県では明快になったわけです。公立中高一貫校が動けば、私立高校もそれを乗り越えようとしますから、ディプロマ型21世紀型教育になります。これが茨城県の高校人口の約40%を占めるようになります。

★茨城の受験市場もシフトせざるを得ません。

★茨城県としては、茨城から日本の教育を変えるという野心に燃えていますから、幕末の様相を想起するかのような新しい水戸学が生まれるのかもしれません。

★同県の少子化は勢いを止められませんから、テレワークの時代に同県への移住を促進するためにも、そのような家庭の嗜好性に合わせた教育の整備も必要なのです。

★それから、茨城から成田も近いですから、海外の留学生に門戸を開放しておく必要もあります。地政学的に、アジアにおける安定した民主主義国家である日本は、欧米から注目されているし、東南アジアの国々からも期待されています。ただ、英語の問題とPBL型授業の問題が、今まではありました。また海外大学への進学準備教育の問題もありました。

★しかし、ディプロマ型21世紀型教育の整備によって、それが解消されます。テレワークと英語とPBLと海外進学準備が茨城県を新しいグローバルな自治体に変容させていくことでしょう。

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★高校の入学者数は、上記の表にあるように上位13の自治体で60%を超えます。この自治体が、ディプロマ型21世紀型教育にシフトすると茨城県が考えているようなことが日本の教育に反映していきます。

★すでに東京には3ポリシーすべてにわたって21世紀型教育を先鋭的に実行し、2021年春にその有効性を証明しましたが、そこまでいかなくても、ディプロマ型21世紀型教育にならざるを得ない状況は同じです。

★ディプロマ型21世紀型教育は、上記の図のすべてを行うわけです。海外では、大学進学準備教育は大学受験勉強とは違い自分とは何か、自分が社会に貢献できる社会実装は何か、それによる自分の価値は何かを自己探究する道を意味しますから、日本もⅠ型Ⅱ型にシフトすることは、大学進学準備教育が受験勉強から離れることができるので、ウェルカムですが、残念ながら指導要録の在り方が変わっていませんからⅢ型Ⅳ型も残ります。

★学力の3要素でつくっていくように指導要録は変わりましたから、変わっていないということはないのですが、新しい酒も古い器では変わりようがないのです。

★ですから、ディプロマ型21世紀型教育校は、Ⅰ型嗜好は30%、Ⅱ型は3%といったところから始まるでしょう。しかし、20世紀型教育は、Ⅲ型Ⅳ型がほぼ100%だったわけですから、2027年の変容率は急激です。

★現在、民主主義国家は、非民主主義国家に比べ、まだ少ないとも言われています。シンクタンクによって違いはありますが。いずれにしても、第二次世界大戦後増加しています。今回のパンデミックで、独裁的、つまり北風国家の方が有益なように見えるとメディアでは言われてもいます。何せ、アジアの政治的情勢は不安定ですから、そういう見方になるのかもしれません。

★そんな中、階層構造はあるものの階級構造がない大衆化した民主主義国家である日本は、留学生にとってはパラダイスです。日本の大衆化は禅の世界の十牛図の最終段階に達した状況だからです。オルテガの大衆の反逆で語られるような欧米のエリートが批判対象にする大衆とは違います。欧米のエリートが自分たちの階級維持装置を崩されるリスクのある大衆民主主義国家として日本はあります。

★なぜかというと、欧米のように化石燃料を日本は持っていないのに、民主主義国家を維持しているからです。化石燃料がない分、労働集約的な仕事をしてきたのですが、それが化石燃料を代替するエネルギーを開発する道も生みました。今までは、それを前面に出すと化石燃料関連の国際貿易のバランスが崩れるので、国や自治体は動きにくかったのですが、今回のパンデミックで、世界同時的に代替エネルギーへのシフトが起きています。

★これはしかし、階級構造をつくってきたアッパー層にとっては打撃です。自らがイノベーションを起こしつつ、法の支配という国際的な民主主義ルールを形成するか、独裁的に非民主主義的統治をしていくかせめぎあいが鮮明になってきます。

★そんな中で、日本は民間レベル個人レベル、つまり大衆レベルで自前で代替エネルギーを創ることができるようになります。その動きの準備がディプロマ型21世紀型教育です。探究ゼミなどで循環型都市を創る学びが起きています。これは何も環境経済だけを目指すのではありません。里山資本主義的な素養のある日本の都市は、DXを活用しもっとスマートな循環型都市がすぐにできます。茶室や庭園の発想ベースの都市モデルはイギリスやドイツにもありますが、もともとは江戸の大名庭園がアイデアのもとです。水戸学の背景にはこういう庭園都市創りの発想があります。今回茨城モデルが立ち上がったのも歴史的な偶然というより必然かもしれません。

★茨城モデルの発想はもともと静岡県の知事川勝さんの研究成果でもあります。静岡にも静岡モデルを創ろうと静岡聖光学院が動いています。

★京都も動き始めています。

★東京、神奈川、千葉、埼玉も茨城モデルに対応する動きはすでに起きています。

★京都が動けば、大阪、兵庫も動きます。それに大阪にはすでに動いている学校もあります。公立では、水都国際という民間と連携している学校があります。ただ、ここはIBを導入しているので、大衆化が難しいということでしょう。

★広島も活発に動き始めました。まだ広島モデルというのができていないのが不思議です。やはりIB導入ということを考えると、階級構造が忍び寄ります。ノーブレス・オブリージュなき階級構造の導入は、大衆化しにくいので、そこはどうするかです。10の学習者像を自治体全体で共有すれば、一気呵成に進みます。新しいモデルができますが、大衆化とは少し路線が違いますね。

★愛知は、トヨタが完全にシフトチェンジをしていますから、教育も変わるでしょう。

★埼玉に人口移動が起きているのも、ホンダがシフトチェンジをしているからでしょう。その点からいっても埼玉も教育が変わるはずです。

★北海道も、神崎史彦先生を招いてⅡ型にシフトしようとする学校もでてきました。北海道は道立王国であり、同時に≪私学の系譜≫の聖地でもあります。内村鑑三や新渡戸稲造が学び、私学を生み出し、そこで河井道にも出会います。道立高校もなかなか革新的です。1998年以降、メインバンクが倒産してから北海道の経済はずっと窮地に立たされ、今回のパンデミックです。変わらざるを得ないでしょう。

★かくして、2027年には、上記の表の13の自治体の教育は少なくともディプロマ型21世紀型教育に変容します。すると、3%は海外大学に進学するようになると思います。すると2万人強は海外大学に進学するようになります。

★この動きは13の自治体に限らずおきます。すると、日本全体から、高校卒業生の中から毎年3万人強は海外大学進学者が輩出されることになります。これが2027年に起こることです。

★首都圏の中学受験市場は、一学年5万人(4年生から考えると30万人規模)です。海外大学進学準備市場が十分成り立つのは推測に難しくありません。高校1年生から3年間最低準備しますから、10万人規模の海外大学進学準備市場が創出されるということになります。

★とはいえ、すでに10万人くらいは日本人留学生はいますから、エッと思われる方もいるでしょう。しかし、これはまだ市場というより、個人ベースで行っているものがほとんどです。海外進学準備教育という市場としては確立していないのです。それに、市場となるからには、海外大学であればどこでもいいというわけにはいきません。学校が取り組む以上、そこのリサーチがしっかり必要となるでしょう。この動きが市場をつくる契機になります。

★海外大学進学準備は、テレワークがベースになりますから、GIGAスクール構想と小学校の英語教科化が、下支えするということも見逃せません。

★そして、その大前提は日本がアジアの中で安定した大衆民主主義化国家(この大衆は禅でいう最高レベルの庶民の対話の当事者という意味)であるということです。八雲学園や工学院のように、ラウンドスクエアに加盟している学校が重要なのは、世界の民主主義国家のリーダースクールの仲間入りして、アジアにおける安定した大衆民主主義モデルを伝えることができるということです。

★観光におけるインバウンドだけではなく、学びのインバウンドを生み出す茨城モデルの動向に今後注目です。

★そして、何より重要なのは、この学びのインバウンドを生み出すのはZ世代とその世代と連携するSGT(スーパーグローバルティーチャー)です。今回のパンデミックで、水面下には、リーマンショック以上の痛みがあります。今回ばかりは日本も回避できそうにありません。

★国家>大衆から国家<大衆になるのが日本です。これができなければ、人々の生活は維持できません。ああ、それから自衛隊の力は強化されます。むしろ国家は自衛隊(救命使命も含めて)、公衆衛生、教育は守っていくでしょう。それ以外は、民間といういより起業家民間にシフトしていきます。

★何を言いたいかと言うと、すでにメディアがここ数年取り上げているように、金融機能の大変容です。

★G7にとっては、これは防ぎたいわけですが、もはや対応を考えているはずです。

★十牛図の10番目のレベルの大衆コミュニケーションが信用を築き上げる新しい金融機関の創出、ある意味渋沢栄一が考えていた論語とそろばんの話に立ち還るのかもしれません。

★明治維新は、銀行も資本主義も学校もなかったところから出発しています。

★いよいよ21世紀は20世紀の資産をすべて新しく変えて進化していくのかもしれません。

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2021年8月21日 (土)

石川一郎先生とのメタファー対話の意義 「北風と太陽」のメタファーで教師のリーダー論や組織の在り方を語る

★昨日20日、<GLICC Weekly EDU 第42回 「2027年に教育を変えるニューパワー教師の価値ー石川一郎先生との対話」>がありました。2027年中学入試の偏差値ランキングをガラリと変える学校におけるニューパワー教師のリーダー論と組織論について対話しました。ただ、正面切って対話すると経営学や社会学などの言説(たんなる言語表現という意味ではなく、その領域の制度的文化的文脈に規定された特殊な意味を持ってしまった言葉。ジャーゴンと類義語)でわかりにくくなるし、教育言説で話すと、その言説自体がオールドパワーなので、ニューパワー教師の話ができません。

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(石川先生はかえつ有明の元校長。今では全国を飛びまわり、組織論、経営論、広報論、カリキュラム論などあらゆる教育コーチとして北風になったり太陽になったりして、日本の教育を活性化しています。学校によっていろいろな事情があるので、その事情に合わせながら、少しでも21世紀型教育に道を開くコーチングが主な活動で、同時に執筆活動も盛んです)

★そこで、石川一郎先生は、最近「北風と太陽」のイソップメタファー(星新一の未来いそっぷももちろん射程に入っています)で教師リーダー論や組織論を語っています。メタファーは異質のものをつなげる有効性を持っています。また、今まで気づかなっかった領域や道を開きます。

★昨今の心理学や社会学、経営学、哲学などはかなり未来に向かって開かれていますが、それが教育心理学、教育社会学、教育経営学、教育哲学となってしまうと、オールドな教育のパラダイムの枠内の理屈に閉じられてしまいがちです。

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★したがって、教育と心理学、社会学、経営学、哲学を結ぶために、同時に教育言説にまみれた教育〇〇学を解放するために、さらに、学問と現場をつなぐために、メタファー対話をしかけているのが石川一郎先生です。

★私の役目は、昔から、このメタファーに新しい考え方をしている本を投下することです。これによって、石川一郎先生が想定していなかったエピソードが加わればそのメタファーはさらにパワフルになって、世の中に影響を与えます。何せ、メタファー対話は正解はないのです。新たな見方や考え方をどんどん取り込んでいきます。

★石川一郎先生は、強力なインフルエンサーですから、そのようなおっせかいが有効であれば、それはそれでよいのです。

★そして、石川一郎シンパの21世紀型教育SGT(スーパーグローバルティーチャー)が、同じように自分自身の知(血)を交えてハイブリッドな21世紀型教育言説を新たに生み出せばよいのです。

★言説はある意味必要です。同時に油断すると排他的になるので、そこは気遣う注意書きも必要です。言説は常に問い返されながら使われていく必要があるでしょう。しかし、名づけはシステムを構築する時には必要です。

★そうやって、古い言説をメタファー対話によって問い返し、新たな言説を生み出していくという自己変容を行っているのがニューパワー教師であり、ニューパワースクールです。ところが、オールドパワー教師には、メタファー対話が利きません。なんだそんな幼稚な物語。そんなんでこの苦労しながら日々つくっている組織を理解できるはずがないだろうとなります。

★したがって、歴史を振りかえれば明らかですが、常に反動はあるのです。ですからニューパワー教師やニューパワースクールを保守し持続可能にする仕掛けは創らなければなりません。その拠点が今のところ21世紀型教育機構です。

★石川一郎先生も鈴木さんも同機構の理事の使命を果たすべく、そして私も元理事としておせっかいを果たすべく、語り続け、実践していきます。

★未来を拓くのは、ニューパワー教師であることは明らかであるからです。2089年(なぜ2089年かは、1689年から100年ごとの89年を並べていくとわかります。これもある種メタファーです)は、今のZ世代が未来を創り上げます。私たちはもはやそのときには生命は尽きています。89年が、デストピアにならないような知と情と心身の条件の最適化を模索するのは、私たちの使命です。

そうそう、肝心の石川一郎先生のトークですが、それはぜひYoutubeをご覧ください!

 

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2021年8月19日 (木)

世界のエスタブリッシュスクールの教育を大衆化した日本の学校 谷本真由美さんの本から妄想

★谷本真由美さんの「みにろま君とサバイバル 世界の子どもと教育の実態を日本人は何も知らない (集英社学芸)」を例によって斜め読みして、ハタと妄想してしまいました。谷本さんは1975年生まれですから、中学受験から大学受験の生徒の保護者世代です。ご自身は大学、大学院、そして社会人として海外での経験が長いし、イギリス人とご結婚されていますが、それだけの活躍をしているため、お子さんはまだ小学生のようです。

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★そのお子さんの愛称が「みにろま君」です。谷本さんはみにろま君誕生までは、海外出羽守で、海外で仕事をしながら、日本のこんなところがダメだとリバタリアンよろしくSNSで鋭く切り込んでいたようですが、それがみにろま君誕生で、自己変容したというのです。

★海外出羽守をやめて、日本の公衆衛生や治安や教育や気遣いの精神などいいところが見えてきたということのようです。それと比べて今度は海外の酷い実態を指摘しているのがこの本だというのです。

★しかしながら、はじめから世界と日本の両方をきちんとみていたから、このような興味深い本が書けたのでしょう。現に日本のすてきな点ばかりではなく、イギリスのオックスブリッジのすばらしさやパブリックスクール(イギリスの私立学校。イートンとか)もきちんと評価しています。

★ただ、何が酷いって、やはり今も残る階級構造ですね。日本人からみて、海外のすばらしさは、アッパー層のシステムや生活です。しかし、その階級構造が生み出す格差は日本では想像ができないものだということが、この本でいやというほど紹介されます。

★日本ももちろん、格差はあります。海外に比べて日本はましだなどとは言ってはいけませんが、どうやら、日本は一億総大衆化がなされ、イギリスのような階級構造はなく、そのアッパー層とローヤー層の格差を埋める大衆的なシステムと生活スタイルを明治維新以降組み立ててきたのでしょう。

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(大衆化というより庶民化のほうがしっくりきますが、本文では「大衆化」という表現を選択しました)

★この本が焦点をあてている学校についていえば、図のようになります。もちろん、データを調べているわけではありません。あくまで谷本さんの本を斜め読みしながら妄想しているにすぎません。

★ともあれ、明治維新当時私立学校は、イギリスの私立中高をはじめ多くの海外の私立学校の仕組みを研究し取り入れたことは確かでしょう。しかし、それは当時の官立学校も同じでした。もちろん、その手法は長崎の出島から海外の技術をと入れたやり方と同様だったでしょう。模倣と儒学との融合だったと思います。

★そして、富国強兵・殖産興業のため近代教育は、よしあしはともかく、国家事業として隅々までに浸透させられてきました。私立学校はつぶされかかったりしますが、そのような官僚近代とは違うもう一つの相対的に自由度の高い近代教育を推進してサバイバルしてきました。

★しかし、ほとんどの建学者の出自が旧江戸幕府や新政府の中枢にいた人々ばかりですから、自分たちが海外に渡航して見てきた世界は同じです。そのとき見てきたもので、模倣しようとしたものは、欧米の光の部分です。特に教育はそうでしょう。

★ですから技術や方法は欧米、精神は儒学というのが、官僚近代学校で、精神はキリスト教的なものというのが私立型近代学校だったと思います。

★しかし、いずれにしても、両方とも常に金がないというのは同じでした。そして私立学校の場合、当時は、その金は、財界人から調達するのですが、当時から財界人と政府は協働していますから、日本の学校は結局、国家が支援するレベルの財政の枠内です。私立学校は、公立の全額支援の半分を学費で賄うという構造です。受益者負担というより本来は寄付という概念ですが。とにかく、その分自由度が高いということです。

★ですから、イギリスのあるパブリックスクールのように年間学費が1000万円の教育なんてのはできないわけです。しかしながら、その10分の一はなんとかなるわけです。

★それを公立私立すべての学校に国がかかわっているというのが、海外の学校と違うということでしょう。いや、この言い方は正確ではありません。日本の学校は、公立私立問わず、イギリスのそのようなパブリックスクールの10分の1の資金で、教育の内容は同質のものをやったということなのです。

★しかし、当然それを完璧に行うことはできないわけです。そこで大衆の中で階層構造ができました。それが学歴階層構造です。イギリスなどの階級構造の格差を埋めるかのように、エスタブリッシュスクールの教育内容を巧みに大衆化したのが日本の教育です。

★その中で、階層構造ができました。もちろん、ここは資本に対する条件が、そもそも海外と日本とでは違うので、当然階級構造は日本ではできません。ここは、どこかでちゃんと論じなくてはなりませんが、今のところ興味と関心がある方は日本ではいないので、あるいはあえて不問に付しているかもしれませんが、論じる意味があまりないのかもしれません。

★いずれにしても、谷本さんも同書で指摘していますが、日本の階層構造の中での評価は、つまり大学ランキングや偏差値ランキングは、海外では役に立たないのです。海外で評価されるのはアッパー層のお話だからです。

★ところが、ポストパンデミックで、そもそも問われるのが、この階級構造なのです。リーマンショックの時、なぜか日本は持ちこたえました。経済学や経営的にはいろいろあるのでしょうが、そもそも世界と比肩するアッパー層が日本にそんなにいなかったということでしょう。

★日本自体はなんだかんだといってスマート国家です。里山社会的な都市づくりが基本で、その社会基盤の1つとして学校があります。日本の学校はクリティカルシンキングを鍛えないとよく言われますが、そもそもクリティカルシンキングはアッパー層の思考様式です。

★大衆化されている日本にはあまり役に立たないのです。ただ、谷本さんも同書で語っているように、グローバル社会では、アッパー層と対峙することもあるのです。それがオンラインの普及によって、大衆社会にもどんどん入り込んできているわけです。

★ものづくり産業の労働集約的な薄利多売で利益をなんとかため込んでいる大衆のwell-beingをぶち壊そうとするアッパー層の金融産業システム、デジタル産業システムのあれやこれやの戦略に屈しないようにするには、やはり英語とクリティカルシンキングがサバイバルツールとして必要だということでしょう。

★ふだん、英語と思考力の重要性を話題にしているのですが、谷本さんの本で、端的に大衆化された日本の生活を持続可能にし、アッパー層もローヤー層もフラットにするコペルニクス的転回を作動するには、サバイバルツールとしてのC1英語とクリティカルシンキングが必須と明快に語っていったほうがよいのでしょう。それから、日本の文化となったおもてなし力も重要なサバイバルツールです。

★そうそう、この日本の大衆こそ実は新しいグローバルシチズンである可能性が大であることを妄想ついでに付け加えておきます。何せ、イギリスのパブリックスクールに代表される海外のエスタタブリッシュスクールの教育を大衆化しているのですから。教育の質を変えずに、質素な資金でやり抜いているわけです。脱成長論的経済社会とは、アッパー層とローヤー層の格差をなくし、大衆化市民社会をつくるということではないでしょうか(汗)。

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2021年8月18日 (水)

19日及び20日 かえつ有明と和洋九段女子の教師と生徒のみなさんが、小学5-6年生向け思考力を伸ばす「Everyone Creator」ワークショップ体験会開催!

★8月19日と20日、<小学5-6年生向け思考力を伸ばす「Everyone Creator」ワークショップ体験会>が開催されます。19日はかえつ有明が、20日は和洋九段女子が行います。それぞれ教師と生徒がコラボするようです。

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(2020年10月10日、オンラインワークショップをかえつ有明と和洋九段女子の生徒の皆さんと開催しました。佐野先生、金井先生、新井先生も参加。テーマを一つに絞ることはせずに、つまり多様あるいは多角的な視点をシステム思考を介して考えるワークショップにしました。最後はルソーのジレンマ問題をそれぞれどうとらえるかかんじるかを話しながらチェックアウトしました。本当に両校の生徒のみなさんは、心理的安心な雰囲気を自然体でつくっていましたし、互いに耳を傾け、自分へのリフレクションを深めていました。)

★両校のオンラインワークショップは、もちろんアクティブラーニングやPBLの授業や教育活動を教師のみならず生徒の皆さんも実践しているからこそ実現できます。というよりも、すでにいろいろなシーンで実践の実績を積み上げています。すてきですね。

★中学入試におけるかえつのAL思考力入試や和洋九段女子のPBL入試は、聖学院の思考力入試同様に人気があります。いずれも本格的な思考×情動型ワークショップ入試です。中学入試のみならず、大学入試においても一般選抜型以外に新タイプ入試は多角化していますが、その中でもこの3校のタイプは、偏差値とは関係のない新しいモノサシの入試です。

★ですから、偏差値で切り捨てられてきた4科目以外の才能を評価してもらえ、結果入学後その才能を大きく膨らませる生徒が多数出ています。

★今回のオンラインワークショップの主催は、2021年1月から活動してきた「Transforming our Education」コミュニティ。多くの子どもたちが自分の才能に気づく機会を創っているのでしょう。

★このようなコミュニティが21世紀型教育機構以外にもどんどん増えることが世のため人のためです。すべての人々が創造的に生きる社会こそ民主主義的な社会でしょう。

★ポストパンデミックは、民主国家が非民主国家に比べ少なくなっていくのではないかと危惧されている昨今です。

★かえつ有明のアクティブラーニングや研修は、ウィリアム・ジェームズにたどりつきます。プラグマティックでかつマインドフルネスで、スピリチャリティを大事にする学びですね。和洋九段女子もジェームズにも影響され同時にパースやデューイにも影響されています。こちらは、21世紀型教育機構の流れです。

★聖学院は、MITメディアラボの流れが主流ですね。それぞれ世界標準の流派に学び、オリジナリティを創出しています。しかし、いずれもルーツはJ.J.ルソーです。なぜルソーなのか。いまさらながらルソーには感服です。

★ただ、大事なことは、どの流派であれ、これらは当時民主主義社会を創るための教育とは何か哲学とは何かから生まれていたということです。当時は、民主国家は圧倒的に少なかったでしょう。第一次世界大戦が終わるまで、まだ帝国という怪物が実在していたぐらいです。

★新学習指導要領が、パースの探究、ジェームズのマインドフルネスと社会実装、デューイのPBLに着目したのは、迫りくる民主主義の新たな闘いのための知と情を養うためなのかもしれません。文科省のメンバー1人ひとりが意識しているかどうかはわかりません。

★ただ、民主主義の歴史生命体がそうさせているのかもしれません。改めて歴史は生命体だったのだということに気づきました。個体同士が、自らの物質的道具を融合させたとき、そこには歴史生命体が生き生き立ち上がるわけですね。なんというジェームズ的な発想でしょう。

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石川一郎先生と明日対話 探究やPBLやマインドフルネスの本当の新しさを対話します。

★8月20日金曜日は、<GLICC Weekly EDU 第42回 「2027年に教育を変えるニューパワー教師の価値ー石川一郎先生との対話」>の日です。最近石川先生はfacebookでこんな考え方を連載しています。

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「学校改革 ~ 北風と太陽
学校が変わるのに、北風作戦か太陽作戦が考えられる。
北風は共学化、カリスマ校長就任、移転・校名変更など
太陽は職員室を活性化して、現場の自己肯定感を高め、ボトムアップの教育内容の充実
世の中の改革をみていると圧倒的に北風作戦
ただ学校内部は太陽作戦が好まれる
この20年私学をみていると北風が多いが限界もきている
ちょっと考えたい 続く」

★石川一郎先生とは、この北風と太陽のパロディー版である星新一の「未来いそっぷ」でワークショップを協働したことがあります。2009年ころだったと思います。思考力セミナーというワークショップです。そうなんです。元祖思考力セミナーはかえつ有明だったのです。今では、すっかり聖学院の18番ですが、走りはもう12年前のことですね。

★ただ、その時は、思考力なんてどこの中学入試でも行っていると学内外から揶揄され、入試そのものは「作文入試」でした。それを聖学院は、すかさず、思考力セミナーー思考力入試と名称を統一して実施して、その普及力に拍車をかけました。当時の聖学院の今でいう広報部長は平方邦行先生でしたから、石川先生と私と鈴木さんの4人で話し合って、すぐに決断しました。

★この流れが、2011年に21世紀型教育を考える会(今の「21世紀型教育機構」)発足に直結します。この2011年スターティングメンバーには、今の三田国際の学園長の大橋清貫先生が加わっています。

★当時は、石川先生の副校長時代でしたから、その時の改革は、未来版北風作戦でした。つまり、イノベーションによって北風が勝つわけですね。校長に就任すると、その勢いは増し、国際生入試、英語で哲学授業、サイエンス科の進化バージョンのプロジェクト科、ブルームのタキソノミーベースの思考コードなどの基盤を作ったところで、佐野先生と金井先生にバトンを渡しました。

★ですから、石川一郎先生は、太陽作戦でも北風作戦でもないのでしょう。その辺をお聞きしようと思っています。

★SFは、たしかに未来の予言書のごときです。ですから、石川先生も星新一の「未来イソップ」の向こうにさらにビジョンを描いているはずです。

★不思議なことに、探究はパースから、マインドフルネスと社会実装はジェームズから、PBLはデューイから生まれたものです。みな新学習指導要領のコア教育方法です。そして、この3人は、アメリカのプラグマティズムの創始者です。

★石川一郎先生もアメリカで育っています。元祖帰国生です。

★プラグマティズムは、理念と実践の効果を問います。効果があれば真理です。特にジェームズは、科学も超自然的なことも、社会にとって有効であれば真理であるとします。ただし、3人とも米国の民主主義創りを前提にしていますから、その真理はインタラクティブでなければなりません。

★おもしろいのは、プラグマティズムという哲学は、メインストリームが思考方法なのです。民主主義の制度を生み出す思考方法、民主主義を支える教育で行う思考方法を問い返したのです。よく方法より価値だとか言われます。プラグマティズムは、その方法が価値を生めばよいだけです。価値をうたっても、実行方法がなければ愚かです。実行方法があっても、価値がなければ空虚だということでしょう。

★アメリカの哲学も心理学も宗教人類学も大きな影響をプラグマティズムにウケているというのは、多くの見識者が語っています。ヨーロッパの思考様式と全く違う米国流儀の思考様式として、アメリカ人が大切にしているというのです。

★さて、新学習指導要領はそのプラグマティズムをそのまま引き継ごうとしているのでしょうか?おそらくそづでしょう。しかし、プラグマティズムは経験という媒介を通しますから、結果は経験によって変わります。

★したがって、プラグマティズムを生むアメリカの経験と日本の経験は違いますから、自ずと違う形になるでしょう。

★その違う形を石川一郎先生は、日本の多くの学校の経営陣とそれぞれに創ろうとしています。

★それゆえ、北風か太陽かなのでしょう。

★そして、今やリーダーフルの時代です。それは石川先生がZ世代との対話を通して知っているわけです。北風と太陽が多様化した複合的な現場にあって、いったいどのようなビジョンを見出したのでしょう。明日の対話がワクワクします!石川一郎先生よろしくお願いいたします。

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2021年8月17日 (火)

聖学院 8月28日 思考力セミナー注目!

8月28日(土)、聖学院は学校説明会を開催します。飛ぶ鳥落とす勢いの聖学院の学校説明会それ自体注目ですが、当日の多様なプログラムの中に思考力セミナーがあります。これは中学受験生にとって重要な機会ですが、私の興味と関心は、ほとんどの日本の学校経営陣が興味と関心を持っていない、しかし、グローバルな視野では最も重要な学びとして注目される価値のある機会が設けられているのです。

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★聖学院の思考力入試は3タイプで、今回のセミナーでは、M型思考力入試の体験セミナーのようです。同校サイトによると、ポリドロンを使うというのです。同校では、レゴを使う思考力入試もあるのは有名ですが、ポリドロンを使うのもあるのですね。

★レゴは、圧倒的に空間をデザインする思考力が刺激されますが、ポリドロンは、空間を自在に解体し、時間をデザインする思考力が刺激されます。

★ポストコロナは、ハイブリッド脳神経身体循環系になるでしょうから、このような空間と時間を交差させる思考力をブレイクスルー出来ることは大切です。しかし、そのような機会を創っている聖学院は、現状では希少価値ありです。

★そもそもこういう話に興味をもつ学校経営陣は数少ないからです。

★聖学院自身が、そのことに気づいているかどうかはわかりませんが、とにかくNew Power Schoolのフロントランナーであることは確かです。ただ、聖学院の次を走っている学校との距離が相当あいているので、世の中は聖学院の真理性に気づいていないということは、あり得ます。

★世の中は、まだ自分の理解できる範囲で学校を選択する方々がほとんどでしょう。自分の理解を超えることにチャレンジする進取の気性に富んだ保護者や受験生が聖学院を選択します。もちろん、直観的にでしょうが。

★そういうことをわかったうえで、あえてマーケットのニーズにマッチングするような広報戦略をとっているのが、聖学院のすごさでもあります。

★なお、M型思考力入試と言えば、数学科教諭の本橋先生がかかわっているかもしれません。どこの学校も経営陣は文系的な発想(理系出身の経営陣だとしてもなぜか経営となると文系的になりがちなのが学校です)がベースですから、数学で世界を創るという本橋先生の方法論を理解できない場合がほとんどでしょう。もっとも、IBのディプロマではもちろん歓迎されます。

★その本橋先生がのびのびと活躍できる聖学院は、組織マネジメントとしても21世紀型ということでしょう。

参照)GLICC Weekly EDU 第26回「グローバル時代の数学とは 聖学院 本橋真紀子先生との対話」

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2021年8月14日 (土)

【響】<14>New Nature Cityへ フィリップ・デスコラ beyond レヴィ=ストロース

★自然と文化を分断する自然主義に対して、新しい自然を捉え返している落合陽一さん。デジタル・ネイチャーというと自然と文化をつなげるイメージがつかないという人も多いでしょう。しかし、あらゆるものは化学変化であり、化学変化は電子や陽子、粒子が交換される過程だからたしかに、自然であれ人間であれデジタルから見れば差異は解消します。

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★一方、クロード・レヴィ=ストロースの弟子フィリップ・ディスコラは、レヴィ=ストロースの野生の思考を内面性の類似性と身体の類似性のに軸で創る座標によって、一つの思考様式として、師を乗り越えようとしているかのようです。

★この座標によって、実は落合陽一さんとは違って宗教文化人類学的に従来の「自然」概念を乗り越えていきます。これによって、日本のようなアニミズムが原始宗教から新アニミズム論に変容します。

★何々、おもしろいじゃないかと、ネットサーフィンしていくと、eストニアに行きつきました。人口200万人に満たない国で、地政学的にロシアやドイツ、デンマークによって支配されたり独立したりを繰り返してきたバルト三国の一つですが、外務省のデータによると無宗教になっています。

★スカイプ開発の国エストニアなのでeストニアと呼ばれているそうですが、実は無宗教だけれど、若者の50%は土着のアニミズム的な宗教に親和性を感じているというような話もでています。デジタルとアニミズムはなるほど親和性があるのかとさらに検索していくと、またまた文化人類学に戻ってきて、どうもレヴィ=ストロースはソシュールの言語記号論に影響を受けていたらしいけれど、師を乗り越えるために、ディスコラは、パースの記号論を活用したらしいということになり、驚きました。

★そして、パースの記号論は、その後、意味論・統語論・語用論という領域に発展していったのだということも。なんと、1985年代、大ブレイクした池上嘉彦先生の記号論に戻りました。実は中学入試がムーブメントになったこのミレニアム世代誕生の時代に重なり、開成をはじめ、多くの学校が池上嘉彦先生の記号論の中学生向けの文章を出題しました。そうかあ、ミレニアム世代は、パースに親和性があるのかあ。

★当時は、入試問題出題時の著作権問題は緩く、それゆえ、池上嘉彦先生を尋ね、先生の文章を使った開成の入試問題を見せて、今後の言語や記号論、受験業界の行方についてインタビューする企画を実行できました。それをきっかけに、開成の先生方ともよく議論しました。授業研究もして、大いに勉強になったものです。懐かしい。。。

★そして、そのときに、池上嘉彦先生が詩学だよこれからはと。パースの記号過程が生み出す存在のカテゴリーの2つ目でもなく、3つ目でもなく、1つ目に相当するのではないかと、当時は思っていたので、その時は理解ができなかったんだと思います。しかし、今なら、それは、アニミズムの新しい捉え方だよとと新しい発想を示唆していたということがわかるような気がします。池上先生の最終講義は、民俗学的な民話の伝承・伝播の話でした。なんと、すでにソシュールからパースへと池上先生は展開していたのかもしれません。

★池上先生から、直接それは聞いていませんが、先生はエーコの「記号論」を翻訳しています。エーコは、ソシュールとパースの記号論をベースに発展させているらしいので、池上先生はそういう着想を持っていたのだと独善的ですが予想しています。

★そんなことを思い出しながら、この記号をデジタルに置き換えたら、なるほど落合陽一さんとディスコラはつながるし、今パースが情報学で見直されているのもわかるような気がします。

★最近よく使うトルーミンモデルである三角ロジックも、結局はパースの記号の三項図式と親和性があります。そういえば、パースを活用したコミュニケーション論は、ベイトソンも展開していました。ベイトソンは、私の学習理論の大事な発想の源です。

★しかしながら、そんな中で、座標モデルをディスコラは使います。宮台真司さんなら四肢的構造というかもしれません。

★3なのか4なのか、それはともかく、メタ思考という世界作りのパースペクティブは、コードを自在に自分で創れるかですね。もはやα世代にとては、コードを自分で描く時代だし、コードをパッシングする時代でもあるのかもしれません。

★PBLの私の枠組は、レヴィ=ストロースとピアジェ的MITモモデルを活用してきましたが、それ自体20世紀型であるということに気づきました。beyond レヴィ=ストロース、MITメディアラボ、そしてブルームでした。

★思考コードのB軸とC軸をMIT型学習理論やブルーム的に読むのか、パース型文化人類学的に読むかで、読み方が違います。ああ、これが編集者が理解できないとモノ申してくる壁なのだと、対話にならない差分だったということがやっとわかりました。今後はここを丁寧に対話していけばよいのだと。とはいえ、膨大な時間が。。。

★なるほど、それで、仲間とワークショップ言語という新しい記号論過程を生み出そうとしている自分がいるのかもしれません。

★ハイブリッドな孫の動画を見ながら、α世代の未来を妄想し始めたわけです(笑)。

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2021年8月13日 (金)

【響】<13>New Nature Cityへ 着々

★今や多様な未来が描かれていますが、その全体集合はあるのでしょうか。全体集合があれば補集合もありますから、未来を描くのはなかなか大変んですけれど、描いてみたいと思うのはなぜでしょう。それはシンボル的なものに興味があるからともいえるし、胃袋で考えると未来を描きたくなるとも言えるし、身体性と内面性の相互座標にあてはめて考えてみたくなるからともいえる。。。卯田宗平さんが編者の「野生性と人類の論理」を斜め読みしてそう感じました。

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★この本のテーマの野生性とドメスティケーションの関係は、人間と自然の関係のみならず、人間と人間の関係も示唆していていつもとは違うアプローチがおもしろいのです。レヴィ=ストロースを相対化しているので、読んでもみたかったのです。

★そして、9月から開く探究ゼミの大前提の理解や表現の枠組を少し広げておく準備にはちょどよい本だなと思っています。

★しかしながら、この本のテーマが全体集合になるわけではありません。

★もう一冊、落合陽一さんの「デジタルネイチャー」を論じた本は、今語られれている未来ビジョンや構想のすべてを包摂しています。凄い発想ですね。ゼミでは、同書の一部をどのようにイメージするかから対話しようと思っています。

★パウロの森を里山資本主義的にとらえるわけでも環境物理学や生命科学的にとらえるわけでもなく、もちろんそれぞれは大事なアプローチですが、全体集合ではないので、生徒自身が探究するのは構わないのです。というよりも、それぞれが自分の興味でどのアプローチをするのかは自由です。

★私の方は、ファシリテーターとして、それを包括する全体集合の枠組を創っておいて、そう、この枠組み=ファシリティーズ=枠組的道具ですが、生徒たちが立ち向かう探究の行手の壁となったりあるいは逆にテコになったりする枠組的道具を創るというファシリテーターをやるわけです。

★現状の探究がなんか物足りないという先生方もいます。それは、その足場が20世紀型枠組的道具だからです。それはすでに乗り越えられている部分が多いので、その枠組的道具では探究にはならないのです。

★研究者が、すでに発見や開発されているものやコトを研究することはないでしょう。リサーチとして確認することはあっても、それを乗り越えようとします。探究も似たところがあります。学者ではなくまだ高校生ですから、新らしい研究分野をというわけにはなかなかいきませんが、どんなパラダイムをつくるのかは、大事です。

★一般にあまりおもしろくない探究は、パラダイム、私の言葉で言えば枠組的道具が20世紀型だからです。ザッカーバーグさんも、それに気づいて、ユニバースからメタバースだと語り始めています。

★未来はようやく自然と社会と精神は循環する方向に向かっていますが、落合さんのように、その自然をデジタルネイチャーと読み替えることによって、枠組的道具立てが変わります。

★卯田さんの本も、野生性に憧れていた私の20世紀型枠組的道具をぶち壊してくれました。もちろん、家畜化や養殖化、栽培化などのようなドメスティケーションがよいというわけではありません。そもそも野生的思考はあるのか、ドメスティケーションはあるのかという問い返しです。

★最適化や、最高善という表現も、そもそも最適化とか最高善とは何だろうというのはわからないわけで、それは乗り越えられる枠組的道具です。コーチングは目標が物質的に明らかです。それが精神的なものでも物象化して目標化します。ファシリテーターは、その目標を捉え返す、枠組的道具を配置します。それをデザインと言えばデザインですが、デュシャンが美術館に泉と称して便器を芸術作品として枠組的道具をつくり、設置したのと同じで、どちらかというとアート的設置がファシリテートではないかと最近思っています。

★だから、教えないと言えば教えない。でも、枠組的道具は創作するわけです。たしかに授業のストーリーをデザインしないと言えばしないのです。しかしながら、枠組的道具はデザインするわけです。

★おそらく、この考え方はZ世代よりも、次の世代のα世代の発想に近いのでしょう。というのも、ストーリーのデザインはAIがやってくれますからね。

★AIが計算する枠組みを壊す枠組的道具立てが必要なわけです。つまり、AIの計算を部分集合として枠組的道具を全体集合とする。もっとも、それとて、AIはすぐに包摂し、部分集合にしてしまうんですが。ここらへんは、すでに落合陽一さんが語っています。落合さんや卯田さんを超える枠組的道具立ては難しいわけですが、現状はNew Nature Cityとしてしておきましょう。デジタルネイチャーとアンチ野生的かつアンチドメスティケーション的自然の融合体という感じでしょうか(汗)。

★もうすこし考えてみます。いつも定義をしないので、申し訳ございません。どうも演繹推理や帰納推理を丁寧にしないのは、私の弱みです。そこを仮説推理で巻き返すように実践で努力してみます(汗)。

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2021年8月11日 (水)

聖学院 善きサマリア人のたとえを社会実装 グローバルイノベーターが生まれる理由

★聖学院は、海外大学の実績やオンライン授業の目覚ましい展開、思考力セミナーの先進性、プロジェクトベースの教育活動など頻繁にメディアに取り上げられる私立男子中高一貫校であることは、業界ではあまりにも有名です。内村鑑三、新渡戸稲造と同世代の石川角次郎が初代校長で、現在の礎をつくりました。内村鑑三もいろいろな私学の創設に影響を与えましたが、鴎友学園女子は有名ですね。新渡戸稲造も同様で、恵泉、普連土、東京女子大学などが有名です。いずれも、今も創設当時の魂を脈々と継承しています。

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(タイ研修旅行2019 聖学院生×メーコックの子供たち集合写真。聖学院が毎年支援しているメーコック財団で:写真は「タイ支援プロジェクト2021のサイトから)

★石川角次郎の魂とは、もちろんキリスト教の精神ですが、当時の明治政府の富国強兵・殖産興業のための官僚近代教育と真っ向からぶつかり、自らもう一つの近代教育をつくり≪私学の系譜≫の道を開いたことです。

★今回のパンデミックで、医療現場はひっ迫し、たいへんなことになっています。医療従事者は常にトリアージの局面で悩み苦しみながら乗り越えている姿がニュースでも放映されています。救急救命士が搬送困難で命のリレーができない状況の中で奮闘している様子も放映されています。

★そのときに必ず議論されるのが、アメリカやカナダなど海外で制定されているサマリア法が必要なのではないかということです。新聞のニュースやコラムでも取り上げられるようになりました。聖学院の魂は、この海外などの精神と共振しています。そしてその魂に基づいて行動するのはこのサマリア法に通じるもので、これぞグローバルイノベーターのなせる業だと感服せざるを得ないのです。

★サマリア法というのは、聖書の善きサマリア人のたとえに由来しています。そのたとえ話は次のようなものです。強盗に襲われて半死半生の人が倒れていました。通りかかった祭司もレビ人といういわゆる今でいうアッパー層の人びとも通り過ぎてしまいます。そこへあるサマリア人が通りかかり、すぐに彼を助けて介抱します。宿屋に運んでその宿代まで負担するのです。キリストは、このたとえ話を語った後、当時の律法学者に問います。「この三人のうちで誰がこの倒れた人の隣人なのか」と、すると、律法学者たちは、サマリア人ですと答えます。

★律法学者は知識として隣人愛を知っているけれど、行動にあらわすことはできないでいるのです。ですから、未だに日本にはサマリア法が制定されていないのです。緊急事態で命のリレーをしなくてはならないときに、もし失敗してしまったら訴えられるという想いが、医療従事者や救急救命士の行動を躊躇させるというのが、メディアで指摘されています。

★サマリア法は、緊急時に悪意や故意ではなく、善意で救済し、それができなかったとき、責任を問われることはないと明記されているわけです。石川角次郎は、当時の律法学者(東大の学者)と論陣を張り、自ら別路線のつまり善きサマリア人としての人間教育を行う教育出動をしたのです。その際、東大にいては視野狭窄になると気づき、論争している場合ではない、米国で学び直そうと渡米します。帰国後≪私学の系譜≫を形づくるのです。当時の世界の通信・交通状況を思えば、命がけの行為です。日本の子どもたちの現状を見て、命がけでそれを救済する教育をつくったのですから、善きサマリア人の生きざまそのものです。

★今回、この石川角次郎を通して善きサマリア人のごとく行動している聖学院の生徒と教師が出現しました。パンデミックは世界中で困っている人々をさらに追い詰める状況をつくっています。ウィルスがつくったのではありません。世界の貧困格差を生み出している矛盾を抉り出す結果になっているのですが、それをつくったのは、もともと人間です。明治維新の時の富国強兵・殖産興業は、世界で、手を変え品を変え、脈々とつづき、その歪の蓄積が露になったということでしょう。

そして、実際に聖学院が久しく支援してきたタイの子どもたちを保護しているメーコックファームも窮地に陥っています。すると、善きサマリア人よろしく聖学院の生徒と教師が協働して「タイ支援プロジェクト2021」を立ち上げました。クラウドファンディングでは手数料が高いので、その手数料分も含め直接振り込みで支援金を集めようという呼びかけです。ぜひこのプロジェクトのサイトをご覧ください。この聖学院の動きが、全世界の貧困の人びとへの支援につながると思います。ですから、みなさま、ぜひこのような一見小さな動きですが、共有し拡散してください。

★キリスト教では、カラシダネのたとえ話がベースにあります。カラシダネとは、あのマスタードの種ですが、小さな種がやがて豊かな実を結ぶ大きな植物として成長するということです。聖書そのものがカラシダネだというのがキリスト教の発想です。そして、ある意味世界の半分に広がったのは、その証明でもあります。

★今回の聖学院の善きサマリア人の行動、聖学院ではこれをサーヴァントリーダーシップといって、大切にしているリーダーシップ論ですが、この行動が世界に広がることになるでしょう。

★それにしても、聖学院生は、このようなリーダーシップをとるのは本当に伝統として継承されています。そのことを証明する事実が、実は2008年12月16日にも起こりました。そのことについて、当時ホンマノオトに記しているので、ここに転記します。

 <「聖学院の高2トリオ 男性の命救う(ホンマノオト 2008年12月20日)」

 ☆読売新聞(08年12月16日夕刊)によると、12月13日(土)昼、JR駒込駅で目の不自由な男性が転落。3人の聖学院の高2の生徒が、一瞬   の迷いもなく、救出アクション。男性がホームに引き上げられた数十秒後、電車がホームに入ってきた。

 ☆ホームには利用客が何人もいたが、すぐに救出の行動をとったのは、聖学院の生徒だった。このことについて、読売新聞は新聞メディアの性格上、あえて何も語っていない。あくまで、聖学院の3人の生徒それぞれのパーソナルな正義感と行動力を称えているだけだ。

 ☆しかし、これは聖学院で学んでいる教育の影響があると私は思う。というのも、一歩間違えれば、救出しようとした生徒の命も危ない。周りの利用客だって、無視していたわけではなく、迷っていたのだと思う。助けたいでも危険だというジレンマがあったと思う。

 ☆この躊躇をするかしないかは、決定的な違いなのだ。無心で救うその行動力は、やはり聖学院のサーヴァント・リーダーシップ育成の教育がベースになっていると確信している。」>

★まさに、善きサマリア人のたとえを実践しています。

★聖学院の生徒は、高度な英語力を身につけ、高度なICT技術を体得し、ハイクオリティなプロジェクト活動を行っています。結果、海外大学や国内大学の進学実績も飛躍しています。そして、その背景にサーヴァントリーダーシップがしっかりと根付いています。世界に通用するグローバルイノベーターは、善きサマリア人の魂を社会実装していなければならないことを実証しています。

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2021年8月10日 (火)

GLICC Weekly EDU第41回 鈴木さんとのスペシャルダイアローグ 2027年世界を変える25校を牽引する聖学院

★本ブログ記事「GLICC Weekly EDU第41回 鈴木さんとのスペシャルダイアローグ 2027年世界を変える25校+6校」で、その25校の条件を語りましたが、Youtubeをご覧いただければわかるように、その条件を満たすというより、むしろ牽引しているのが聖学院です。

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★同校サイトをご覧いただければ、教科の授業から部活、高校新コースのGICなど多様な教育活動のニュースが頻繁に更新されています。量から質が生まれる例の1つでもあります。

★そして、その質の高さは、AERAやNHKなどのメディアに、これまた頻繁に取材され記事にされているということからも証明されています。同校の図書館の活動の一環として行っている有志の生徒たちによる平和学習の実践について、長崎の原爆の日にNHKで放映されたようです。

★聖学院には、一般社団法人や合同会社などを起業して社会貢献事業を行っている生徒もいて、当然それぞれメディアでも紹介されています。

★聖学院の授業は学習者中心主義のデザイン型PBLです。その成果というより、メディアを含めた多様な団体との協調関係が拡大しています。

★生徒の評価は、偏差値という他人が決めた評価ではなく、教師と生徒、生徒と生徒、生徒と外部の見識者などの協働関係が生み出す自分たちの評価のものさしによって行われます。まさに、エンパワーメント評価です。

★自分のものさし、しかも社会に通用する独りよがりではないものさしで、物事を自分で選択ししたりディシジョンメイクをするわけです。そりゃあ自分たちのやっていることにワクワク、ドキドキ、そして責任を引き受ける行動力を生み出すはずです。

★すでに、偏差値ランキングを無化する変革の竜巻を起こしている聖学院です。

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8月28日(土)に学校説明会が予定されています。ぜひ参加されてはいかがでしょう。受験生も保護者も、自分の運命を変える学校があるということに気づくでしょう。

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高校の21世紀型教育の今(03)ダイナミック思考に転換できるか?!つまりは、対話型思考というコトか?

★ここ数年、文化人類学が注目されています。その理由は、あのクロード・レヴィ=ストロースの「野生の思考」に象徴されるような、自然や弱者、未知とどう接するかが問われている時代だからでしょう。その流れで、縄文時代も注目されています。

★それで、谷中修吾さんの「最強の縄文型ビジネス イノベーションを生み出す4つの原則」 (日本経済新聞出版)という本や鷲田清一さんと山極寿一さん共著の「都市と野生の思考」(インターナショナル新書)も出版されていました。ポスト・パンデミックではどうなるのか?それとPBLがますます注目されているので、もう一度斜め読みしてみました。

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★谷中さんの弥生型ビジネスと縄文型ビジネスを「弥生型思考」と「縄文型思考」とラベルだけ置換えてみてみましょう。

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★実に分かりやすいし、レヴィ=ストロースの野生の思考が縄文型思考と重なるというのもわかります。しかし、文化人類学的に、果たしてこのように分けられるのかどうかは、リサーチしてみないとわかりません。レヴィ=ストロース自身、野生の思考=縄文型思考とはしないでしょう。

★PBLというのもそうです。実はプランイングするPBLとアドリブ型PBLというのが実際にはあって、それは参加者の状況によるわけです。

★現状の高校の21世紀型教育は、学習指導要領を無視できない以上、弥生型思考をベースにしたPBLをやらざるを得ないのですが、勤務校の場合は、カトリック校ということもあり、協調的で感謝オリエンテッドな要素もあふれています。もちろん、協調的です。しかし、直感型かというとやはり限られた時間と資源を運営するためには、計画的にならざるを得ないのです。

★教科授業はコンプライアンスベースで探究ゼミはフリーダムベースというのはありかもしれません。

★さてさて、どうするのか?やはりポストパンデミックの都市計画は、里山都市計画にならざるを得ないでしょう。SDGsもより鮮明に強化されるでしょうから、そうなっていくでしょう。そうすると地政学的には日本の役割は大きいわけです。

★里山は計画的に運営しないと荒廃してしまいます。しかし、そこに棲む動植物との接し方は直感的な推論からまず始まります。どの里山も、その土地の自然条件によって違います。はじめから調査しつくされているわけではありません。ですから仮説推論は直感的に始まります。実際に草木を刈りながら整えていくと、思ってもいなかった植物が生えてきたりするものです。

★それに、ベートーヴェンのピアノ協奏曲5番のカデンツアは、ピアニストとオーケストラの協調的な即興性が腕の見せ所です。

★ジャズのセッションもそうでしょう。今ではすっかり出来上がっていますが、モーツアルトのキラキラ星変奏曲も、出来上がる前は即興的だったでしょう。

★PBLは問題解決型学習なのか価値創発型学習なのか?これも、弥生型思考VS縄文型思考だとか農耕型思考VS狩猟型思考とかと同じ発想の二項対立です。

★ルソーの自然状態と社会状態の発想もそうかもしれません。ただ、ルソーはそれをつなげようとしました。全体意思と一般意思を区別しながら。しかし、現実は、法実証主義VS自然法論の対立構造から抜け出ることはできませんでした。

★とこらが、脱炭素社会の未来の一般意思の形成環境は、AIによる計算に委ねることができます。

★それはマズイのではないかという考え方も当然あります。しかし、直接民主主義が可能になるということでもあるし、さらにメタ直接民主主義もあるということでしょう。

★これがザッカー・バーグさんのいうメタバースの世界の到来ということかもしれません。

★様々な二項対立のダイナミックな統合プロセスがポストパンデミックで起こるのでしょう。そもそもダイアローグいという対話システムは、互いの合意点を放棄するか妥協するか創出するかというダイナミックな過程です。

★結局のところ、シンプルに、対話型というダイナミック思考ができるようになることが高校時代のゴールなのかもしれません。

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2021年8月 9日 (月)

高校の21世紀型教育の今(02)21世紀型教育研究センターの多様なPBL

★今月末、21世紀型教育機構は、静岡聖光学院の学びをSGTが共有し、さらなるアイデアを出して、PBL授業をデザインするオンライン・イベントを開催します。その企画を立て、運営するのは同機構の21世紀型教育研究センターのメンバーです。聖学院の児浦先生、工学院の田中歩先生、静岡聖光学院の田代先生、和洋九段女子の新井先生、文化学園大学杉並の染谷先生がリーダーです。今年は、すでに和洋九段女子と聖学院のPBL授業を共有し、ブレイクアウトルームセッションで盛り上がっています。

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★21世紀型教育機構の加盟校は、私の勤務校以外はすべて中高一貫校です。完全中高一貫校は、三田国際と静岡聖光学院で、他は高校入試も行っていますので、共通点はありますが、中学からの教育のリソースがあるかないかは大きな違いです。中学の教育リソースがない場合、多様な授業や学びの形態を運営するというより、一石多鳥のコンパクトな授業をしなければならないので、何を優先するかが肝になります。

★そして、それがゆえに、あらゆる教育活動が大学入試に直結してしまいます。前回ご紹介した21世紀型教育の2つのGマインドセットを怠ると、すぐに知識注入型の20世紀型教育に引き戻されます。幸い、若い先生方が多く、それはないのですが、ではどんなPBL型授業を行うのか、コンストラクショニズムベースではありますが、これは、学習者中心主義ですから、究極的には、学びの設計からモノ作りまで生徒自身が考案していきます。試行錯誤して、プロトタイプをリファインしながら最適な成果物を自ら創り上げ、市場で売れるというところまで持ってくるわけです。ほぼ研究開発ですから、これは勤務校ではなかなかできません。

★文杉のSTEAM教育は、ほぼこのイメージですから羨ましいです。しかし、このPBL授業は海外大学に直結するものであり、そういう意味ではまだ勤務校では、海外大学進学者は個別対応でサポートしています。

★さて、どうするか?そんなとき、参与的傍観者として、教育研究開発センターに時々たち寄らせていただいているので、同センターのリーダーのミーティングの一端を拝見していて、大きなヒントをいただきました。私の悩みに対して、工学院の田中歩先生は、次のように返信してくれました。ありがとうございます。

<なんとなくですが、思考コードや色々なものが出てきて一通り「これ」というものが出そろった時期な気がします。
色んなところで色んな人がアプローチや考え方を表現していて、どれもなるほどと思うところと、ここは「うちだと」こうしたらいいかなーと思うこともあったりします
どんなものをどんな順番で、もしくはどう混ぜるかも自由に選択できるようになるとデカイですね!
この取り組みが、若者たちからスタートし、色んな先生たちが色んなことに興味関心を持ってもらい、学内に波及したり生徒に背中で語ったりできる、「実際をシェアする場」になったらきいなと思います
そうすれば全体が見る景色が似つつも、それぞれの学校が理想は合意形成した形を作り、そのうちこのセンターでやることが波及して、参加すればよかったと思ってくれるといいかもしれませんね! >

★本当にそうなのです。同機構のSGT(スーパーグローバルティーチャー)は、PBLってどうやるのという先生はいないのです。やっている自分のPBLのアイデアは共有できるのだろうか、ぜひ語り合いたいという段階なのです。ですから、多様なアイデアについてデイスカッションすることができるし、そこからまた新しいアイデアが創出されています。

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★今回は、インストラクショニズムとコンストラクショニズムの融合のアイデアが共有されます。その手法がどのようなものなのかは、静岡聖光学院のイベントが終わったら、公開されるでしょう。楽しみにお待ちください。

★私の方は、この多様なPBL授業の在り方を上記のような座標にしました。あくまで、これは勤務校での教育活動の分類でしかありませんが、これからのPBLは、コンストラクショニズムかインストラクショニズムかどちらかではなく、生徒の目的に応じて、両者の関係をデザインできるのでしょう。

★とはいえ、私は欲張りな性格がゆえに、この座標を丸ごとできてしまうPBLはいかにしたら可能かを妄想し始めてしまいます(汗)。

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2021年8月 8日 (日)

高校の21世紀型教育の今(01)2つのGマインドセットがやはり大切

★今さらながらですが、グロースマインドセットが入学以降持続可能になる学びが大切だとしみじみ。21世紀型教育は、このマインドセットを推奨してきましたが、最近勤務校が高校だけの学校ということもあって、再び重要だと身に染みています。というのは、中高一貫校と高校だけの学校では、偏差値の意味が全く違っているので、入学時に入ってくる生徒がたとえ同じ偏差値でも相当生徒のマインドセットが違っていると思い知ったのです。

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★どういうことかというと、首都圏の中学受験生は、5万人という母集団での偏差値50の意味です。高校受験生は、100万人ですが、偏差値は大学受験者のイメージに支配されていますから、50万人という母集団の中での偏差値50という意味です。

★そもそも、中学受験生の意識は、相当高いのです。いわば、大学受験生の上位10%に相当します。その中での偏差値50ですから、同じスコアでも中学受験時と高校受験時の偏差値50の意味は違うのです。

★21世紀型教育は偏差値にこだわりませんが、入学するまでや大学の一般選抜の時に教科のしかも知識に偏ったテスト(最近そうではないと言っても、90%は知識でしょう)のランキングが現実に色濃く存在している以上、それに支配されている受験生の偏狭なマインドセットを開く必要があります。ですから無視するのではなく、その意味の確認と、そこに横たわる問題を探索しておく必要はあります。

★人生はすべて偏差値に規定されているとまでは、さすがに思ってはいないかもしれませんが、結果的にそれに固執せざるを得ないFIXED MINDSETを解き放ち、教科を超えたネットワークや関係性に気づき、人間関係も多様化するGROWTH MINDSETが必要です。意外と高校卒業するまで、いやそれ以降も、FIXED MINDSETをよしとして人生を歩むケースが少なくないのです。

★21世紀型教育は、PBLに代表されるディスカッションや対話をベースにした学びを行いますが、それには前提としてオープンな精神性や協働する寛容性が条件です。GROWTH MINDSETが必要なわけですね。

★この必要性に改めて気づいたのは、勤務校が学校説明会で、若い気鋭の教師が21世紀型教育について情熱的にわかりやすく語り、実際に体験型のPBL授業のデモンストレーションを教員全員で行ったとき、受験生や保護者が、感動したという事態に遭遇したからです。

★中高一貫校ではわりと当たり前になってきている21世紀型教育ですが、高校だけの学校では、まだまだ20世紀型教育が多かったのだという現実を知りました。何を聞きつけてこんなにたくさん訪れてきてくださったのかと驚いていたわけです。例年の申込数を予定していたら、あっという間に説明会会場のキャパが埋まりました。それで、急遽午後の申し込みを追加しました。するとそれも午前同様の参加数になったのです。個人面談参加率も例年より多く、聴いてみると、進学率(単純に4大の進学率)がヤバイとか、若い先生が情熱的で、生徒1人ひとりの学力と人間性や心の教育を丁寧に行ってくれているというコトだったのです。入学したとときの偏差値を思うと、たしかにこの進学率はヤバイわけです。それだけ、先生方が生徒1人ひとりの進路サポートにギリギリまで取り組んでいるということです。

★確かに、私を含め、2人以外はみな若いですね。そして、若いけれど、4年前に右肩下がりになったスモールサイズの学校経営をV字回復に向けて支え切った教員集団です。限界を超える体験は、順調な学校経営で長年暮らした50代の教師に比べ、凄まじい生きざまを経験している可能性大です。

★そして、高校受験時の偏差値50前後の生徒は、そういう若い先生を欲しているのだということがはっきりわかりました。そして、彼ら若き先生方は、同時に生徒と共にGRITというマインドセットも生み出していきます。Gというガッツだけでは、生徒は長続きしません。Rという回復力をサポートする必要があります。またいつまでも先生をたよっていては自律/自立できません。Iというイニシアチブを自ら引き受けなければなりません。そのためには、やりぬいたというT経験が必要です。このG→R→I→Tの循環を何回か伴走し、手を放すコーチングを若い先生方は体得しています。

※Guts(度胸):困難なことに立ち向かう能力 Resilience(復元力):失敗しても諦めずに続ける力 Initiative(自発性):自分で目標を見つける力 Tenacity(執念) :最後までやり遂げる力

★しかしながら、手を放すまでが、きめ細かいコーチングが必要です。個別相談では、こんなスモールサイズの学校で、経営状態はどうなんですかと心配までしてくださった質問があったそうです。それに対して、教頭が、大儲けはできませんが、大丈夫ですよ。何より他でできない少人数教育に邁進できます。生き甲斐をみな感じていますと回答したということです。あっぱれです。頼もしすぎます。

★もっとも、もし僕なら、ありがとうございます。その思いやりを寄付という形でいただけたら幸いですと付け加えるでしょうが(微笑)。

★ともあれ、GRITとGROWTH MINDSETという2つのGマインドセットが、21世紀型教育には必要だということを改めて身に染みてわかったわけです。

★そして、そうはいっても、中高一貫教育校と高校だけの21世紀型教育の違いはどこが違うのだろうと思ったわけです。たしかに、中高一貫校の領域では6年早く、21世紀型教育が浸透しました。ところが高校だけの学校では、今ようやく始まったばかりです。

★この差が何を意味するのか?中高一貫校の21世紀型教育をただ追っかけるだけではなく、別路線の21世紀型教育を目指さない限り、突破口がないような気がします。その差異は、中学入試の時の生徒の状況と高校入学時の生徒の状況の差異にあると思います。求めるものが違っているのだということでしょう。ここの判断を誤らないようにするためには、もう少し時間がかかります。

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GLICC Weekly EDU第41回 鈴木さんとのスペシャルダイアローグ 2027年世界を変える25校+6校

先週金曜日のGLICC Weekly EDU(GWE)は41回目を迎えました。パンデミックでオンライン授業を行っていく過程で、鈴木裕之さん(GLICC代表・21世紀型教育機構理事・事務局長)といつも対話していることを公開することは意外と簡単にできるのではないかということになりました(実際には機材などの投資が必要で、なかなか大変だったと鈴木さんは語ります。ありがとうございます)。特にGLICCという21世紀型学びをコアにしている塾はあまりないため、必然的にここに集まる生徒や保護者の方のものの見方・感じ方・考え方は独特で斬新です。そして、同時にそれはこれからの進路や学びの方法を示唆してもいます。

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★リアルに個人面談でその情報を共有するだけではなく、毎週情報を発信するのもポストパンデミックの1つのロールモデルになるかもしれないということになったのです。そんな話をGLICCで会議をしていたら、次の日、金曜日からやる段取りできましたと鈴木さんから連絡がはいりました。まさにフラット・フリー・フェアそしてフォースの時代だなあと驚きながら、鈴木さんに導かれて、41回まできたわけです。

★回を重ねるごとに、結局21世紀型教育機構のメンバー校がけん引するNew Power School(NPS)の話をしているということに気づき、2人で話しているだけではなく、NPSの先生といっしょに対話をしていこうではないかと。チャットで連絡をしたら、さすがNPSの先生方です。二つ返事でOKサインがでて、毎回のように多くのNPSの先生方が登壇してくれます。

★GLICCも今週はお盆休みで、GWEもお休みです。先週はちょうど41回目だったので、40回のリフレクションをしようとなりました。もちろん、メールやチャットでのインプロ・ミーティングでですが。それはともかく、リフレクションというのは確かにすごいなあと実感しました。

★というのも、各回登場して頂いたNPSの全体集合は何かを考えるわけです。要するに因数分解が始まるわけです。すると、登場していただいたNPSの共通項は、いずれも2015年ころから新しい取り組みを学校全体で決断し、6年後の今年ある大きな実績を示しているところばかりだったのです。

★しかも、そのような実績を出すと、さらなる改革をというのが21世紀型教育の特徴ですから、リファインされるわけです。すると、また6年後何かが起こるはずだとなるわけです。では何が?偏差値ランキングを塗り替え、かつそもそもこのランキングを問い返すだろうと。

★思考コードの<C3>を大切にしている鈴木さんと私です。意味の脱再生産を行うのを常としています。あらためて<C3>の<C>は、<Copernican Revolution(コペルニクス的転回)>の頭文字であることに気づきました。

★そんなわけで、テーマはこうなりました。<GLICC Weekly EDU 第41回 「2027年の中学入試の偏差値ランキングを変える25校」>。レジュメを作成している段階で、その次に時代を変える6校もプラスしようということになりました。レジュメもヴァージョン4.0までリファインしました。メールで瞬間的に互いにフィードバックするだけで、サクサクリファインしていきます。

★21世紀型教育のプロトタイプーリファインのトルネードはこういうところにも生きているなあと41回目を迎えながら感じました。GWEに登場してくださったNPSの先生方の学校は当然リストの中にでてくるわけですが、それ以外の学校も含めて25校+6校です。それがどこかは、ぜひYoutubeをご覧ください。目からウロコ、コペルニクス的転回を感じることができるといいなあと思います。

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2021年8月 6日 (金)

【響】<12>自分とは何か座標

★この夏は、毎日生徒と「自分とは何か」を問うワークショップを続けているわけですが、いきなり自分とは何か?と問うわけでもありません。たとえば、三角ロジックという技術的なコトを学んでいる時、偶々ハイエクと省エネ保護論者の葛藤の英文に直面しました。高2だと英単語が難しかったかもしれませんが、それ以上にこの対比をうまく整理することが、その断片的英文からではできません。

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★多くの生徒が、ハイエクの立場に立つ傾向にあります。しかし、それに対し、エゴイズムではないかと倫理判断をする生徒もいます。ところが、そのような判断をする生徒も技術革新を認めないわけにはいかないし、自分自身ICTを使わないで生活ができないという現実にぶつかります。まるで、スヌーピーの4コマ漫画のオチさながらです。

★適切な技術革新なんてあるかよお!っとハイエク型の生徒は言います。この問いには、倫理的に応戦しても、結局やってみなければわからないというのが、技術革新ですから、倫理的実効性というのはなかなかたいへんです。

★結局、法的規制となるわけですが、そうなるとハイエク型は、技術的革新の機会損失を生み出してしまうとまたまた応戦します。

★それでも、勤務校の場合は、黄金律がスクールモットーですから、そうはいうものの、ハイエク型はハイエク型で、ウムむむとなるわけです。

★いわゆるコミュタリアンは黄金律と言動が一致するので、自己とは何かは意識しやすいのですが、ハイエク型は難しいわけです。

★結局、座標のどのポジショニングにおいても、メリットとデメリットがありますから、そこを考えるわけですが、メリットとデメリットのコアが見つかった時、価値自由はなんとか保障され、コミュタリアンの生徒も多様性の受け入れ方が可能になるような気がしました。

★倫理的自由と政治的自由と経済的自由の葛藤をどのように融合・統合するのか?生徒との対話を通して、また1つ気づきをえました。

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【響】<11>ヒロシマ・ナガサキ・終戦をリフレクションする8月そしてフクシマ だからこそ変わる学校変える学校の存在が大切

★ミャンマーで軍事クーデターが起こっています。この反民主主義的な動きに抵抗権を発動している市民。中でもZ世代が注目されています。とはいえ、それは武装蜂起という手段をとるということです。今日は広島原爆の日です。ナガサキ、終戦と8月は続きます。そしてそれは同時にフクシマのことも振り返ることを意味します。黙とうや瞑想の折に、このミャンマーのニュースを知りました。私たちは今は祈ることしかできませんが、軍事力を使わない平和な世界をつくるためにも、私たちは変わらなければなりません。

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★なにゆえに変わる必要があるのかと問われるかもしれません。変わらないできたから、世界で局地戦やテロ、反民主主義的な動きが収まらないのです。ミャンマーに多くの資金の支援をしてきた日本です。でもこのようなことが起こっているのです。このような事件が教科書で扱われていない世界で満足し、受験勉強をしている日本のZ世代。一方で、武装蜂起のために軍事訓練をしているミャンマーのZ世代市民。この差異を放置しておくと、民主主義社会としての質の低下を日本は招くでしょう。

★やはり学びを変える必要はあります。本日は、GLICC代表鈴木裕之さん主宰のGLICC Weekly EDUで、鈴木さんと対話します。テーマは<GLICC Weekly EDU 第41回 「2027年の中学入試の偏差値ランキングを変える25校」>です。

★偏差値ランキングを変えるとは、どの学校が勝ち組負け組になるかというような話ではありません。変わらない偏差値ランキングが学歴社会を固定化し、Z世代の目を世界に向けることを奪ってきました。だから、心ある≪Z世代≫のメンバーは、自ら弱い立場に立つ人々と共に新しい世界を創る動きをすでに始めています。それは軍事力による武装蜂起ではありません。知力と情熱と献身によるものです。

★したがって、この知力と情熱と献身を体得する新しい学びによって、偏差値ランキングを変えるコトが肝要であり、その変化は、学歴社会の岩盤を揺るがすという意味があるのです。

★日本は、まだ、武装蜂起をせずに、知性と情熱と献身によってZ世代が動けます。この時を大切にし、全世界のZ世代が世界の平和やwell-beingを得ることができる新しい学びにシフトする必要が学校にはあります。

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(2027年に首都圏の偏差値ランキングを変える25校の学校区分別校数)

★首都圏の中高一貫校には、このようなZ世代がどんどん輩出される教育環境をデザインしているところがあります。25校のうち東京の学校は20校あります。東京の私立中学は181校ありますから、11%の東京の中高一貫校が、まず同エリアで2027年の偏差値ランキングを揺るがします。その理由を鈴木さんと対話します。

★20校を含め、現在首都圏の中高一貫校の中で世界を変える強力な学校は25校あります。一方で、今はまだ強力ではありませんが、これに続く学校は10校はあります。新しい動きのシェア13%がブレイクの分岐点だと言われていますから、2031年には、完全に偏差値ランキングそのものの意味が変質するでしょう。

★まだ10年かかりますが、21世紀型教育機構が誕生して今年で10年。あっという間でした。2031年もあっという間に訪れるでしょう。ちょうど脱炭素社会も軌道に乗り始める頃です。

★私立学校は明治維新のとき、官僚近代社会とは違うもう一つの近代社会をデザインすべく生まれました。その≪私学の系譜≫を継承しながら時代の先端技術を取り入れ、2031年には、それを実現する第一歩となるでしょう。その完全な実現は2089年なので、私は生きていないでしょう。おせっかいかもしれませんが、バトンを次世代に渡す準備をしなければなりません。

★そのためには、まず私たちが変わり、少しでも変えようと断固たる決意をしなくてはならないのです。

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2021年8月 5日 (木)

【響】<10>総合型選抜の意味 men for others としての<自分>とは何かへの道

★勤務校における夏期講習中は、特別講座を同僚と協働して実施したり、推薦入試の志望理由や小論文の書き方について対話する日々を送っています。専門的な知識や技術的なことや具体的な志望理由書や小論文作成については各教科の先生方や担任の先生方がトレーニングしたりコーチングしたりしていますから、私自身は、ものの見方や考え方・感じ方を広げ深めるワークショップ形式の対話を行っています。とはいえ、三角ロジックと3ダクションの推論は共有します。

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(勤務校の教室から見える景色)

★人数的には、3学年合わせて25人くらいです。小規模校だと、1人の生徒は授業で10人くらいの教科の先生と対話できます。講義を受けるというより、対話型の授業ですから、客観的な知識のシャワーを浴びつつ、一方で、生徒の主観的な価値の形成に良い影響を与える対話ができます。

★良い影響とは、教師が<men for others>の価値を共有していますから、生徒の主観的価値と教師の主観的価値の相乗効果が生まれるということです。これを善なる協働主観の形成と言ってもよいかもしれません。

★それ以外に12人マックスの探究ゼミや個人面談が頻繁にあります。平均すると教師1人が教科の授業以外に深く対話する生徒数は20人前後です。したがって、1人の生徒は部活や生徒会・各種委員会の活動もありますから、複数の教師と深い対話ができます。

★私が今回25人(3学年合わせた)の生徒と対話するというのも、以上のような教師一人当たりが深い対話をする生徒数がそのぐらいであるという教育環境が日常であるからだということであり、特別なことではありません。小規模校の教育づくりの一環であり一貫性というわけです。

★私は、ワークショップの後、400字の小論文を課します。ワークショップの単なるまとめというのではなく、ワークショップの中で生徒自身が暗黙知として見つけた問いを形式知に転換して出します。そして、必ず、その問いを考えることが自分にとってどんな意味があるのかを条件として付け加えます。self sense makingは世界作りのコアです。

★総合型選抜に挑む高3とは、自分とは何かをストレートに問いつつ、一方で学部学科に関する問いを出します。自分と現象や事象に関する問いをカップリングしています。高1と高2には、現象や事象に関する問いの中で自分の意味を考えるようにしていて、まだ自分とは何かをストレートに考えることはしていません。

★他局面に出会ったときに自分は何を感じ、何を考え、何を判断し、何を行うのか。そのような多様性の中で、一貫した自分が見えてきます。

★したがって、総合型選抜は、高3になって突然準備するというのではなく、高校1年から多様な学びに向かい合いながら<自分>とは何かをリフレクションし続けるself sense makingのプロセスが肝要だなあと、改めて認識している最中です。実際、今の高1の学年団はすでに日々そうしています。

★そして、その<自分>がmen for othersとどう関係があるかということも当然考えていくわけです。それには、現象や事象の分析と問題点の発見というプロセスが大事だったのです。

★そのときに、men for othersを倫理的側面だけで考えないようにしています。倫理的自由論、政治的自由論、経済的自由論、法律的自由論、技術革新的自由論、生命科学的自由論、そしてカトリック校なので、スピリチュアリティ的自由論というように、多角的に問うていきます。最終的には、一貫性のある<men for others としの自分>が見えてくると思います。

★そしてそれは少なくとも4の7乗通り(これに思考コードを単純に入れるだけで、36の7乗通りになるのです)ありますから、極めて個性的な一貫性となるのです。

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2021年8月 3日 (火)

ポストパンデミック(02)2027年首都圏中学入試の地図が変わる

文化学園大学杉並の在校生が、自らの意志でオンライン学校説明会を行います。同校サイトで、在校生はこう語ります。「先生から言われたことではなく、「生徒自身の目線」で本校のことをお話しします。​パンフレット・HPに載っていないことや、普段の説明会でも話さないようなこともお話しします」。

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★もちろん、学校側を説得して行うわけで、それを認める学校と生徒の自分の学校の誇りとの間に深い良好な絆があることがすぐにわかります。

★この信頼関係が背景にあるからこそ、このような説明会が開催できるのは、言うまでもありません。

★そして、この信頼関係は、自信の裏返しでもあります。このような活動が出来る学校が、伸びないわけはありません。先月の本ブログのアクセスランキングでも、同学園の染谷先生を紹介したページは11位です。また同校のダブルディプロマについて紹介しているページは3位です。

★同学園の勢いを感じます。そして、同時に6年後の同校の中学入試における偏差値ランキングは、かつての鴎友学園や洗足、広尾、三田国際のように上位に参入することが予想できます。

★偏差値ランキングという指標が、6年後の2027年に存在しているかどうかは、予測不能ですが、存在していたとしたら、偏差値の上位に入る条件は、大学合格実績です。これはもはや文杉はどんどん実績をあげていますから、条件を満たすでしょう。

★しかし、同時に海外大学の実績も必要になってきます。今のところ大学受験業界は、偏差値にこの要因を積極的に入れていませんが、開成、海城、湘南白百合、広尾学園、洗足学園などが海外大学進学に道を開いています。そして、文杉はすでに破格の海外大学進学実績を出しています。

★しかも、文杉をはじめとする21世紀型教育機構の加盟校等もこの路線を牽引しはじめています。

★国内外の大学合格実績は偏差値上位のポジショニングを決める大きな要因になるでしょう。

★そして、この国内外の大学合格実績の意味は質的なコペルニクス的転回を果たします。これによって、偏差値ランキングとは別のランキングが生まれます(汗)。

★これを加速させるのが、地政学的な日本の初等中等教育学校の有意性です。文科省は2013年からそれを暗黙の了解として進めています。それがIB200校計画とB2英語を高校卒業時の目標に掲げて始めているところから推測できます。

★というわけで、2027年は、首都圏の中学入試における偏差値ランキングの地図は大幅に変わるだろうし、偏差値ランキングという指標自体が変わるかもしれません。

★この辺りは、今週8月6日(金)、GLICC Weekly EDUで、主宰の鈴木裕之さんと対話したいと思います。

★先月の本ブログのアクセスランキングベスト20は以下のようになっています。変化の予兆のラインナップでもありましょう。

1:受験の世界を変える首都圏模試センター(01)中学受験雑誌「shutomo...
2:サレジアン国際学園 川上武彦先生語る New Power Schoolと...
3:2021年変わる中学入試(14)海外大学へそして偏差値至上主義の無化へ加速 三田国際のデュアル・ディプロマ参入の意味..
4:New Power Teacher(03) 児浦先生、田中歩先生、新井先...
5:教育のアップデート~2022年に向けて(29)新しい学校選択視点 <同窓...
6:21世紀型教育機構 次世代SGTのためのPBL授業の共創ワークショップ開...
7:教育のアップデート~2022年に向けて(28)グローバル進路プログラムが...
8:New Power Teacher(04) 次世代SGT(スーパーグロー...
9:New Power Teacher(01) 神崎先生 越境知のスーパーバ...
10:前嶋校長かえつ有明を語る 開かれた言葉の力 
11:文化学園大学杉並の染谷先生 New Power Schoolの価値と作り...
12:三田国際学園 世界の学校へ突き抜ける 2027年中学受験地図はガラリと変...
13:教育のアップデート~2022年に向けて(30)新しい教師続々出現 最先端...
14:サレジアン国際学園のPBLの暗号解読
15:教育イノベーションに、「思いやり」が必要なわけ
16:21世紀型教育機構のワークショップ 緊急事態宣言発令に伴いオンラインワー...
17:New Power Teacher(05)阿弥先生の算数の授業 言語と数...
18:New Power Teacher(02) 太田晃介先生 知のクリエータ...
19:【響】<05>知識と精神のシンプルな統合の時代 数学的思考が大切。: ホ...
20:教育のアップデート~2022年に向けて(26)広尾学園の海外大学進学実績... 

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2021年8月 1日 (日)

ポストパンデミック(01)メタバースの世界構築へ 首都圏模試や工学院にみる

★2020東京五輪・パラリンピックは、緊急事態宣言下の紆余曲折の中、実行されています。このことの是非については、歴史が問い返すでしょうから、ここではその話はいったん括弧にいれます。しかし、この紆余曲折の中からオリパラだけでなかく、あらゆる分野で、次の世界構築へ動きがでています。この同時多発的に起きているそれぞれの新世界構築の部分集合を包括する全体集合は何でしょう。ザッカー・バーグさんがそれを見出したかもしれません。ユニバースからメタバースへがそれです。

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Bloombergにこんな記事が掲載されています。『ザッカーバーグ氏、「メタバース」がフェイスブックの未来の鍵握る Kurt Wagner 2021年7月30日 13:34 』。そこにはこうあります。「ザッカーバーグ氏は「向こう数年で当社に対する人々の主な認識はソーシャルメディア企業からメタバース企業に変わると予想する」とした上で、「さまざまな意味でメタバースはソーシャルテクノロジーの究極の表現だ」と説明した。同氏がメタバースという言葉を公の場で使い始めたのは最近だが、フェイスブックはVRとAR(拡張現実)に投資するなど以前からメタバースの構築を進めてきた。」

★Wikipediaによると、「メタバース、メタヴァース (英: Metaverse) は、SF作家・ニール・スティーヴンスンによる1992年の著作『スノウ・クラッシュ』の作中で登場するインターネット上の仮想世界のこと。転じて、将来におけるインターネット環境が到達するであろうコンセプトモデルや、仮想空間サービスの通称としても用いられる。メタ (meta-) とユニバース (universe) の合成語」で、ユニバースからメタバースへということですね。

★ザッカーバーグさんが、すでにVRやARに投資をしてきたように、メタバースの動きはすでにあったわけですが、それはあくまでも、リアルなユニバースという世界の部分集合だったわけです。ところが、それが逆転・転換してメタバースが全体集合になるとザッカー・バーグさんは新しいビジョンやコンセプトを創ろうとしているというわけですね。

★SFで語られてきたことは、多く現実化しています。生徒と話していると、ドラえもんの世界はリアルになると抵抗なく語ります。しかし、それはもちろん、ハイブリッドだというわけですが、このハイブリッドという概念は、実はメタバーズを予告している橋渡しの言葉なのかもしれません。

★もちろん、メタバースはまだ実感のないコンセプトです。しかし、それがゆえに、この着手は、投資活動を活性化するとザッカー・バーグさんは考えているのでしょう。SNSの世界は広告で成り立っています。しかし、それはあくまで、リアルに向かわせる手法ですから、ロックダウンで、そのリアルが停滞してしまったために、SNS上の広告が減少したでしょう。

★私のこのホンマノオト21はフリーですから、どんなバナー広告が貼られるかコントロールできません。パンデミック以前は、教育系のブログという性格のためでしょうが、塾関係のバナーで囲まれていました。しかし、今では辟易するような広告がくっつきはじめていて、困惑しています。しかし、SNS上の経済状況が手に取るようにわかるので、今は静観していますが、そのうちこのブログも閉じて、別に立ち上げなくてはならないかもしれません。

★いずれにしても、SNSの経済的な困窮が、ザッカー・バーグさんの経済アイデアを刺激していることはあらずといえども遠からずでしょう。そんな折、首都圏模試の山下社長から、オフィス移転の一報がありました。『弊社では昨年から、コロナ禍における感染対策も含めてリモートワークを積極導入してまいりました。それによって、当初考えておりました以上にスタッフが効率的に、のびのびとした感覚で働けたことが、この度のオフィス移転を決意した大きな要因です。これを機に「未来を一歩先取りした」働き方の新体制を整え、リモートであるからこその連絡、連携、意思の疎通、さらには部署をこえた意見交換などにおいて、クラウドアプリやソフトの利点(スピーディーな対応)を生かして、受験生と保護者、学校、塾の皆様をはじめ、今後の新たな社会に貢献していきたいと考えています』と。

★ああ、やはり成功する鵜経営者というのは時代の最前線でシンクロしているのだなあと感動しました。「未来を一歩先取りした」「新たな社会」と山下社長は語ります。そして、ザッカー・バーグさんは、その先取りした新たな社会に「メタバース」という名称を転用したのです。

★山下社長も、今猛烈に「思考コード」でメタシンキングを広めるプロジェクトを動かしています。リアルなオフィスからメタオフィスに移転します。すべての業務はほぼテレワークにし、リアルなミーティングの場だけオフィスに残すということのようです。全体集合がリアルなオフィスからメタオフィスにシフトしたのです。

★すでに、同社は昨年からハイブリッド説明会を学校と協力して開始しています。学校自体はまだまだリアルなユニバースの世界ですから、そう簡単に変わりはしないと思われるかもしれませんが、実際はすでに私立学校はハイブリッドになっています。ただ、まだハイブリッドは部分集合です。

★しかし、そんな中、PBLをベースにしている工学院大学附属中学校・高等学校は、ハイブリッドの方が全体集合になるのではないかという動きをしています。すでにこのパンデミックで、ラウンドスクエア加盟校として海外のエスタブリッシュスクールとオンラインで学びの交流を行っているのですが、すべての生徒が高2でグローバルプロジェクトでハイブリッドツアー学習も行っています。

★ラウンドスクエアのこの交流にしても、参加する生徒は限定的だし、グローバルプロジェクトにしても、高2の学年ですから多くの生徒が参加するとはいえ、学校全体としては限定的です。したがって、まだハイブリッドな世界は部分集合だと思っていました。

★ところが、昨日、中2のプロジェクトツアーのブログを見て、工学院は、授業もそうですが教育活動のすべてがプロジェクトのプロトタイプを伸縮自在に発展させて動いているのだということに気づきました。

★C1英語×PBL×ICT×思考コードというプロトタイプがあらゆる教育出動でベースになりリファインされながら回転しています。特に新校長の中野先生はICTというテクノロジー分野の重鎮です。来春から「先進」という名称に変えるコースもつくります。

★ハイブリッドから先進へ。これはザッカー・バーグさんや山下社長の動きとシンクロしていると思います。ユニバースからメタバースへ。

★とはいえ、まだユニバースとメタバースは二つの世界が交わっているベン図の様相を呈するでしょう。

★ともあれ、メタバーステクノロジーと先進経営学。進路はこの方向で大きく動くかもしれません。もちろん、制度設計マインドという補集合はユニバースとメタバースの背景には常にあります。

★勤務校は、資本がないので、制度設計マインド=世界の作り方マインドに傾注するしかないかなと思っている今日この頃です。

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