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2021年7月 4日 (日)

サレジアン国際学園のPBLの暗号解読

前回ご紹介したサレジアン国際学園の川上武彦先生のGLICC代表鈴木裕之さんとの対話を再度視聴していて気づいたことがあります。それは同校のPBLの独自性です。なるほどと思ったので、同校のサイトのデジタルパンフレットを開いてみました。やはりそうでした。同学園のPBLの紹介ページには、このようなフローチャートがあります。暗号解読ではないのですが、これはクロス型PBLです。クロスというのは交差するという意味と十字架の意味が重なっています。

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★どこがクロスかというと、まず①の段階で、水平的に好奇心が広がっていくのです。知識や情報を幅広く収集していくというわけです。

★②の段階では、その水平的好奇心がやがて深堀する知的好奇心を生み出します。教師が問いを提示するのではなく、「問いと出会う」というわけですが、それはそういうことでしょう。

★③では、それがどんどん深まっていく、自分の世界を形成していくという意味です。

★がしかし、自分の世界が独りよがりでは困ります。共同体と分かち合うことができるかどうかディスカッションして、そこから気づきを得ながら、自分と他者との関係を織り込んだ世界を形成し、次のステップへ飛躍します。深堀した洞窟から抜け出て今度は天に向かうわけです。

★すなわち、②から⑥の過程は、上下の垂直運動があるわけです。水平と垂直が交差するわけですが、そこに知的好奇心とディスカッションという分かち合いが十字架という意味をクロスに付与します。

★水平的な好奇心は、おもしろい・関心があるという心性です。知的好奇心はそれを省察することでなぜ関心が生まれるのか自問自答するわけです。関心はカトリックでは「愛」です。自分の状況や想定とギャップがある事象や心象、現象に直面した時、なぜギャップがあるのだろうと問いが自生的に現れるわけです。

★サレジアン国際学園の生徒は、サレジオ会の精神的支柱であるドン・ボスコが1人ひとりの幸せを大切にしている教育を継承しています。自分が幸せだからこそ、そこでは常識とされているものが、現実の中でそうでないということに気づかせるのです。

★もし、自分が心理的安全の状況になければ、そのギャップの最中に放り込まれ、気づくことができないのです。世の中のそのような影の部分に気づくには、精神的な幸せや心理的安全性を保っていなければなりません。

★物質的な幸せは、物神崇拝主義ですから、カトリック的には精神的な幸せから見れば、ギャップです。そのギャップが貧困を生みますから、二重のギャップです。そして、自分の状況が物質的な幸せにも含まれていると気づいたとき、三重のギャップです。

★このトリレンマを解決するために、ドン・ボスコをはじめ聖フランシスコ、聖ドミニコなどの聖人が行動を起こしたのです。イエス・キリスト自身がそうですから、このトリレンマどころかマルチレンマをどう解決するかは普遍的な態度です。

★このマルチレンマを解決しようという態度を生み出すのが、サレジアン国際学園のクロス型PBLだということではないか。そう気づいたわけです。

★そしてこのクロス型PBL精神は、キリスト教を超えて、世界市民に共通する精神であるということでしょう。

★勤務校聖パウロ学園もカトリック学校として、このような精神を共有させていただきたいと改めて思いました。

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