New Power Teacher(04) 次世代SGT(スーパーグローバルティーチャー)の新しいPBL授業とワークショップ開催 思考コードとワークショップ言語の未来
★7月18日(日)「次世代SGTの授業デザイン」ワークショップ」がオンラインで実施されました。前半は21世紀型教育機構の理念確認と授業のケースメソッドで、ウェビナーバージョンで行われ、後半は、参加者がブレークアウトルームでワークショップ。私は前半だけ参加しました。それだけでも、探究プログラムではなく、各教科のPBL授業が根付き、広がっているのに感動しました。
(「AIに負けない自分で考える子どもを育てる 21世紀型教育」大橋清貫、 本間勇人 | 2019/2/25 から)
★PBL授業を行う時、メタルーブリックである「思考コード」が必要ですが、それが2つの授業のケースで息づいていました。もちろん、上記思考コードは21世紀型教育機構のスタンダード版ですから、そのまま使うのではなく、各学校が変形してアレンジして活用しています。
★思考コードは、実はアブダクション的な推理でできています。なぜなら、具体的な実践ケースは、あとからできてきたので、帰納推理(インダクション)ではできなかったのです。また自然科学ではなく、コミュニティが参加者と共に創っていくので、演繹推理(デダクション)で思考コードを公理よろしく適用はできないのです。
★ですから個別の集合をあとから全体集合にシフトする可換還論(数学の研究領域の一つ)的な導きはできなかたのですが、しかし、結局は全体集合から個別の集合を生み出せたというわけで、変換のベクトルや次元が逆だっただけだと感じ入ることができました。
★21世紀型教育機構が世界構築をするとき、CEFRのような基準が必要ですから、全体集合としての思考コードを精査しておく必要はあります。実際アクレディテーションで、加盟校の授業のモニタリングをしますから、そのときは外部評価になります。学内評価としての思考コードと外部評価としての思考コードは共通点もありますが差異があるのは当然で、逆にその差異が重要です。その差異こそそれぞれの学校の特徴なのです。
★ところで、その評価ですが、コンセプとはエンパワーメント評価です。エンパワーメント評価は、21世紀に入ってすぐにスタンフォードを中心とするカリフォルニア州の高校と大学のPBLの学びをリサーチしに行ったとき、そのスタンフォード大学で知りました。当時同大学で教鞭をとっていたデヴィッド・M・フェッターマン博士の研究です。
★今では邦訳もあるし、アマゾンで簡単に手に入りますが、当時は飛行機で現地に行かなければ知る由もなかったですね。本当にグローバルな知は地球市民に瞬時に共有される時代になりました。感慨無量です。
★思考コードはブルームの認知領域の分類(横軸)とエンパワメント評価の分類(縦軸)を掛け合わせたものです。エンパワーメント評価(EE)は、コミュニティが自らのパフォーマンスをモニターし、評価することを目的とした評価手法です。コミュニティの総合的な取り組みや小規模な環境で使用され、グループの目標達成を支援するために設計されています。
★授業でPBLをやるとき、チームという小さなコミュニティができます。医療や福祉、NGOばかりでなはなく、シリコンバレーのカンパニーのようなコミュニティ、自治体コミュニティなどのプロトタイプとしてPBLはあるので、エンパワメント評価は重要だと当時ピンきました。
★しばらくして、フェッターマン博士は日本の幾つかの大学に招かれて講演をしていますから、自分の目は間違っていなかったと当時は思ったものです。
★それに、フェッターマン博士は、今も大大活躍のようです。国際的な評価コンサルティング会社であるFetterman & Associatesの社長兼CEO。また、アーカンソー州評価センターの共同ディレクターでもあります。フェッターマン博士は、チャールストン大学のビジネスおよびリーダーシップの教授、サンノゼ州立大学の人類学の教授、アーカンソー大学パインブラフ校の教育学の教授を務めています。もちろん、スタンフォド大学と共同プロジェクトは今も続けていることでしょう。
★ エンパワーメント評価の重要な点は、改善と自己決定を促すために評価の概念、手法、知見を、参加者全員と共有することです。ですから、PBL授業で、教師だけが活用するのではなく、生徒と共創するのが、21世紀型教育機構のPBLの理想型です。この理想型をずっと追求しているのが工学院の田中歩先生ですね。
★この点において、今回の授業のケースメソッドでは、実践されていることがわかりました。素晴らしい!と驚嘆したわけです。
★また、知識がなければ思考はできないという、A軸の次にB軸思考、そして時間があったらC軸思考も授業でやるという20世紀型授業デザインではなく、上記の図のようにどこからでも創意工夫して学びは行えるというのが21世紀型のPBLです。
★知識は生成される前はC軸思考です。C軸思考は知識を生産する思考でもあります。知識を軽視するという言説は、21世紀型教育ではありません。どうもそのようなフェイク言説がまかり通るのは、20世紀型教育信奉者の失言でありましょう。教育はまだ科学的ではない部分があるので、言いたい放題です。
★21世紀型教育の思考は、分類はしていますが、それは要素還元主義ではなく、関数的な関係主義です。構成主義という社会科学的な言い方もされますが、そろそろ数学的思考で捉える時ですね。そうすると、PBL授業はシンプルになります。エンパワーメント評価は、今ではICTを通して計算可能性を追究しているので、やがてそうなっていくのも必然でしょう。
★ただその時に、A軸、B軸、C軸を別々に測るのではなく、それらを含むワークショップ言語単位で行った方が、パフォーマンスをうまく測定し、活用できると思います。
★今回の後半のワークショップは多くの若手SGTによって、そこを見据えて、行ったようです。その点に関しては、今週の金曜日GLICC Weekly EDUで、21世紀型教育研究センターのリーダーでもある聖学院の児浦先生と対話することになっています。またご報告いたします。
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