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2021年7月 3日 (土)

【響】<03>暗号解読 最後の晩餐 人間の生きざまコード 思考コードワークショップ

★ミラノのドゥオーモのある中心街から地下鉄で少し行ったところに、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院があります。ドミニコ会の修道院で、かつての食堂にあのレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」があります。戦災にあった修道院ですが、なぜかこの食堂はなんとか燃えなかったということです。

The_last_supper

(写真は、wikipediaから)

★順番で見学できますが、時間制限がありますから、1日そこに佇んではいられないのが残念です。しかし、この12人のイエスの弟子たちがワイワイガヤガヤあわてふためいて焦りの表情や見振りを示しているのは圧巻です。しかも1人ひとり違います。最後の晩餐だというのに、静かに食事をしているシーンではないのです。

★ドミニコ会の修道士は、ここで食事をとりながら、毎日何を感じていたのでしょう。まるで、心地よく静かに食することを禁止されているかのようです。ドミニコ会は、托鉢修道会で、自らを鎖で縛りながら、日常の中で痛みや苦しみを忘れないように暮らしていましたから(今は違うでしょうが)、この「最後の晩餐」を背景にイエス・キリストの生き様の凄まじさを感じながら食していたのかもしれません。

★勤務校で、この最後の晩餐に隠されたメッセージは何か、動画をみたり、この部分の聖書の物語を読んだり、ポストイットでキーワード読みやメタファー予測をしながら、生徒と対話をしました。

★カトリック校ですから、聖書の解釈というcryptanalysisという意味での暗号解読をするわけですが、あの「ダ・ヴィンチ・コード」という作品にあるように、codeという意味での暗号解読にシフトする試みです。もちろん、私の場合は「思考コード」という暗号解読に最終的につなげたいわけですが。

★生徒たちは、動画や物語や最後の晩餐の絵の情報をポストイットに書き取りながら、ベタベタはっつけて、暗号解読Bをつくります。動画にはすでに暗号解読の幾つかの例が載っていますから暗号解読Aもやります。

★しかし、そこから暗号解読Cによる隠れている本質的なメッセージに気づくには、あるスピリチュアリティが必要です。スピリチュアリティとはオカルト的な心性のことを言っているわけではありません。「思いやり」です。「寛容性」とか「いつくしみ」とか言っても構いません。

★裏切り者のユダはどこに描かれているのかな?この問いを聴くや、スピリチャリティの素養のある生徒は、すぐさま驚愕の眼差しになるし、今までその精神に気づいていなかった生徒は、とまどいつつもある人間の根源的なトラウマに気づくんです。

★人類共通のトラウマです。信頼と裏切り、それは自分の命を守るのか犠牲にするのかという究極の選択の瞬間です。その瞬間、人類共通の苦悩として表に出てきます。

★イエスがあれほど愛したユダなのに、自分を金で売って裏切る。ダ・ヴィンチの描く弟子たちの表情はそれに対する驚愕もあるでしょうが、ざわついているのは、ユダのことだけではないのです。裏切り者は、まさか自分ではないだろうなあ、先生(イエス)教えてください!私ではないですよね!私はついていきますよ!みな不安になったり、見透かされたりしたときに口数が多くなりそわそわするのは、2000年前も今も同じです。

★自分に自信や信念がないとき、ぐらつきます。それは人間の一面であり、だからこそそこから抜け出ようと自己変容しようとするわけです。

★生徒たちの中には、そこに気づいて衝撃を受ける子も幾人かいます。

★イエスは、はっきりと、きみらも一回は裏切るからねというのがこの最後の晩餐のシーンです。一番弟子だと自認しているペトロが、私は絶対裏切りませんからというわけですが、イエスは、エッ、そうかい。にわとりが鳴くまでに3回お前は俺のことを知らないといって逃げるぜと。

★そんなこと絶対あり得ませんよ!というのですが、イエスが十字架に磔になっている最中、おまえあいつの弟子ではないかと聞かれ、そのたびに、しりませんよあんな人というわけです。そして3度目にしらないと言ったとき、にわとりのなく声が届くわけです。そのときペトロがどう感じたか説明するまでもないでしょう。

★しかし、実際にイエスが復活し、自分の裏切りを回心したペトロやほかの弟子たちは、すぐに伝道を開始するのです。当然、イエスは弟子たちを赦します。

★このシーンは、人生の生き様のプロトタイプだし、正義とは何かを判断する時の思考実験であり、社会規範の在り方のモデルです。そして私たちは未だに解き得ない精神構造のエニグマがここにはあります。

★私の世界作りという暗号解読の対話は、まだ始まったばかりですが、いっしょにこの講座というかワークショップをつくっていく仲間とも出会えました。これが私の探究ゼミのコアになるでしょうし、偏在する講義のベースになるかなと。ハイブリットでクロスしたネイチャーの世界作りという暗号解読。何が予測不能って、人生そのものがそうです。

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