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2021年7月

2021年7月31日 (土)

三田国際学園 世界の学校へ突き抜ける 2027年中学受験地図はガラリと変わる。

昨日、GLICC Weekly EDU(同代表鈴木裕之さん主宰)で、三田国際学園の大橋清貫学園長と原田啓志校長、今井誠広報部長と対話する機会を頂きました。2021年春、完全中高一貫生の一期生が卒業(現在は高校受験はありません)。その輝かしい実績は受験業界の注目の的ですが、同学園は、日々の中で大学合格実績を超える世界標準の研究レベルの実績を多数挙げていることに誇りを持っています。

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★すなわち、海外大学、医学部、いわゆる難関大学に進学するのは、そのような6年間の本質的な研究者級の学びの結果としては、当然すぎるということでしょう。

★米国のエスタブリッシュスクールにおけるAPコースや世界のエリートが受講するIBのDPコースなどは、ハイレベルでハイクオリティの教育であることは有名です。しかし、それとて、その学校のすべての授業がAPレベルではないし、DPレベルであるわけではないのです。

★ところが、完全中高一貫の1期生を輩出した今年から三田国際はまたしても大進化を果たしました。今年の1年生からすべてのクラスがインターナショナルクラスになったのです。

★そして、すべての生徒がサイエンスリテラシーを学び、哲学対話の授業などの画期的PBL体験をし、それをコアに英語でサイエンスを研究したり、医学部やイノベーションを創発する大学に進む本格的な研究をしたり、オールイングリッシュで探究をしたりと社会に貢献するありたき自分の進路を選んでいけるようになります。

★ですから、すべてのコースがAPレベル、DPレベルです。同学園では、これは当たり前すぎて、外部の私から見て感動しても、本間さんは何を驚いているのだろうと同学園の先生方は思う程です。

★1条校でありながら、インターナショナルスクールであり、APやIBレベルの教育のクオリティを持続可能にした学校です。

★特にネイティブスピーカーの教師が27名いるのは、他の追随を許さないでしょう。教師陣が多様性を生み出しています。英語と日本語以上の言語の多様性の文化もすっかり根づいているそうです。

★世界のエリートの子弟がそのまま入学しても、彼らの期待に120%こたえられる学校なのです。まさに世界の学校です。言語の壁をすんなり超えられる1条校の中等教育学校は日本ではまだありません。また、今後もできないでしょう。

★もちろん、大橋学園長がもう一つ作ろうとすれば話は別ですが。

★この世界の学校になる先見の明は、やはり世界や時代のニーズを見抜く大橋学園長の鋭い洞察力のなせる業です。

★世界のエリートは中等教育レベルの教育を地政学的には日本に求めていますが、彼らの期待する学校は、今までなかったのです。

★言語の壁とハイクオリティの教育の欠落が主な理由でした。

★ところが、三田国際がそのニーズにしっかりこたえられる、いやそのニーズ以上の教育を創り上げたのです。

★また三田国際の教育のコアであるSoulは、ポストパンデミックで求められる社会貢献ができるサイエンスリテラシーを生かせる人材を育成しています。

★三田国際学園は、間違いなく世界の学校として突き抜けたと思います。

★それゆえ、もはや入学試験はたいへん難しくなってしまいました。

★かつては海外帰国子女で御三家を志望していたであろう受験生は、今や三田国際にチャレンジするようになりました。今年の中1が6年後卒業する2027年は、偏差値ランキングという時代錯誤的な指標がまだ存在しているとしたら、完全に地図は変わっていることでしょう。

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2021年7月30日 (金)

【響】<09>3ダクション・ワークショップ言語 対話とプレゼンのシークエンスが解放するコト

★前回<3ダクション・ワークショップ言語>の話をしましたが、今日さらにアッと思ったことは、対話がある囚われ状態をつくることもあるということでした。対話によって開かれていくだけではなく、閉じられていく。。。それを対話というのかと言われると、きっと本来の対話ではないと言われそうですが、そこに介入してもうまくいきません。いくようにも思いますが、やらされ感満載です。

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★三角ロジックを核に、3つの頂点についてチームで対話していくのですが、その3点が決まると囚われ始めるところもでてきます。それを開くのが厄介な時もあるのです。

★ところが、各チームがプレゼンをしていくと、不思議ですね。ぱかっと蓋があいて、囚われ感から解放感に急にシフトする姿を表すのです。

★多角的な見方をすればよいだけですねということなんですが、チームの中だけでは限界にいきつくときがあるわけです。そんなときほかのチームのプレゼンを聴くのは目からウロコという場合があるようです。むしろ、チームにするのはそういう意味があったのだと気づきました。

★チームで限界にいきつき、そこから解放されるのはいかにしたら可能か?それについて思い悩む瞬間を生み出す機会をつくるということだったのかもしれません。要するに極限状況をクリアする脱限界疑似体験ということでしょうか。

★これは、志望理由書を1人で書くときもそうです。やはりピアレビューができる環境があるとよいわけです。

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★そのとき、三角ロジックを共有していると、データ化のプロセスやそこから抽出される理由付けについて的確に互いにフィードバックできます。そして、そこで、リフレクションとリファインのサイクルが回り始めると、主張も明確になってきます。

★さらに深みも出ます。

★志望理由書の場合は、自分とは何かの命題が明確になっている必要がありますが、それだけではなく、命題の背景が濃厚になっていることも大切です。

★自己変容とは囚われ感から解放感への小さなシフトの連続が収束した時に生まれてくるような予感がします。

★どうやら三角ロジックは連続体にして、小まめにその都度プレゼンやピアレビューをしていくのがよさそうです。90分のワークショップの場合、2セットは回せます。同じことを2回回すというのもありだし、一つの三角ロジックから0.2次元くらいあげた三角ロジックを生み出すプロセスをつくるのもありです。

★同僚とコラボしてやっているのは、後者です。

★それから、ワークショップはやはりファシリテーテーションとコーチングのハイブリッドがよいかなと。いつもは私がファシリテーターで、同僚がところどころコーチングしていきます。

★今日は逆をやりました。コーチングではうまくいかないことが、同僚のファシリテーションでうまくいくという差異の中で、生徒がアハ体験をしているのがよくわかりました。

★ハイブリッドの時代です。

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2021年7月28日 (水)

【響】<08>3ダクション・ワークショップ言語 三角ロジックを出発点として③

★さて、今回は、三角ロジックを2つつなげるところまでは歩を進めることができました。無限に続くわけですから、どこか弁証法的ですが、全く違います。テーゼとアンチテーゼという関係ではないからです。

★それはともかく、今回は2050年の未来社会を様々なグラフや情報から「データ」化します。グラフや情報の段階ではまだデータではないのです。だいたい2050年の社会はすでに生徒はおぼろげながらイメージできています。問題はエビデンスです。どんなデータが理由付けになるのか?闇雲に図書館にいって調べ学習をするというのは実は無理です。

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★もし調べることから始めるのなら、それはあらかじめ課題図書が設定されていて、そのビブリオをたどっていくというやり方になります。演繹推理や帰納推理なわけですが、それだと回答がほぼ決まってくるのですね。

★そういう2つの推理をトレーニングすることを探究だとするなら、それはそれで、その学校の探究です。

★私たちは、身近なものやことからデータ化するところから始めて、そこから文献を調べたりするというのはありですが、調べなくても、三角ロジックで推理のままの段階という思考実験はできます。つまり仮説を立てる思考実験で終えてもいいのです。

★今回はまずはそうしたわけです。しかしながら、でてきた2050年の社会イメージは、ユートピアのようでデストピアでもある。であるならば、リスクを整理してその解消を考えようと。

★すると2つ目の三角ロジックが回転し、再び新しいデータが推理できるとなるわけです。では、そのデータは本当にあるのかとなると調べなくてはなりませんが、思考実験で終えてもよいわけです。

★こういう思考実験をしながら、その実験の中から自分の興味と関心が出てきたものに関して、しっかり調べていくという探究プロセスを体験するのが私たちの3ダクション・ワークショップ言語です。

★というわけで、どの推理から入るかで、その探究の意味が変わってくるというコトなのです。どれを選択するかは、自由です。(いったん了)

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【響】<07>3ダクション・ワークショップ言語 三角ロジックを出発点として②

★三角ロジックのどの頂点を推理するかで、3つの推理が生まれてきます。3つの頂点は、「主張(クレイム)」「根拠(データ)」「理由付け(ワラント)」。三角ロジックで検索するとたくさん論考がでてきます。いろいろ読んでいるうちに、この3つの頂点のどれを推理するかで、演繹推理、帰納推理、仮説推理になり、どの推理が有効かという議論ではなく、どの推理をどういう時に使うかという話であるということがわかりました。

【3ダクション】

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★3つの推理は、上記の図にあるように「ーduction」は共通です。未知の情報から仮説を立てて自分の気づきを論理変換していく際に、その情報の種類によって、3つのうちのどれかを活用するところから始まり、いずれ他の推理を活用するということがありますから、どれか1つで推理するのではなく、コンビネーションだということに気づきました。

★それで、このような推理のワークショップを「3ダクションワークショップ言語」と呼ぶことにしました。「言語」?とお思いでしょう。これは1冊の新書を自然言語で読むと4時間以上かかるわけですが、このワークショップで行うと90分かからないのです。それゆえ、自然言語に対してワークショップ言語と称しています。

★先週、聖学院の児浦先生と対話した時は「共通発見ワークショップ言語」と「in-outワークショップ言語」で、500ページの書籍を読む以上に内容を身体化できると確信をもちました。そして、その時間は90分です。もし自然言語で500ページの本を読もうとすると、たいていは挫折してしまうでしょう。

★3角ロジックから3ダクションが生まれるのは当然ですが、三角ロジックという意識をしなければ、それに気づかなかったでしょう。(つづく)

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【響】<06>3ダクション・ワークショップ言語 三角ロジックを出発点として①

★この夏、勤務校で学力・精神・身体・スピリチュアリティの質を総合的にアップできないか?4月から同僚とミーティングを繰り返し、ワークショップを行うことにしました。3人チームのもあるし、4人チームのもあるし、11人チームのもあります。スモールサイズの学園なので、ワークショップや探究ゼミは1人の教師に12人がマックスです。

【三角ロジックと思考スキル】

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★今まで思考コードや思考スキルを多様なアクティビティに結びつけてワークショップを行ってきましたが、成城学園の広報部部長の青柳圭子先生と対話した時、三角ロジックをピアで使いながら行う対話型論理の授業方法の成果を教えて頂き、これは今まで実施してきた多様なツールを統合してワークショップを行えるなあと思い立ちました。

★さっそく、4月から対話してきた同僚と三角ロジックと数学的思考、特に集合論や命題論と演繹推理、帰納推理、仮説推理などがどう関係するのかミニプロジェクトを形成して、仮説を立ててきました。

★そして、この夏、高1、高2や総合型選抜などに挑戦する生徒の中で、主体的に学びたいという生徒を公募して行うことになりました。最も、三角ロジックを教え込むというよりは、まずはやってみようからはじまって、写真やグラフや断片の文章をポストイットでバラバラにして、対話しながら今度は統合する過程で、何がみえてくるのか推理する体験をします。

★そして三角ロジックの3つの図(次回紹介します)をみて、自分たちがどんな推理を行ったか議論します。

★すると、三角ロジックでまとめたり読解する視点が身につきました。

★高校生にとって、実にわかりやすいわけです。パラグラフライティングではあるのですが、なぜか三角ロジックという言葉は浸透してしまうんですね。これは発見でした。青柳先生、ありがとうございます。

★その中で気づいたことは、三角ロジックの各辺の推理のときに活用する思考スキルが定まるということでした。

★まだ、生徒とは「具体と抽象」「比較対照」のスキルが三角ロジックとどうかかわるかまでしか進んでいないのですが、いずれこのワークショップ(今のところ「3ダクション・ワークショップ」と名付けようかなと)を繰り返していくと、上記の図のような三角ロジックと思考スキルが雪の結晶のように結びつくのだろうと思っています。(つづく)

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2021年7月25日 (日)

New Power Teacher(06) 児浦先生と<ワークショップ言語>による新しい学びにつて対話 500ページの本を90分で内容以上を把捉・実装する。

先日、GLICC Weekly EDUで、マルチな才能の持ち主児浦先生(聖学院 21教育企画部長、国際部長、広報部長、オール聖学院アドバイザー、21世紀型教育研究センターリーダー)と同番組主宰者鈴木さんと対話しました。タイトルは<GLICC Weekly EDU 第39回 聖学院 児浦良裕先生との対話「思考コードとワークショップ言語の未来」>で、<ワークショップ言語>という新しい学びの言語時空を創っている話で盛り上がりました。

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★最初の3分の1は、<ワークショップ言語(以降「WSL」)>の先駆けである聖学院のあの「思考力入試」が、ポストパンデミックの世界の変容や早稲田大学政治経済学部の思考力入試型の入試改革をいかに牽引する形になっているか、その価値と先見性と未来性について対話しました。実際21世紀型教育を本格的に実施した1期生が卒業した今春、海外大学や早稲田大学などの大学合格実績の飛躍は、教育業界では注目の的です。

★もちろん、聖学院は実績を出すことが目的ではありませんが、only one for othersのマインドとクリエイティブシンキングの生成を基礎とした同校の教育とマッチングする海外大学やそれに相応しようと変容し始めた大学に結果的にたくさん合格するということは、聖学院の21世紀型教育の有効性、信頼性、妥当性を証明していると思います。

★その積み重ねが、今春の高校の新クラスGIC(グローバル・イノベーション・クラス)新設によって、すべての教科でWSL型PBL授業としてビッグバンを起こしたのです。

★次の3分の1は、その実践を21世紀型教育機構加盟校のSGT(スーパーグローバルティーチャー)と共創するオンラインワークショップのケースの紹介がありました。

★そして、それをウケて、その実践ケースの中で使われている<WSL>の意味を残りの3分の1で対話しました。とにかく目からウロコの話が満載です。ぜひご覧いただきたいのです。

★同機構のオンラインワークショップは、ウェビナー×ブレークアウトルームで行われました。講演を除けば、90分のワークショップでした。

★その90分で、ピーターセンゲの500ページ以上ある「学習する組織」を理解するだけではなく、把捉・実装までできてしまうという結果になりました。これが<WSL>の革新性です。書籍は、たいていは、はじめから順番にリニアーな読解をします。500ページの本の場合、多くは挫折します。そこで、探究型読書なるものも生まれてくるわけですが、それはまだ「自然言語(日常言語)」で、要素還元的に読んでいく場合が多いでしょう。

★ところが、<WSL>は、一見バラバラの情報の背景にあるつながりを把捉し、実装してしまうのです。私はハッシュドポテト型思考と呼んでいるんですが、つまりハッシュ関数的思考ですね。このハッシュドポテト型思考を生み出すのが<WSL>だと思います。

★ハッシュドポテト型思考は、思考コードのA軸、B軸、C軸を全部循環させます。

★実際、聖学院では、そうなっていて、毎日がケミストリーです。いずれ、20世紀御三家にとって代わるのではないかという勢いなのです。もちろん、大学合格実績も飛躍するでしょうが、その理由で21世紀型御三家になるということではなく、新しい言語と思考方法で世界を変えるSGTやクリエイティブクラスになる生徒が集う学校としてです。

★それゆえ、GLICC Weekly EDUでは、聖学院との対話を継続していきます。御三家なんていう言説は聖学院当局にとってはどうでもよいのでしょうが、メディアが注目するには、そういう言説も必要でしょう。20世紀型御三家から21世紀型御三家へというわけです(微笑)。

★いずれにしても、2つのWSLの実践例ともう一つ学内で活用されているWSLの紹介がされています。ぜひご覧ください。

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2021年7月23日 (金)

New Power Teacher(05)阿弥先生の算数の授業 言語と数学のスクランブルPBL

★今月初旬、アサンプション国際小学校の教務主任阿弥博子先生は、公開授業研究を行ったとメールをいただきました。そのときの指導案やシラバス、多様なワークシートを拝見し、感動しました。私は、以前、中学受験と大学受験の塾のアドバイザーや中高一貫校のアドバイザーを中心にやってきたのですが、小学校のアドバイザーを行ったのは、6年前のアサンプション国際小学校が初めてでした。

★そして、そのとき、阿弥先生と出会いました。当時私の言葉が、帰国生の大学入試における小論文や志望理由書のプロジェクトベースの学び(PBL)で使っていたものが多かったと思老います。つまり、高校の帰国生を対象に活用していた言葉を使っていたために、最初は阿弥先生にわかるまで質問攻めにあっていました(汗)。

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★中高一貫校の先生方も最初は、わかりやすく説明して欲しいとよく質問されましたが、3カ月もするとギャップが埋まったので、同じ感覚で阿弥先生ともコミュニケーションしていました。しかし、言葉の意味の問題ではなく、生徒の発達段階に応じて、言葉を開く必要があると気づくのには時間がかかりませんでした。

★小学生に寄り添いながらPBL授業を懸命に行っている阿弥先生をはじめとする同校の先生方の姿をみていて、ストレートに小学生と共有できる言葉を見つけなくてはとハッとしたのでした。しかしながら、それは私にとっては、難しい道のりでした。ところが、阿弥先生は諦めず、PBLの授業の指導案やシラバスを単元が変わるたびに提示してくれて、それをベースにリファインしながらPBLのプロトタイプを共に創っていきました。

★阿弥先生が、小学1年生と共有できる言葉でPBL授業のプロトタイプをつくってくれるので、私は大いに学ぶコトができました。たしかに小学1年生と高校3年とでは言葉の世界が違います。その違いを無視してはアドバイスはできないと反省と気づきの連続でした。

★そんな6年間の阿弥先生との対話を思い出しながら、今回の研究の計画を拝見しました。驚いたのは、それは算数の授業だったのです。阿弥先生とはずっと国語のPBL授業をベースに対話してきたので、算数のこれほどパーフェクトなPBL授業の報告書を共有したのは、6年間の中で初めてだったからです。

★しかし、そのシラバスを見たとき、阿弥先生と子どもたちの対話や図形のデザインに嬉々として集中している様子がパッーと脳裏に広がりました。モーツアルトの楽譜を見ただけで、あのすてきな旋律が全身に響くのと同じ感覚でした。

★阿弥先生にとって言語と数学が見事にスクランブルエッグならぬスクランブルPBLになっているのです。

★PBLの真骨頂である、創造力を働かせながら三角形や四角形の合同条件を発見していくPBL授業。さらに、生徒が対話によって協働性や心理的安全性をつくっていける仕掛けも当然ありました。PBLは最終的にオーディエンスにプレゼンしますから、今回のオリ・パラのエンブレムの分析を生徒がして、新しいデザインを考案するところまで追究しています。

★小5の子どもたちがワクワクしながら表現活動をしている様子も目に浮かびます。エッシャーの絵も活用したそうです。エッシャーの絵に対して、これまた子どもたちの反応はすてきだったそうです。

★アサンプション国際は6年前に、共学化、グローバル教育、PBL、ICTという環境で、21世紀型カトリック教育を推進する改革を行いました。今では阿弥先生が同僚と協働するプロジェクトを広げ、全員がPBL授業を展開しています。

★生徒募集も良好です。やはり革新的な教育と生徒によりそい非認知的な能力をサポートする先生方の質の豊かさは、保護者に響きます。

★それにしても、阿弥先生はロイロノートなどを駆使してICTも自在に活用します。ロイロの思考ツール自体、数学的思考の発想が盛り込まれていますから、阿弥先生の言語と数学のスクランブルPBLと相性がよかったということもあるでしょうが、何より阿弥先生にとっては、生徒と知の共有の場をリアルとサイバーのハイブリッドで形成しているところがICT活用の本意でしょう。

★それから、今回の三角形と四角形の合同を扱う単元は、その伏線がきちんと小学校1年せの時から体系的に連なって阿弥先生がデザインしてきたということもポイントです。これは、生徒の発達段階に応じてですが、その体系はマシーン的な発想ではなく、成長物語というストーリー仕立てになっています。

★言語と数学のスクランブルというのが、5年になってできるのは、このような小学校1年生からの成長ストーリーが描かれてきたからでしょう。改めて教育の奥深さに気づきました。

★この6年間、多くの小学校の先生方とPBLの研修を行えたのも、阿弥先生との対話の継続のおかげです。

★今私の勤務校は高校だけですが、生徒と対話をしながら小学校1年生からどのようなストーリーで非認知能力や認知能力が育ってきたか想いを馳せることにしています。不足している部分は、高度な学びの中に、小学生や中学生とのPBLの要素を織り込むこともあります。知識を補うということより、思考のプロセスで抜けているピースを見つけて埋めていくという作業に近いかもしれません。

★今回のパンデミックで、昨年度から阿弥先生との対話はZoomやメール、チャットで行われているのですが、継続していただけることで、多くの気づきをもらいます。本当に感謝です。いつもありがとうございます。

★もう一人対話を継続している小学校の教師と阿弥先生とZoomで対話する機会を作れたら、さらなるケミストリーが起こるのではと思っています。

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2021年7月22日 (木)

【響】<05>知識と精神のシンプルな統合の時代 数学的思考が大切。

★今や様々な学習理論や思考方法、精神の調整方法が溢れています。このような現象は、知識の固着化と精神の表層化を解く変容の時代であることを示唆しています。したがって、一方で歓迎で、一方で表現の多様化のかなたにあるシンプルな理屈を見出したいと思うわけです。そして、そのヒントは数Ⅰや数Aにあります。文理融合とか最近言われていますが、これは集合論と命題論、確率論、座標を、文系理系関係なく共有するということだと最近思っています。

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★勤務校の数学教師とコラボしながら夏期特別講座をやったり、秋以降の探究ゼミを行っていくのは、この着想に互いに共感できたからです。詩やエッセイを数学的に読む、つまり暗号解読のように理解していくにはどうするか?

★夏期は4冊くらいの本を素材にしますが、その際、全文を読まずして全文を把握することは可能か?という挑戦でもあります。

★文章は集合論や命題の数学的思考を活用して読んだり、気持ちやマインドを座標で振り返ってみたりします。

★矛盾やジレンマに気づくことは総合型選抜や小論文ではコアな思考の出発点ですが、それに気づくには、知識の固着化を解放することです。上記の図でいえば、AやXの名称を覚えているだけの世界から、その背景を広げていくのですが、その背景は集合論的なカテゴライズをしていくことです。その際、命題論が必要になります。今回はあまり語りませんが、この背景を広げていくには、調べ学習ではうまくいきません。極限の体験のイマジネーションがどうしても必要です。コンパッションが必要です。これを養うには、体験が極めて重要です。

★また、背景を広げていくだけではなく、AとXの類似点を探ります。これができるとメタファーやアナロジーなどの知識の解放が行われるでしょう。そして、類似点と差異を識別しないことによってジレンマが生じることもシンプルにわかります。

★どのくらい類似するのか差異があるのか、一致するのかは確率論です。

★社会科学や人文科学は、ここらへんを独自の名称で体系づけますが、ほとんど単純な集合論や確率論的な統計手法で組み立てられています。

★〇〇理論を持ち出すと、生徒はその個別の名称に引きずられ、シンプルな思考実在を忘れてしまいます。それは衣装と同じですね。服を着ることが本質でも、ファッショナブルなデザインを気にするのが人間です。

★ともあれ、そのシンプルな思考実在とは、数学的思考です。言うまでもないですが、数学的難問を解く力のことを言っているわけではありません。生徒が、知識どうし、精神どうし、知識と精神等々の置換や変換の確率論的な正当性、信頼性、妥当性を探る思考スキルや思考ツールを共有するのがこの夏取り組もうと思っていることです。思考コードの共有も取り組みます。

★アリストテレスの論理学やレトリック論をはじめ、そこから見出して、今流行っているアブダクションだとか、ギブソンのアフォーダンスとか、アナロジーだとかメタファーは、アリストテレスがそうだったように数学的思考にほかなりません。言語スキルだと思われていますが、実際は数学的思考です。

★アリストテレスの政治学や経済学は、正義論に集約されますが、彼の正義論は、関数関係的発想です。

★そうそう、トポロジーはやはり触れないわけにはいきませんね。

★トポロジーを入れなければ、数学的思考の全体集合が見えませんから。現状の数学教科書は、まだ部分集合だと思います。

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2021年7月21日 (水)

New Power Teacher(04) 次世代SGT(スーパーグローバルティーチャー)の新しいPBL授業とワークショップ開催 思考コードとワークショップ言語の未来

7月18日(日)「次世代SGTの授業デザイン」ワークショップ」がオンラインで実施されました。前半は21世紀型教育機構の理念確認と授業のケースメソッドで、ウェビナーバージョンで行われ、後半は、参加者がブレークアウトルームでワークショップ。私は前半だけ参加しました。それだけでも、探究プログラムではなく、各教科のPBL授業が根付き、広がっているのに感動しました。

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(「AIに負けない自分で考える子どもを育てる 21世紀型教育」大橋清貫、 本間勇人 | 2019/2/25 から)

★PBL授業を行う時、メタルーブリックである「思考コード」が必要ですが、それが2つの授業のケースで息づいていました。もちろん、上記思考コードは21世紀型教育機構のスタンダード版ですから、そのまま使うのではなく、各学校が変形してアレンジして活用しています。

★思考コードは、実はアブダクション的な推理でできています。なぜなら、具体的な実践ケースは、あとからできてきたので、帰納推理(インダクション)ではできなかったのです。また自然科学ではなく、コミュニティが参加者と共に創っていくので、演繹推理(デダクション)で思考コードを公理よろしく適用はできないのです。

★ですから個別の集合をあとから全体集合にシフトする可換還論(数学の研究領域の一つ)的な導きはできなかたのですが、しかし、結局は全体集合から個別の集合を生み出せたというわけで、変換のベクトルや次元が逆だっただけだと感じ入ることができました。

★21世紀型教育機構が世界構築をするとき、CEFRのような基準が必要ですから、全体集合としての思考コードを精査しておく必要はあります。実際アクレディテーションで、加盟校の授業のモニタリングをしますから、そのときは外部評価になります。学内評価としての思考コードと外部評価としての思考コードは共通点もありますが差異があるのは当然で、逆にその差異が重要です。その差異こそそれぞれの学校の特徴なのです。

★ところで、その評価ですが、コンセプとはエンパワーメント評価です。エンパワーメント評価は、21世紀に入ってすぐにスタンフォードを中心とするカリフォルニア州の高校と大学のPBLの学びをリサーチしに行ったとき、そのスタンフォード大学で知りました。当時同大学で教鞭をとっていたデヴィッド・M・フェッターマン博士の研究です。

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★今では邦訳もあるし、アマゾンで簡単に手に入りますが、当時は飛行機で現地に行かなければ知る由もなかったですね。本当にグローバルな知は地球市民に瞬時に共有される時代になりました。感慨無量です。

★思考コードはブルームの認知領域の分類(横軸)とエンパワメント評価の分類(縦軸)を掛け合わせたものです。エンパワーメント評価(EE)は、コミュニティが自らのパフォーマンスをモニターし、評価することを目的とした評価手法です。コミュニティの総合的な取り組みや小規模な環境で使用され、グループの目標達成を支援するために設計されています。

★授業でPBLをやるとき、チームという小さなコミュニティができます。医療や福祉、NGOばかりでなはなく、シリコンバレーのカンパニーのようなコミュニティ、自治体コミュニティなどのプロトタイプとしてPBLはあるので、エンパワメント評価は重要だと当時ピンきました。

★しばらくして、フェッターマン博士は日本の幾つかの大学に招かれて講演をしていますから、自分の目は間違っていなかったと当時は思ったものです。

★それに、フェッターマン博士は、今も大大活躍のようです。国際的な評価コンサルティング会社であるFetterman & Associatesの社長兼CEO。また、アーカンソー州評価センターの共同ディレクターでもあります。フェッターマン博士は、チャールストン大学のビジネスおよびリーダーシップの教授、サンノゼ州立大学の人類学の教授、アーカンソー大学パインブラフ校の教育学の教授を務めています。もちろん、スタンフォド大学と共同プロジェクトは今も続けていることでしょう。

★ エンパワーメント評価の重要な点は、改善と自己決定を促すために評価の概念、手法、知見を、参加者全員と共有することです。ですから、PBL授業で、教師だけが活用するのではなく、生徒と共創するのが、21世紀型教育機構のPBLの理想型です。この理想型をずっと追求しているのが工学院の田中歩先生ですね。

★この点において、今回の授業のケースメソッドでは、実践されていることがわかりました。素晴らしい!と驚嘆したわけです。

★また、知識がなければ思考はできないという、A軸の次にB軸思考、そして時間があったらC軸思考も授業でやるという20世紀型授業デザインではなく、上記の図のようにどこからでも創意工夫して学びは行えるというのが21世紀型のPBLです。

★知識は生成される前はC軸思考です。C軸思考は知識を生産する思考でもあります。知識を軽視するという言説は、21世紀型教育ではありません。どうもそのようなフェイク言説がまかり通るのは、20世紀型教育信奉者の失言でありましょう。教育はまだ科学的ではない部分があるので、言いたい放題です。

★21世紀型教育の思考は、分類はしていますが、それは要素還元主義ではなく、関数的な関係主義です。構成主義という社会科学的な言い方もされますが、そろそろ数学的思考で捉える時ですね。そうすると、PBL授業はシンプルになります。エンパワーメント評価は、今ではICTを通して計算可能性を追究しているので、やがてそうなっていくのも必然でしょう。

★ただその時に、A軸、B軸、C軸を別々に測るのではなく、それらを含むワークショップ言語単位で行った方が、パフォーマンスをうまく測定し、活用できると思います。

★今回の後半のワークショップは多くの若手SGTによって、そこを見据えて、行ったようです。その点に関しては、今週の金曜日GLICC Weekly EDUで、21世紀型教育研究センターのリーダーでもある聖学院の児浦先生と対話することになっています。またご報告いたします。

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2021年7月18日 (日)

New Power Teacher(03) 児浦先生、田中歩先生、新井先生、田代先生 いよいよ次世代SGTのためのワークショップ開催

★本日、午後から、21世紀型教育機構の教育研究センターのリーダー4人が、次世代SGT(スーパーグローバルティーチャー)のためのオンラインワークショップを開催します。そのリーダーというのは、聖学院の児浦先生工学院の田中歩先生和洋九段女子の新井先生静岡聖光学院の田代先生です。

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★4人の先生方は、当然、New Power Teacher=最先端×教育力×影響力×変容力の方程式を満たしています。しかし、その影響力は、国内にとどまらず、海外の学校や団体とコラボレーションするネットワーカーでもあります。また、その変容力は、自己変容だけではなく、組織変容力を生み出す共感的かつ戦略的コミュニケーションの達人でもあります。

★最先端というのは、ICTを自在に活用するというレベルは当然で、思考力や判断力、創造力を生み出す優れた学習理論も構築しています。

★影響力という点ではもう一つ大事な点があります。それぞれ学内のリーダーですが、それだけではなく、21世紀型教育研究センターのリーダーであったり、それぞれ外部団体でリーダーも担っています。要するに、リーダーフルなのです。

★教育力という点では、学内の教科授業の教育でPBLを推進しているという意味のみならず、学内の教師のSGTとしてのスキルやマインド養成もしています。そしてさらに、今回のように21世紀型教育機構の加盟校のSGT育成ワークショップを企画運営する教育力ももっています。この根底には、自分だけではなく、多くの先生方にもSGTになってもらうにはいかにしたら可能かという問題意識と共に変容しようというケアフルなマインドがあります。

★本日は、同機構会長の平方先生がまずは21世紀型教育機構の理念を話し、2人の先生から授業実践の研究発表があります。今回は同機構の加盟校の教師限定のワークショップですが、ここまではいずれ公開されるようです。そしてその後、オンラインワークショップに移行します。ここは非公開のようです。

★この流れから、SGTは次のような方程式になると思います。

Super Global Teacher=Golden Rule × Global Creativity × New Power Teacher

★すでに同機構の加盟校の教師はNew Power Teacherです。PBLやSTEAM、C1英語について理解し推進していて、一定の最先端×教育力×影響力×変容力を有していいるからです。この能力と技術と、特にポストパンデミックに必要なコンパッショネイトシステム思考のベースであるゴールデンルール(NY国連ではこのルールは民族や人種、宗教などを超えて共通する最高のルールとしています。これについては会長の平方先生が語るでしょう)の共有がなされ、言語を超えたグローバルなワークショップ言語の創造のスキルとマインドを統合させるとSGTとしてキャリアアップできます。

★そう、キャリアアップです。将来、SGTの価値は、存在価値ばかりではなく、市場価値もでてくるでしょう。

★SGTに存在価値×市場価値が加わった時、世界は大きく変わります。

★つまり、世界の歴史は、軍事力→経済力→教育力というパワーシフトを成就させるのです。脱炭素社会、脱成長社会ベースの市場経済こそ、民主主義を支える生活社会を生み出すことでしょう。これがグレートリカバリーとかグレートリセットとかの時代文脈です。

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2021年7月17日 (土)

教育のアップデート~2022年に向けて(31)ハッシュ関数的発想の「世界の作り方」の探究ゼミ

★ハッシュドポテトの世界は、まさにハッシュ関数に取り囲まれた私たちの日常世界の象徴です。バラバラになったものを寄せ集めてポテトという世界現象をつくるなんていうのは、検索エンジンでバラバラの情報を寄せ集めて世界をつくる方法とそっくりです。この検索エンジンにもハッシュ関数発想は使われているし、暗号やセキュリティにもハッシュ関数は使われています。一見ナンセンスの情報が、関数という関係を通して意味のある世界をつくるのです。

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★もともと私たち人類の原初は、初めから意味のあるものを見出すのではなく、石ころや木片のような断片的なモノを意味ある道具につくってきたわけです。ブリコラージュとか野生の思考と言われていますが、それは今やハッシュ関数思考に現代化されています。

★しかし、近代化によって、野生の思考は失われ、はじめから意味のあるモノや言葉が大量に編集され、それを読み解く思考が一般化しました。意味あるものをインプット→意味あるものをアウトプット。そこには創造性よりも正確に転写する知識・技能の理解度が重視されてきました。

★しかし、これは言語の世界での話ですね。科学では、はじめ意味のない現象に意味を見出していく発想が求められます。言語の世界や既存の世界では、演繹推理(ディダクション)や帰納推理(インダクション)は成り立ちますが、このような意味がはじめにわからない世界を推理するには、アブダクションという仮説推理が重視されます。

★私が、勤務校で同僚と協働して行うささやかな(12人のチーム)「探究ゼミ」はこの野生の思考の現代化である「ハッシュ関数化思考」の探究です。図や写真やグラフ、断片的文章などバラバラの情報から、いかにしたら世界をつくることができるのかを探究します。

★結構新しいかなと思っていたら、昨夜水都国際の太田教頭と対話してみると、新しいカリキュラムのTOKのIA展示と近い考え方だと感じました。

★もちろん、IBとは違いまから、独自路線を歩みますが、世界の学びと親和性があるかどうかは大切です。独りよがりになるのは危険ですから。やはり越境的な対話は重要ですね。

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New Power Teacher(02) 太田晃介先生 知のクリエーター 探究の探究を生徒と共に生成

★昨夜は、<GLICC Weekly EDU 第38回 大阪市立水都国際中・高 太田晃介教頭先生との対話「国際バカロレア(IB)の学びと思考コード」>で、太田先生のお話を聴くことができました。現在1条校でIBスクールである水都国際で教頭を務め、学校マネジメントの多忙な中、高2のTOK(Theory of Knowledge)も担当しています。IBのディプロマのコアの1つである知の理論TOKは、新学習指導要領が設定している「総合的な探究の時間」のモデルの1つにもなっているので、学校関係者で知らない人はほとんどいないでしょう。

★しかしながら、小論文指導とTOKの指導の違いが明快に分かっているかとなると、必ずしもそうではありません。今回太田先生はIA(内部評価)のプロンプト(知を促す問い)を例に、同番組主宰者鈴木さんと実際に考え、TOKの極意を語ってくれました。IBのプログラムは門外不出の部分も多く、研修を受けなければ、ベールに覆われたままの部分も多いのですが、今回TOKの全貌と深さを知ることができました。

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詳しくは、ぜひご覧いただければと思いますが、一つだけ気づきをコメントしておきたいと思います。それは、TOKは、やはり探究の探究です。知を生み出す全人的に社会や自然とのつながりを新たに組み立てる視点をつくりだす学びではないかと気づいたのです。

★多くの探究の時間では、会社作りや貧困対策の政策や活動など具体物を創ることに注視されます。

★TOKも内部評価の展示方式の場合、具体的な制作物がつくられるわけですが、それは探究の時間でつくる具体的なものを生み出す知のシステムとしての具体物なのです。

★ですから、探究で起業プロジェクトを行ったとき、その起業がいかにしてうまれたのか、その生成システムを言語化したり視覚化したりするということなのです。

★それなら、起業だって、企画書があるのだから、それと同じかと言うと、そうではないのです。その企画書がいかにして成立したのかという知のシステムの見える化です。

★メタ認知と言えばそれまでなのですが、そのメタ認知のシステムはいかなるものかをさらに問うのがTOKです。

★そして、驚くことに、生徒によってその知のシステムは違うのです。

★当然、違ってよいのです。

★それが本当の意味でダイバーシティなのでしょう。

★異文化理解というのは、ものの見方や考え方、感じ方が違うわけですから、そこを理解するということは誰でもが了解しているのですが、そのそれぞれの文化におけるものの見方や考え方、感じ方のシステムはどうなっているのかまで、論じる人は、今までの国際理解教育ではほとんどいなかったわけです。

★IB教育がなぜノーブレスオブリージュなエリート教育、全人教育かと言えば、ここまで深く考え、解決策を考える戦略的思考が育成されるからです。

★IBの成立は、第二次世界大戦後の世界の平和の再構築のための人材育成プログラムとして生まれました。そして1989年ベルリンの壁が崩壊し、湾岸戦争が起こったころから、今の10の学習者像が形成されていきました。第二次世界大戦のようなことが再び起こらないようにするための知を生み出すにはいかにしたら可能かというのは、IB創設者の1人クルト・ハーンのアイデアであり、それはIBのアイデンティティでもあります。

★21世紀型教育機構は、IBプログラムは選択しませんでしたが、その想いは黄金律をコンセプトとしていることからもお分かりいただけるように、アイデンティティは共有しています。

★太田先生自身、IBの卓越性を認めつつ、IBコース以外の生徒に適合する新しい学びを模索しています。日本の大学入試制度が良いか悪いかを論じるのではなく、そのような現実を乗り越えるために適合化をしつつIBのエッセンスをベースにするというようなカリキュラムだと思います。

★もっとも、そのような太田先生の構えは、New Power Teacherであることを示唆するとともに、IBの10の学習者像そのものであることを象徴しています。ぜひYoutubeをご覧ください。

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2021年7月16日 (金)

New Power Teacher(01) 神崎先生 越境知のスーパーバイザー

★前回新しい教師が続々出現していると語りました。その教師方程式とは、New Power Teacher=最先端×教育力×影響力×変容力だと。そしてこの方程式で描かれる微分曲線は瞬間瞬間にsoilfulな響きを奏で続けます。されぞれの項目の強弱が違いますから、その積分関数は、それぞれの特徴を表します。

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(神崎先生との対話はスリリングで知的好奇心満載です)

★たとえば、神崎史彦先生は、学校の教師ではありませんが、塾の講師でもありません。あるときは、学校のカリキュラムアドバイザー、あるときは、探究のスーパーバイザー、あるときはカンザキメソッドで総合型選抜や小論文を教える教師、あるときはスタディーサプリの講師。あるときは、・・・・・・。

★教師でありながら教師でない越境知の魂の人です。

★ご自身の拠点を青葉台から二子玉川に移転する計画もあるようで、幼稚園から大学まで、1人ひとりの生徒と学校という組織の両方の自己変容を生み出す越境知のスーパーバイザーを行おうとしています。自分の会社の仲間や学校など外部ネットワークの仲間と共に。

★輝かしく見える神崎先生の人生は、しかしながら凄まじい生きざまです。だって、越境知ですよ。1つや2つを越境するわけではないのです。毎年増えていきますから、無限なのです。その越境するときの実存はすさまじい空間のゆがみとの直面です。想像を絶するブラックホールの時もあるでしょう。ですから、そこを通り抜けたときのwell-beingもまた格別なのでしょうが、そこまでのプロセスがそおれはもう凄まじいわけです。

★soulfulというのは、そういうことです。背負うモノやコトも大きいということです。しかし、常に再生してwell-beingを仲間と共有するわけです。New Power Teacherの運命ともいえましょう。

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2021年7月15日 (木)

教育のアップデート~2022年に向けて(30)新しい教師続々出現 最先端×教育力×影響力×変容力 制度的改革を超えて

★教育改革と言えば、メディアは文科省をはじめとする国の制度改革の紆余曲折を発信するのが常です。それを見ていると、生徒の未来はどうなるのか不安になる人も多いでしょう。しかし、現場では、続々新しい教師が出現し、生徒と共に未来を創っていく勇気ある高邁な魂で溢れています。soulfulな教育が広がっているのです。

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★この現場とは、勤務校だけの話をしているのではなく、多くの仲間の学校がそうなのです。仲間の学校というのは、21世紀型教育機構の学校だけではありません。20校はいつも共鳴共振しているのですが、この数は少ないと感じますか?それとも結構多いなと思いますか?

★校数ではなく、生徒数でいえば、10,000人は軽く超えます。

★大量ではありませんが、影響力という点では相当多いと感じるのは私だけでしょうか。

★少なくとも、この10,000人強の生徒は、未来を着実に描き実現する思考とスキルを実装しているのです。

★6年経てば、20,000人、もう6年経てば、30,000人・・・・・と増えていきます。実際には、仲間の学校自体が増えていきますから、あっという間に10万人は超えるでしょう。

★制度改革がどうあれ、現場の先生方がsoulfulな教育出動をすれば、世界は変わります。

★では、そのような先生方の特徴はなんでしょう。常に最先端を実装する。それゆえ、教育力はすさまじく、それゆえ影響力はダイナミックで、それゆえ世界を変える変容力は衝撃的です。

★そんな先生どこにいるの?そうお思いでしょう。大阪にも、京都にもいます。具体的には、毎週金曜日の午後9:00にライブ配信されているGLICC Weekly EDUと18日に行われる21世紀型教育機構のワークショップをご覧ください。どちらもサイバー上で開催されます。

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2021年7月11日 (日)

教育のアップデート~2022年に向けて(29)新しい学校選択視点 <同窓力><同僚性><革新性><超越性><成長力>

★昨年10月から始まったGLICC Weekly EDU(GWE)は、毎週金曜日午後9:00から20:00まで配信されます。先週でもう37回になっています。私もコメンテーターとして34回出演させていただきました。グローバルな視野かつ歴史的視野で、世界の教育を見据えつつ、いまここでわが子が優しく逞しく世界を変えるように成長できる学校の先生に登壇していただいています。

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★Youtubeの良さで、ついつい意気投合して時間を忘れ、予定時間を超えるというのが恒例になってしまいました。ライブでありながら録画がそのままYoutubeで視聴できますから、何度も視聴できるし、ショートカットして見ることができるので、いろいろな意味で便利です。

★しかも、予定時間を超えるというのは、学校説明会では聞くことができない、バックヤードの実情やディープな教育論や学習論を聴くことができます。おそらく、情報誌のインタビューでもなかなか聞くことができない内容です。

★New Power Schoolばかりラインナップしていますから、成長神話に基づいた偏差値ランキングの話はありません。New Power Schoolの世界を射程にとらえた進路指導が、学歴社会の階層構造から解放されてワクワクするような世界で成長していく生徒の姿が語られます。

★本音トークも続出で、たとえば、34回めの八雲学園の先生方が5人も出演してくださったときの内容は笑いあり涙ありそして大切な思いやりが根底にあることなどがストレートに伝わってきます。

★共学校になった一年目、自分が想定していたのとはあまりに違う特徴の生徒が入ってきて、ああこれで私の大好きな八雲は終わったなあと思ったと、普段説明会では絶対聞けないような話題がでてきます。もちろん、オチは、中学から高校にシフトする時期が近づいてきたころ、生徒の方から気遣いの声をかけてくれて、容姿もすっかり大人になって、こんなに成長したのかと泣きたくなりましたというわけです。

★今では、共学校になってよかったし、自分たちの不安は今や自信に転換されているというのです。生徒と共に成長する教師の姿が手に取るようにわかる番組です。

★そんなGWEを通して、学校選択は新しくなる予感がしています。この八雲学園の5人の先生方の中に菅原副校長がいるわけですが、実は他の4人の先生方は年齢は違うのですが、全員、菅原先生が学年主任だったり担任だったりしたとき生徒だったのです。つまり、みな菅原学年の教師なのです。

★ですから<同窓力>がそのまま教師力に反映しているのが八雲学園です。そして、卒業生としての教師とその先生方が学んだ教師が今度は<同僚性>を創り出すのです。

★しかも、大学・大学院時代に、先生方は八雲学園のすばらしさを感じ、ますます八雲学園の伝統を継承しようと断固たる思いが育つわけです。そして、同時に新しい教育の体験も積んできますから、<革新性>をダイレクトに<同僚性>に持ち込みます。

★八雲学園は、外部の団体のパッケージを結びつけるかどうかトップダウンで決めるのは必要最低限度です。基本、結びつける理由は、生徒や同僚が声を上げ、熟議してからでないと結びつきません。生徒の自発的な言動が大切です。実は、これが卒業後に<同窓力>となって、革新的な学習コンテンツを導入するという循環になっています。したがって、<同僚性>は、教師間、生徒間、教師と生徒の間の関係を含みます。

★ですから、八雲学園では、<同窓力>と<同僚性>が循環し、それゆえ<革新性>が受け入れられるのです。このような循環が生徒の<成長力>を生み出すエンジンになっています。

★そして、この<革新性>を生み出す時、八雲学園はなんでも超一流の体験という<超越性>が伝統です。ホテルも研修旅行も破格です。交流する場合もイエール大学という超一流と行われます。加盟する団体もラウンドスクエアという、これもまた超一流の世界の私立学校の共同体です。21世紀型教育機構にも加盟していますが、21世紀型教育において突出した学校の集まりという点では<超越性>があるかもしれません(汗)。

★かくして、New Power Schoolという学校は、<同窓力><同僚性><革新性><超越性><成長力>という5つの本質的視点でとらえなおすことができるのはないかと思います。

★今回は八雲学園の例で語りましたが、GWEを視聴し直して、他のNew Power Schoolも見てみたいと思います。

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2021年7月10日 (土)

21世紀型教育機構のワークショップ 緊急事態宣言発令に伴いオンラインワークショップに速やかにシフト 新しい社会のロールモデル

★7月18日、21世紀型教育機構は次世代SGTのためのPBL授業の共創ワークショップを、和洋九段女子において、対面型でリアルに開催する予定でした。しかし、同機構サイトに「東京都に緊急事態宣言が発令されることを受けて、本イベントはオンラインでの実施に切り替えることにいたしました(2021年7月10日)」とあるように、速やかにオンラインワークショップにシフトした模様です。

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★何気なく、シフトしたと告知されているわけですが、このことの意味を確認することは歴史的にも重要です。久々の対面型のワークショップを行おうと盛り上がていたはずなのに、緊急事態宣言が発令されるや、速やかにというかクールにオンラインにシフトしたのですから。

★機構はサークルではなく、組織ですから、企画運営の主催者である21世紀型教育研究センターのSGT(スーパーグローバルティーチャー)リーダーの皆さんは、時空を超えて、つまりサイバースペースで熟議をし、速やかに理事会で判断できる論拠や情報を共有したはずです。この熟議×意思決定の俊敏さがハイブリッド対話ができるチームになっている21世紀型教育機構の強みでしょう。

★ちょっと考えて見ればわかるように、加盟校である静岡聖光学院が端的な例ですが、緊急事態宣言発令や否や、東京のどこかの会場で集まって会議をするなどということは到底できない話です。加盟校は11校です。1つの学校なら会議を夜遅くまでリアルでやるかもしれませんが、同機構は、サイバー上で行います。同教育センターのSTG(スーパーグローバルティーチャー)リーダーはデジタルパイオニア世代ですから、問題はありませんが、理事会メンバーは、その多くが団塊・断層世代です。一般には、ここがサイバー関連は苦手です。しかし、機構の場合、世代に関係なくハイブリッドツールを自在にこなします。これは同機構の特徴です。

★もっとも、クローバルな視野からみれば、当たり前なのでしょうが。

★また、熟議や意思決定の時のポイントは、感情論ではなく、ロジカルシンキングと思いやりのマインドの両方で進んだことは推測に難くありません。PBL実践校ばかりだからです。

★つまり、21世紀型教育機構は、ハイブリッドPBLに移行しているため、状況に応じて柔軟に対応する一貫性ある行動をとるのは難しくない。そして大事なことは、技術的な側面に合わせて、黄金律(NY国連が提言している意味で)を基準に、機構以外の参加者に対する配慮をする一貫性ある行動をとるのは論理的にも精神的にも当然なのだと語り合ったことでしょう。

★さらに、今回のワークショップの目的である「SGTとの情報共有、新しい市場拡大」もオンラインシフトによって達成することができると判断したことでしょう。

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★というのも、同教育研究センターのSGTリーダーの一人である児浦先生は、すでにオンラインワークショップについて本を執筆していて、実践済みですから、対面型ワークショップでしかできない領域をできるだけオンラインでもできるように挑戦しよう、またオンラインでしかできない強みを創出しようという熟議になったに違いないからです。

★変化に対応しながら、その都度進化する、つまり自己変容するのが、SGTの本意でもあります。

★1つの学校の組織と違い、1人ひとりがリーダーフルなコミュニティシップを発揮する新しい組織開発の場となっている21世紀型教育機構。1校ではなかなかできない組織作りになってきています。これぞ21世紀型教育機構としての面目躍如というところだと思います。

★そして、この新しい組織作りが、ティール組織という新しい発想の枠をも超えて、新しい社会づくりのロールモデルになると思います。

★もはや、誰がリーダーになるのかという議論はアナクロニズムであるという時代になってきました。ここに未来を拓くカギがありますね。

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前嶋校長かえつ有明を語る 開かれた言葉の力 

★昨日、GLICC Weekly EDU 第37回が発信されました。タイトルは<かえつ有明中高 前嶋正秀校長先生との対話「かえつ有明のバックヤードから表舞台のすべてを知るキーパーソン」>。前嶋校長の柔らかい言葉の力がすごいです。

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★実に謙虚で、学内の先生方1人ひとりを思いやりいわゆる「同僚性」を確立しているなあとすっーと入ってきました。この「同僚性」こそ、かえつ有明の教師間、生徒間、教師と生徒の間に広がっている心理的安全性だと思います。

★そして、この心理的安全性があるから、開かれた学校で、いろいろな方がアプローチしてきます。世界では、グローバルエリートは、欲望の経済社会をなんとかしたい、このような社会は従来の能力主義(メリトクラシー)がつくってきた。だから新しい経済社会を生みだそうと躍起になっています。

★最近もNHKで白熱教室を繰り広げているサンデル教授などは、能力主義は悪だとまで言っているのです。能力主義は、能力優先主義で、格差や分断を生み出しま。経済的格差は健康格差だけではなく、精神的分断も生み出します。どこに心理的安心のない社会なのです。

★それでよいはずはありません。ですから、グローバルエリートは、脱成長社会を考えはじめています。日本では能力主義は、学歴社会という言葉で表現されています。まさに、わたしたち教育の世界で起きている出来事です。

★前嶋先生は、このような能力主義的な世界とは違うダイバーシティをベースに、生徒が豊かな人生を送ることができるように、同僚性をベースに教育に取り組んでいます。これは、謙虚でありながら、凄まじい高邁な精神で立ち臨までなければ成就しません。

★そして、同僚性という一丸となって歩んでいかねばならないのですが、いわゆる集団主義的な同僚性ではないのです。互いに自分のアイデアや判断を語り合うことができる開かれた言葉の持ち主であることが可能なチームなのです。

★開かれた言葉が担保されているがゆえに、開かれた学校であり、それゆえ多くの人がアプローチしてくるダイバーシティがベースになるのです。

★前嶋先生は、校長としてワンマンにならないと宣言しています。教員1人ひとりの開かれた言葉を傾聴し、化学反応が起こる同僚性をつくっていくというわけですが、これは別の角度から言うと、1人ひとりが自分の考えや行動のリーダーであるということです。

★かえつ有明の人気の秘密は、教師も生徒もみな一人一人がリーダーなのです。リーダーフルな学校です。前嶋校長先生は、船頭多くして船なんとかという常識を転換する凄腕のリーダーなのです。新米校長である私は、前嶋校長から多くを学びたいと感動しました。詳しくはYouTubeをぜひご覧ください。

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【響】<04>セルフエスティームからセルフコンパッションへ 自己肯定感の2つの意味

★勤務校のエンカレッジコース(通信制高校)の保護者のみなさんとお話をする機会がありました。エンカレッジの先生方と生徒のみなさんの日々の取り組みが、どんなに価値があり、今時代が求めているものなのかを情報共有しました。

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★2011年3月11日までは、自己肯定感という意味は、どちらかというとセルフエスティームという言葉と親和性がありました。たしかに日本の生徒は自己肯定感が低いという統計がでているので、なんとか高めようという話は当時からでていました。しかし、3・11以降は、何かが違うという意識が日本では生まれてきました。

★残念ながら、その時点では、何が違うのか、世間はわからなかったのです。ただ、エンカレッジは無意識のうちでしたが、それがわかっていて、その了解の文脈で教育が行われていたのです。

★当時のセルフエスティームは語義的には自尊感情ですが、社会構造的な文脈では、最近サンデル教授が能力主義は悪だと指摘している、その能力主義の文脈で語られてきました。日本だと学歴社会に相当する社会構造的文脈です。勝ち組負け組を生み出す構造の中で、うちひしがれていないで、自尊感情をもって歩んでいくんだということです。心理学的な正確な意味とは違うかもしれませんが、おそらくそのような文脈の中でそのような意識で皆使わざるを得なかった構造上の制約があったはずです。

★しかし、3・11以降、たとえば、21世紀型教育機構のように、学歴社会を無化する動きが教育の中でもでてきました。その表れが、偏差値に関係なく東大クラスの世界の大学にガンガン入学するようになってきたのです。

★とはいえ、それとても能力主義の枠内で、サンデル教授や斎藤幸平准教授のいうようなコミュタリアンな共同体でも脱成長の社会でもありません。

★エンカレッジの生徒は、能力主義的あるいは学歴社会的構造の自己肯定感そのものに違和感を感じているのです。しかし、3・11より前は、そのような勝ち組負け組を生み出す社会が圧倒的でしたから、そこにいることは苦しかったでしょう。

★ところが、3・11以降は、そうではない居場所として、エンカレッジがあるということに意識していないのに気づく教師や生徒が現われてきたのです。

★そして、今回のパンデミックで、もちろん能力主義的社会は現存しているわけですが、それでもそんな能力主義的社会や成長神話社会だけではなく、最高善を求める共同体や脱成長社会の流れが生まれてきたのです。

★今まではエンカレッジはある意味、能力主義的社会からの避難所でしたが、今後はそういうセルフエスティームではない自己肯定感を認める社会が現れ始めているのです。エンカレッジの生徒の卒業後の進路は、能力主義社会か脱成長社会か選択できるようになってきたのです。

★もちろん、これは勤務校に限らずほとんどの全日制も同じですが、全日制の社会的環境は、まだまだ能力主義社会です。

★従来の通信制は、能力主義からいったん身を引いていたのを、再び参加するようにセルフエスティームの回復をサポートしてきたのでしょうが、今後はエンカレッジのように脱成長社会の社会構造を選ぶことができるようになったのです。

★では、その選択における自己肯定感とは何でしょう。それがセルフコンパッションなのです。自分を奮い立たせるセルフエスティームではなく、自分に向かいあい、自分の弱みをありのままに受け入れ、その弱みをどうするのか焦らず考えようよと思いやる時間を大切にするのです。

★そしてそのセルフコンパッションを大切にする仲間がいて、教師がいるわけです。セルフコンパッションが、仲間同士のコンパッションになり、そういう行いは世界を変えていきます。

★セルエスティームとしての自己肯定感からセルフコンパッションとしての自己肯定感にシフトする時代がやってきました。エンカレッジの生徒の世界が能力主義社会に属さない社会としてうまれつつあります。

★やがて、その流れが多くの全日制高校の進路指導に合流する時がやってくるでしょう。新しい思いやりの時代の到来です。

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2021年7月 8日 (木)

教育イノベーションに、「思いやり」が必要なわけ

★21世紀型教育機構の教育センターの先生方は、前回ご紹介したように、SGT(スーパーグローバルティーチャー)育成のために教育出動しているわけです。その時SGTは、ビジョンハッカーだし、クリエイティブクラスでもあると言いました。SGTは、教育イノベーションをもたらすからです。

★イノベーションと言っても、ICT技術の開発という意味ではありません。見方を変えたり、新しい発想を創造したりして、物事やシステムに変容をもたらすことを意味します。もちろん、その中の1つとして、STEAMのプログラム開発もあります。要するに何らかの変容をもたらす革新者なわけです。

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★したがって、SGTの教育プログラムや教育企画の生み出し方は、プロジェクトベースになるわけです。授業だと、PBLになるわけですね。そのときに、大事なことは、プロジェクトを生成する才能(Talent)と技術(Technology)だけではなく、寛容性(Tolerance)も必要だということです。これは、リチャードフロリダが、クリエイティブクラスには3Tが必要だといったことから引用しているのですが、3Tと言いたいがために、Toleranceと言っているだけで、Compassionでもよかったし、Thoughtfulでもよかったのです。

★私が言いたいことは、これらは、「思いやり」という言葉と同一集合だということです。

★さて、SGTにしても、ビジョンハッカーにしても、クリエイティブっクラスにしても、現象や事象を観察し、データを調べたり、創ったりします。その過程や、その前からもあるでしょうが、好奇心や疑問がわいてきます。それが、発想の転換やイノベーションを生み出します。

★そして、大事なことは、彼らは、みな思いやりを持っているために、その背景には、なんとか世のため人のためになりたいという、自分を超えた自分になっています。これが、21世紀型教育機構の理念でもあるmen for othersです。

★これがあるから、彼らのプロジェクトは、well-beingを生み出すのです。

★もし思いやりがなければ、発想の転換やイノベーションは、マッドサイエンティストよろしく、ディストピアを生み出すでしょう。

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2021年7月 6日 (火)

21世紀型教育機構 次世代SGTのためのPBL授業の共創ワークショップ開催 7月18日和洋九段女子にて

7月18日(日)、21世紀型教育機構はワークショップを行います。次世代SGT(スーパーグローバルティーチャー)のための授業デザインの共創WSPです。このイベントの意味を少し考えてみましょう。

★2021年度から、いよいよ海外大学進学の潮流が、私立中高一貫校のNew Power School(NPS)でダイナミックなウネリとなっています。一方で地政学的なグローバル教育拠点として、海外のパブリックスクールやインターナショナルスクールが、日本でもいよいよ開設する動きが目立つようになってきました。このウネリをつくったり、海外からの世界の学校を迎えて、競争力を生み出せる学校として21世紀型教育機構の加盟校の役割は重要です。

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★加盟校は、共通教育基盤としてC1英語×PBL×STEAM×哲学×思考力テスト×思考コード(メタ・ルーブリック)×グローバルイマージョンを確立しています。そして、この教育基盤の上に、各加盟校がさらにオリジナリティを創り出しているのです。今や世界の学校として突出した学びの拠点になっています。

★さらに、これがとても大事なことなのですが、加盟校の協働を結晶化させるために、各校のSGT(スーパーグローバルティーチャー)が、加盟校同士の情報共有のみならず、NPC市場の拡大を牽引するために、SGTの3T(タレント・テクノロジー・トレランス)を公開し、SGTをたくさん生み出そうという社会貢献活動を始めました。

★文科省が大学入試改革や学習指導要領の改訂を制度的側面から行っています。それはそれでがんばってほしいのですが、日本の未来を良い方向に変えるのは、教育の現場の教師1人ひとりの3Tにかかっています。国家による教育だけではなく、グローバル市民としての3Tを有したSGTが創る教育が重要な時代なのです。

★1人の3Tが世界を変えるのは、マイケル・ジャクソンの<man in the mirror>を視聴すればぴんとくるはずです。しかも、その3Tを有しているSGT=クリエイティブクラス=ビジョンハッカーが共創する動きになると、日本や世界を変えるウネリは教育から生まれはじめます。まさに、軍事力→経済力→教育力というパワーシフトが生まれるのです。このシフトが世界の平和を創り出すのは言うまでもありません。

★さて、この動きを加速するチームが、実は21世紀型教育機構にはあります。それは21世紀型教育研究センターです。聖学院の児浦先生、工学院の田中歩先生、静岡聖光学院の田代先生、和洋九段女子の新井先生がリーダーシップを発揮しています。4人の先生方はSGTの中のSGTです。

★今教師を志望する人口が減少していると言われていますが、SGTのような人生の道を歩むことがいかに価値あることか知ったら、むしろ殺到するでしょう。世界を変え、世界を生み出すかけがえのない人生を歩むのですから。1人の力が仲間とと共に<World Making>する時代がやってきたのです。

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2021年7月 4日 (日)

受験の世界を変える首都圏模試センター(01)中学受験雑誌「shutomo」の新しい切り口

★本日7/4(日)、首都圏の私立中高25会場で首都圏模試センターの小6第2回・小5第1回の「合判模試」が実施されています。過去10数年のなかで、最多の受験者数。この受験者に同センターが発刊する中学受験雑誌「shutomo2021年7月号」が配布されます。受験市場の約25%に配布されシェアされるわけです。

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★一般に、受験雑誌というのは、特集で時代の変化に関する情報を流し、あとはほとんどが学校情報と入試変更情報、生徒募集人数データと大学進学データをもとにした入試の分析情報を発信しています。

★ところが、首都圏模試センターの受験情報は、受験市場の在り方そのものを変える情報をメインストリームとして発信しているのです。学校情報を発信するにしても、学歴階層構造をゆるがすような取り組みを行っている学校の情報を流しています。

★もちろん、偏差値情報も流します。これは合格戦略のために、闇雲にウケるのではなく、学習方略を考える戦略思考を形成するために必要なデータです。学校の順位を決めるデータではないのです。

★ですから、受験生は、偏差値にこだわるのではなく、偏差値は、今の自分の力とマッチングする学校をさがすデータとして使い、学歴階層社会をゆるがすNew Power Schoolの情報は、その学校が自分の力を無限に解放できる環境であるかどうかを見定め、未来の自分の力にマッチングしているかどうかをモニタリングする情報として活用するのです。

★つまり、いまここでと未来の自分の両方にマッチングする学校選択情報が満載なのです。この未来というのは、当然中高一貫に入学して卒業する時の自分であり、大学に進んでからの自分であり、さらに社会に出てからの自分をイメージできる壮大なビジョンやコンセプトの情報です。

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★今月号の特集は、8ページにわたる圧巻の記事です。テーマは「グローバル教育の過去~現在~未来」で、執筆者は知る人ぞ知る帰国生の憧れの21世紀型塾GLICCの代表鈴木裕之さんです。鈴木さんは、長年海外帰国生のスーパーアドミッションメンターで、多くの帰国生をケンブリッジ大学などの海外大や学東大、一橋、早慶上智、MARCHに導いています。

★最近では、中学受験における帰国生入試、英語入試の講座で、高い人気を勝ち得ています。あの三田国際の国際生入試で20人近く合格者も輩出しています。英語塾ではないのですが、スタッフは外国人で、塾内公用語は英語です。インターナショナルスクール近い感覚ですね。

★帰国生入試をベースとしているため、世界の入試市場の視点から国内入試市場を見ていますから、他の追随を許さないグローバル教育のコンセプトやビジョン、発想をもっています。

★また、毎週金曜日GLICC Weekly Eduで、グローバル教育情報やNew Power School限定で、各校の先生方と教育について対話する番組も編集・発信しています。

★このような経験を通して国内の受験市場では気づかないような新しい視点を提供しているのが鈴木さんなのです。桜新町の小さな塾ですが、海外の生徒はオンラインですから、学びの場は実は地球規模です。

★8ページの圧巻ではありますが、鈴木さんの経験をすべて盛り込むことは到底できません。それでも、そのダイジェスト版は共有できます。いずれ、首都圏模試センターで公開されるかもしれません。ぜひご覧ください。

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★それから、これからの時代は、何が起こるかわかりません。身一つでサバイバルできる知のスーパーポータビリティとしての思考力・判断力・創造力が必要です。その3つの力を生み出す泉である思考コードについて研究するプロジェクトを首都圏模試センターの社長山下一さんが進めていて、膨大なレポートになりつつありますが、そのほんの一部が少しずつ公開され始めています。そのプロジェクトに私もかかわっているのですが、そのページも掲載されています。いずれ、塊になったものが公開される予定です。ご期待ください。

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サレジアン国際学園のPBLの暗号解読

前回ご紹介したサレジアン国際学園の川上武彦先生のGLICC代表鈴木裕之さんとの対話を再度視聴していて気づいたことがあります。それは同校のPBLの独自性です。なるほどと思ったので、同校のサイトのデジタルパンフレットを開いてみました。やはりそうでした。同学園のPBLの紹介ページには、このようなフローチャートがあります。暗号解読ではないのですが、これはクロス型PBLです。クロスというのは交差するという意味と十字架の意味が重なっています。

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★どこがクロスかというと、まず①の段階で、水平的に好奇心が広がっていくのです。知識や情報を幅広く収集していくというわけです。

★②の段階では、その水平的好奇心がやがて深堀する知的好奇心を生み出します。教師が問いを提示するのではなく、「問いと出会う」というわけですが、それはそういうことでしょう。

★③では、それがどんどん深まっていく、自分の世界を形成していくという意味です。

★がしかし、自分の世界が独りよがりでは困ります。共同体と分かち合うことができるかどうかディスカッションして、そこから気づきを得ながら、自分と他者との関係を織り込んだ世界を形成し、次のステップへ飛躍します。深堀した洞窟から抜け出て今度は天に向かうわけです。

★すなわち、②から⑥の過程は、上下の垂直運動があるわけです。水平と垂直が交差するわけですが、そこに知的好奇心とディスカッションという分かち合いが十字架という意味をクロスに付与します。

★水平的な好奇心は、おもしろい・関心があるという心性です。知的好奇心はそれを省察することでなぜ関心が生まれるのか自問自答するわけです。関心はカトリックでは「愛」です。自分の状況や想定とギャップがある事象や心象、現象に直面した時、なぜギャップがあるのだろうと問いが自生的に現れるわけです。

★サレジアン国際学園の生徒は、サレジオ会の精神的支柱であるドン・ボスコが1人ひとりの幸せを大切にしている教育を継承しています。自分が幸せだからこそ、そこでは常識とされているものが、現実の中でそうでないということに気づかせるのです。

★もし、自分が心理的安全の状況になければ、そのギャップの最中に放り込まれ、気づくことができないのです。世の中のそのような影の部分に気づくには、精神的な幸せや心理的安全性を保っていなければなりません。

★物質的な幸せは、物神崇拝主義ですから、カトリック的には精神的な幸せから見れば、ギャップです。そのギャップが貧困を生みますから、二重のギャップです。そして、自分の状況が物質的な幸せにも含まれていると気づいたとき、三重のギャップです。

★このトリレンマを解決するために、ドン・ボスコをはじめ聖フランシスコ、聖ドミニコなどの聖人が行動を起こしたのです。イエス・キリスト自身がそうですから、このトリレンマどころかマルチレンマをどう解決するかは普遍的な態度です。

★このマルチレンマを解決しようという態度を生み出すのが、サレジアン国際学園のクロス型PBLだということではないか。そう気づいたわけです。

★そしてこのクロス型PBL精神は、キリスト教を超えて、世界市民に共通する精神であるということでしょう。

★勤務校聖パウロ学園もカトリック学校として、このような精神を共有させていただきたいと改めて思いました。

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2021年7月 3日 (土)

サレジアン国際学園 川上武彦先生語る New Power Schoolとしてのカトリック学校

★2022年、星美学園からサレジアン国際学園中高に移行する準備をしている募集広報部長の川上武彦先生が、<GLICC Weekly EDU 第36回 サレジアン国際学園中高 川上武彦先生との対話「共学化、インターナショナルクラスの新コンセプト」>に出演。カトリック女子校の希望の改革の深イイお話をされています。必見です。

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★イメージとしては、川上先生がすでに以前21世紀型教育機構の学校で21世紀型教育を推進していましたから、同機構の三田国際のカトリック版と置き換えるとみると、わかりやすいと思います。

★同機構の規約には、ゴールデンルールに基づいて21世紀型教育を行うという理念があります。ゴールデンルールというのは「人にしてもらいたいと思うことは何でも、人にしなさい」という聖書の言葉に由来しています。

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★しかし、同機構のメンバー校には、カトリック学校は静岡聖光学院、聖パウロ学園、聖ドミニコ学園の3校、プロテスタント校聖学院が1校ですから、決してキリスト教の理念を共有しているわけではありません。これはNY国連のギャラリーに陳列されているノーマン・ロックウェルのモザイク画ゴールデンルールにちなんでいます。

★国連は、このゴールデンルールは、キリスト教の理念だけではなく、宗教、民族、人種などあらゆる領域を貫いて共通する最高のルールであるとしています。

★ですから、21世紀型教育というのは、C1英語とかPBLとかICTなどの学びの環境の前提に世界の痛みを共有し、その痛みをいろいろなシーンでどう解消していくか教育出動力を大切にする精神があります。

★ですから、サレジアン国際学園も21世紀型教育と親和性があるのは歴史的必然です。カトリックの普遍的な精神が時代の要請を受け入れながら伝統と革新の統合を果たしていくからです。最近多くのカトリック学校が急激にこのような動きをしているのは、そういうことなのでしょう。

★そのうえで、各カトリック学校の独自性があるわけです。この独自性について、川上先生が、ご自身の世界的視野やPBL授業の見識、さらに教養豊かな歴史観を織り交ぜて語り尽くしています。

★サレジアンは、特にドン・ボスコの精神を実装しているカトリック学校です。1人ひとりのかけがえのない存在の価値を見出し大切にしていく筋金入りの教育を実践しています。

★その教育をPBL授業以外に、週3時間の探究ゼミナールを通して広く深く展開していくということです。

★同じカトリック学校である栄光学園やアサンプション国際のように、フィリピンを拠点にいつくしみの解放をベースにしたグローバル教育も行っています。

★具体的な教育改革のビジョンや教育について、ぜひYouTubeをご覧ください!

参照)2021年度の教育動向(05)サレジアン国際学園 21世紀型入試 21世紀型教育導入へ

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【響】<03>暗号解読 最後の晩餐 人間の生きざまコード 思考コードワークショップ

★ミラノのドゥオーモのある中心街から地下鉄で少し行ったところに、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院があります。ドミニコ会の修道院で、かつての食堂にあのレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」があります。戦災にあった修道院ですが、なぜかこの食堂はなんとか燃えなかったということです。

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(写真は、wikipediaから)

★順番で見学できますが、時間制限がありますから、1日そこに佇んではいられないのが残念です。しかし、この12人のイエスの弟子たちがワイワイガヤガヤあわてふためいて焦りの表情や見振りを示しているのは圧巻です。しかも1人ひとり違います。最後の晩餐だというのに、静かに食事をしているシーンではないのです。

★ドミニコ会の修道士は、ここで食事をとりながら、毎日何を感じていたのでしょう。まるで、心地よく静かに食することを禁止されているかのようです。ドミニコ会は、托鉢修道会で、自らを鎖で縛りながら、日常の中で痛みや苦しみを忘れないように暮らしていましたから(今は違うでしょうが)、この「最後の晩餐」を背景にイエス・キリストの生き様の凄まじさを感じながら食していたのかもしれません。

★勤務校で、この最後の晩餐に隠されたメッセージは何か、動画をみたり、この部分の聖書の物語を読んだり、ポストイットでキーワード読みやメタファー予測をしながら、生徒と対話をしました。

★カトリック校ですから、聖書の解釈というcryptanalysisという意味での暗号解読をするわけですが、あの「ダ・ヴィンチ・コード」という作品にあるように、codeという意味での暗号解読にシフトする試みです。もちろん、私の場合は「思考コード」という暗号解読に最終的につなげたいわけですが。

★生徒たちは、動画や物語や最後の晩餐の絵の情報をポストイットに書き取りながら、ベタベタはっつけて、暗号解読Bをつくります。動画にはすでに暗号解読の幾つかの例が載っていますから暗号解読Aもやります。

★しかし、そこから暗号解読Cによる隠れている本質的なメッセージに気づくには、あるスピリチュアリティが必要です。スピリチュアリティとはオカルト的な心性のことを言っているわけではありません。「思いやり」です。「寛容性」とか「いつくしみ」とか言っても構いません。

★裏切り者のユダはどこに描かれているのかな?この問いを聴くや、スピリチャリティの素養のある生徒は、すぐさま驚愕の眼差しになるし、今までその精神に気づいていなかった生徒は、とまどいつつもある人間の根源的なトラウマに気づくんです。

★人類共通のトラウマです。信頼と裏切り、それは自分の命を守るのか犠牲にするのかという究極の選択の瞬間です。その瞬間、人類共通の苦悩として表に出てきます。

★イエスがあれほど愛したユダなのに、自分を金で売って裏切る。ダ・ヴィンチの描く弟子たちの表情はそれに対する驚愕もあるでしょうが、ざわついているのは、ユダのことだけではないのです。裏切り者は、まさか自分ではないだろうなあ、先生(イエス)教えてください!私ではないですよね!私はついていきますよ!みな不安になったり、見透かされたりしたときに口数が多くなりそわそわするのは、2000年前も今も同じです。

★自分に自信や信念がないとき、ぐらつきます。それは人間の一面であり、だからこそそこから抜け出ようと自己変容しようとするわけです。

★生徒たちの中には、そこに気づいて衝撃を受ける子も幾人かいます。

★イエスは、はっきりと、きみらも一回は裏切るからねというのがこの最後の晩餐のシーンです。一番弟子だと自認しているペトロが、私は絶対裏切りませんからというわけですが、イエスは、エッ、そうかい。にわとりが鳴くまでに3回お前は俺のことを知らないといって逃げるぜと。

★そんなこと絶対あり得ませんよ!というのですが、イエスが十字架に磔になっている最中、おまえあいつの弟子ではないかと聞かれ、そのたびに、しりませんよあんな人というわけです。そして3度目にしらないと言ったとき、にわとりのなく声が届くわけです。そのときペトロがどう感じたか説明するまでもないでしょう。

★しかし、実際にイエスが復活し、自分の裏切りを回心したペトロやほかの弟子たちは、すぐに伝道を開始するのです。当然、イエスは弟子たちを赦します。

★このシーンは、人生の生き様のプロトタイプだし、正義とは何かを判断する時の思考実験であり、社会規範の在り方のモデルです。そして私たちは未だに解き得ない精神構造のエニグマがここにはあります。

★私の世界作りという暗号解読の対話は、まだ始まったばかりですが、いっしょにこの講座というかワークショップをつくっていく仲間とも出会えました。これが私の探究ゼミのコアになるでしょうし、偏在する講義のベースになるかなと。ハイブリットでクロスしたネイチャーの世界作りという暗号解読。何が予測不能って、人生そのものがそうです。

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