成城学園(02)近代的自我から出発しない第三の≪私学の系譜≫
★青柳圭子先生と対話していて、成城学園の自学自習や自治自律、個性尊重ででてくる自己は、近代的自我ではないなあと気づきました。明治期の≪官学の系譜≫と対峙した≪私学の系譜≫には2つあると思ってきました。1つは、内村鑑三や新渡戸稲造、天野貞祐、河井道などのクリスチャン私学人や京都学派の流れをくむ私学人の系譜。もう一つは、官僚内部から日本近代社会を自浄しようとした高橋是清のような私学人の系譜だと思っていました。≪官学の系譜≫にしても二つの≪私学の系譜≫にしても近代的自我をめぐり、その乗り越えの方法の差異だと思っていたのです。
★しかし、青柳先生との対話を通して、澤柳政太郎を創設者とする成城学園は、クリスチャンや哲学者ではなく、教育思想家の影響を受けていて、近代的自我そのものから出発していなかったということに気づきました。つまり、第三の≪私学の系譜≫なのだと。
★というのも、大正自由教育の時代は、すでにフッサールの現象学がありました。フッサールだけが感じていたのではなく、ペスタロッチやデューイもおそらく近代的自我から出発したのでは、「児童中心主義」はうまくいかないと感じていたに違いありません。経験や直観を大切にしていたのが何よりだし、ディスカッションや協働活動を大切にしていたのもその証拠だと思います。
★つまり、外から見たら個人なのですが、内面はインターサブジェクト(相互主観)的な存在が構成されているというところから出発していたのでしょう。
★私たちの内面は、自然に触れたり、他者と対話したり共同作業をしたり、そこに道具が介在して、それら全体が構成されてできているという構成主義的な考え方です。プロジェクト学習を、デューイをはじめ多くの教育者が提案し、実践してきました。ドルトン・プランもその一つでしょう。
★成城学園もその影響を受けますが、日本の当時の官学は、ヘルバルト主義ですから近代的自我の形成のための5段階インストラクションシステムです。実は、これはどういうわけか、創造的プロセスが削除されて、「基礎→応用→発展」という教授法になってしまいます。
★ヘルバルト主義でも創造的な要素を想定していたのです。しかしながら、それは5段階の枠の中での創意工夫ですから、近代国家の制度をはみ出すわけにはいかなかったのでしょう。近代国家を作ろうとしている条件下での教育で、はやくも崩すわけにはいかなかったという気持ちはわかります。
★ところが、官学でも師範学校では、創造性を維持したヘルバルト主義とデューイのようなプロジェクト学習を融合するような日本独自の教授法が生まれます。奈良女子の木下竹次の学習現論などはどうもそのようです。
★おそらく澤柳政太郎は、国の文部政策や大学にもかかわっていましたから、同じように両方のよいところをアレンジしていたはずです。
★それこそが、当時の日本の歴史的条件の中で、子どもたちが幸せに生きる道を最適化したのだと思います。近代的自我がいかなるものか哲学的に前提とするのではなく、現実の中で子どもたち自身が生きていく内面的エネルギーをどう生み出していくのか、それには相互主観的な個性が大切だったのでしょう。
★もちろん、これらは憶測にすぎないので、引き続き青柳先生と対話をしていかなければならないのですが、成城学園の教育指標が、個人から始まるのではなく、ピアから始まったり、青柳先生の対話型論証という反証可能性を内包した対話と言うことは、近代的自我の発想ではもはやありません。この今の成城学園の教育の根っこが澤柳清太郎にあったのだとしたら、やはりそれは第三の≪私学の系譜≫の流れだからでしょう。
★そんなことを妄想しているわけですが、いかがでしょうか(汗)。あくまでアブダクション的思考ということで。。。
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