教育のアップデート~2022年に向けて(26)広尾学園の海外大学進学実績の意味 人間の存在の根本問題のシェアリング
★先日、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の総会に出席した折、広尾学園の理事長池田富一先生にお会いしました。私が聖パウロ学園の校長に就任したことをわがことのように喜んでくれましたが、全く別の教育を行っていることを受け入れ、エールも送っていただきました。池田先生は、ある意味、中学受験の地図を変える新しい教育を行い、大学合格実績も目覚ましい躍進をして新しい進学校を築き上げています。そんな静かな情熱と内に秘めた自信が穏やかな表情に反映していました。
★従来の中学受験の選択の理由は、東大を頂点とする進学実績でしたが、広尾学園は、日本にこだわらず、世界をキャリアの舞台としてみなしています。東洋経済ONLINE2021年5月9日の記事によると、こうあります。
新型コロナウイルスの影響で海外渡航に制限がかかり、多くの生徒たちの海外留学の機会は奪われた。そんな状況下でありながら、留学ではなく、日本から海外の大学への進学率は増加傾向にある。多くの学校では、毎年6月頃に、英国や米国などの海外の大学への合格実績が公表される。早くも、私立中高一貫校の中で最も多くの海外大学合格者数を輩出する広尾学園高等学校の数値が発表された。20年度、広尾学園高等学校では、昨年度の79名から大きく3桁に数字を上げ212名が海外大学に合格している。(2021年5月7日時点)
★212名の海外大学合格というのは、圧巻です。開成は毎年東大に150人前後合格者を輩出するのですが、それをも超える意味があるかもしれません。
★東大は今、男女の入学者数の割合で、ダイバーシティの問題を解決する糸口を見出そうとしている段階です。それはダイバーシティの1つの在り方であり、とても大切なことではありますが、世界におけるダイバーシティの問題は、それこそ多様なのです。
★その点、広尾学園は世界に開かれたダイバーシティを追究していると言えるでしょう。
★ダイバーシティの意味はダイレクトに光の領域にあるわけではありません。ダイバーシティとイノベーションは、実はダイレクトに結びつくわけではないのです。
★中学受験の学校の広報活動において、ダイバーシティは大事にしていると言われています。しかし、その表現は光の部分だけです。できるだけネガティブなことは広報活動では表現しないのが暗黙の了解です。
★しかし、本当は、ダイバーシティは世界の痛みを受け入れることなのです。それゆえに、それを解決しようとイノベーションがうまれてくるわけです。
★広尾学園は、ここに対する覚悟があるのです。池田理事長と対話した時、教育の内容は全く違うのですが、その点においてしっかりと共有することができました。世界の痛みを受け入れるがゆえに、海外大学の進学者が増えるという本物のシステムができあがっているのです。
★海外大学は、このテーマを括弧に入れて自分とは何かを表現する学生には興味がないからです。
★日本の大学の一般試験は、ここの問題意識を前面には出さないで受験が成り立ちます。それゆえ、国としてはまずいのです。それゆえ、総合型選抜という、世界の痛みを受容しながら一方でイノベーションへの気概を持った学生を募集しようという流れがでてきています。
★大学受験勉強という何か表面的で利益主義的な勉強とみなされがちなのは、世界の痛みという人間の存在問題にマスクをかけて勉強が成り立ってきたからです。
★これに対する省察が文科省の中で、あるいは経産省の中でも生まれているわけであります。それゆえ、総合型選抜というわけですが、その人間存在の根本問題に触れずに一般入試で合格させようという根強い流れは、未来から見たら、悪法も法という時代だったということになりましょう。
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