児浦先生との対話 SGTのWorld Making Classとしての活動が始まる 歴史的・地政学的価値の転換(1)
★昨夜、聖学院の教育と経営の両輪のリーダーシップを発揮している児浦先生(21教育企画部長・国際教育部長・広報部長)とZoom対話をしました。児浦先生は思考力入試の本質と市場経済の位置づけを果たしたクリエイティブクラスでもあります。21世紀型教育機構の21世紀型教育研究センターのリーダーの1人(ほかに工学院の田中歩先生・静岡聖光学院の田代先生・和洋九段女子の新井先生)でもあります。
★私も同機構の加盟校である聖パウロの教師でもあるし、同機構の立ち上げメンバーだったということもあり、今後の21世紀型教育機構の歴史的・地政学的意義や価値は何かについて対話になりました。この価値というのは理念や本質的価値ということもありますが、経済的価値も意味します。
★今年の定例総会で、同機構会長の平方先生が、グローバル教育(GE)4.0を宣言し、世界の学校づくりとWorld Makingのステージに突入することを語りました。それをウケて、21世紀型教育研究センターのさらなる展開が始まったということなのでしょう。
★≪私学の系譜≫からいえば、江原素六、渋沢栄一、新島襄、福沢諭吉などの第一世代が形づくった、もう一つの近代の路線をその時代その時代に適合していかにして教育出動するかですが、そこにチャレンジということでしょう。まさに同センターの先生方はチェンジ―メーカーです。
★第二世代である内村鑑三、新渡戸稲造、高橋是清、石川角次郎(聖学院初代校長)らは、戦後教育基本法という戦後民主主義の教育を形成する私学人らに大きな影響を与えました。
★また澤柳清太郎(成城学園の創立者)を中心に大正自由教育という現代にも影響を与える教育も生まれました。
★これらの流れは、今21世紀型教育機構の学びのメインであるPBL教育(PBL授業はその一部)の現代化(デューイの系譜ではある)と一部は合流しているでしょう。しかし、≪私学の系譜≫としての歴史的意義の位置づけを21世紀型教育機構は形成できるのかは、今後にかかっています。
★何も歴史的に有名になろうなんていうゲスなことを考えているわけではありません。内村鑑三は、お金を儲けて社会に還元するもよし、教師となって生徒を導くのもよし、作家として時代のサーチライトになるのもよし、ボランティアをやって社会に貢献するもよし、しかし、誰でもできるが得難い最高の活動は、高邁な精神をもって勇気をもって活動し続けることなのであると語っています。
★私たちは、この内村鑑三の語る方向性をすべて統合して進もうとしています。その結果21世紀型教育機構は≪私学の系譜≫を汲む21世紀私学人=STG(スーパーグローバルティーチャー)を輩出するようになるのです。SGTは、脱炭素社会を欲望資本主義の修正主義でもなく、脱成長主義的発想でもなく、19世紀末から20世紀初頭に出現し、しばらく20世紀欲望の資本主義(NHKの表現を借りています)によって追いやられていましたが、ケインズやモモを描いたミヒャエル・エンデが夢見たもう一つの近代社会のリカバリーを生み出すクリエイティブクラスです。
★世界ではクリエイティブクラスがどんどん生まれていますが、日本ではクリエイティブな人材が豊富ですが、クリエイティブクラスとして前面にでてくるのはなく、組織の一役割を演じる人材として安い賃金で雇われており、自分の使命のためではなく、また格差社会をなくす新しい世界づくりのためにでもなく、組織の利益のために使われています。
★SGTは格差社会をなくし平和やwell-beingを生み出す社会づくりとそれにシンクロする学校づくりをするというWorld Makingを果たすことをミッションとしています。
★すなわちクリエイティブクラスです。自分のミッションと組織や社会、世界のミッションがシンクロするように動きます。
★ですから、児浦先生は、21世紀型教育研究センターをテコに、単純にPBL授業ができる教師のスキルセミナーをやって終わりなのではありません。21世紀型教育センターのミッションは、先生方1人ひとりの使命と学校組織の使命と社会の使命がシンクロするようにイノベーションを起こすことになります。
★そのためには、教育と経済の新しいシステム作りをすることに必然的になります。もちろん、このSGTは生徒中心主義(デューイの系譜)ですから、生徒も同時にクリエイティブクラスになっていくシステムです。
★SGT輩出システムは、米国のETSやイギリスのケンブリッジ出版のようなシステムを換骨奪胎する第5次産業センターに成長するでしょう。10年はかかるでしょうが、21世紀型教育機構も10年でできたわけですから、同機構の次のステージの第5次産業センター構想もあっという間でしょう。もちろん外部団体と協働しなければなりませんが、それはすでに動いています。もちろん国とも齟齬があってはなりませんから、そちらも大丈夫です。
★私自身が年齢的にリアルに存在しているかどうかは神のみぞ知るですが、かつての21世紀型教育機構のリーダーの1人だったかもしれない私です。もしリーダーであるならば、自分に固執するのではなく、今後3世代くらいにわたって使命の松明を継承してもらえるように知恵を使い構想力を広げようと思います。
★これもまた高邁な精神をもって勇気をもって活動し続けることで、内村鑑三の意志を引き継ぐ21世紀型私学人(なぜか私も私学の教師になってしまったわけですから)の歩む道だと思っています。
★今回児浦先生とかなり具体的な10年構想について対話しました。児浦先生と私の経歴は重なるところが多く、二人とも私学の教師になる前から新しい学びを開発する仕事を協働していました。私学の教員としては児浦先生が大先輩です。やっと追いついたので、共に再びというか本格的に第5次産業構想を追究したいと思います。(つづく)
※【補説】すでにクリエイティブクラスは第4次産業を牽引する人材を意味します。産業構造は20世紀社会は第一次産業、第二次産業、第三次産業というカテゴリーに分けられていましたが、都市社会学者のリチャード・フロリダ教授が、第4次産業の出現を提案し、その牽引人材をクリエイティブクラスと称しました。
この発想はダボス会議にも影響を与えて、今年の同会議のメインテーマはグレート・リセットでしたが、このことばもリチャード・フロリダ教授の本のタイトルの影響を受けていると推察します。Z世代の希望である落合陽一さんも、著書「働き方5.0」でクリエイティブクラスを柱に語っています。第4次産業革命もフロリダ教授の影響を免れません。
21世紀型教育機構のSGTは、いったんはクリエイティブクラスですが、この概念は企業人からでているので、教師がこの概念を活用するといきなりWorld Making Classになるのです。第5次産業の誕生への道が開かれます。
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